2025年7月1日、ミニPCメーカーのMinisforumはRyzen AI 9 HX PRO 370を搭載したAI NAS「N5 Pro」を発売しました。
また、下位モデルとなるRyzen 7 255を搭載した「N5」も同時に発売しました。
スペック

■ N5/N5 Pro | |
CPU | Ryzen AI 9 HX PRO 370 Ryzen 7 255 |
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メモリ | SO-DIMM DDR5-5600×2 |
ストレージ | 64GB SSD 3.5/2.5インチ×5ベイ M.2/U.2 SSDスロット×3 |
インターフェース | USB Type-C(USB4)×2 USB 3.2 Gen2×3 USB2.0×1 HDMI2.1 OCuLink 10GbE 有線LAN 5GbE 有線LAN microSDXC オーディオジャック |
wi-fi | M.2 Key-E |
電源 | 280W |
サイズ | 199×202×252mm |
重さ | 5kg |
特徴
「N5/N5 Pro」はCES 2025(開催期間:2025年1月7日~10日)で展示会発表、5月29日に正式発表した小型NASです。
CES 2025の時点では「市場の反応を見つつ製品化を検討」でしたが、無事に製品化されました。
CPU
「N5/N5 Pro」のCPUはRyzen AI 9 HX PRO 370 (N5 Pro)およびRyzen 7 255 (N5)。
Ryzen AI 9 HX PRO 370はZen5アーキテクチャで12コア24スレッド、Ryzen 7 255はZen4アーキテクチャの8コア16スレッド。
Ryzen 7 260がRyzen 7 8845HSのリネーム品あるいはリフレッシュ品に当たり、Ryzen 7 255はその下、動作周波数が少し低い製品となります。

Ryzen AI 9 HX PRO 370のCPU性能は、PassMarkスコアではデスクトップ向けのRyzen 7 7800X3Dと同等。
あくまで計算性能であり、実際のゲーミング性能などは違ってきますが、相当に高いということは分かります。
Ryzen 7 255は動作周波数が最大4.9GHzとRyzen 7 260/Ryzen 7 8845HSの最大5.1GHzより低いにもかかわらず、スコア的には同等。
まだベンチマークサンプル数が少ないゆえのブレとみることはできますが、普通に高性能と言えます。
コア数とアーキテクチャの差の割にスコア差が小さいのは、Ryzen AI 9 HX PRO 370が正確にはZen5×4+Zen5c×8というハイブリッド構造のため。
Zen5cはマイクロアーキテクチャはZen5と同じですが、キャッシュ領域を大幅に削って(L3キャッシュが4コアあたり16MBから、8コア当たり8MBに減らされている)、1コア当たりの面積を30%減らしたコア。
さらに低電圧・低動作周波数とすることで、IntelでいうところのEコアのような扱いとなっています。
Zen5cのIPCはZen5とまったく同じだけれど、低電圧動作を優先しているため、コア当たりの絶対性能は低め。
そんなわけで、Ryzen AI 9 HX PRO 370/Ryzen 7 255は12コアと8コアでコア数1.5倍でも、CPUスコアの差は2割もない程度となっています。
グラフィックスコアはRyzen AI 9 HX PRO 370(Radeon 890M)が、Ryzen 7 255(Radeon 780M)より2割ほど高め。
※2025年7月4日追記:Zen5cに関する説明を修正しました。
メモリとストレージ
メモリは0GBから96GBまでラインナップ。(「N5」は0~16GB)。
内部的にはSO-DIMM DDR5-5600ですが、Ryzen AI 9 HX PRO 370の「N5 Pro」はECC対応、Ryzen 7 255の「N5」はNon-ECCと差があるので、そこだけ注意が必要です。
ストレージは本体内にシステム領域として64GB M.2 2230 SSDを内蔵。SSDって書いてますが、正確にはM.2 SSD型のeMMCです。
NASとしては3.5/2.5インチが5ベイ、M.2 SSDが3スロット用意されています。
M.2 SSDはGen4 x1が2スロット、Gen4 x2が1スロット。
3スロットすべてに挿してU.2×2+M.2×1に配置換えを行う変換ボードが付属します。
その他
無線LANはM.2 Key-Eスロットを用意。「N5 Pro」はWi-fiモジュール組み込み済みですが、規格についての記載がありません。
有線LANは10GbE+5GbEのデュアルポート。
10GbEはAQC113、5GbEはRTL8126という組み合わせです。
5台のHDD+3枚のM.2 SSDが前提なので、電源は280W(19V/14.73A)と大容量。
HDDって起動時電流が20Wくらい、M.2 SSDもモノによっては10W前後となるので、これだけで130Wの確保が必要となります。
OSはWindows…ではなく、MinisCloud OSという、独自OS。
見た感じ、中国で開発されているNAS用ディストリビューションのfnOSをベースとしているようです。
中身は実質ミニPCなので、Windowsに入れ替えることもできます。
外観
本体。
見た目的にはQNAPあたりにありそうな、NASって感じの雰囲気です。
カバーを外すとHDDベイ。システムボードは下半分に入っていて、システムブロックを丸ごと引き出せます。
この辺りは一般的なNASと大きく違うところ。
公式サイトにボードの画像がありませんが、CESのリポートなどを見ると、「MS-01」などをベースとしているようで、表側の半分がCPU・メモリとヒートシンク、残り半分がPCIeスロット、裏側にM.2 SSDスロットという構造になっています。
インターフェース。
USB4が前後に1ポートずつ、背面にはOCuLinkまで用意されています。
…君、NASなんだよね…?
他に内部のボード上もUSB3.2 Gen2が1ポートあり…これは多分USBメモリとかUSB SSDを使ったデュアルブート用かな?
冷却は、HDDとシステムボードで完全に分離されています。
まとめ
「N5」の価格はベアボーン(メモリ0GB)で20%オフクーポン込み95,192円から、「N5 Pro」(メモリ0GB)は同じくクーポン込みで163,192円から。
Amazonだと記事執筆時点で「N5」が91,192円、「N5 Pro」が149,992円からとなっています。メモリ96GBだと249,592円。ECCメモリ込みはさすがに高いけど、Amazon安くない?
メモリはなくとも64GBストレージは組み込まれているので、ベアボーンでも用意するのはメモリだけです。
正直言ってNASにするにはCPUが過剰ですが、ハイエンド系CPUを使ったNASはラック型や法人向けの10ベイ以上あるようなモデルがほとんど。
個人向けの小型NASカテゴリではUGREEN「NASync」シリーズくらいでしょうか。
その「NASync」シリーズだって最上位でもCore i5-1235Uなので、それより上の個人向けハイエンドクラスは現状「N5/N5 Pro」の独占状態になったと言えます。
大容量ストレージが欲しいミニPCユーザーにも刺さる製品ですし、価格も思った程に高くないので、これはニッチな人気が出そうです。
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