最大80TOPS! ユリ電気商会「Kakip」はカメラ付きロボット開発向けの国産SBC

シングルボード

2024年10月7日、ユリ電気商会は国産初となるAI-SBC「Kakip」を発売しました。

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スペック

■ Kakip
CPURenesas RZ/V2H
メモリ8GB LPDDR4-1600
ストレージmicroSD
インターフェースUSB Type-C(電源)×1
USB 3.0×2
microSDXC
1GbE 有線LAN
wi-fiなし
電源12V/2.4A (DC Φ5.5/2.1)
サイズ85×56×20mm

特徴

「Kakip」の初発表は、2024年2月29日。SoCとなる「RZ/V2H」の発表時に、「RZ/V2H」搭載デバイスとして「Kaki Pi」という名称で発表されました。
その後、4月30日のブランドページオープンに合わせて、「Kakip」と名称変更をしています(調べてみたところ、当時の発表会場ですでに「えっ、読み方はカキピーじゃないの?」と言われていた模様)。

ちなみに販促品は柿ピー(横浜美濃屋あられ製造)です。

x.com

SoC

「Kakip」のSoCは、Renesas(ルネサス エレクトロニクス)製のAI-MPU「RZ/V2H」を採用。ルネサス製、つまりは国産SoCです。
RZシリーズ最上位となるSoCで、4コアの1.8GHz Cortex-A55(汎用プロセッサ)、2コアの800MHz Cortex-R8(リアルタイムプロセッサ)、200MHzのCoertex-M33(サブCPU)という、3種類のCPUコアに加え、NPUにDRP-AI3とOpenCVアクセラレーター(DRP)という、2種類のアクセラレータを搭載しています。

10TOPS/W、最大80TOPSというとんでもないAI推論能力を誇り、リアルタイムでの物体検出・判別と動作制御の両立が必要なロボット掃除機や産業用ピックアップロボット、自律自動走行車などをターゲットとしています。

「Kakip」の立ち位置も「AMR(自律走行搬送ロボット)やHSR(Human Support Robot)の開発向けのSBC」とされています。

ブロックダイアグラム図です。
オプションでGPU(Mali-G31)も搭載できるようですが、「Kakip」では非搭載です。

用途ゆえにアナログ周りに強いだけでなく、USBは3.2 Gen2対応で、PCIe Gen3 x4も持っていたりと、SoCとしての汎用性も高いですね。

参考 RZ/V2H:Renesas

「Kakip」におけるダイアグラム図。
SoCの持つインターフェースの中から厳選されています。
PCIeが1レーンなのはもったいないとも思いますが、そもそもロボット系で4レーンも使うことはなさそう。

ルネサスは2002年にNECから分社化したNECエレクトロニクスと、2003年に日立製作所と三菱電機の半導体事業が分社化・統合したルネサステクノロジが経営統合することで2010年4月に誕生した半導体企業です。
沿革や詳細については割と複雑なので、Wikipediaを参照してください。なかなかのボリュームで読みごたえがあります。

参考 ルネサスエレクトロニクス:Wikipedia

メモリとストレージ

「Kakip」のメモリは8GB LPDDR4-1600
ストレージはmicroSDを使用します。

メモリは当面は8GBモデルのみで、要望が多ければ4GBや2GBモデルも生産を検討するとのこと。

その他

無線LANはなし。
有線LANは1GbEです。

対応OSは、Yockt Linuxでしたが、要望が多く、Ubuntu 24.04(ただしYockt Liunxのカーネルベース)となっています。
ヘンテコですが、Renesas社提供のAI SDKとの兼ね合いによるものです。

また、ロボット開発用のライブラリ・ツール群であるROS2にも対応。ライセンスの関係で配布イメージには含まれず、自力インストールが必要となります。
とはいえ公式手順ですんなりインストールできるようです。

外観

本体はラズパイサイズの85×56mm
ぱっと見は普通のSBCっぽい雰囲気ですが、外向きのインターフェースが少なく、4つ並んだMIPI-CSIが目を引きます。
つまりは拡張なしに4台のカメラから入力できるわけですね。

インターフェース一覧です。
いかにも技術屋が書きましたって感じで、非常に見づらいです。順番もバラバラですし。
ここは他のSBCメーカーを見習った、見やすいものを用意してほしいなぁと。

モードスイッチ。
複数のモードが用意されていますが、Cortex-R8及びCortex-M33に適用可能なRTOSは今後提供予定とされ、記事執筆時点ではまだ使えません。

まとめ

「Kakip」の価格は59,800円

SBCとしてはかなり高額ですが、あくまで「個人でも買えるロボット開発ボード」的な立ち位置ですし、プロ向けツールと考えればこんなものでしょう。
単純比較はできませんが、100TOPSの「Jetson Orin NX」(約12万円)に比べれば相当に安価です。

そもそも「Kakip」を買う層はこの分野に詳しいというか、「ラズパイで開発してるけどAI処理が遅いのが不満」とか「カメラインターフェースが足りん」とか、すでに何らかの形で開発に携わっていて、かつ既存のSBCでは足りないって人がメインでしょう。
そう考えると決して高いとはいえず、最大80TOPSという高速さは画像解析系でも活躍しそうです。

関連リンク

公式サイト:Kakip
Kakip AI:github
オンラインマニュアル:github.io

販売サイト:秋月電子通商
販売サイト:マルツオンライン

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