【実機レビュー】Minisforum DEG1:OCuLink接続の外付けGPUは思ったほど性能は落ちなかった

レビュー

先日、がじぇっとりっぷではMinisforum「NAB8 Plus」をレビューしました。

【実機レビュー】 MINISFORUM NAB8 Plus:実は希少なIntel系OCuLink搭載ミニPC
2025年5月18日ころ、MINISFORUMはCore i7-12800Hを搭載したミニPC「NAB8 Plus」を発売しました。「NAB8 Plus」のポイントは、Intel CPUながらOCuLinkを搭載していること。Intel系C

実は「NAB8 Plus」はがじぇっとりっぷでは初めてのOCuLink搭載機だったので、Minisforum様に頼んでOCuLink対応の外付けGPU ドッキング ステーション 「DEG1」も一緒に送ってもらっていました。

OCuLinkの接続はPCIe4.0 x4。PCIe5.0 x16接続のわずか1/8の帯域しかありません
この限られた帯域で、実際どの程度まで性能が出るのか、検証してみたいと思います。

当レビューはメーカーより機材提供を受けたものですが、内容自由で書かせてもらっています。
当ブログの方針として、悪い点も包み隠さず書いていきます。
機材を提供いただいたMinisforum様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
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Minisforum DEG1

アップリンク Oculink 4i (PCIE4.0x4)
PCIeスロット PCIe x16スロット
対応電源 ATX/SFX
インターフェース OCuLink×1
ATX 24ピン
電源ボタン
サイズ 270×175×41mm

GoodPoint
ミニPCに外付けGPUが可能
意外と性能も出る

BadPoint
ホットスワップ非対応
別途電源が必要

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外観

「DEG1」は茶箱に入っていて、いかにもオプションパーツな雰囲気を出しています。

内容物
・本体
・OCuLinkケーブル
・固定ステー
・ネジ類
・マニュアル
・保証案内

紙類はMINISFORUM製品共通の、注意事項とサポートページ案内の2種類。

OCuLinkケーブル。

端子にはラッチが付いていて、ただ引っ張っただけでは抜けないようになっています

本体は電源とグラフィックボードが載るサイズ。

側面に電源ボタンとOCuLinkポート。

底面からは基板にアクセスできますが、開けることはまずないでしょう。

電源を乗せ、電源にGPU固定用のステーを装着。

GPUを乗せるとこんな感じになります。
ちゃんとステーで固定できています。

固定しなくても使えはしますが、GPUボードが揺れるとPCIeスロットに刺さった部分に負荷がかかるので、なるべく固定しましょう。

ちなみに裏から見ると使わないケーブルでごちゃついているので、プラグイン式の電源にした方がすっきりします。

OCuLinkを持つPC(NAB8 Plus)と接続します。

ミニPCとのサイズ感はこんな感じ。

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ベンチマーク

検証環境

ベンチマークにはBlackwell世代のハイミドル級GPUとなるGeForce RTX 5070 (ASUS PRIME-RTX5070-O12G)を用意しました。
PCIe 5.0 x16接続なので、帯域が足りなければスコアに大きく出るはずです。

ネイティブ接続との比較にはRyzen 9 7945HXを搭載した「BD790i」を使用します。
「BD790i」はがじぇっとりっぷが以前にレビューした「BD795i SE」の姉妹ボードで、CPUは同じRyzen 9 7945HX。大きな違いはSSDがGen5 SSD対応という点です。

少なくともCPUがボトルネックとはならないので、ネイティブの速度が図れるはずです。

OCuLink接続での計測は、本体から出力する場合と、GPUから出力する場合の2パターンを計測。
本体から出力する場合、データが本体→GPU→本体と往復することになり、転送帯域の影響を2回受けることになります。

3DMark

FireStrike

Fire Strike (Graphic) 低下率
PCIe接続 59208
GPU側出力 56405 -4.8%
本体側出力 46237 -22%

DirectX11のテストで、比較的軽いFireStrikeだと、OCuLinkの転送速度でも間に合うのか、GPU側出力でのスコア低下は5%もありません。
一方でデータが往復することになる本体側出力では22%の大幅低下。

