【実機レビュー】WD_BLACK SN850X(4TB):両面チップが惜しい、見かけは普通、中身はド安定な定番SSD

レビュー

WD_BLACK SN850X」は、ストレージ老舗のWD(ウエスタンデジタル)が提供する、フラグシップSSDです。
発売は2022年8月とSSDとしては古めで、現在はWDの再編(HDD事業はWD、フラッシュメモリー事業はSanDisk)に伴い、SanDiskブランドで販売されています。

当レビューは自腹購入です。
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スペック

■ WD_BLACK SN850X
容量1~8TB
接続PCIe Gen 4.0 x4
NVMe 1.4
読込速度7,200~7,300MB/s
書込速度6,300~6,600MB/s
NANDKIOXIA BiCS5 TLC NAND
DRAM1TB:1GB
2~8TB:2GB
耐久性1TB:600TBW
2TB:1200TBW
4TB:2400TBW
8TB:4800TBW
保証5年

本体外観

WD_BLACKのブランド名通り、外箱は黒を基調とし、高級感とゲーミング感があります。

中身は本体とマニュアル。
ネジなどの付属品はありません。

本体裏表。
「SN850X」は1/2TBは片面実装、4/8TBは両面実装となります。
電源管理コントローラーは裏面に配置されています。

なお、ラベルシールはただのシールです。

シールをはがしたところ。DRAMが実装されているので、表側のNANDは2チップです。

ヒートシンクを剥がす行為は保証がなくなる可能性が高いです。必要がない限り、安易に実行しないようにしましょう。

コントローラーは「SanDisk A101-000292-B2」。
「SN850X」は発売当初は「20-82-20035-V2」でしたが、途中で変更されています。
SanDiskはコントローラの詳細を公開していないため、内容については不明です。

DRAMは2GB LPDDR4
最近ではPC側のメモリの一部を利用するHBMが主流になりつつありますが、ハイエンド系では性能の一貫性を保つために、今でもDRAMを搭載することが多いです。

NANDはKIOXIA(旧東芝メモリ)製の「BiCS6」で、162層 3D TLC NANDです。
これも発売当初の112層 TLC NANDの「BiCS5」から変更されています。

チェック環境

検証はLenovo「IdeaCentre Mini Gen8」と、システムとしてMonsterStorage「MS950(2TB)」を使用。
上がシステムSSD、下がレビューSSDです。

【レビュー】 Lenovo IdeaCentre Mini Gen8:パワフルで10万円を切る電源内蔵ミニPC

CrystalDiskInfoの情報です。規格容量は4000.7GB。
接続はGen4 x4、規格はNVMe 1.4。

実容量は3726.01GB。Samsungと同じですね。
YMTC系は規格容量4096.7GB、実容量3815.43GBだったので、容量的にはちょっと渋めです。

というか、HDDの時代から続く容量の齟齬(1kB=1024byteではなく、1kiB=1000byteで容量を設定する)を引き摺っているのって老舗メーカーばかりなんですよね。

NVMeのバージョンは転送速度とはあまり関係がなく、そもそもが通信プロトコルの規格名です。なので、バージョンによって使えるコマンドセットや機能に差があります。
ざっくり調べた感じだと、NVMe 2.0ではZNS Command SetやKV Comman Setが追加され、HDDをサポートするように。
NVMってNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の頭文字(eはExpress)なのに、磁気ディスクをサポートとは…

「SN850X」というかWDのSSDには「Sandisk Dashboard」(旧WD Dashboard)という管理アプリが用意されています。
SSDの基本ステータス確認、ファームウェア更新、書き込みキャッシュの無効化などが行えますが、ゲーミングモードなどのモード設定はありません。

2025年5月12日追記:指摘を受けて確認したところ、ゲーミングモードはありました。確認不足申し訳ありません。

「SN850X」は「ゲームモード2.0」に対応しています。
先読みして⾼速ロードを可能にする「ロード予測機能」や、⾼温時でも⾼いスループットの維持を図る「適応型サーマルマネジメント機能」、特定フォルダのゲームが起動されると自動的にゲームモードとなるオートモードなどの機能があります。

参考 ソフトウェアのダウンロード:サンディスク サポート

ベンチマーク

ベンチマークはヒートシンクのない状態で計測しています。
自然空冷状態で、エアフローのしっかりしたデスクトップ機に比べると、若干不利な環境となります。
また、機材の限界として、7,000MB/s付近が上限となります

