2025年4月28日、SBCメーカーのRadxaは、Rockchip RK3576を搭載したSBC「ROCK 4D」を発表、5月23日に発売しました。
スペック

■ ROCK 4D | |
CPU | Rockchip RK3576 |
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メモリ | 2~16GB LPDDR5-4800 |
ストレージ | eMMC/UFS モジュール microSD |
インターフェース | USB 3.0×2 USB 2.0×2 HDMI 2.1 1GbE 有線LAN×1 オーディオジャック PCIe 2.1 x1 |
無線LAN | Wi-fi 6/BT5.3 |
サイズ | 87×58mm |
電源 | Type-C:5V/2~5A |
特徴
「ROCK 4D」は「ROCK 4」シリーズの4番目…ではなく、多分6番目の「ROCK 4」シリーズとなります。
最初は無印でRK3399搭載の「ROCK Pi 4 A/B」(この頃はまだ「Rock Pi」という名称で、のちに「ROCK 4A/4B」となる)。

その後、インターフェースがラズパイ4風になった「ROCK Pi 4C」「ROCK Pi 4C+」、SoCをRK3399‑Tにして価格を下げた「ROCK 4 SE」が登場しています。


「ROCK 4D」はFriendlyELEC「NanoPi M5」と同じく、Rockchip RK3576を搭載するSBC(シングルボードコンピューター)です。

SoCは同じですがボードの性格というか雰囲気は全く違っていて、「NanoPi M5」が長辺にインターフェースを集めたPCライクなスタイルに対し、「ROCK 4D」はラズパイ3に近いインターフェース構成となっています。
CPU
「ROCK 4D」のSoCは、前述の通りRockchip RK3576。オプションで産業向けのRK3576J(RK3576と比べると動作温度の範囲が0~50℃→-40~85℃となる)にすることもできるようです。
これまでの「ROCK 4」シリーズはRK3399とその派生モデルが使われていたので、「ROCK 4」シリーズとして初めて非RK3399系となります。
…これ、「ROCK 5」シリーズにRK3568系を使ったので、その下位となるRK3576を「ROCK 6」とは出来なくて、仕方なく「ROCK 4」シリーズとしている感がありますね。
RK3576は4コアのCortex-A72と4コアのCortex-A53からなる8コアCPUに、GPUはMali-G52 MC3、6TOPS(INT8)のNPUで構成されています。
位置づけ的にはRK3588とRK3399の間を埋めるSoCです。
RK3588 | RK3576 | RK3399 | RK3568 | |
---|---|---|---|---|
CPU | A76@2.2GHz×4 A55@1.8GHz×4 |
A72@2.2GHz×4 A53@2.0GHz×4 |
A72@1.8GHz×2 A53@1.4GHz×4 |
A55@1.8GHz×4 |
CPU-DMIPS | 93k | 58k | 30k | 20k |
GPU | G610 MC4@1.0GHz | G52 MC3@1.0GHz | T864@800NHz | G52 MC1@800MHz |
GFLOPS(FP32) | 512 | 145 | 103 | 39 |
NPU(TOPS) | 6.0 | 6.0 | 0.0 | 1.0 |
DRAM | LP4/LP4X-4266 LP5-5500 最大32GB |
LP4/LP4X-4266 LP5-4800 最大16GB |
DDR3/LP3-1866 LP4-1866 最大4GB |
DDR3/LP3-2133 DDR4/LP4/LP4X-3200 最大8GB |
Flash | eMMC5.1 HS400 | UFS2.0 eMMC5.1 HS400 |
eMMC5.1 HS400 | eMMC5.1 HS200 |
Video | D: 8K60 H264/H265/VP9/AVS2 D: 4K60 AV1 E: 8K30 H264/H265 |
D: 4K120 H264/H265/VP9 D: 4K120 AV1/AVS2 E: 4K30 H264/H265 |
D: 4K60 H264/H265/VP9 E: 2K30 H264 |
D: 4K60 H264/H265/VP9 E: 2K60 H264/H265 |
Display | 最大 8K/60 4K×3+2K×1 |
最大 4K/60 2.5K+2.5K+2K or 4K+2K |
最大 4K/60 4K+2.5K |
最大 4K/60 4K+2.5K+1080p |
