2019年6月24日、Raspberry Pi財団から「Raspberry Pi 4 Model B」が発表されました。
スペック
※比較のために「Raspberry Pi 3 Model B」のスペックを併記します。
model | Pi4 Model B | Pi3 Model B+ |
メーカー | Raspberry | |
発売日 | 2019/06 | 2018/03 |
価格 | 35ドル(1GB) 45ドル(2GB) 55ドル(4GB) | $35 |
価格(日本円) | 4815円 | |
CPU | Broadcom BCM2711B0 (1.5GHz A72 x 4) | Broadcom BCM2837B0 (1.4GHz A53 x 4) |
GPU | VideoCore VI 500MHz | VideoCore IV 400MHz |
メモリー | 1〜4GB LPDDR4-2400 | 1GB LPDDR2-900 |
サポートOS | Raspbian | Linux(Debian、Fedora、Arch) RISC OS Windows 10 IoT Core |
有線LAN | 1GbE x 1 | 1GbE x 1(USB2.0) |
Wi-fi | 802.11 ac | 802.11 ac |
Bluetooth | 5.0 | 4.2 |
チップ | VL805 MxL7704 Cypress CYW43455 | LAN7515 Cypress CYW43455 |
ストレージ | microSD | |
USB | 3.0 x 2 2.0 x 2 | 2.0 x 4 |
GPIO | 40pin x 1 | 40pin x 1 |
映像 | HDMI(micro 4K/60Hz) コンポジットRCA MIPI-DSI | HDMI(1.4 1080p/60Hz) コンポジットRCA MIPI-DSI |
カメラ | MIPI-CSI | |
オーディオジャック | ○ | |
その他インターフェース | ||
消費電力 | 7W | |
電源 | USB-C 5V /3A | microUSB 5V/2.5A |
幅 | 85mm | 85.6mm |
奥行き | 56mm | 56.5mm |
高さ | 17mm | |
その他 |
特徴
「Raspberry Pi 4」のSoCはこれまでの40nmプロセスなBCM2835/BCM2837を諦め、28nmプロセスのBCM2711を採用しています。
プロセスルールをシュリンクしたおかげで消費電力が削減、実装面積に余裕が出たことで、アーキテクチャもCortex A53からCortex A72にパワーアップしています。
GPUもVideoCore IV(400MHz)からVideoCore VI(500MHz)へとアップグレードし、ドライバも一新されています。
メモリはLPDDR2-900からLPDDR4-2400へと一気に2段階アップし、スループットは倍以上になりました。
また、従来の1GBだけでなく、2GBと4GBのモデルも用意されました。これが一番大きいかも。
トータルとして性能はかなりアップし、Linpack(スパコンのTOP500でお馴染みのベンチマーク)では「Raspberry Pi 3 (BCM2837)」のざっくり3倍程度に達しています。
一方、UnixBenchの結果はあまり奮っておらず、BCM2837と同等レベルとなっています。
整数演算、小数点演算の数値は伸びていますが、パイプ処理と各CPUコアへの割り振り(スケジューリング)がうまくいっておらず、足を引っ張っている印象です。
下記サイトでベンチマーク結果が記載されていますが、サーモ画像などもあり、発熱がかなり増えていることも確認できます。ヒートシンクなりファンなり、対策が必要となるでしょう。
インターフェースには初代以来、初めて変更が入りました。
上が「Raspberry Pi 3 model B」、下が「Raspberry Pi 4」です(「model B+」のちょうどいい角度の画像が見つかりませんでした…)。
PCB配線をシンプルにするため、LANポートが左から右に変更となっています。
また、LANはGigabit Ethernet over USB 2.0からSoC直結となり、転送速度が限界(ベンチマークでは940Mbps前後)まで出るようになっています。
PoEコネクタの位置は変えていないため、「Raspberry Pi 3」用のPoE HATを流用することができます。
HDMIはフルサイズ(Type-A)x1からmicro(Type-D)x2になり、デュアルモニターが可能となりました。
また、4K/60Hz出力にも対応しています。
電源(HDMIの左、上の画像の左上のコネクタ)はmicroUSBからUSB Type-Cコネクタに変更されました。
これによって電源入力に余裕ができ、従来の5V@2.5Aから5V@3Aに強化されました。電源が強化されたことで、CPUが重い処理をしている(=電力を大きく消費している)ときでも、1.2AのUSBダウンストリームを保証することができるようになっています。
USBはついに3.0対応となりました。4ポートのうち2ポートがUSB3.0です。
が、内部的にはPCIe Gen2を分岐させており、4ポート合計で4Gbpsまでとなっている点に注意が必要です。
HDDを接続する分には十分ですが、SSDを接続してもフルスピードは厳しいでしょう。
表と裏の図です。
Wi-fiは表の左上の四角い銀色のものがアンテナとなっています(従来はここにラズベリーマークがありましたが、無地となったようです)。
端子がはみ出しているのは”ケースの厚み”分だそうで、ケースに入れると外装とフラットになるとのこと。
OSのRaspbianは、最新のDebian 10 Buster(2019年7月7日リリース)をベースにしたものに更新されました。
これまでのDebian Stretchと大きな違いはなく、セキュリティ面が多少強化されているということですが、OpenGLのドライバが”Raspbian Buster”にしかないため、旧バージョンは不適合となるとのこと。
もう少し詳しい内容は公式ブログ(英語)に書かれています。
「Raspberry Pi 4」は周辺アイテムも公式で用意されています。
ケースがあるのは従来通りですね。前述の通り、端子とケースがフラットになっています。
「Raspberry Pi 4」からインターフェースの互換性がなくなるので、ケースは更新するか、インターフェース部を繰り抜く必要があります。
電源アダプタやHDMIケーブルも用意されています。
Type-C電源もHDMIケーブルも、端子は同じなのに規格を満たしていない製品などがあってわかりにくいため、公式で用意したということです。
4GB版にキーボード、マウス、電源、HDMIケーブル(2本)、ケース、ガイドブックがセットになった、”Desktop Kit”も用意されています。
まとめ
「Raspberry Pi 4」はこれまで2020年の発売と言われていた(Raspberry Pi財団の創設者/CEOであるEben Upton氏もインタビューでそう語っていた)だけに、この登場は本当に突然の発表でした。
上記を受けてか公式リリース内のQ&Aにも”Wait, is it 2020 yet?(待って、もう2020年だっけ?)”と書かれる始末です。
説明によると、BCM2711で予定されている4つのリビジョン(A0、B0、C0、C1)のうち、BCM2711B0が予定より9〜12ヶ月早く生産工程に入ったことで、今回の発表となったとのことでした。
「Raspberry Pi 4」の価格は1GBモデルが価格据え置きの35ドル(約3,750円)、2GBモデルが45ドル(約4,800円)、4GBモデルが55ドル(約5,900円)となっています。これまでの例からすると、国内販売価格は1,000〜1,200円上乗せくらいと思われます。
なお、国内での販売はこれから技適取得となるため、数カ月から半年ほど後になります。
周辺アイテムは、ケースは5ドル(約540円)で、電源は8ドル(約860円)、キットは120ドル(約1万2800円)です。
しかし、4GBモデル安すぎですね。最近盛り上がっていたRK3399搭載SBCとか、駆逐されそうな予感しかしません。
今後の生き残りはフルスペックのUSB3.0とか、USB3.1/3.2への対応、そして「Raspberry Pi」シリーズにないPCIeスロットなどのインターフェースでの差別化が鍵を握りそうです。
関連リンク
Raspberry Pi 4 – 製品ページ
Raspberry Pi 4 on sale now from $35 – 公式ブログ
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