先日レビューした薄型ミニPCKhadas「Mind」には独自規格の「Mind Link」で接続できる専用の周辺機器があり、その一つが「Mind Graphics」です。
「Mind Graphics」はデスクトップ向けのGeForce RTX 4060 Tiと電源を内蔵、さらにThunderbolt4ドッキングステーション機能も持っています。
類似製品のほとんどがモバイル(ラップトップ)向けのGPUを使用する中、希少なデスクトップ版ということで、期待大です。
Khadas Mind Graphics
GPU | GeForce RTX 4060 Ti(8GB,160W) |
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インターフェース | Mind Link USB Type-C(TB4)×1 USB 3.2 Gen2×3 HDMI 2.1a×2 DisplayPort 1.4a×1 2.5GbE 有線LAN SDXCカードリーダー 指紋リーダー オーディオジャック |
電源 | 300W |
サイズ | 199×133×100mm |
重さ | 2.7kg |
GoodPoint
✔ デスクトップGPU内蔵
✔ ドッキングステーション機能
✔ 比較的静か
BadPoint
✖ 電源ボタンなし
✖ 天面カバーなし
✖ 接続がPCIe Gen4 x4
外観
外箱は割とシンプル。
パッケージ内容もシンプル。電源は本体内蔵なので、付属品はケーブルとマニュアルだけ。
マニュアル。WEB上でも公開されています。
参考 Mind:Khadas Support
インターフェース。
GPU由来のHDMI、DisplayPortのほかに、Thunderbolt4、USB、2.5GbE、SDカードとドッキングステーションとしての機能も持ち合わせています。
Type-C端子は85WまでのUSB PDにも対応しています。
側面にはボリュームボタンと指紋リーダー。
ちなみに電源ボタンはないので、電源ケーブルを指すと常時待機状態になります。
上部にある「Mind Link」コネクタ。おそらく右側の太い接点が電力です。給電能力は最大140W。
…しかしこのコネクタ、特にカバーもなく、剥き出しなんですよね。カバーくらいは欲しかったかも。
底面。
サイズ感はおおよそシングルファンのグラフィックボード2枚分程度。
おそらくこのサイズに収まるのはシングルファン製品が存在するRTX 4060 Tiが限界なのでしょう。
もしRTX 4070以上を搭載した上位製品が出るとしたら冷却面を強化する必要があり、デュアルファンのグラボ2枚分のサイズになりそうです。
ミニPCとの比較。
「Mind」以外からはThunderbolt4/3接続ができます。
ただどうもAMD系システムと相性が悪いようで、AMD CPU搭載機と接続すると認識しなかったり、認識した途端落ちたりします。
重さは2.6kg。
接続
「Mind Link」を使用するには、本体側の「Mind」に「Mind App」をインストールする必要があります。
アプリはサポートサイトで入手できます。
参考 Mind:Khadas Support
一通りのアップデート→電源オフしてから合体。磁石で結構強力にくっつきます。
プラグアンドプレイ(電源を入れたままの接続/取り外し)にも対応はしているようですが、推奨はされていません。
起動後はデバイス一覧に「Mind Graphics」が追加されるので、GeForceドライバーをインストールします。
なお、「Mind App」は「Mind」デバイスにしかインストールできず、「Mind Graphics」のファームウェアアップデートも「Mind」経由でしかできません。
Thunderbolt4接続で使う場合、現状ではファームウェアアップデートは困難となります。
ベンチマーク
「Mind」本体(Intel Xe)、「Mind」+「Mind Graphics」、「Mind Graphics」をThunderbolt4接続した場合、比較としてモバイル版RTX 3080(16GB)を搭載するLenovo「Legion 760」の4種類でベンチマークを行いました。
なお、Mind LinkそのものはPCIe Gen5 x8接続までをサポートしますが、「Mind」との接続は「Mind」本体側の制限でPCIe Gen4 x4となっています。
本来のGeForce RTX 4060 TiはPCIe Gen4 x8接続なので、帯域が半分となり、その分のスコアの低下が発生します。
転送速度でいえば、Mind Linkによる接続は64GT/s、Thunderbolt4接続は32GT/sなので、Thunderbolt4接続は帯域がさらに半分となります。
3DMark
3DMarkの結果は何気にRTX 3080 laptopを上回っています。
デスクトップ版とラップトップ(ノート向け)版の比較とはいえ、グレード差を軽く超えてきたのは驚きです。
[中量級] ストリートファイター6
ストリートファイター6はディスプレイのリフレッシュレートにかかわらずフレームレートが60fps固定(高リフレッシュレートのディスプレイだと描画遅延や入力遅延が少なくなる)。
中量級に分類していますが比較的動作が軽いため、最高(HIGHEST)設定でもほぼ60FPSに張り付いています。
ゲームの性質的に高解像度より高フレームレート維持が優先されるので、2.5K以上は確認していません。
