2025年5月26日、SBCメーカーのFriendlyELECはRockchip RK3576を搭載したSBC「NanoPi M5」を発売しました。
スペック

■ NanoPi M5 | |
CPU | Rockchip RK3576 |
---|---|
メモリ | 4GB LPDDR4X 8~16GB LPDDR5 |
ストレージ | M.2 Key-M UFS Socket MicrosD |
インターフェース | USB Type-C(電源)×1 USB3.0×2 HDMI 1GbE 有線LAN×2 オーディオジャック |
電源 | USB PD |
サイズ | 90×62mm (Case:94.5×68×30mm) |
特徴
「NanoPi M5」は「NanoPi M」シリーズの5番目…っぽく見えますが、実は「NanoPi M6」の方が先に発売されています。

正直欠番と思っていたので、まさか発売されるとは…という気持ちが大きいですね。
まぁ「NanoPi M6」はRK3588S、「NanoPi M5」はRK3576ということで、SoCのスペック順と考えれば、この並びは理解できます。
ちなみにM1~M6までを並べると以下のようになります。
M1(2016年):Allwinner H3
M2(2016年):Samsung S5P4418
M3(2016年):Samsung S5P6818
M4(2018年8月):Rockchip RK3399
M5(2025年5月):Rockchip RK3576
M6(2024年9月):Rockchip RK3588S


SoC
前述の通り、「NanoPi M5」のSoCはRockchip RK3576。
Banana Pi「BPI-M5 Pro」にも搭載されているSoCですね。

4コアのCortex-A72と4コアのCortex-A53からなる8コアCPUに、GPUはMali-G52 MC3、6TOPS(INT8)のNPUで構成されています。
位置づけ的にはRK3588とRK3399の間を埋めるSoCです。
RK3588 | RK3576 | RK3399 | RK3568 | |
---|---|---|---|---|
CPU | A76@2.2GHz×4 A55@1.8GHz×4 |
A72@2.2GHz×4 A53@1.8GHz×4 |
A72@1.8GHz×2 A53@1.4GHz×4 |
A55@1.8GHz×4 |
CPU-DMIPS | 93k | 58k | 30k | 20k |
GPU | G610 MC4@1.0GHz | G52 MC3@1.0GHz | T864@800NHz | G52 MC1@800MHz |
GFLOPS(FP32) | 512 | 145 | 103 | 39 |
NPU(TOPS) | 6.0 | 6.0 | 0.0 | 1.0 |
DRAM | LP4/LP4X-4266 LP5-5500 最大32GB |
LP4/LP4X-4266 LP5-4800 最大16GB |
DDR3/LP3-1866 LP4-1866 最大4GB |
DDR3/LP3-2133 DDR4/LP4/LP4X-3200 最大8GB |
Flash | eMMC5.1 HS400 | UFS2.0 eMMC5.1 HS400 |
eMMC5.1 HS400 | eMMC5.1 HS200 |
Video | D: 8K60 H264/H265/VP9/AVS2 D: 4K60 AV1 E: 8K30 H264/H265 |
D: 4K120 H264/H265/VP9 D: 4K120 AV1/AVS2 E: 4K30 H264/H265 |
D: 4K60 H264/H265/VP9 E: 2K30 H264 |
D: 4K60 H264/H265/VP9 E: 2K60 H264/H265 |
Display | 最大 8K/60 4K×3+2K×1 |
最大 4K/60 2.5K+2.5K+2K or 4K+2K |
最大 4K/60 4K+2.5K |
最大 4K/60 4K+2.5K+1080p |
Camera | ISP: 16MP×2 MIPI: 4lane×4 |
ISP: 16MP×1 MIPI: 4lane×2+DVP |
ISP: 14MP×2 MIPI: 4lane×2+DVP |
ISP: 8MP×1 MIPI: 4lane×2+DVP |
Connectivity | PCIe x5/USB3/Type-C×2 SATA GMAC×2 |
PCIe x2/USB3.1/Type-C×1 SATA×2 GMAC×2/CAN×2/I3C×2 |
PCIe x1/USB3/Type-C×2 | PCIe x3/USB3 SATA GMAC×2 |
Package | FCBGA1088L 23×23mm ballpitch=0.7mm |
FCCSP698L 16.1×17.2mm ballpitch=0.55mm |
FCBGA828 21×21mm ballpitch=0.65mm |
FCCSP636L 19×19mm ballpitch=0.65mm |
RK3588、RK3399、ついでに最近の下位であるRK3568と比較した表です。
CPU性能(DMIPS)はRK3399のほぼ2倍、GPU性能(TFLOPS)は、RK3399の1.5倍くらい。
AnTuTu(v10)は総合37万点、CPU10万点、GPU5.8万点くらいになるようです。
FriendlyELECによるAESベンチマーク。
おおよそRK3399の1.35倍、RK3588Sの2/3くらいですね。
NPUを内蔵しているので、LLM(大規模言語モデル)も動作します。
FriendlyELECのベンチマークでは、Gemma-2-9Bが4.03token/s、、Llama-3.1-8Bが3.8token/sくらいになったようです。
ブロックダイアグラム図。
ちょっと地味なポイントとして、UFS2.0に対応しました。何気にRK3588はUFS非対応なんですよね。
参考 RK3576:Rockchip ※PDF
メモリとストレージ
「NanoPi M5」のメモリは4GB LPDDR4X、または8/16GB LPDDR5。
LPDDR5を採用するSBCは「NanoPi M6」でも採用されていますね。SBC全体では「OrangePi 5 Ultra」などまだ一部に限られていますが、今後はDDR4系からの移行が進んでいくことでしょう。
ちなみに前述のLLMでは、4GBだと4Bくらいが限界で、8B/9Bは8GB以上が必要となります。

