2024年08月19日、SBCメーカーのFriendlyELECはRockchip RK3588Sを搭載したSBC(シングルボードコンピューター)の「NanoPi M6」を発売しました。
スペック
■ NanoPi M6 | |
CPU | Rockchip RK3588S |
---|---|
メモリ | 4~32GB LPDDR5-2400 |
ストレージ | microSD eMMCソケット M.2 Key-M 2280 |
画面 | 3.5インチ 800×480(オプション) |
インターフェース | USB Type-C(電源)×1 USB3.0×1 USB2.0×2 HDMI 1GbE 有線LAN オーディオジャック |
wi-fi | M.2 Key-E 2230 |
4G/5G | 非対応 |
サイズ | 90×62mm |
重さ | 52g |
特徴
「NanoPi M6」はFriendlyELECにとっておそらく「NanoPi R6S」「NanoPi R6C」に次ぐ、3機種目のRK3588S搭載機となります。
いずれもボードサイズは90×62mmですが、「R6S」はトリプルLAN(2.5GbE×2+1GbE)、「R6C」はデュアルLAN(2.5GbE+1GbE)、そして今回の「M6」はシングルLAN(1GbE)と、有線LANだけ見ても性格が異なっています。
実際、説明文でも「R6S/R6C」はゲートウェイデバイス、「M6」はミニSBCデバイスと書かれています。
ちなみに「M5」はなく、「M4」はRK3399搭載でした。
SoC
「NanoPi M6」の搭載SoCは前述の通り、Rockchip RK3588S。
Rockchip RK3588Sは、Sの付かないRK3588の弟分的な立ち位置です。違いは以下の通り。
RK3588S | RK3588 | |
---|---|---|
CPU | Cortex A76 ×4 Cortex A55 ×4 | |
GPU | Mali-G610 MP4 | |
NPU | 6TOPS | |
メモリ | LPDDR4x/LPDDR4/LPDDR5 最大32GB | |
映像出力 | HDMI 2.1/eDP ×1 DisplayPort ×1 MIPI DSI ×2 | HDMI 2.1/eDP ×2 DisplayPort ×2 MIPI DSI ×2 |
映像入力 | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP HDMI-IN (4K/60Hz) |
ネットワーク | 1GbE ×1 | 1GbE ×2 |
USB | USB3.1 Gen1(OTG) ×1 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (HOST) ×2 | USB3.1 Gen1(OTG) ×2 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (OTG) ×2 |
PCIe | – | PCIe 3.0 x4 |
Combo PIPE | 2ポート | 3ポート |
低速I/O | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC CAN bus ×3 | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC |
サイズ | 17×17mm | 21.45×21.45mm |
CPU/GPU/NPU構成はRK3588と同じで、インターフェース周りが簡素化された分、パッケージサイズが小型化。
そのため、もともと搭載できるインターフェースの限られる、クレカサイズSBCに採用されやすいという側面があります。
PCIeがない代わりに、SATA3/PCIe2.1/USB3.0と汎用的に使えるCAN busというインターフェースが用意されています。
CPUは4コア2.4GHz Cortex-A76+4コア1.8GHz Cortex-A55、GPUはMali-G610 MP4、NPUは6.0TOPSとされています。
また、改良版のRockchip RK3588S2も登場していますが、MIPI-CSIの構成が違う程度です。
参考 RK3588S データシート:CNS Software ※PDF
性能はSBC向けSoCの中では群を抜いて高く、Celeron N5095の2倍、Intel N100の9割程度のスコアを叩き出しています。
Snapdragon比だとSnapdragon 865とSnapdragon 888の間くらい。
AnTuTu(v9)スコアは無印のRK3588が53~54万点で、グラフィック等も含めたトータルだとSnapdragon 865(64~66万点)より一段低い程度になります。
メモリとストレージ
「NanoPi M6」のメモリは4GB/16GB/32GBのLPDDR5-2400。なぜか8GBはありません。
最初から32GBの選択肢が用意されているのもいいですね。
ストレージは非搭載。microSDスロット、eMMCスロット、そしてM.2 SSD向けのKey-Mスロット(2280サイズ)が用意されています。
M.2 SSDはPCIe Gen2 x1接続となるので片方向0.5GB/s(≒500MB/s)。なので、低速なSSDで十分ですね。
その他
無線LANは非搭載で、M.2 Key-Eスロットが用意されています。
独自の認証規格となる技適(技術基準適合証明)がある日本では、へたに内蔵されるよりありがたいですね。
有線LANは1GbE。
電源はType-C入力。USB PDに対応し、6~20Vの範囲での入力(最低10W)に対応します。
対応OSは結構多く、Android 12 Tablet/TV、Debian、Friendlycore、FriendlyWrt 21.02/23.05、OpenMediavault、Ubuntu 20.04/22.04など、Ubuntu 24.04も対応予定のようです。
ちなみに(eMMCへの)インストールは
1.USBケーブルで母艦PCから直接流し込む(母艦PCにドライバのインストールが必要)
2.ブラウザ経由(microSDにインストールしたFriendlyWrtを使用)でインストール(標準的な方法)
3.microSD経由でOSを入れる
の3種類の方法があるとのこと。
外観
インターフェースです。
端子は長辺に集中。
「M6」の大きなポイントが、LCD付きのケースです。
3.5インチ800×480のタッチスクリーンがケース天面に内蔵されていて…「Gole1」や「Gole2 Pro」っぽい感じに。
LCDのないメタルケースも用意されています。
ちゃんとWi-fi/BTアンテナ用のホールがあるのがポイント。
まとめ
「NanoPi M6」の価格はメモリ4GBモデルが70ドル(約9,900円)。メモリ16GBは+30ドルの100ドル、メモリ32GBは+80ドルの150ドルです。
LCD付きケースは45ドル、メタルケースは20ドル。
価格だけなら「Orange Pi 5 Pro」の方が安い(4GBモデルが60ドル)のですが、「Orange Pi」シリーズはケースがないんですよね。
LCDが付いたことで用途の広がった「NanoPi M6」。
16GB/32GBモデルならHDMI表示でミニPC風に使えるというか明らかにその方向性ですし、4GBモデルでもメディアサーバーとかIoT監視とか、使いようはあります。
RK3588/RK3588S搭載SBCはそろそろ飽和状態な気がしなくもないですが、次世代モデルが出て来ていない以上、同じSoCで差別化を図る方向しかないわけで。
そういう意味では「M6」は分かりやすいなぁと。
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