MILスペックなSBC。Versalogicの「Zebra」は過酷環境向け

つい昨日の2018年5月1日に、Versalogicから過酷環境でも動作するSBC(シングルボードコンピューター)「Zebra」が登場しました。

スペック

特徴

「Zebra」の特徴はMILスペック(MIL-STD-202G)準拠という点です。
MILスペックとは、ざっくり言うと米国における軍用品の調達規格の総称のことで、アメリカ合衆国国防総省で制定するMIL仕様書から連邦規格までいくつかの規格や仕様が含まれています。
この規格にはソフトウェアの仕様から耐環境性、試験方法など様々なものが含まれており、IT分野ではそのうちの耐久性能、ようは「タフさ」を示す基準によく使われています。
MIL-STD-202はMILスペックの電子部品の標準規格となります。

「Zebra」ではそのうち３つの試験をクリアしているようです。

高振動耐久性(Method 204)：設定：A、周波数：5Hz～500Hz、平均加速度：2G、時間：各軸20分
ランダム耐震性(Method 214A)：設定：A、加速度: 5.35G、時間：各軸5分
耐衝撃性(Method 213B)：設定：G、加速度：20g(正弦波半周期)、時間：各軸11ミリ秒

仕様書を読んでみましたが、設定はAが一番緩くて、試験によりますがGとかH辺りまであるようです。
ちなみに一番上のMethod 204の設定Aは瞬間的には最大10Gがかかるようですが、設定Hになると瞬間最大80Gがかかる試験となります。

こう書くと、一番ゆるい試験を通してMILスペック準拠を謳っているようにも見えますが、もっと過酷な環境でも行けるよ！的なことが欄外に書いてあったので大丈夫なんでしょう。
まぁこれ以上過酷な環境となると普通は専用機器とか専用のセンサーとかになっちゃうんでしょうけど。

他の特徴もやっぱり耐環境性に関することが多いです。

動作温度：-40℃〜85℃
動作標高：4570m(15,000フィート)
耐湿度性：95%以下(結露なきこと)

こういった耐久性に対して、スペックはかなり控えめです。

NXPの”i.MX6 Solo”および”i.MX6 DualLite”はそれぞれ1コア、2コアのSoCで、昨今の4コア8コアな高性能SoCと比べると見劣りします。アーキテクチャもCortex-A9と2009年に発表されたものとなります。
最大1GHz動作のものを更にクロックを落として最大800MHzとしています。
その代わり、ファンレスでの動作が可能となるので、可動部品がない分耐久性の向上につながっています。

変わったところではMikroBUSを搭載しています。MikroBUSはMikroElektronika社の開発したプラグインで、MikroBUSソケットにセンサーやLED、電源モニタなどさまざまなモジュールを挿すことで機能を追加することができます。

まとめ

Versalogicは米オレゴン州に本社を置く、1976年設立の組み込み向けボードメーカーです。
高耐久性、全数テスト、長期製品サポート辺りを売りにしているようです。
Arm系のSBCについては新参で、「Zebra」は「Tetra」に次ぐ2製品目となります。

以前にも書きましたが、Raspberry Piの登場以来、SBC界隈は群雄割拠状態です。各社あれこれ独自のアピールポイントを作って生き残りを図っていますが(アピールポイントに乏しい物はどんどん淘汰されています)、MILスペックというのはあまり見かけません。

MikroBUSによる拡張というのも珍しく、(値段に目をつぶれば)これはこれで面白いと思います。

関連リンク

MIL規格の基礎知識 (amazon)

Zebra (VL-EPC-2701) – 製品ページ ※英語
マニュアル、OSイメージ ※英語
MIL-STD-202G 仕様表 ※pdf、英語