ストレージは非搭載で、M.2 key-M(2280サイズ)スロットとUFSソケット、そしてmicroSDスロットを持っています。
M.2 SSDはPCIe 2.1 x1接続なので、片方向500MB/s程度となります。
UFSソケットは、当ブログでは初めてですね。
見た目的にはeMMCソケットとそっくりですが、仕様にeMMCについての記載がないので、互換性はないものと思われます。
あと対応するUFSモジュールが売ってないので、当面は先取り規格扱いになりそうです。
その他
無線LANは非搭載。M.2 Key-Eスロットがあるので、好きなM.2 Wi-fiカードを使えます。
技適の制限がある日本だと嬉しい仕様です。
有線LANはデュアル1GbE。
電源はType-C。6~20VのUSB PD入力に対応します。
OSはAlpine Linux、Android 14 Tablet/TV、Buildroot、Debian 11 Desktop/12 Core、FriendlyWrt 21.02/23.05/24.10、OpenMediaVault、Proxmox VE、Ubuntu 20.04 Desktop/24.04 Core/24.04 Desktopに対応します。
多いな…
これまでの積み重ねの集大成のような対応具合です。
外観
インターフェースです。
GPIOは40ピンではなく30ピンとなっています。
画像だとメモリはこの手の製品で多いMicron製ではなく、Rayson(晶存科技)となっていますね。
Raysonは2016年設立の深センの企業で、組み込みストレージにメモリ、SSDなど半導体製品のメーカーです。
メタルケース。
左右側面の一部が非金属となっていて、Wi-fi/BTのアンテナモジュールを張り付けるスペースとなっています。
まとめ
「NanoPi M5」の価格は55ドル(記事執筆時レートで約8,000円)。メモリ8GBだと+10ドル、16GBだと+30ドル。
メモリ8GBでも1万円以下に収まります。
オプションのメタルケースは15ドル、Wi-fiキットが10ドルです。
8Bや9B程度までですがLLMが動作するデバイスが1万円以下というのは結構大きいですね。
安価に遊べるSBCとして有望な1枚だと思います。
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