CrystalDiskMark

CrystalDiskMarkではサイズを1GiB・64GiBにして測定。

シーケンシャルでリード6,847MB/s、ライト6,645MB/sを記録。リードが思ったように伸びません。

テストサイズを64GiBに変更しても速度の落ち込みはあまり見られず、性能を維持していることが分かります。

4Kランダムのレイテンシ(1GiB時)は55.76μs
高性能モデルはだいたい50μs台なので、平均的なタイムです。

64GiB時も安定したレイテンシとなっています。

AS SSD Benchmark

AS SSD Benchmarkでは総合6066ポイントと、高いスコアを記録。
大きな要因がランダムライトとアクセスタイムの速さであり、これはSK hynix「Platinum P41」などDRAM搭載SSDに見られる傾向です。

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h2testw

h2testwは、2.3GB/sでスタート。7,000MB/sクラスは2.2~2.3GB/sスタートが多く、ハイエンドSSDとしては問題のない速度です。

1.2TB付近でSLCキャッシュが切れたのか、負荷が跳ね上がり、速度がやや落ち込みます。

その後は書き込みとキャッシュ復活を繰り返し、書き込み速度がデコボコに。
書き込みに合わせて負荷も60~90%をうろうろしています。

その速度と負荷を維持したまま、フィニッシュ。

トータルでは、書き込みは平均1.27GB/s、読み込みは平均1.75GB/sでした。
DRAM搭載でもオールSKhynix製の「Platinum P41」やオールSamsungな「990 EVO Plus」は最後まで中速(1.4~1.6GB/s)を維持、NANDにBiCS5を採用しているNextorage「NE1N4TB」は「SN850X」と同じようにかまぼこを連ねた形になっているので、NANDの特性かもしれません。

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ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkはファイルサイズが小さなファイルにおけるスループットを計測するベンチマークです。
リード・ライトともにピークは2MBですが、大きな落ち込みもなく綺麗なグラフとなっています。

HD Tune Pro

HD Tune Proでは全域ほぼフラットで、平均2,037MB/s。
アクセスタイム(下の黄色い点)もばらつきが少なく、DRAM搭載SSDらしい結果です。

ライトはなぜか後半が伸びていますが、ギザギザとしたグラフにもならず、きれいなラインを描いています。

その他の計測結果。
ランダムライトがややばらついているものの、それ以外は最初から最後まできれいなグラフとなっていて、安定した性能を出せることが示されています

3DMark Storage Benchmark

3DMarkは2328ポイント。
Samsung「990 EVO Plus」に近い高スコアです。

ファイル転送(書き込み)

ファイル転送は「DiskBench」を使って計測。

10GB(1GB×10)のファイル:2.757秒 (3714.182 MB/s)
100GB(1GB×100)のファイル:40.406秒 (2534.277 MB/s)
1TB(1GB×1000)のファイル:426.561秒 (2400.595 MB/s)

ファイル転送(書き込み)では10GBは最速クラス。
100GB/1TBは最速ではないものの、安定して高速で書き込み出来ています。

温度について

温度はHWMonitorと、HWiNFOの2種類で調査。
意外なことに、どちらも温度センサーの表示は一つだけ。ハイエンドモデルだし、コントローラー、DRAM、NANDでセンサーがあると思っていましたが、一番高温になるコントローラーだけのようです。

センサー上はコントローラーが最大92度まで上昇しています。

「SN850X」の警告温度は90℃なので、しきい値は普通に超えてしまう模様。
しかし、臨界温度(94℃)は超えないようになっているようです。

サーモグラフィー(FLIR ONE Pro)で見ると、最大91.4度でした。
100度を超えるような爆熱SSDに比べればましですが、割と高温寄りですね。
センサー温度より低いのは意外でしたが、どうやらWDはセンサー温度をほんの少し高く出して、早めに制御を入れるというスタンスを取っているようです。まぁそれでも、実温度も警告温度を超えちゃうわけですが。

冷却面で不利な両面実装であることも、このような設計になっている一因かもしれません。

まとめ

「SN850X」は、ピーク性能で言えば他の7,000MB/sクラスと変わらない程度で、何か劇的なことがあるわけでもなく、思ったより普通だなぁという感想が思わず出てしまいます
一方でアクセス速度や書き込み性能は安定していますし、高い耐久性(4TBで2400TBW)、比較的長めの保証(5年)もあるので、そこはフラグシップらしいなぁと。

高負荷時の温度と、両面実装なので干渉しやすいという点がマイナスポイントですが、干渉せずに挿し込め、かつ十分に冷却することができる環境であれば、安定した速度を出せるでしょう。

価格的には中華SSDよりワンランク上になってしまいますが、それだけの差はしっかり持っているSSDと言えます。

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