TimeSpy

Fire Strike (Graphic) 低下率
PCIe接続 22320
GPU側出力 22104 -1.0%
本体側出力 19569 -12.4%

DirectX12のテストで、比較的軽いTimeSpyは、FireStrikeよりも低下率が低くなっています。

FF XV

そこそこ重めのタイトル、FF XI Windows EditionではFHD・高画質と、HD・標準画質で検証。

FHD・高画質 低下率
PCIe接続 18944
GPU側出力 15043 -20.6%
本体側出力 14956 -21.1%
HD・標準画質 低下率
PCIe接続 23122
GPU側出力 19057 -17.6%
本体側出力 18261 -21.1%

GPU側出力ではHD・標準画質にするとやや改善されたものの、本体側出力では変わらず。
これはOCuLinkの転送速度がネックになっていないということでしょう。

MonsterHunter Wilds Benchmark

モンスターハンターワイルズのベンチマークソフトでは、画質:ウルトラと画質:高、それぞれフレーム生成あり・なしの4パターンを計測しました。
スコアは一応掲載していますが参考程度にしかならないので、フレームレートで差を見ていきます。

GPU側出力 本体側出力 BD790i フレームレート差
ウルトラ
フレーム生成なし
24121
70.98 fps
23320
68.40 fps
32229
94.54 fps
GPU:-25.0%
本体:-27.7%
ウルトラ
フレーム生成あり
23986
141.02 fps
22805
134.66 fps
28281
166.09 fps
GPU:-16.7%
本体:-19.0%

フレーム生成なし
25792
75.63 fps
25360
73.88 fps
32847
96.36 fps
GPU:-21.6%
本体:-23.4%

フレーム生成あり
25668
150.30 fps
24811
144.76 fps
30571
179.30 fps
GPU:-16.2%
本体:-19.3%

ざっくりとですが、フレーム生成がない場合は画質=データ転送量として影響が大きく出ているように見えます。
画質:ウルトラではGPU側出力でも25%差と、かなり大きなものとなっています。

一方でフレーム生成ありの場合はウルトラも高も同程度の差となっているので、データ量はそれほど変わらないのかも。

サイバーパンク2077

サイバーパンク 2077のベンチマークモードで計測。
レイトレーシング:オーバードライブとレイトレーシング:ウルトラ、そしてレイトレなしのウルトラの3モードを、フレーム生成あり・なしで計6パターンを計測、平均フレームレートの差を割り出しています。

GPU側出力 本体側出力 BD790i 平均FPS差
レイトレ
オーバードライブ
フレーム生成なし
平均:59.89 fps
最低:52.63 fps
最大:67.62 fps
平均:54.53 fps
最低:47.54 fps
最大:62.13 fps
平均:71.86 fps
最低:61.93 fps
最大:81.02 fps
GPU:-16.7%
本体:-24.2%
レイトレ
オーバードライブ
フレーム生成あり
平均:210.32 fps
最低:186.73 fps
最大:234.08 fps
平均:187.55 fps
最低:167.49 fps
最大:207.78 fps
平均:235.58 fps
最低:208.01 fps
最大:260.98 fps
GPU:-10.8%
本体:-20.4%
レイトレ
ウルトラ
フレーム生成なし
平均:84.25 fps
最低:68.95 fps
最大:99.10 fps
平均:71.33 fps
最低:56.75 fps
最大:84.64 fps
平均:103.58 fps
最低:89.96 fps
最大:118.21 fps
GPU:-21.6%
本体:-31.2%
レイトレ
ウルトラ
フレーム生成あり
平均:277.15 fps
最低:241.64 fps
最大:310.83 fps
平均:236.55 fps
最低:213.85 fps
最大:258.97 fps
平均:325.11 fps
最低:296.25 fps
最大:356.82 fps
GPU:-24.8%
本体:-27.3%
ウルトラ
フレーム生成なし
平均:120.31 fps
最低:86.08 fps
最大:144.89 fps
平均:106.76 fps
最低:75.18 fps
最大:130.51 fps
平均:155.70 fps
最低:111.78 fps
最大:193.87 fps
GPU:-22.8%
本体:-31.5%
ウルトラ
フレーム生成あり
平均:433.50 fps
最低:343.36 fps
最大:522.84 fps
平均:351.28 fps
最低:290.70 fps
最大:395.82 fps
平均:476.96 fps
最低:404.61 fps
最大:544.27 fps
GPU:-8.7%
本体:-26.4%

