WD(Western Digital)は、言わずと知れたストレージの老舗メーカーです。
がじぇっとりっぷでも以前にGen4 SSDフラグシップモデルの「WD_BLACK SN850X」をレビューしています。

WDはおおざっぱなクラスを、フラグシップはBlack、NAS向けはRed、エンタープライズ向けはGoldといった具合に、色で分けています。
今回は同じ一般クラスにあたる「WD Blue SN5000」をレビューしていきます。
スペック

| ■ WD Blue SN5000 | |
| 容量 | 500GB~4TB |
|---|---|
| 接続 | PCIe Gen 4.0 x4 NVMe 2.0c |
| 読込速度 | 4TB:5,500MB/s 1/2TB:5,150MB/s |
| 書込速度 | 4TB:5,000MB/s 2TB:4,850MB/s 1TB:4,900MB/s |
| NAND | 4TB:BiCS6 QLC NAND 1/2TB:BiCS5 TLC NAND |
| キャッシュメモリ | なし |
| 耐久性 | 4TB:1200TBW 2TB:900TBW 1TB:600TBW MTTF:175万時間 |
| 保証 | 5年 |
4TBモデルはQLC NANDのため、TBW(Total Bytes Written、総書き込みバイト数)が低くなっています。
2TBモデルが低い理由は不明。
本体外観

パッケージデザインは青を基調とした、量販店に並んでいそうなイメージ。
箱の裏側からは中身をチラ見せしています。

中のスリーブはプラ製で、ねじはなし。
WDは説明書(正しくはサポートと保証について)が分厚いです。

本体。
見てわかるように、NANDはSamsung「990 EVO Plus」と同じような2チップ構成となっています。
裏面には何もない片面実装です。
現在はWDの事業再編(HDD事業はWD、フラッシュメモリー事業はSanDisk)に伴い、SanDiskブランドで販売されていますが、これはかなり前に買ったものなのでまだWestern Digital名義となっていますね。


斜めから。
真ん中がないのでかなり薄く見えます。

シールを剥がしたところ。

コントローラーはSanDisk A101-000171-A4。
SanDiskはフラッシュメモリー大手でしたが、2015年にWDが買収し、上で書いたように製品レベルでは現在はWDとSanDiskのブランドを使い分けています。。
コントローラーのコードネームはPolaris 3とされていますが、WD(SanDisk)は詳細仕様を公開していないため、内部については不明です。

NANDは「SanDisk 026226 2T00」の文字。
中身はKIOXIA製の162層 3D QLC NAND(BiCS6)です。
参考 キオクシアとウエスタンデジタル、第6世代の3次元フラッシュメモリ技術を発表:KIOXIA
チェック環境

検証はCore i7-13700Hを搭載したLenovo「IdeaCentre Mini Gen8」と、システムとしてMonsterStorage「MS950(2TB)」を使用。
上がシステムSSD、下がレビューSSDです。


CrystalDiskInfoの情報です。規格容量は4000.7GB。
接続はGen4 x4、規格はNVMe 2.0。
NAND的には4096GBなのですが、96GBは予備領域に割り当てられています。

フォーマット後の容量は3726.01GB。
ざっくり調べた感じだと、NVMe 2.0ではZNS Command SetやKV Comman Setが追加され、HDDをサポートするように。
NVMってNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の頭文字(eはExpress)なのに、磁気ディスクをサポートとは…
ベンチマーク
自然空冷状態で、エアフローのしっかりしたデスクトップ機に比べると、若干不利な環境となります。
また、Intel系環境のため、シーケンシャルは7,000MB/s付近が上限となります
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkではサイズを1GiB・64GiBにして測定。

シーケンシャルでリード5,540MB/s、ライト5,030MB/sを記録。リード・ライトともに仕様をわずかに上回っています。

64GiB時ではライトはやや落ち込んだものの、リード速度は維持。
ランダムリード・ライトは1GiB時と変化がなく、この辺りの強さはさすがWDといったところです。


4Kランダムのリードレイテンシ(1GiB時)は52.15μs。Gen4 SSDではだいたいが55μs前後だったので、ほんのちょっと高速です。
この辺りはCPU直結とか遅延要素を徹底的に排除しないと実力が見えないところなので、モバイル向けCPUならこんなものと言えるかと。
AS SSD Benchmark

