先日、がじぇっとりっぷではMinisforum「NAB8 Plus」をレビューしました。

実は「NAB8 Plus」はがじぇっとりっぷでは初めてのOCuLink搭載機だったので、Minisforum様に頼んでOCuLink対応の外付けGPU ドッキング ステーション 「DEG1」も一緒に送ってもらっていました。
OCuLinkの接続はPCIe4.0 x4。PCIe5.0 x16接続のわずか1/8の帯域しかありません。
この限られた帯域で、実際どの程度まで性能が出るのか、検証してみたいと思います。
当ブログの方針として、悪い点も包み隠さず書いていきます。
機材を提供いただいたMinisforum様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
Minisforum DEG1

| アップリンク | Oculink 4i (PCIE4.0x4) |
|---|---|
| PCIeスロット | PCIe x16スロット |
| 対応電源 | ATX/SFX |
| インターフェース | OCuLink×1 ATX 24ピン 電源ボタン |
| サイズ | 270×175×41mm |
GoodPoint
✔ ミニPCに外付けGPUが可能
✔ 意外と性能も出る
BadPoint
✖ ホットスワップ非対応
✖ 別途電源が必要
外観

「DEG1」は茶箱に入っていて、いかにもオプションパーツな雰囲気を出しています。

・OCuLinkケーブル
・固定ステー
・ネジ類
・マニュアル
・保証案内

紙類はMINISFORUM製品共通の、注意事項とサポートページ案内の2種類。

OCuLinkケーブル。

端子にはラッチが付いていて、ただ引っ張っただけでは抜けないようになっています。

本体は電源とグラフィックボードが載るサイズ。


側面に電源ボタンとOCuLinkポート。

底面からは基板にアクセスできますが、開けることはまずないでしょう。

電源を乗せ、電源にGPU固定用のステーを装着。

GPUを乗せるとこんな感じになります。
ちゃんとステーで固定できています。
固定しなくても使えはしますが、GPUボードが揺れるとPCIeスロットに刺さった部分に負荷がかかるので、なるべく固定しましょう。

ちなみに裏から見ると使わないケーブルでごちゃついているので、プラグイン式の電源にした方がすっきりします。

OCuLinkを持つPC(NAB8 Plus)と接続します。

ミニPCとのサイズ感はこんな感じ。
ベンチマーク
検証環境

ベンチマークにはBlackwell世代のハイミドル級GPUとなるGeForce RTX 5070 (ASUS PRIME-RTX5070-O12G)を用意しました。
PCIe 5.0 x16接続なので、帯域が足りなければスコアに大きく出るはずです。

ネイティブ接続との比較にはRyzen 9 7945HXを搭載した「BD790i」を使用します。
「BD790i」はがじぇっとりっぷが以前にレビューした「BD795i SE」の姉妹ボードで、CPUは同じRyzen 9 7945HX。大きな違いはSSDがGen5 SSD対応という点です。
少なくともCPUがボトルネックとはならないので、ネイティブの速度が図れるはずです。

OCuLink接続での計測は、本体から出力する場合と、GPUから出力する場合の2パターンを計測。
本体から出力する場合、データが本体→GPU→本体と往復することになり、転送帯域の影響を2回受けることになります。
3DMark
FireStrike

DirectX11のテストで、比較的軽いFireStrikeだと、OCuLinkの転送速度でも間に合うのか、GPU側出力でのスコア低下は5%もありません。
一方でデータが往復することになる本体側出力では22%の大幅低下。
TimeSpy

DirectX12のテストで、比較的軽いTimeSpyは、FireStrikeよりも低下率が低くなっています。
FF XV

そこそこ重めのタイトル、FF XI Windows EditionではFHD・高画質と、HD・標準画質で検証。
GPU側出力ではHD・標準画質にするとやや改善されたものの、本体側出力では変わらず。
これはOCuLinkの転送速度がネックになっていないということでしょう。
MonsterHunter Wilds Benchmark

モンスターハンターワイルズのベンチマークソフトでは、画質:ウルトラと画質:高、それぞれフレーム生成あり・なしの4パターンを計測しました。
スコアは一応掲載していますが参考程度にしかならないので、フレームレートで差を見ていきます。
ざっくりとですが、フレーム生成がない場合は画質=データ転送量として影響が大きく出ているように見えます。
画質:ウルトラではGPU側出力でも25%差と、かなり大きなものとなっています。
一方でフレーム生成ありの場合はウルトラも高も同程度の差となっているので、データ量はそれほど変わらないのかも。
サイバーパンク2077