サイバーパンク 2077は他のベンチマークと違って、レイトレーシング:オーバードライブよりレイトレーシング:ウルトラの方が、差が大きくなっています。
フレームレートが高くなりすぎると、それもまた性能低下の要因となるようです。

すべてのベンチマークデータ

コメントは省きますが、今回ベンチマークを行った一覧です。

グラボ RTX 5070 RTX 5070 RTX 5070
ドライバ 576.88 576.88 576.28
出力 OCuLink 本体 PCIe
CPU Core i7-12800H Core i7-12800H Ryzen 9 7945HX
3DMark TimeSpy 19080 17907 20261
Graphics 22104 19569 22320
CPU 10748 9965 13306
FireStrike 35313 31211 45603
Graphics 56405 46237 57113
Phisics 24691 24337 39035
Combined 11178 10357 20187
NightRaid 56759 50729 80992
Grapihics 150267 103898 191082
CPU 12540 13008 18991
WildLife 125830 66584 125911
Graphics 753.47 fps 398.71 fps 753.96 fps
SteelNomad 5157 5049 5241
Graphics 51.57 fps 50.50 fps 52.42 fps
SteelNomadLight 22931 19741 23207
Graphics 169.86 fps 146.23 fps 171.91 fps
サイバーパンク
2077
レイトレ
オーバードライブ
フレーム生成なし
平均:59.89 fps
最低:52.63 fps
最大:67.62 fps
平均:54.53 fps
最低:47.54 fps
最大:62.13 fps
平均:71.86 fps
最低:61.93 fps
最大:81.02 fps
レイトレ
オーバードライブ
フレーム生成あり
平均:210.32 fps
最低:186.73 fps
最大:234.08 fps
平均:187.55 fps
最低:167.49 fps
最大:207.78 fps
平均:235.58 fps
最低:208.01 fps
最大:260.98 fps
レイトレ
ウルトラ
フレーム生成なし
平均:84.25 fps
最低:68.95 fps
最大:99.10 fps
平均:71.33 fps
最低:56.75 fps
最大:84.64 fps
平均:103.58 fps
最低:89.96 fps
最大:118.21 fps
レイトレ
ウルトラ
フレーム生成あり
平均:277.15 fps
最低:241.64 fps
最大:310.83 fps
平均:236.55 fps
最低:213.85 fps
最大:258.97 fps
平均:325.11 fps
最低:296.25 fps
最大:356.82 fps
ウルトラ
フレーム生成なし
平均:120.31 fps
最低:86.08 fps
最大:144.89 fps
平均:106.76 fps
最低:75.18 fps
最大:130.51 fps
平均:155.70 fps
最低:111.78 fps
最大:193.87 fps
ウルトラ
フレーム生成あり
平均:433.50 fps
最低:343.36 fps
最大:522.84 fps
平均:351.28 fps
最低:290.70 fps
最大:395.82 fps
平均:476.96 fps
最低:404.61 fps
最大:544.27 fps
FF XIV(DX11)
暁月の終焉
1920・最高 23548
非常に快適
168.82 fps
24129
非常に快適
175.56 fps
30526
非常に快適
226.41 fps
FF XIV(DX11)
黄金の遺産
1920・最高 20533
非常に快適
147.31 fps
18842
非常に快適
142.58 fps
25105
非常に快適
187.44 fps
FF XV(DX11) 1920・高 15043
非常に快適
14956
非常に快適
18944
非常に快適
1280・標準 19057
非常に快適
18261
非常に快適
23122
非常に快適
モンスターハンター
Wilds
ウルトラ
フレーム生成なし
24121
70.98 fps
23320
68.40 fps
32229
94.54 fps
ウルトラ
フレーム生成あり
23986
141.02 fps
22805
134.66 fps
28281
166.09 fps

