GaN(窒化ガリウム)採用USB充電器について。そもそもGaNって何?

最近Amazonなどで、名前のところに【GaN(窒化ガリウム)採用】と付けられているUSB充電器が増えています。

最初期はiPhone付属のUSB電源アダプタくらいのサイズで30W出力という製品が多かったのですが、最近では5cm角サイズで60W出力を謳っていたり、薄型高出力だったりとバリエーションが増えてきたので、まとめてみました。

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GaN(窒化ガリウム)とは

窒化ガリウムはガリウムの窒化物であり、主に青色LEDの材料として用いられる半導体です。

1980年代から青色LEDの材料候補でしたが、1990年に中村修二教授がp型窒化ガリウム(半導体はp型とn型があります)の簡単な生産法(2フローMOCVD)を発明、同様の方法で生産した窒化インジウムガリウム(窒化ガリウムと窒化インジウムの混晶)を用いた高輝度青色発光ダイオードを実用化し、ノーベル賞に輝きました。

ちなみにこの窒化インジウムガリウムは、当時は構造的問題(結晶が均一ではなく歪だったり欠損の割合が高い)があるのになぜか光ると研究者が首を傾げるシロモノだったのですが、2006年に筑波大学と科学技術振興機構の合同チームが原理を解明しました。

1990年代、2000年代はLEDおよび工業用レーザーなど光用途が先行していましたが、特性の研究が推められて2010年代はパワー半導体としても注目されています。

パワー半導体について

パワー半導体とはその名の通り、電力制御に最適化された半導体のことです。パワーデバイスとか電力半導体とも呼ばれます。
パワー半導体は4種類に分類されます。

1.直流での電気を交流に変換する「インバーター」
2.交流を直流に変換する「コンバーター」
3.交流の周期を変える「周波数変換」
4.直流の電圧を変換する「レギュレーター」

USB充電に関わるのは100V交流から5V直流(USB PDなら5V〜20V)の変換に必要な「コンバーター」と「レギュレーター」ですね。

このパワー半導体に電気を流すとき、2種類の電力損失があります。

ひとつはスイッチング損失で、ON/OFFの切り替えの瞬間に電力を消費します。
ゆっくりスイッチングするとその時間分だけ消費されるので限りなく高速化すればいいのですが、高速に切り替えるには瞬間的に高電圧をかける必要があります。
しかしやり過ぎると半導体素子の限界を超えるサージ電圧が発生し、素子が破壊されてしまいます。

ここをうまく工夫して、シリコン素子のまま電力効率を95%まで高めて超小型化した製品も2016年に出ています(が、相応に高額です)。

もうひとつは導通損失で、半導体の持つ電気抵抗(オン抵抗)による損失です。
スイッチング損失と導通損失は熱に変わるので、充電器が熱くなります。

GaNの優位性

これまで半導体といえばシリコン(Si)が長らく使われてきました。
シリコン半導体も長年の研究で小型化・高性能化されてきたわけですが、材料的な性能限界に近づいていたところに登場したのが窒化ガリウムです。
なお、同じくシリコン超えの素材にSiC(シリコンカーバイド)がありますが、窒化ガリウムと範囲がかぶらず(SiCは大電圧・大電流に強く、GaNは定電圧・高周波数に強い)本題ではないので扱いません。

材料特性 Si(シリコン) GaN(窒化ガリウム) SiC(炭化シリコン) 特性の影響
バンドギャップ(eV) 1.12 3.4 3.26 動作電圧・動作温度
比誘電率 11.9 9.5 9.7 絶縁性
絶縁破壊電解(MV/cm) 0.3 3.6 2.7 耐電圧・オン抵抗
飽和ドリフト速度(10&sup7; cm/s) 1 2.7 2.2 高周波数動作
電子移動度(cm²/V・s) 1350 900 1000 高周波数動作
熱伝導率(W/cm・K) 1.5 2 4.9 耐熱性・高電流密度動作

窒化ガリウムには以下のような特性があります。

1.スイッチング(ON/OFF)スピードが早い
2.絶縁破壊電圧が高い
3.熱伝導率が大きく放熱性に優れている

スイッチングスピードについて、窒化ガリウムは対シリコン比で、電圧変化では4倍以上、電流変化では10倍以上の高速動作が可能で、スイッチング損失の低下につながります。

絶縁破壊電圧については、絶縁破壊電圧が高い→薄くても破壊されにくい→薄型化することでオン抵抗(抵抗値=断面積×長さ(厚さ)×抵抗率)が減る→導通損失の低下、という効果があります。

これらの特性により、最大で99%を超える電力効率を叩き出すことに成功しています。
前述の通り、シリコンでは95%でも高効率扱い、多くは90%前後と言われていることから、窒化ガリウムの凄さが分かりますね。

また、スイッチング損失・導通損失の低下→低発熱→熱伝導率の高さもあり、放熱対策の簡素化が可能、というサイクルや、構造の単純化により、GaN製品はSi製品に比べて小型化されました。

窒化ガリウム半導体の量産開始ははっきりしませんが2013年ころと見られます。技術の走りにはよくあることですが、当初は歩留まりが悪く、コスト的にシリコンに太刀打ちできなかったようです。

窒化ガリウム半導体を採用した最初のUSB充電器はおそらく2015年12月のAvogy「Zolt」と思われます。
本格的に市場に登場するのは2年以上経った2018年です。

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その他

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kickstarterでファンディングしていたクレカサイズの4ポート・100W充電器です。

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IndieGOGOでファンディングしていた、2ポート・65W充電器です。

参考サイト

次世代パワー半導体 GaN・SiCへの取り組み:サンケン電気
パワーデバイスで健闘する日本の半導体企業:PC WATCH
高効率を求めるなら、迷わず「GaN」を選ぶ時代が到来:EE Times Japan
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