【実機レビュー】Samsung 990 EVO Plus(4TB):2チップで4TBを実現した、高性能だけど爆熱なSSD

レビュー

2024年11月8日、Samsungは従来モデル「990 EVO」から性能を大幅に引き上げた「990 EVO Plus」を発売しました。

「990 Pro」とは違ってDRAMレスですが、最新の第8世代V-NANDを採用、「990 EVO」のリード最大5,000MB/sからリード最大7,250MB/sへと、7,000MB/sクラスに引き上げられました。

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スペック

■ Samsung 990 EVO Plus
容量1~4TB
接続PCIe Gen 4.0 x4/Gen 5.0 x2
NVMe 2.0
読込速度1TB:7,150MB/s
2TB:7,250MB/s
4TB:7,250MB/s
書込速度全モデル:6,300MB/s
NANDSamsung V-NAND TLC
キャッシュメモリなし
耐久性1TB:600TBW
2TB:1200TBW
4TB:2400TBW
保証5年

本体外観

外箱は「990 EVO」と同じ、濃いブルーを基調としたグラデーション。
代理店が張ったと思われるシールがデザインを台無しにしています。いや、ランサムウェア対策ソフトは重要ですけどね?

本体は紙製の箱に収まっています。
ネジやドライバーといった付属品はなし。

マニュアルはなぜか封をされています。

本体裏表。
この時点で分かるのは、4TBモデルなのに2チップだということ。

ちょっと予想外だったというか、さすが最新世代です。
これは8TBいけるんじゃないか?と期待していたら、2025年2月25日に8TBがラインナップされた「9100 PRO」が発表されました(8TBの発売は2025年後半)。

参考 Samsung Announces the 9100 PRO Series SSDs, with Breakthrough PCIe® 5.0 Performance:Samsung

裏面に銅板らしき超薄型のヒートシンクラベルが貼られています。

ラベルを剥がしたところ。
真ん中のスペースがもったいなく感じます。

コントローラーはSamsung Piccolo。型番は「S4LY022」で5nmプロセス製造です。
中身は6コアのCortex-R8で、最大4チャネルのNANDに、各チャネル2,400MT/sで接続できます。
「A3NXN1A S4LY022 ARM PICCOLO H2430」とあるので、24年30週製造っぽい。

参考 Samsung 990 Evo 1 TB:techpowerup

NANDは「SEC 434 K9DYGB8 J1BCCK0」
第8世代の236層 3D TLC NANDです。1Tb TLCで最大2.4Gbpsの転送速度を持つNANDを、1チップ当たり16層(1チップ当たり16Tb=2TB)重ねています。

参考 韓Samsung、236層の3D-NANDフラッシュメモリを量産開始:GNC
参考 サムスン電子、第8世代V-NANDを量産:Samsung

チェック環境

検証はLenovo「IdeaCentre Mini Gen8」と、システムとしてMonsterStorage「MS950(2TB)」を使用。
上がシステムSSD、下がレビューSSDです。

【レビュー】 Lenovo IdeaCentre Mini Gen8:パワフルで10万円を切る電源内蔵ミニPC

CrystalDiskInfoの情報です。規格容量は4000.7GB。
接続はGen4 x4、規格はNVMe 2.0。

実容量は3726.01GB
YMTC系は規格容量4096.7GB、実容量3815.43GBだったので、容量的にはちょっと渋めです。

歴史的経緯があるとはいえ、いい加減TiBで統一してほしいですね。

NVMeのバージョンは転送速度とはあまり関係がなく、そもそもが通信プロトコルの規格名です。なので、バージョンによって使えるコマンドセットや機能に差があります。
ざっくり調べた感じだと、NVMe 2.0ではZNS Command SetやKV Comman Setが追加され、HDDをサポートするように。
NVMってNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の頭文字(eはExpress)なのに、磁気ディスクをサポートとは…

ベンチマーク

ベンチマークはヒートシンクのない状態で計測しています。
自然空冷状態で、エアフローのしっかりしたデスクトップ機に比べると、若干不利な環境となります。
また、機材の限界として、7,000MB/s付近が上限となります

CrystalDiskMark

CrystalDiskMarkではサイズを1GiB・64GiBにして測定。

シーケンシャルでリード6,988MB/s、ライト5,850MB/sを記録。上記の通り、リードは機材の壁があるとして、ライトは仕様(6,300MB/s)に届いていません。

