Nextorageは2019年にソニーのメモリー・ストレージ部門が独立して誕生したストレージメーカーです。
Monster Storageとか中華SSDメーカーの中に混ぜても違和感がないメーカー名ですが、れっきとした国産メーカーです。
そのNextorageから2023年2月に発売されたのがGシリーズ(Gamingシリーズ)。のちに8TBモデルが登場するなど、NextorageのSSDの主力製品となっています。
ゲーミング向けということで「データ転送の高速化と安定性を両立」と謳っています。
今回はその中から4TBモデルについて検証してみました。
Nextorage NE1N4TB

■ Nextorage NE1N4TB | |
容量 | 4TB |
---|---|
接続 | PCIe Gen 4.0 x4 NVMe 1.4 |
転送速度 | リード:7,300MB/s ライト:6,900MB/s |
NAND | BiCS5 112L TLC NAND |
キャッシュメモリ | 2GB DDR4 |
耐久性 | 3000TBW |
保証 | 5年 |
参考 製品ページ:Nextorage
本体外観
箱はかなりシンプルで、インク消費量を抑えたエコパック。最初は間違ってOEM用パックが届いたのかと思ったくらいです。
スリーブは紙製で、こちらもちょっとだけエコ。本体は静電防止袋に入っています。
マニュアルというか、付録のAcronis True Image(クローン作製ソフト)のシリアルナンバーが付属。
本体裏表。「NE1N4TB」は両面実装です。
ラベルにはMade in Taiwanとあります。
キャッシュメモリはSK Hynix H5AN8G6NDJ。DDR4-3200駆動の8Gb(1GB)チップです。
これが裏表に1チップずつで、合計2GBのDRAMキャッシュを形成しています。
NANDには「TA8HG95AYV」の刻印。
fidを確認すると、東芝(キオクシア)性のBiCS5で、112層TLC NANDとなっています。
コントローラはPhison PS5018-E18です。PS5018-E18は12nmプロセス製造、3コアのCortex R5、最大リード7,400MB/s、ライト7,000MB/sまで対応するコントローラです。
参考 PS5018-E18:Phison
チェック環境
検証はLenovo「IdeaCentre Mini Gen8」と、システムとしてLexar「NM790(4TB)」を使用。
測定中は蓋を開けたまま検証。


ちなみに両面実装だと熱伝導シートがつっかえて入らなかったので…
底面の熱伝導シートは取っ払いました。これが残念な結果を生むとも知らずに…
ちなみに、裏面までカバーするタイプのSSDヒートシンクを付けると、基板に当たってしまい装着できません。ノートPCや大半のミニPCでは裸運用か表側だけヒートシンクにならざるを得ないかと。
CrystalDiskInfoの情報です。
接続はNVMe 1.4。ファームウェアバージョンはEIFS 1.3
ざっくり調べた感じだと、NVMe 2.0ではZNS Command SetやKV Comman Setが追加され、HDDをサポートするように。
NVMってNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の頭文字(eはExpress)なのに、磁気ディスクをサポートとは…
ベンチマーク
また、機材の限界(Intel系CPUの制限)として、7,000MB/s付近が上限となります
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkではサイズを1GiB・64GiBにして測定。
シーケンシャルでリード7,006MB/s、ライト6,403MB/sを記録。上記の通り、リードは機材側の限界ですが、ライトもなぜか低め。原因はちょっとわかりません。
64GiB時はだいたい誤差レベル。DRAMからあふれるサイズなのに、大きく落ち込まないのはさすがです。
4Kランダムのレイテンシ(1GiB時)は60.94μs。64GiB時でも60.74μsと同水準。
書き込みレイテンシも64GiB時で23.07μsで、1GiB時とほぼ同じ。
AS SSD Benchmark
AS SSD Benchmarkでは総合3906ポイントとあまり振るわず。
4K/64スレッド書き込みが弱く、アクセスタイムが遅い点は、同じDRAM搭載SSDであるSK hynix「Platinum P41」やHP「FX900 Pro」と異なった傾向です


