【実機レビュー】SUUNTO AQUA:音楽を聴くだけじゃない、スマートイヤホンとでも呼ぶべき水中特化骨伝導イヤホン

レビュー

2025年3月21日、アドベンチャー・スポーツデバイスメーカーのSUUNTOは、水泳分析に特化した骨伝導イヤホン「SUUNTO AQUA」を発売しました。

がじぇっとりっぷは以前にレビューした「SUUNTO WING」を愛用していて、今回もレビューさせてもらえることになりました。

【レビュー】 SUUNT WING:アドベンチャーブランドが作るアウトドア向け防水骨伝導ヘッドホン
当レビューはメーカーより機材提供を受けたものですが、内容自由で書かせてもらっています。機材を提供いただいたSUUNTO様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
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SUUNTO AQUA

■ SUUNTO AQUA
Bluetoothバージョンv5.3
対応コーデックSBC、APTX Adaptive
ストレージ32GB
ドライバー径24.2×14.45mm
周波数20Hz-20kHz
感度120dB@1kHz -1.5VdBFS
マイク感度-38dB(1kHz)
S/N比62.5dB
バッテリー容量140mAh(本体)
450mAh(電源バンク)
バッテリー駆動時間約10時間(本体)
約30時間(電源バンク込)
充電時間約60分(本体)
急速充電5分充電で90分再生
充電端子USB Type-C(電源バンク)
防水&防塵規格IP68 水深5mで2時間(本体)
IP55(電源バンク)
重量約35g(本体)

GoodPoint
運動評価機能で音楽デバイスを超えたデバイスに
イコライザに水中モード
32GBメモリ内蔵
コンパクトになったバッテリースタンド

BadPoint
形状変更で角が耳に当たるように
スマートウォッチと組み合わせないと効果半減
充電完了が分からない

SUUNTについて

SUUNT(スント)は1936年に設立されたフィンランドのアドベンチャースポーツブランドです。

最初の製品は1936年の液体封入式コンパスで、フィールドコンパス、ダイビングコンパス、スポーツウォッチときて、現在ではスポーツウォッチ・スマートスポーツウォッチ、ダイブコンピュータを主力としています。

パッケージ

内容物
・イヤホン本体
・電源バンク
・充電ケーブル(約100cm)
・保管袋
・クイックスタートガイド
・安全に関する注意事項
・保証規定

ユーザーガイドはパッケージには入っておらず、Webで提供されます

操作について

設定
電源オン・オフ音量+を長押し3秒
ペアリングモード電源オフから音量+を長押し5秒
音楽
再生/停止MFB 1回押し
次の曲MFB 2回押し
前の曲MFB 3回押し
音量アップ音量+ボタン
音量ダウン音量-ボタン
通話
応答/終了MFB 1回押し
着信拒否MFB 長押し
機能
ヘッドジェスチャーMFBと音量-を同時長押し3秒
スイミングモード音量+と-を同時長押し3秒
オフラインモード音量-を長押し3秒
音声アシスタントMFB 長押し3秒
デュアルデバイスMFBと音量+を同時長押し3秒
リセット充電中にMFB 長押し5秒

「SUUNTO AQUA」は骨伝導イヤホンとしては一般的な、物理ボタン(MFB、Multi Function Button)と音量ボタンで操作します。

操作についてはSuuntoアプリからカスタマイズすることができます。

ヘッドジェスチャーでの操作は、通話と「次の曲」だけと限定されています。
ちなみに作業の合間に伸びをして首を回してたら次の曲になったので、機能のオンオフは使用シーンに合わせて適切に行った方がいいですね。

使ってみた

接続について

接続は特に問題なし。

対応コーデックは仕様表ではSBCとaptX Adaptiveとなっていましたが、SBCとAACでした。

変わっているのが、NFCでペアリングができること。
Bluetooth画面を開かなくても、スマホに当てるだけでペアリング操作を始められるのはちょっとだけ便利です。

電源バンクのUSB経由でPCにつなぐと、内部ストレージにアクセスできます。
泳いでいる最中はスマホを身に着けていないわけで、オフラインモードで内蔵メモリ(32GB)に入れた音楽を聴く形になります。

ちなみに転送速度は16MB/s前後でした。
GB単位でデータをコピーすると、結構時間がかかります。

アプリについて

「SUUNTO AQUA」はSuuntoアプリで管理できます。利用にはユーザー登録が必須です。
SuuntoアプリはSuuntoのスマートウォッチと連携してワークアウト(運動・トレーニング)を計測するのがメイン機能なので、ユーザー登録も仕方ないのかなぁとは思いますが、匿名での利用もできると嬉しいですね。