64GiB時の落ち込みはほぼなし。この辺りの作り込みはさすがSamsungと言えます。

4Kランダムのレイテンシ(1GiB時)は55.34μs。標準的なタイムです。64GiB時の落ち込みがほとんどないのが見事。
この辺りはCPU直結とか遅延要素を徹底的に排除しないと実力が見えないところなので、モバイル向けCPUならこんなものと言えるかと。

AS SSD Benchmark

AS SSD Benchmarkでは総合4963ポイントと5000ポイントに届かず。

h2testw

h2testwは、2GB/sに迫る1.96GB/sでスタート。瞬間的には2.1GB/sが出ていて、YMTC系SSDと同等の速度となっています。

400~500GB(10~12%)付近で負荷が40%→60%に。書き込み速度も1.3~1.4GB/sに落ち込みました。

その速度と60%前後の負荷を維持したまま、フィニッシュ。

トータルでは、書き込みは平均1.32GB/s、読み込みは平均1.04GB/sでした。
大きな落ち込みもなく最後まで走り切ったのは素晴らしいですが、読み込み速度はYMTC系SSDに負けています。

ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkはファイルサイズが小さなファイルにおけるスループットを計測するベンチマークです。
ライトは512KBから、リードは1MBからずっとピーク速度を保っています。

「990 EVO Plus」は細かいファイルの読み書きには強いようです。

HD Tune Pro

HD Tune Proでは全域ほぼフラットで、平均2,288MB/s。
アクセスタイムのばらつきが4段階くらいに分かれているのがちょっと気になるところです。

ライトはYMTC系のようにギザギザしていないものの、最後に落ち込みました。
アクセスタイム(下の黄色い点)は読み込みと違ってほぼ一直線で、安定して低レイテンシを保っています

その他の計測結果。

3DMark Storage Benchmark

3DMarkは2362ポイント。
だいたいYMTC系SSDの平均スコアくらいです。

ファイル転送(書き込み)

ファイル転送は「DiskBench」を使って計測。

10GB(1GB×10)のファイル:4,009秒 (2554.253 MB/s)
100GB(1GB×100)のファイル:37.404秒 (2737.675 MB/s)
1TB(1GB×1000)のファイル:582.727秒 (1757.255 MB/s)

ファイル転送(書き込み)では100GBがやや早く、1TBはかなり遅い結果に。
YMTC系が容量の約6割まで頑張る(その後一気に落ち込む)のに対し、「990 EVO Plus」は容量の10%を超えたくらいで低速になる(代わりに最後までその速度を維持)という、方向性の違いによるものでしょう。

なのでおそらく、10%以内(約400GB)まではYMTC系よりも高速に転送すると思われます。

温度について

温度はHWMonitorと、HWiNFOの2種類で調査。
どちらも3種類の温度センサーが見えています。一番高いのがコントローラー温度で、残り2つがNAND温度です。

センサー上はコントローラーが最大97度と爆熱

サーモグラフィーで見ると、最大95.2度でした。爆熱過ぎない?
立てた状態の測定だからSSDの熱による上昇気流で多少ましになっているけれど、平置きだと100度超えそう。

これ、サーマルスロットリングというか、温度上昇によって低速モードに切り替えられている可能性もありますね。

実運用時はヒートシンクなりファンなり、熱対策をした方が無難そうです。

まとめ

「990 EVO Plus」は爆熱に不安が残るものの、最新世代のNANDによって評判のいい「蝉族」と戦えるだけの性能を示しました。
特にランダムアクセスには強いようなので、ゲーミングなどでは強い力を発揮しそう。

「990 Pro」「990EVO」は王者陥落という扱いだったものの、「990 EVO Plus」でようやくかつてのSamsungが戻ってきた向きがあります。

4TBモデルの価格は4.5万円前後。YMTC系に比べればやや高いものの、管理ソフトやサポートといった、ハードウェア以外の部分での差を考えると、こんなものかと。
というか、Samsung製品としてはかなりの安値なんですよね。

耐久性にも一定の信頼がおけますし、冷却さえしっかりしておけば、メインSSDとして十分に働いてくれるでしょう。

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