サイバーパンク 2077のベンチマークモードで計測。
レイトレーシング:オーバードライブとレイトレーシング:ウルトラ、そしてレイトレなしのウルトラの3モードを、フレーム生成あり・なしで計6パターンを計測、平均フレームレートの差を割り出しています。
サイバーパンク 2077は他のベンチマークと違って、レイトレーシング:オーバードライブよりレイトレーシング:ウルトラの方が、差が大きくなっています。
フレームレートが高くなりすぎると、それもまた性能低下の要因となるようです。
すべてのベンチマークデータ
コメントは省きますが、今回ベンチマークを行った一覧です。
| グラボ | RTX 5070 | RTX 5070 | RTX 5070 | |
| ドライバ | 576.88 | 576.88 | 576.28 | |
| 出力 | OCuLink | 本体 | PCIe | |
| CPU | Core i7-12800H | Core i7-12800H | Ryzen 9 7945HX | |
| 3DMark | TimeSpy | 19080 | 17907 | 20261 |
| Graphics | 22104 | 19569 | 22320 | |
| CPU | 10748 | 9965 | 13306 | |
| FireStrike | 35313 | 31211 | 45603 | |
| Graphics | 56405 | 46237 | 57113 | |
| Phisics | 24691 | 24337 | 39035 | |
| Combined | 11178 | 10357 | 20187 | |
| NightRaid | 56759 | 50729 | 80992 | |
| Grapihics | 150267 | 103898 | 191082 | |
| CPU | 12540 | 13008 | 18991 | |
| WildLife | 125830 | 66584 | 125911 | |
| Graphics | 753.47 fps | 398.71 fps | 753.96 fps | |
| SteelNomad | 5157 | 5049 | 5241 | |
| Graphics | 51.57 fps | 50.50 fps | 52.42 fps | |
| SteelNomadLight | 22931 | 19741 | 23207 | |
| Graphics | 169.86 fps | 146.23 fps | 171.91 fps | |
| サイバーパンク 2077 |
レイトレ オーバードライブ フレーム生成なし |
平均:59.89 fps 最低:52.63 fps 最大:67.62 fps |
平均:54.53 fps 最低:47.54 fps 最大:62.13 fps |
平均:71.86 fps 最低:61.93 fps 最大:81.02 fps |
| レイトレ オーバードライブ フレーム生成あり |
平均:210.32 fps 最低:186.73 fps 最大:234.08 fps |
平均:187.55 fps 最低:167.49 fps 最大:207.78 fps |
平均:235.58 fps 最低:208.01 fps 最大:260.98 fps |
|
| レイトレ ウルトラ フレーム生成なし |
平均:84.25 fps 最低:68.95 fps 最大:99.10 fps |
平均:71.33 fps 最低:56.75 fps 最大:84.64 fps |
平均:103.58 fps 最低:89.96 fps 最大:118.21 fps |
|
| レイトレ ウルトラ フレーム生成あり |
平均:277.15 fps 最低:241.64 fps 最大:310.83 fps |
平均:236.55 fps 最低:213.85 fps 最大:258.97 fps |
平均:325.11 fps 最低:296.25 fps 最大:356.82 fps |
|
| ウルトラ フレーム生成なし |
平均:120.31 fps 最低:86.08 fps 最大:144.89 fps |
平均:106.76 fps 最低:75.18 fps 最大:130.51 fps |
平均:155.70 fps 最低:111.78 fps 最大:193.87 fps |
|
| ウルトラ フレーム生成あり |
平均:433.50 fps 最低:343.36 fps 最大:522.84 fps |
平均:351.28 fps 最低:290.70 fps 最大:395.82 fps |
平均:476.96 fps 最低:404.61 fps 最大:544.27 fps |
|
| FF XIV(DX11) 暁月の終焉 |
1920・最高 | 23548 非常に快適 168.82 fps |
24129 非常に快適 175.56 fps |
30526 非常に快適 226.41 fps |
| FF XIV(DX11) 黄金の遺産 |
1920・最高 | 20533 非常に快適 147.31 fps |
18842 非常に快適 142.58 fps |
25105 非常に快適 187.44 fps |
| FF XV(DX11) | 1920・高 | 15043 非常に快適 |
14956 非常に快適 |
18944 非常に快適 |
| 1280・標準 | 19057 非常に快適 |
18261 非常に快適 |
23122 非常に快適 |
|
| モンスターハンター Wilds |
ウルトラ フレーム生成なし |
24121 70.98 fps |
23320 68.40 fps |
32229 94.54 fps |
| ウルトラ フレーム生成あり |
23986 141.02 fps |
22805 134.66 fps |
28281 166.09 fps |
|
| 高 フレーム生成なし |
25792 75.63 fps |
25360 73.88 fps |
32847 96.36 fps |
|
| 高 フレーム生成あり |
25668 150.30 fps |
24811 144.76 fps |
30571 179.30 fps |
|
| ストリートファイター6 Fighting Ground |
HIGHEST | 59.66 fps | 59.99 fps | 59.92 fps |
| NORMAL | 59.98 fps | 59.99 fps | 59.98 fps | |
| LOW | 59.98 fps | 59.99 fps | 59.98 fps | |
| VR Mark | 12908 | 9720 | 16340 | |
| 黒神話:悟空 | 超高 レイトレあり フレーム生成あり |
平均:100 fps 最高:117 fps 95%:88 fps |
平均:95 fps 最高:111 fps 95%:85 fps |
平均:104 fps 最高:123 fps 95%: 91fps |
| 超高 レイトレあり フレーム生成なし |
平均:56 fps 最高:67 fps 95%:49 fps |
平均:54 fps 最高:65 fps 95%:46 fps |
平均:58 fps 最高:70 fps 95%:49 fps |
|
| 超高 レイトレなし フレーム生成あり |
平均:115 fps 最高:132 fps 95%:104 fps |
平均:109 fps 最高:126 fps 95%:100 fps |
平均:119 fps 最高:137 fps 95%:107 fps |
|
| 超高 レイトレなし フレーム生成なし |
平均:65 fps 最高:76 fps 95%:58 fps |
平均:63 fps 最高:74 fps 95%:56 fps |
平均:68 fps 最高:80 fps 95%:60 fps |
|
消費電力