h2testw
全領域に書き込みをして速度を計測するh2testwは平均的な2.1GB/sでスタート。
400GB付近で負荷が高まり、1.6GB/s台に落ち込んだので、SLCキャッシュは10%程度に設定されている模様。
多分めっちゃNANDに書き込んでる。NAND書き込みのタイミングではデータ書き込みが0MB/sで止まっています。
負荷は50%ちょいと100%を繰り返すノコギリの刃状のグラフになっています。
状態はどんどん悪化して、ついには0MB/sと600MB/s台を繰り返すように。
負荷も70~100%と高くなっています。これ、コントローラの挙動というより、サーマルスロットリングが発生しているっぽい。
最終結果は平均書き込みが820MB/s、読み込みが1.12GB/s。
終わってみれば、決していいとは言えないけれど、悪くもない数字に収まったという。なんだこれ?
SLCキャッシュは10%程度と他メーカーに比べて少ない設定になっていますが、そうは言っても400GBあるわけですから、実運用で不足することはまずないかと。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkはファイルサイズが小さなファイルにおけるスループットを計測するベンチマークです。
4MBをピークとした山を描いています。過去にレビューしたSSDに比べて、8MB以降の落ち込みが大きいです。
HD Tune Pro
HD Tune Proではリードは出だしがいまいちですが、その後は安定。平均2,665MB/sとかなり高速。
ライトも出だしと終わり以外は安定していて、平均2,702MB/sと高速。
その他の計測結果は以下。
3DMark Storage Benchmark
3DMark Storage Benchmarkでは1128ポイント。
HP「FX900 Pro」も低かったので、両面実装という点がネックなのかも。
ファイル転送(書き込み)
ファイル転送は「DiskBench」を使って計測。
10GB(1GB×10)のファイル:3.555秒 (3052.161 MB/s)
100GB(1GB×100)のファイル:35.369秒 (2895.191 MB/s)
1TB(1GB×1000)のファイル:830.234秒 (1233.387 MB/s)
ほかのSSDと比べると10GB書き込みは早く、100GB書き込みは平均的、1TB書き込みは遅いという結果に。
h2testwでも見たように、1TBはSLCキャッシュの範囲を超えるため、時間がかかったようです。
温度について
FLIR ONE PROでの計測では、表面温度は最大102.6℃。…よく耐えたなぁ…これ、サーマルスロットリングが発生しているのでは…?
しかも、裏面の温度は測れていません。
センサー上では最大84℃。
警告しきい値が84℃なので、ぎりぎりというか、確実にサーマルスロットリングが発生していますね。
実温度が100度を超えるようでは耐久性にも不安がありますし、素のヒートシンクもない状態で高負荷がかかり続けるような運用には向いていないようです。
まとめ
「NE1N4TB」はソニー由来だけあってPhisonコントローラにBiCS5 NANDなど、コンポーネント単位でみればかなり期待できるものでした。
しかしながら両面実装であることも影響してか、ベンチマークスコアはいまいち振るわず、発熱もかなりやばい結果に。
…裏面の熱伝導シートが使えていれば、もうちょっとましだったのかなぁ…
感覚的な話になって申し訳ないのですが、サーマルスロットリングが発生しない程度の動作であれば、かなり高い水準での動作をするんじゃないかと。
しかしながら、裏面までしっかり冷やせる環境はなかなか用意が難しく。高床式というか、高さのあるSSDコネクタが実装されている、もしくは薄めの熱伝導シートで基板に熱を流しても大丈夫な構造である必要があります。
最適な環境構築の難易度も含めて、現状ではDRAMレスのYMTC系NAND搭載SSDよりも優先して選ぶほどではないでしょう(価格も高いですし)。
数少ない国産メーカーとして頑張ってほしいと思っていますし、次期モデルではぜひともこの点を克服した製品が出ることを期待しています。
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