フレーム生成なし
25792
75.63 fps
25360
73.88 fps
32847
96.36 fps

フレーム生成あり
25668
150.30 fps
24811
144.76 fps
30571
179.30 fps
ストリートファイター6
Fighting Ground
HIGHEST 59.66 fps 59.99 fps 59.92 fps
NORMAL 59.98 fps 59.99 fps 59.98 fps
LOW 59.98 fps 59.99 fps 59.98 fps
VR Mark 12908 9720 16340
黒神話:悟空 超高
レイトレあり
フレーム生成あり
平均:100 fps
最高:117 fps
95%:88 fps
平均:95 fps
最高:111 fps
95%:85 fps
平均:104 fps
最高:123 fps
95%: 91fps
超高
レイトレあり
フレーム生成なし
平均:56 fps
最高:67 fps
95%:49 fps
平均:54 fps
最高:65 fps
95%:46 fps
平均:58 fps
最高:70 fps
95%:49 fps
超高
レイトレなし
フレーム生成あり
平均:115 fps
最高:132 fps
95%:104 fps
平均:109 fps
最高:126 fps
95%:100 fps
平均:119 fps
最高:137 fps
95%:107 fps
超高
レイトレなし
フレーム生成なし
平均:65 fps
最高:76 fps
95%:58 fps
平均:63 fps
最高:74 fps
95%:56 fps
平均:68 fps
最高:80 fps
95%:60 fps

消費電力

NAB8 Plusのみ NAB8 Plus+RTX5070 BD790i+RTX5070
アイドル時 8.2~12.8W 28.3~35.9W 42.8~53.8W
画面オフ時 7.6~11.6W 25.3~33.1W 40.1~50.6W
スリープ時 0.03~3.8W 0.2~4.2W 1.8~2.2W
FF XV 88W/58~78W 324W/272~300W 381W/325~371W

消費電力は、瞬間最大で57W差。時間経過後の安定した状態だと、53~71W差となりました。
そもそものシステム構成に差があるので参考程度ですが、300Wと371Wでは20%の差です。

消費電力の面から見ると、フレームレート/スコア差が20%以下なら、ワットパフォーマンスは良いということになります。

まとめ

冒頭にも書いたように、OCuLinkはPCIe4.0 x4接続で、PCIe5.0 x16接続のわずか1/8の帯域しかありません。
そのうえでベンチマーク結果を見ると、GPU側から出力した場合は、低下率は高くても25%程度でした。
さすがにデスクトップ機でPCIeスロット使用時と同等とはいきませんが、重いタイトルだと半減くらいになるかと思っていただけに、思ったよりも差がなくてびっくりです。

それなりの性能低下はあるものの、OCuLink最大のメリットはdGPUの抜き差しによってPCIe端子を摩耗させることなく、オンオフが可能になるという点。
再起動が必要ですが、ネットサーフィンや動画を見るくらいの、負荷の軽い作業の時は「DEG1」の電源を切ってミニPCだけを動かすことで、かなりの節電となります。

また、ミニPCの本体をATX電源の上に置けば、フットプリントはかなり小さくなります。
パーツ剥き出しではありますが、省スペースでGPUを使いたいという層にも良さそうです。

おまけ:OCuLinkの今後

OCuLinkはすでにPCIe 5.0/6.0に対応する後継のCopprLink(Copperではない)が策定されています。
(OCuLinkはOptical(光)+Cu(銅)+Cableの造語でしたが、結局Optical(光ケーブル)はなくなったので後継規格はOが抜けています。)

だからといって、OCuLinkはもう終わりか?という話にはなりません。
OCuLinkは規格策定が完了したのが2014年。普及し始めたのがつい最近です。
CopprLinkは2024年に策定完了しましたが、このペースだと一般に普及し始めるのは2030年頃と予想されます。

なので、今OCuLink製品を買ってもしばらくは(少なくとも製品の買い替え時までは)使えることでしょう。

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