AS SSD Benchmarkでは総合5677ポイントと、比較的高スコア。
4K/64スレッドのライト速度が主な要因です。
h2testw

h2testwは、2.1GB/sでスタート。Gen4 SSDとしては平均的な速度です。

800GB(20%)付近でpSLCキャッシュが枯渇。
負荷が40%→70%に、書き込み速度は500MB/s台に落ち込みました。

その後は負荷70~80%、200~500MB/s台を継続して、フィニッシュ。

トータルでは、書き込みは平均467MB/s、読み込みは平均1.50GB/sでした。
「SN5000」の4TBモデルはQLC NANDということで、それがもろに数字に表れた形ですね。
SLCキャッシュの容量は空き領域と比例するので、空き容量が少なくなると高速に書き込める量も少なくなります。
キャッシュスペースは空き領域の20%と考えて、残り400GBだと80GB程度でSLCキャッシュが枯渇する計算です。
ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkはファイルサイズが小さなファイルにおけるスループットを計測するベンチマークです。
リード・ライトともに512KBからピーク速度を保っています。
HD Tune Pro

HD Tune Proでは読み込みは全域ほぼフラットで、平均1,648MB/s。
アクセスタイムにはややばらつきがみられるものの、速度のばらつきは少なく、安定しています。

ライトはなぜか落ち込みがなく、全域フラット。実書き込みとはちょっと違った結果が出ています。
ハイブリッドSLCキャッシュ技術の「nCache 4.0」がうまく作用しているのでしょうか。





その他の計測結果。
どれもフラットな、安定した結果を出しています。
3DMark Storage Benchmark

3DMarkは2336ポイント。
YMTC系が2300ポイント台なので、大体同程度となります。
ファイル転送(書き込み)
ファイル転送は「DiskBench」を使って計測。



10GB(1GB×10)のファイル:3.008秒 (3404.255 MB/s)
100GB(1GB×100)のファイル:38.774秒 (2640.945 MB/s)
1TB(1GB×1000)のファイル:755.433秒 (1335.514 MB/s)
ファイル転送(書き込み)では10GB/100GBはTLC NAND搭載製品と変わらない速度を出しています。
一方で1TBは途中でSLCキャッシュが切れるため、トータルではやや遅い結果となりました。
温度について


温度はHWMonitorと、HWiNFOの2種類で調査。
どちらも3種類の温度センサーが見えていますが、うち二つは同じ温度を指しているので実質2種類です。
センサー上は(おそらく)コントローラーが最大102度。なかなかに爆熱です。

サーモグラフィーで見ると最大96.3度でした。どうやら大幅に逆さばを読んで、早めに制御を入れるようにしている模様。
それでもかなり発熱していることに変わりはないのですが、NANDの寿命に大きな影響を及ぼさないギリギリくらいに収まっています。
まとめ
「WD Blue SN5000(4TB)」は、QLC NANDでありながら、SLCキャッシュが効いている範囲であればTLC NANDと遜色ないレベルの性能を発揮する、期待以上の性能のSSDでした。
QLC NANDでここまで頑張れば文句はないですね。
価格は2TBで1.9万円台、4TBで4.2万円台。セール時には4TBモデルは3.3万円台まで下がることもあります。
WD Blackに属するSN850XやSN7100に比べれば安価なものの、通常価格はすごく安いとまではいかない程度です。セール価格なら全然ありです。
予算はそこまでないけれど、中国系のサポートも怪しいSSDはちょっと…という層には、ちょうど良さそうです。
QLC NANDゆえに書き換え可能回数が少ないのは弱点ですが、それでも1200TBW、つまり書き換え可能回数は(理論上)300回に達します。
一時ファイル置き場として酷使したり、NASのSSDキャッシュに用いたりしなければ、おそらくは大丈夫でしょう。
というか、そもそもそういうところにはTLC NANDのSSDを割り当てるべきですね。
関連リンク
WD Blue SN5000 NVMe™ SSD:Sandisk



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