2025年5月21日、NASメーカーのSynologyは、ストレージ内蔵パーソナルクラウドデバイス「BeeStation Plus(型番:BST170-8T)」を発売しました。
Synologyは安定したパフォーマンスと信頼性を確保する(おそらく実情は粗悪なHDDによるトラブルを排除する)ため、2025年発売の製品から順次、純正HDD(中身はWDまたはSeagateのHDDに独自ファームウェアを適用したもの)以外を使用すると制限がかかるようになっています。
「IronWolf」をはじめとしたNAS向けHDDも排除される(管理システムのインストールすらできなかったという報告あり)ため、海外でも否定的な声が多く出ています。
なので、がじぇっとりっぷではSynology製NASの新製品の紹介を控えていたのですが、「BeeStation Plus」はそもそもHDD内蔵でこの問題とは無縁なので紹介です。
スペック

■ BeeStation Plus | |
CPU | Celeron J4125 |
---|---|
メモリ | 4GB DDR4 |
ストレージ | 8TB HDD |
インターフェース | USB Type-C(Gen1)×1 USB3.2 Gen1×1 1GbE 有線LAN×1 |
電源 | 36Wアダプタ |
サイズ | 148×62.6×196.3mm |
重さ | 1.3kg |
特徴
「BeeStation Plus」は無印の「BeeStation(BST150-4T)」の上位版で、筐体はそのままにCPUやメモリ容量が強化されています。
「BeeStation」シリーズは「パーソナルクラウドストレージ」がコンセプトで、「ストレージやネットワークに関する高度な知識がなくても、一般のユーザーがクラウドのような環境を活用できる」と謳っています。
外部インターネットからはSynology社の専用リレーサーバーを中継してアクセスする仕組みになっており、ポート解放やDDNSを意識することなく外から使えるとのこと。
仕組み上、専用リレーサーバーがダウンしていたらインターネット経由でアクセスできなくなるわけですが、サービス稼働状況は可視化されています。
参考 Synology サービスの状態:Synology
CPU
「BeeStation Plus」のCPUはCeleron J4125。
Celeron系で2世代前、2019年Q4発表と結構古めなGemini Lake Refresh世代のCPUです。
しかし、NASシリーズのようにアプリを入れて~という使い方ではなく、ファイル管理と同期、バックアップ(スナップショット)くらいなので、これでもオーバースペック気味かも。
一応、Plex Media Serverが組み込まれているので、メディアサーバー機能まで使うのであれば意味はあるかなぁと。
無印「BeeStation」(Realtek RTD1619B)と比較して、画像のバックアップは2.6倍、デスクトップアプリによる同期は4.8倍高速になったとのこと。
メモリとストレージ
「BeeStation Plus」のメモリは4GB DDR4。前述のようにアプリを入れて~という使い方ではないので、4GBもあれば十分です。
ちなみに「BeeStation」は1GBです。
ストレージは8TB HDD。最初から組み込まれていて、交換は…やってやれないことはなさそうですが、NASシリーズと違ってOSも公開されていませんし、ハードルは高そう。
というか、もっと大容量が欲しいなら素直にNASシリーズの方を使うべきですね。
その他
無線LANは非対応。
有線LANは1GbEが1ポート。
今どきの製品なら2.5GbEでも良さそうですが、製品コンセプト的に数十GBを一気に流すような使い方はしなさそうなので、1GbEでも足りるのでしょう。
消費電力はアイドル時2.83W、アクセス時14.75W。
電源アダプタは36Wなので、かなり余裕を持たせていますね。
セットアップはBeeStation用のポータルから行います。
利用するにはSynologyアカウントの作成が必要ですが、GoogleアカウントもしくはApple IDでもサインインできます。
セットアップの時点で前述の専用リレーサーバーとの紐づけが完了するので、以降はWi-fi/インターネットの区別なくアクセスできるようになります。
アプリは「BeePhotos」「BeeFiles」の2つのアプリがAndroid/iPhoneで用意されています。
PCからは「BeeStationデスクトップアプリ」がWindows/macOSに用意されています。
解説記事を見る限りクラウド感が強く、例えば「BeePhotos」では写真の自動アップロードのほか、写真を日付のほかにタグや(位置情報が付与されていれば)撮影場所で分類もできます。
さらに共有アルバムのURL発行や、逆に友人や家族がアップロードできるように一時URLの発行も可能。
「BeeFiles」ではプレビュー機能でPDFやOffice文書も開けます。
ただし、「BeePhotos」「BeeFiles」ともに管理機能はあっても編集機能はありません。
なお、「BeeStation」の使い方については、INTERNET Watchの連載記事が一番詳しいかと。
参考 自宅Wi-Fiの“わからない”をスッキリ! 2024年 記事一覧:INTERNET Watch
外観
見た目的にはちょっとおしゃれな外付けHDDケースといった感じ。
CPUやメモリなどの載った基板が入るので、サイズ的には外付けHDDケースより一回り大きい程度になります。
インターフェースはすべて背面。
USBでバックアップ用のHDDを増設することもできます。
調べた限りではバックアップという形でデータを移すことで実質的な容量追加にはなるものの、直接的な容量増加にはならない(共有機能などの対象から外れる)ようです。
ちょっと画面は小さいですが、底面。
QRコードからはシリアルナンバーが入力された状態でBeeStation用のポータルにアクセスできるので、セットアップの手間が一つ省けます。
まとめ
「BeeStation Plus」の価格はAmazonで71,928円。
4TBの「BeeStation BST150-4T」が35,309円なので、容量2倍だから価格も2倍、くらいの感覚で値付けしている気がします。
8TBのNAS向けHDDは3万円台半ば~後半なので、本体と中継機能等のサービス(しかも永続!)が3万円台と考えれば高くはないんですけどね。
さらにいうと、クラウドストレージサービスの料金(例えばDropboxは2TBで年14,400円、iCloudは2TBで年18,000円、Google Driveは2TBで年13,000円)を考えると、8TBでさらに買い切り型で7万円ちょっとというのは、そこまで高いものではないとも言えます。
それでもやっぱり高いなと感じるのなら、4TBになりますが「BeeStation BST150-4T」を選べばいいかと。
知識があるのならばミニPCに好きな容量のHDDを組み合わせて、TrueNASやOpenMediaVault、RockstorなどのNAS OSを入れるという方法も選べますが、継続的な運用管理も必要となりますし、そこまでできる人はほんの一握りでしょう。
データのバックアップなのだから、不安要素を排除した運用をしたいところです。
関連リンク
公式製品ページ:Synology
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