Camera | ISP: 16MP×2 MIPI: 4lane×4 |
ISP: 16MP×1 MIPI: 4lane×2+DVP |
ISP: 14MP×2 MIPI: 4lane×2+DVP |
ISP: 8MP×1 MIPI: 4lane×2+DVP |
Connectivity | PCIe x5/USB3/Type-C×2 SATA GMAC×2 |
PCIe x2/USB3.1/Type-C×1 SATA×2 GMAC×2/CAN×2/I3C×2 |
PCIe x1/USB3/Type-C×2 | PCIe x3/USB3 SATA GMAC×2 |
Package | FCBGA1088L 23×23mm ballpitch=0.7mm |
FCCSP698L 16.1×17.2mm ballpitch=0.55mm |
FCBGA828 21×21mm ballpitch=0.65mm |
FCCSP636L 19×19mm ballpitch=0.65mm |
RK3588、RK3399、ついでに最近の下位であるRK3568と比較した表です。
CPU性能(DMIPS)はRK3399のほぼ2倍、GPU性能(TFLOPS)は、RK3399の1.5倍くらい。
AnTuTu(v10)は総合37万点、CPU10万点、GPU5.8万点くらいになるようです。
Radxaではベンチマークを公開していないものの、FriendlyELECによるAESベンチマーク。
おおよそRK3399の1.35倍、RK3588Sの2/3くらいですね。
NPUを内蔵しているので、LLM(大規模言語モデル)も動作します。
FriendlyELECのベンチマークでは、Gemma-2-9Bが4.03token/s、、Llama-3.1-8Bが3.8token/sくらいになったようです。
ブロックダイアグラム図。
ちょっと地味なポイントとして、UFS2.0に対応しました。何気にRK3588はUFS非対応なんですよね。
参考 RK3576:Rockchip ※PDF
メモリとストレージ
「ROCK 4D」のメモリは2GB~16GBのLPDDDR5-4800。
「NanoPi M5」と同じくLPDDR5ですが、「ROCK 4D」では2GBから用意されています。
ストレージは非搭載で、microSDスロットとeMMC/UFSソケットが用意されています。
M.2 SSDも使えますが、M.2スロットではなく汎用ソケットなので、PCIe to M.2 HAT(SBCの世界ではオプションボードをHATと呼ぶ)が必要となります。
その他
無線LANはWi-fi 6(802.11ax)。Bluetoothはv5.4。画像ではBT5.3となっていますが、他の部分はすべてBT5.4となっているので、おそらくBT5.4だと思われます。
なお、チップについては不明です。
有線LANは1GbEが1ポート。
電源はType-Cですが5Vオンリーで最低10W(5V/2A)、上限は25W(5V/5A)。
GPIOからの入力でも動作します。
OSはDebianベースのRadxa OSが用意されています。microSD/eMMC/SSDバージョンとUFSバージョンがあります。
ほか、Android 14、Yocktなどにも対応しているとのこと。
外観
インターフェースです。
かなりラズパイ3に近い雰囲気ですが、DSIの位置にPCIeソケットがあるなど、細かいところは違っています。
あと地味に電源ボタンが用意されています。
裏側にあるソケットはeMMC/UFS共通となっていますね。
インターフェースが分かりやすい斜め方向。
PCIeソケットはPCIe2.1 x1接続。
SATA HATなどオプションボードが用意されています。
まとめ
「ROCK 4D」の価格は記事執筆時点のAliExpressの公式ストアで以下の通り(送料は11.01ドル)。
2GB:30.67ドル
4GB:36.24ドル
8GB:56.46ドル
16GB:97.44ドル
2GBとはいえ30ドルスタートは安すぎでは…?
メモリ16GBだけは「NanoPi M5」の方が安いものの、4/8GBも十分に安いですね。
さらに「ROCK 4D」は長期サポートモデルで、2035年9月までの供給を保証しています。
国内だとWi-fiは使いづらいところですが、ラズパイスタイルなので使いやすく、SBCとしては性能も高いので使いどころも多いでしょう。
産業モデルもありますし、長期供給も保証されているので、組み込み分野では需要が高そうですね。
関連リンク
ROCK 4D:Radxa
Radxa ROCK 4D Product Brief:Radxa ※PDF
販売ページ:AliExpress
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