| NAB8 Plusのみ | NAB8 Plus+RTX5070 | BD790i+RTX5070 | |
| アイドル時 | 8.2~12.8W | 28.3~35.9W | 42.8~53.8W |
| 画面オフ時 | 7.6~11.6W | 25.3~33.1W | 40.1~50.6W |
| スリープ時 | 0.03~3.8W | 0.2~4.2W | 1.8~2.2W |
| FF XV | 88W/58~78W | 324W/272~300W | 381W/325~371W |
消費電力は、瞬間最大で57W差。時間経過後の安定した状態だと、53~71W差となりました。
そもそものシステム構成に差があるので参考程度ですが、300Wと371Wでは20%の差です。
消費電力の面から見ると、フレームレート/スコア差が20%以下なら、ワットパフォーマンスは良いということになります。
まとめ
冒頭にも書いたように、OCuLinkはPCIe4.0 x4接続で、PCIe5.0 x16接続のわずか1/8の帯域しかありません。
そのうえでベンチマーク結果を見ると、GPU側から出力した場合は、低下率は高くても25%程度でした。
さすがにデスクトップ機でPCIeスロット使用時と同等とはいきませんが、重いタイトルだと半減くらいになるかと思っていただけに、思ったよりも差がなくてびっくりです。
それなりの性能低下はあるものの、OCuLink最大のメリットはdGPUの抜き差しによってPCIe端子を摩耗させることなく、オンオフが可能になるという点。
再起動が必要ですが、ネットサーフィンや動画を見るくらいの、負荷の軽い作業の時は「DEG1」の電源を切ってミニPCだけを動かすことで、かなりの節電となります。
また、ミニPCの本体をATX電源の上に置けば、フットプリントはかなり小さくなります。
パーツ剥き出しではありますが、省スペースでGPUを使いたいという層にも良さそうです。
おまけ:OCuLinkの今後
OCuLinkはすでにPCIe 5.0/6.0に対応する後継のCopprLink(Copperではない)が策定されています。
(OCuLinkはOptical(光)+Cu(銅)+Cableの造語でしたが、結局Optical(光ケーブル)はなくなったので後継規格はOが抜けています。)
だからといって、OCuLinkはもう終わりか?という話にはなりません。
OCuLinkは規格策定が完了したのが2014年。普及し始めたのがつい最近です。
CopprLinkは2024年に策定完了しましたが、このペースだと一般に普及し始めるのは2030年頃と予想されます。
なので、今OCuLink製品を買ってもしばらくは(少なくとも製品の買い替え時までは)使えることでしょう。





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