「Mind」本体は”NORMAL”設定までしか動作せず、”HIGH”以上の設定だとハングアップしたので記録はありません。
[中量級] ブループロトコル
ブループロトコルはキャップがないので性能差がはっきりとわかります。
[中量級] FF XIV 黄金の遺産
FF XIVは最新バージョンの”黄金の遺産”でDLSSに対応しました。
デフォルトでは60fpsを下回るシーンでのみ適用となっているので、デフォルトと”常に適用”、DLSSなしの3パターンを計測しています。
とはいえFHD/最高品質でも負荷として物足りないようで、DLSSの効果はあるものの、劇的というほどではありません。
なぜかRTX 3080にはよく効いています。
[重量級] FF XV Windows Edition
重量級のFF XVでは趣向を変えて、FHD(1920×1080)、2.5K(2560×1440)、4K(3840×2160)の3パターンを計測。
メモリ消費量の多くなる4KならRTX 3080 laptopが逆転するかな?と予想していたのですが、そんなことはありませんでした。
[重量級] サイバーパンク2077
重量級タイトルの代名詞ともいえるサイバーパンク2077も計測。
「Mind」本体のXeグラフィックスはレイトレーシング非対応、RTX 3080はレイトレーシングは対応するもののフレームレート補完は非対応。
それにしてもフレーム補完機能がえぐいですね。
[重量級] 黒神話:悟空
8月20日にリリース、SteamDBによると同時接続者数最大240万人を記録した、西遊記を題材とした「黒神話:悟空」がベンチマークツールを公開しているので、こちらでも測定してみました。
ゲームエンジンにはUnreal Engine 5を採用しています。
フレーム補完をONにすれば、TB4接続のRTX 4060 Tiでも最高画質でプレイできます。
一方でフレーム補完機能のないRTX 3080ではフレームレートが低いので、画質を2段ほど落とす必要があるでしょう。
Stable Diffusion
最近のGPUといえばのStable Diffusionも測定。
ちもろぐさんのグラボ別ベンチマークより「Toki SDXL Benchmark」と「Ayaka SDXL LoRA Benchmark」の設定をお借りして実施しました。
スコアは5枚の生成にかかった時間(秒)です。
ざっくり説明すると、通常のWebUIでは「Mind Graphics」はメモリ不足ですね。SDXLは最低でもメモリ10GB以上は食い、LoRAを適用させたりするとさらに食うので、グラフィックメモリが8GBのRTX 4060 Tiではちょっと足りず、システムメモリの一部を共有メモリとして割り当てているので、その分遅くなっています。
Thunderbolt4接続だとさらに顕著ですね。
一方で省メモリ化されたForge版ではメモリが追い付いているので一気に高速に。
Forge版なら「Ayaka SDXL LoRA Benchmark」でも6GB程度しか食わず、内蔵グラフィックメモリ内に収まるので爆速化がすさまじいですね。
消費電力
「Mind」接続時の消費電力は瞬間最大233W。
CPUとGPU両方に負荷がかかるシーンでようやく200Wを超える感じで、GPUメインだと200Wまで届かない感じでした。
Thunderbolt4接続時、つまり「Mind Graphics」単体の消費電力は瞬間的に最大183W。全体ではおおむね160W前後でした。
ちなみに「Mind」非接続での待機状態だと8W前後を消費しています。
少なく見えますがLED電球を点けっぱなしにするよりするより食っていると考えると、電源をオフにできてもいいんじゃないかなぁと。
まとめ
「Mind Graphics」の価格は記事執筆時点でクーポン込み144,999円。
デスクトップ向けのGeForce RTX 4060 Ti(8GB)は安いもので6万円前後、Thunderbolt4ドッキングステーションは実は結構高くて、3~4万円します。
さらに外付けGPUケース(GPU Box)のガワ(電源込み)も4~5万円程度。
機能単位でみると、「Mind Graphics」は実は決して高くはなく、むしろシングルファンのグラボ2枚分の大きさに詰め込んだ、コンパクト化の分だけお得と言えるくらいです。
最近はOCuLinkで接続できるコンパクトなeGPUがあちこちから出ていますが、どれも搭載するのはノート向けGPUで、デスクトップ向けはありません。
現在はPCIe Gen4 x4接続なのでフルスペックの性能を発揮できてるとは言えませんが、それでも性能は大きく違います。メモリが溢れない範囲ならRTX 3080 laptopより上というのは自分でも驚きました。
公式サイトで予告されている「Mind」後継機はLunar Lake搭載。Lunar LakeはPCIe Gen5が4レーン、Gen4が16レーン(4レーンがM.2 SSD、12レーンがThunderbolt4×3)と予想されているので、「Mind Link」にはGen5 x4が割り当てられることでしょう。
大域的には2倍になりますが…x4接続には変わらないので、「Mind」後継機でもフルに性能を出すことは望み薄かなぁと。
そこだけがちょっと惜しいです。
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