2024年12月18日、SBCメーカーのRadxaは、世界初となるオープンソースのArm V9搭載マザーボード「Orion O6」を発表しました。
スペック

■ Orion O6 | |
CPU | CIX CD8180 |
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メモリ | 4~64GB LPDDR5-5500 |
ストレージ | M.2 Key-M(Gen4)×1 |
インターフェース | USB Type-C(Gen2)×2 USB 3.2×2 USB 2.0×2 HDMI 2.0 DisplauPort 1.4 eDP 5GbE有線LAN×2 オーディオジャック |
wi-fi | M.2 Key-E |
サイズ | 170×170mm |
特徴
「Orion O6」は、PC用ケースも利用できる、MiniーITX(170×170mm)フォームファクターのARMマザーボードです。
マザーボードですが、40ピンのGPIO、MIPI CSI、eDPなどSBCの要素も持ち合わせており、実際はMini-ITXサイズのSBCとでもいうものとなっています。
SoC
「Orion O6」のSoCはCIX CD8180(P1)。
CIX Technologyは2021年10月創業の新興企業で、低電力コンピューティングに注力したチップメーカーです。
CD8180(モデル名はP1)は2024年7月に発表した、CIX最初のチップとなります。
構成は、2.8GHzのCortex-A720が4コア(Bigコア)、2.4GHzのA720が4コア(Mediumコア)、1.8GHzのA520が4コア(LITTLEコア)の、合計12コア。グラフィックはArm Immortals G720 MC10。30TOPSのNPUも内蔵しています。
構成的に近いのは、Snapdragon 8 Gen 3。Cortex-X4(1コア)+A720(5コア)+A520(2コア)の8コア、グラフィックはAdreno 750、NPUは45TOPSです。
性能面では分かっている範囲で、DebianでGeekBench 6がシングル1255、マルチ6192、OpenCLが8630。
参考 The Radxa Orion O6 is a powerful ARM-based mini-ITX motherboard for tinkerers:QXDA
Snapdragon 8 Gen 3がシングル2290、マルチ7023、OpenCLが14842。
Snapdragon 8 Gen 2がシングル1991、マルチ5299、OpenCLが9064なので、性能的にはGen2とGen3の間くらいといったところでしょうか。
ほか、Snapdragon Xシリーズの中堅となるX1-42-100(Windows on ARM)がシングル2287、マルチ11063、OpenCLが9977。
Core i5-1235U(Windows、8GB×2)がシングル2225、マルチ6719、OpenCLが11522。
Intel N100(Windows、16GB×1)がシングル1189、マルチ3174、OpenCLが3301。
プラットフォームが違うので厳密には比較しづらいですが、少なくともIntel N100を大きく上回っていて、Windows on ARMが普通に動く程度の性能は持っているようです。
AI性能に関してはQwen2 1.5Bが30token/sで動作するとのこと。
あくまで性能指標であり、ChatGPTやGrokなどのような会話形式のやり取りを求めるのは厳しく(そもそも1.5Bはそんなに賢くない)、サーバー側のAIにデータを渡す前にある程度まとめるエッジAIや、人物・物体認識などの機能特化AIなら使えるって程度ですね。
メモリとストレージ
「Orion O6」のメモリは4GBから64GBのLPDDR5-6000。販売されているのは8GB~64GBです。
RK3588で32GBが出たと思ったら、ついに64GBまで来ました。
4チップ構成で、帯域は100GB/sオーバーとのこと。帯域まで公開しているのはAI向けでしょうか。
ストレージはM.2 SSD(Gen4 x4対応)のみ。microSDはありません。
AIをかなり意識した製品なので、速度の遅いmicroSDでは役に立たないと判断されたんじゃないかなぁと。
その他
無線LANはM.2 Key-E。Wi-fiカードは自分で用意する必要があります。
有線LANはデュアル5GbE。地味にネットワークが強い…
電源はATX24ピン、またはUSB PD。ある意味ここがデスクトップ機との最大の違いかも。
Mini-ITXなので、PCケースに組み込む場合はATX電源(もしくはSFX、Flexなど)を使え、SBC・ミニPC的なケースではUSB PDと使い分けられるようにしているのでしょう。
ちなみにUSB PDは65W(20V/3.25A)以上、両方同時に接続した場合はATX24ピンが優先されるそうです。
オープンソースというだけあって、ドキュメント類には回路接続図なども含まれています。
OSはDebianまたはFedora。将来的にはUbuntu、Android、Windowsにも対応する予定のようです。
外観
インターフェースです。
GPIOもありますが、PCIeスロットも持っています。
発表資料(※PDF)によると、PCIeは4.0を16レーン持っていて、PCIeスロットには8レーンが割り当てられているとのこと。
他のインターフェースの接続も示したダイアグラム図
セットのファンを装着したところ。
8420サイズ(84mm、20mm厚)となるようです。Mini-ITXになるとARM系の熱効率の良さがよく分かりますね。
AI Development Kitという名の、ケースとファンが用意されています。
他にPCIe to M.2 SSDアダプタや、PCIe to OCuLinkアダプタなども紹介されていますが、販売は確認できず。
まとめ
「Orion O6」の価格は以下の通り。ドル表記はALLNET.China、円表記はARACEから。
8GB :212ドル (32,700円)
16GB:252ドル (38,800円)
32GB:312ドル (48,100円)
64GB:462ドル (71,200円)
AI Kit:6,100円 (※ALLNET.Chinaの取り扱いなし)
結構高く見えますが、Snapdragon 8 Gen 2とGen3の間くらいの性能で、メモリ8GBが3.2万円って、GPUの性能差を差し引いてもかなりお安い気が。
メモリ64GBでも8GBとの差額は3.85万円。16GBの高密度チップを4つ使用と考えると、どうやってもこのくらいの差額にはなるでしょう。
さすがに64GBだと持て余しそうな気がしなくもないですが、これでWindows on ARMが動くようになったら、話が変わってきそうですね。
関連リンク
Radxa Orion O6:Radxa
ドキュメント類:Radxa
Orion O6販売ページ:ALLNET.China
Orion O6販売ページ:ARACE
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