2025年1月16日、HPはRyzen AI Max PROシリーズをを搭載したミニワークステーション「Z2 Mini G1a」を発表しました。
発表当初より5月以降発売とされており、予定通り5月30日ころに発売されました。
スペック

■ Z2 Mini G1a | |
CPU | Ryzen AI MAX+ PRO 395 Ryzen AI MAX PRO 390 Ryzen AI MAX PRO 385 Ryzen AI MAX PRO 380 |
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メモリ | 16~128GB LPDDR5x-8000 |
ストレージ | 512GB~4TB NVMe SSD |
インターフェース | USB Type-C(USB4)×2 USB Type-C(Gen2)×1 USB3.2 Gen2×3 USB2.0×2 miniDisplayPort 2.1×2 2.5GbE 有線LAN×1 オーディオジャック |
電源 | 内蔵300W |
サイズ | 168×200×86mm |
重さ | 2.3kg |

特徴
「Z2 Mini G1a」はGMKTek「EVO-X2」に次ぐ、2番目の国内で購入できるRyzen AI Max搭載ミニPCです。
ノートPC/タブレットPCだと、ASUS「ROG Flow Z13 (2025) GZ302」やHP「ZBook Ultra G1a」が発売されています。

CPU
「Z2 Mini G1a」のCPUはRyzen AI Max PROシリーズのRyzen AI MAX+ PRO 395、Ryzen AI MAX PRO 390、Ryzen AI MAX PRO 385、およびRyzen AI MAX PRO 380。
ワークステーションなのでセキュリティ面の充実したPROシリーズとなっています。
コードネームはStrix Haloで、Ryzen AI MAX+ PRO 395の場合16コア32スレッドのZen5アーキテクチャCPUに、40CU(コンピュートユニット)のRDNA3.5グラフィックスで構成されるRadeon 8060Sを内蔵しています。
また、NPUとして50TOPSのXDNA2を内蔵。
Ryzen AI 9 HX 375が16CUなので、単純計算で2.5倍のグラフィック性能となります。
Ryzen 7 8845HS(12CU)比だと、3.3倍ですね。
TDPは55W、cTDPは45~120Wです。
他のCPUも含めると、コア/スレッド数とCU数は以下の通り。
Ryzen AI MAX+ PRO 395:16コア32スレッド、40CU (Radeon 8060S)
Ryzen AI MAX PRO 390:12コア24スレッド、32CU (Radeon 8050S)
Ryzen AI MAX PRO 385:8コア16スレッド、32CU (Radeon 8050S)
Ryzen AI MAX PRO 380:6コア12スレッド、16CU (Radeon 8040S)
PROではないRyzen AI Max+ 395のデータとなりますが、CPUスコアはTDP55Wながら、名だたるデスクトップ向けCPUと並んでいます。
デスクトップ向けコアをモバイル向けにパッケージングしたRyzen 9 7945HXには(おそらく電力配分の関係で)やや及びませんが、モバイル向けCPUとしては圧倒的な性能と言えるでしょう。
圧巻なのが、グラフィック性能。
ざっくりですが、デスクトップ向けのRTX 3060とRTX 4060の間、RTX 4060寄りのスコアを叩き出しています。
「EVO-X2」のベンチマークも出始めていますが、おおよそこの評価で問題なさそうです。
CPU内蔵グラフィックとしては断トツの性能ですね。
さらに、Ryzen AI MaxシリーズはLPDDR5Xのみの対応。換装不可のデメリットと引き換えに、256GB/sのメモリ帯域幅を実現したユニファイドメモリを採用、最大96GBまでをVRAMとして割り当てられます。
つまり、VRAM量が重要要素であるLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)において、大きなアドバンテージを持っているわけです。
例えばRTX 4090のVRAMは24GB。
ざっくりですが、30b(300億パラメータ)の4bit量子化モデル(Q4_K_M)くらいまでがメモリに載る限界です。
性能のいい70b(700億パラメータ。メモリを50GBくらい使う)だとVRAMに乗り切らず、性能が大幅に落ち込みます。
Ryzen AI Max+ PRO 395の場合、これが割り当てたVRAM上に載ってしまうので性能低下が起こらず、「EVO-X2」を発売したGMKTecによると、Llama 3 70bではRTX 4090の2.2倍の速度とされています。