ユーザー登録の恩恵として、ワークアウトのデータはクラウド上に保存されるので、スマホを買い換えてもデータ移行の手間がないのはありがたいところ。

ヘッドセットはおまけ的な位置づけなので、アイコンをクリックした先に設定画面があります。

設定画面。「SUUNTO WING」ではかなり薄い内容でまさにおまけ程度でしたが、「SUUNTO AQUA」はやたら機能が充実しています。

ボタンのカスタマイズは電源オンオフやリセットなどの固定操作を除いて、設定できます。
が、必須操作を除けば操作手順が5パターンしかないので、どちらかというと本体で行う操作の取捨選択といった意味合いの方が強いです。

ファームウェアアップデート。

そしてここからが、「SUUNTO AQUA」の独自機能。

ジャンプ評価は、文字通りジャンプした高さを測定します。
下半身の筋力と神経筋疲労に関する情報ということで、ワークアウトの前と後に測定することで、疲労度を推定するということに使われるようです。

頸部可動性評価は上下左右と首をかしげる動きで、可動域を計測します。
こんなに細かくデータが取れるのかと驚きました。

そして本命、スイミングモード(音量+と-を同時3秒長押し)に切り替えると、ワークアウト測定を行います。
データの反映はワークアウト終了から数分かかります。

水泳で測定できるのは自由形(クロール)と平泳ぎのみ
頭の動きで自動的に泳ぎ方を判別しています。

取得したデータはこんな感じ。泳いだ時間や息継ぎ時の角度などが数値化されました。
SUUNTOのGPS内蔵スマートウォッチと合わせて使用すれば、泳いだ距離や泳ぐ速さも計測できます。

ちょっと困ったのが、内蔵メモリの扱い。
オフライン音楽モードでしかアクセスできないので、地上でBluetooth経由で曲を聴きながらプレイリストを整理する、みたいな使い方ができません。

おそらく機能的に排他の関係になっているのでしょうが、ちょっと不便です(まぁ、内蔵メモリに入れた曲を聴きながら作業すればいいだけなんですけど)。

かけ心地

「SUUNTO AQUA」のかけ心地は、今までレビューしてきた骨伝導イヤホンと、大きく変わるようなものではありません。
挟みこむ力は強くないので、頭痛につながるようなものでもないですね。それでいて頭を強く振ってもぶれることのない、絶妙な力加減です。

個人差はありそうですが、がじぇっとりっぷが許容できなかったポイントがひとつだけ。

「SUUNTO WING」と比較すると分かりやすいですが、赤丸で囲った部分が「SUUNTO WING」より太く、耳の付け根に当たります。またワイヤー部分のカーブが緩やかなので、こちらも耳の裏に当たります。
全体的に素材も固く、1時間ほど装着していると耳の裏や耳の付け根が痛くなってきます。

なので、かけ心地は「SUUNTO WING」より劣ると言わざるを得ません。

音質について

「SUUNTO AQUA」は24.2×14.45mmという大型のドライバーを内蔵しています。
「SUUNT WING」の22.1×13.15mmより一回り大きいです。

今まで使ってきた骨伝導イヤホンの中でも密着度合いの影響を受けやすいイヤホンなので、音楽を聴くときは一度ぎゅっと押さえつけて肌に密着させるといいでしょう

低音は弱め。
骨伝導イヤホンの宿命として、低音を強くすると接触面が震えてくすぐったいので、低音には限界があります。
「SUUNTO AQUA」の場合、音量を90%くらいにすると接触面が震え始めますが、音としては軽いです。

中音はクリアな音質。ボーカルを中心にノイズのない、聞きやすい音をしていますが、高級イヤホンほどの解像感はありません。

高音はのびやかなものの、地に足が付いた音とでも言えばいいのでしょうか。抜けるようなと表現するほどではありません。

全体としては「SUUNT WING」と同等か、やや劣るという印象でした。

「SUUNTO AQUA」のサウンドモードは「標準」「屋外」「水中」の3モードで、「屋外」は中音から高音にかけてを持ち上げるので、少しシャカシャカした音に。
中高音の解像度が上がりますが、ただでさえ存在感のない低音がさらに希薄になります。

「水中」は、さらにシャカシャカした音なので、陸上では聞けたものではありません。

そもそも水中で聞くと、中高音は減衰しやすく、遠くまで届く低音が強くなります。
「水中」モードを水中で聞くと、陸上で聞くより低音がずんずん響き、中高音は多重録音とかリバーブをかけたような、ややボケた音となり、全体ではやたら壮大な音になります。
がじぇっとりっぷはめっちゃ好みでした。