記事執筆時点で最新のLlama-4-Scoutは、4bit量子化モデル(Q4_K_M)でも60GB前後、2bit量子化でも40GB前後が必要となるので、どうやってもRTX 4090のVRAMには乗り切らず、Ryzen AI Max+ 395の方が早くなると思われます。
ただし記事執筆時点ではROCm for Windowsの整備が間に合っておらず、Ryzen AI Max+Windowsで生成AI/LLMを使用するのは手探り状態です(動いた報告はあるものの、開発版ドライバを使うなど手動の手順が多い)。
また、画像生成AIだとRTX 3060にも負ける程度の速度しか出ないなど、現状ではソフトウェア面の最適化待ちとなります。
メモリとストレージ
メモリは16GBから128GBのLPDDR5x-8000。CPUによって選べる容量が変わります。
ストレージは512GBから4TBのM.2 NVMe SSD。規格は書いていませんが、さすがにGen4 SSDでしょう。TLC NANDであることが明記されています。
その他
無線LANについては仕様表に記載がありませんが、Wi-Fi 7とされています。
有線LANは2.5GbEが1ポート。チップはRealtek RTL8125BP-CG。
電源は内蔵300Wで、変換効率92%の80 Plus Platinum電源とされています。
あとUSB 320 キーボードとUSB 128 レーザーマウスを同梱します。
外観
本体です。
前面はエアフローが多く静圧が低下する3Dメッシュデザインとなっています。
168×200×86mmなので、ミニPCと呼ぶにはかなり大柄なサイズです。
前面と背面。
HPロゴが回転していることが分かります。
1. フレックスI/O x 2
2. Mini DP 2.1 UHBR10 x 2
3. イージーアクセスラッチ
4. セキュリティロック
5. USB2-A x 2
6. USB3-A 10Gbps x 2
7. USB4-C 40 Gbps/TBT4
8. 電源ユニット
9. 2.5xGbE AMT x 1
1. オーディオジャック
2. USB-C 10 Gbps / DP Altモード
3. USB-A 10 Gbps
前面は電源ボタンだけで、インターフェースは背面とサイド(縦置き時は天面)に存在。
HDMIはなく、miniDP×2なのがいかにもワークステーションですね。miniDP to DPの変換アダプタ1本が付属します。
フレックスI/Oポートは現在のところカスタマイズオプションはありません。将来的には10種類のオプションが計画されているようです。
あとちょっと気になっているのがType-Cポート。USB4ではなくThunderbolt4と記載されている点。
Thunderbolt4はIntelとAppleが共同開発した規格で、仕様は公開されましたがAMDシステムでの採用はほとんどなく、互換性のあるUSB4であることが多いです。
TB4でないと動かないデバイスもある(USB4よりTB4の方が要件が厳しい)ので、本当にTB4だったらいいですね。
内部イメージ。
筐体前後の部分を見る限り、ボード上部の高さには結構余裕があるので、かなり大型の冷却構造が入りそうです。
ワークステーションというぶん回す前提のマシンなので、静音性にも力が入っている…といいなぁ…
見づらいですが別角度からの内部イメージ。
手前にM.2 SSDが2スロットあり、その下に電源ユニットらしきものが見えています。
筐体は4Uに5台納まる、ラックサイズで設計されています。後ろに並んでいるのはリモートシステムコントローラです。
BIOSでも「パフォーマンスモード」「静音モード」に加えて「ラックモード」が用意されているそう。
まとめ
「Z2 Mini G1a」の価格は279,400円から。
といってもこの価格はRyzen AI Max PRO 380/16GB/512GBモデル。
Ryzen AI Maxシリーズを買い求める層向けのRyzen AI Max+ PRO 395/128GBモデルは679,800円から。
さすがワークステーションのZシリーズ、コンシューマ向けの「EVO-X2」の2倍以上の価格です。
その代わり業務向けのワークフローに耐えうる設計、リモートシステムコントローラへの対応、3年という長期保証(5年まで延長可能)だったりと、作りとサポートは一段以上上のものとなっています。
もとよりRyzen AI Maxシリーズがマニア向けスペックのため、大手メーカーがコンシューマー向けに出すのは難しいんだろうなぁとは思いますが…静音性に重きを置いた30万円前後のミニデスクトップとか出してくれないかなぁ…
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