ただし解像度は著しく低下しますし、泳ぎながら聞くと息継ぎのたびに音が変わるので、音質よりも「泳いでいる時にも音楽がある」という点が重要かと。
世の大半のイヤホンは、防水はあっても「水中」モードはないので、音楽と呼べるかも怪しいレベルのひどい音になったりますからね。

音質はデバイス側のチップや再生ソフトなど、視聴環境によっても大きく変化します。また、聴き手の好みやジャンルによっても左右されます。
あくまでもレビュー者の個人的感想である点にご注意ください。
また、長時間にわたる大音量での視聴は聴覚障害を引き起こす可能性があります。

音漏れについて

「SUUNTO AQUA」はオープンイヤーのような音漏れ防止機能はないので、音量によっては普通に音漏れします
静かな環境かつ普段視聴する音量で、大体1m先くらいまでは音漏れしています。50cmくらいだと何を聞いているかも分かるくらいです。

ギターの弦を強くはじく音や、和太鼓のカカッという鋭い音は特に響きます。

ただ「SUUNTO AQUA」はそもそもアウトドアやスポーツで使うイヤホンなので、本来の利用シーンでは音漏れについて気に掛ける必要はないでしょう。

外観

「SUUNTO WING」は白地に黒と赤でキャッチ―でしたが、「SUUNTO AQUA」の外箱はややくすんだ色合いで、全面的に「水!」をアピールしています。

派手な色を好むアメリカ製品や、ポップなカラーで目を惹く中国製品とはまた違った雰囲気です。

底面にはシリアルナンバーと認証情報。
技適番号は217-241432でした。

参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(217-241432)

内箱を開けたところ。
「SUUNTO WING」の時も思いましたが、開けた瞬間がかっこいいんですよね。

再掲ですが、パッケージ全体。

同梱品

保管袋にはSUUNTOのロゴ入り。

充電ケーブルにもSUUNTOのロゴ入り。

紙類は3種類。

グローバル共通で、31か国語。

さすがは老舗メーカー、日本語もしっかりしていますし、フォントも完璧です。

電源バンクはコンパクトサイズ。

底面のボタンを押すと、カシュッと開きます。
こういうギミックはそのうち壊れそうだなぁと思いつつも、かっこいいので意味なく開け閉めしてしまいます。

電源バンクのバッテリー容量は450mAh。

本体

形状は一般的な骨伝導イヤホンと変わりありません。
側面にはNFCマークが付いています。

裏側にはバッテリーの仕様と認証情報。
「SUUNTO WING」は単独でも充電できるようになっていましたが、「SUUNTO AQUA」はPOGOピンで、電源バンク経由でしか充電できないようになりました。

コントローラ。
音量+側は電源ボタンも兼ねています。

通話マイクと、ENC(通話ノイズキャンセリング)に使うマイクの、2つのホールが開いています。

LEDランプはこの位置にあるのですが…

充電するとLEDランプが電源バンクで隠れるので、充電完了がいまいちわからないという…せめて見える位置にして欲しかった…

「SUUNTO WING」と比べると、電源バンクが小型化して、使い勝手が良くなっています。

スピーカーが大型化したのでハウジングも半回りほど大きくなり、ボタン形状が変更されています。
「SUUNTO WING」のボタンは0.5mmくらい飛び出していましたが、「SUUNTO AQUA」は飛び出しがほぼなくなっています。ボタン幅が広がったので押しにくいということはありません。

重さは本体34.8g、電源バンク込みで59.6gでした。

まとめ

「SUUNTO AQUA」は本体にセンサーを組み込むことで、これまで音楽を聴くデバイスだったイヤホンに、ワークアウト(運動)の評価機能を追加したことで、スマートイヤホンとでもいうべき新しいカテゴリの製品となっています。
正直なところ、イヤホンに他の機能を持たせるなんて考えたことがなかったので、レビューしていてとても新鮮でした。

でも考えてみればイヤホンって頭部に固定するものだから、頭部の動きを計測するセンサーデバイスとしては優秀なんですよね。

この手のデバイスでは先進的なAppleでもAirPodsのモーションセンサーを使って、現在はAppleWatchの機能である転倒や衝突の検知精度を向上させるという取り組みがある(そういう特許を取得している)ようですが、それをはるかに超える機能を搭載してきたことには素直に脱帽です。

「SUUNTO AQUA」の価格は定価32,880円
イヤホンとしては高額ですが、類似品の存在しないワークアウトデバイスとみなせば、このくらいしてもおかしくはありません。ついでに音楽も聴けます。

SUUNTのGPS対応スマートウォッチと合わせて完全体にしてみたい欲はありますが…そもそもろくに運動しないインドア派だからなぁ…

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