2019年8月12日、中国深センの組み込み向けボード開発メーカーのEmbest(ブランド名はAVNET)が、NXP「i.MX 8M」を搭載したSBC(シングルボードコンピューター)「MaaXBoard」を発売しました。
スペック
model | MaaXBoard |
メーカー | Embest |
発売日 | 2019/08 |
価格 | 60ドル |
価格(日本円) | |
CPU | NXP i.MX 8M(4コア) (A53 x 4) |
GPU | GC7000Lite |
NPU | |
メモリー | 2GB DDR4 |
サポートOS | Android 9 Yockt |
有線LAN | 1GbE x 1 |
Wi-fi | 802.11 ac |
Bluetooth | 4.2 |
チップ | AR8035(LAN) BD71837(電源) AW-CM256SM(Wi-fi) |
ストレージ | eMMC microSD |
USB | 3.0 x 2 |
GPIO | 40pin x 1 |
映像 | HDMI(2.0a 4K/60Hz) MIPI-DSI x 1 |
カメラ | MIPI-CSI x 1 |
オーディオジャック | × |
その他インターフェース | SAI connector(12pin x 2) |
消費電力 | 平均2.5W |
電源 | 5V / 3A(Type-C) |
幅 | 85mm |
奥行き | 56mm |
高さ | 12mm |
その他 |
特徴
「MaaXBoard」は前述の通り、SoCにNXP「i.MX 8M」を搭載しています。
NXPのSoCはどちらかというと産業向けで、搭載したSBCはAmlogic社やRockchip社のSoCを搭載したものに比べて高価になることが多く、がじぇっとりっぷの勝手基準である100ドルを超える製品ばかりとなり、あまり紹介する機会がありません。
“i.MX”シリーズは、Cortex-A9の「i.MX 6」、Cortex-A7の「i.MX 7」、Cortex-A53、Cortex-A72、Cortex-A35の「i.MX 8」と言った具合に分かれています。
「i.MX 8」シリーズはコアの構成やインターフェースの違いなどで5つのモデルがあります。
「i.MX 8M」は最上位の無印「i.MX 8」に次ぐ上から2番めにあたり、CPU部分は4コアのCortex-A53と1コアのCortex-M4Fからなっています。
ブロックダイアグラム図から見るに、インターフェースはUSB3.0 x2やHDMI2.0aなど主要なものに加え、PCIe 2.0も1+1の計2レーン持っています。
NXPのSoCは前述の通り産業グレードとなっており、稼働温度はコンシューマー向けでも0℃〜95℃、産業向けでは−40℃〜105℃となっています。
ちなみにRockchip RK3399は0℃〜80℃です。
CPU温度は簡単に60℃や70℃まで上がる上、屋外向けに防塵ファンレス構造にしたりすると、80℃を超えてもおかしくありません。
そのような状況で継続して稼働することが保証されているのはひとつの強みと言えます(が、高価な理由でもあります)。
なお、「MaaXBoard」の稼働温度範囲は0℃〜70℃です。
また、NXPのSoCは同等スペックであれば他社に比べて省電力なようで、この点も強みですね。
「MaaXBoard」に話を戻すと、SoCが「i.MX 8M」であること以外はスタンダードというか、「Raspberry Pi」を意識した構成をしています。
下記のような比較表まで用意するくらいには意識しているようです。
USBが3.0だったり、HDMIが4K対応だったりと、「Raspberry Pi 3B」に対してはかなり優位となっています。
消費電力については「Raspberry Pi 3B」の6Wに対し「MaaXBoard」は2.5Wとかなり低くなっています。前述の省電力性が数字にはっきりと出ていますね。
まぁ、今となっては世間が比較対象に選ぶのは「Raspberry Pi 4」でしょうから、スペック・インターフェースについてはかなり厳しい戦いになるでしょう。
ちょっとぼやけた画像になってしまいますが、インターフェースは1GbE LAN、USB3.0 x2、HDMI、ラズパイ互換の40pin GPIOなどです。配置も他社のSBCに似たものになっており、あまり違和感は感じません。
メモリは2GB DDR4、ストレージはmicroSDです。microSDスロットのところにeMMCが付けられるようなことが書かれていますが、まぁ普通はmicroSDのままにするでしょう。
電源はUSB Type-Cからで、給電専用となります。入力は5Vのみに対応しています。
変わっているのがWi-fiで、Azurewave社のAW-CM256SMというチップが使われています。
ざっくり調べた範囲では中身はCypress CYW43455(Broadcom BCM43455の同等品)が使われているようです。
上記インターフェース画像にアンテナ端子が見当たりませんが、Wi-fiチップの下にある横に細長い青い棒が、セラミックアンテナ(Rainsun AN-1003)となっています。
他のSBCにないものとして、SAI(多分Serial Audio Interfaceの略)コネクタというものがあります。
ブロックダイアグラム図から見るに、2つあるコネクタのどちらかはS/PDIFが使えるようです。もう片方は多分入力側です。
「MaaXBoard」の画像は、一つ古いバージョンも出回っており(というか、公式サイトでも注釈なしに併用されています)、こちらは右上のGPIOコネクタがありません。
スペックシートなどはこちらの古い方をベースに書かれているようで、上記インターフェース画像における右上のGPIOについては詳細が不明です。
裏側(これも古いバージョンですが)には何もありません。
新しいバージョンの裏側の画像もありますが、かなり小さいものなので、あえて古いバージョンのものを掲載しています。
新しいバージョンでも裏側には何もありません。
メーカー側からみた「MaaXBoard」の位置づけは、エッジ端末とIoTクラウドの間に入るゲートウェイの役割となっています。
用途としてはホームオートメーション、HMI(Human-Machine Interface)、ストリーミングデバイス、自販機など。
前述のゲートウェイとは異なる使い方ですが、同じ資料上に書かれているので、どちらも用途のうちなのでしょう。
まとめ
前述の通り、NXP系SBCは100ドルを超える場合が多いのですが、「MaaXBoard」は60ドルとかなり安価になっています。
インターフェースもかなり豪華ですし、他社SoCを搭載するSBCとも十分競争できる内容だと思います。
欲を言えば、ストレージがmicroSDだけなのは耐久面で難があるので、まったく使われていない「i.MX 8M」のPCIeを活用して、裏側にM.2 SATA端子を置くとかすれば、もっと魅力が高まったんじゃないかなぁと。
関連リンク
Raspberry Pi 3B(made in JAPAN) 電源セット
MaaXBoard – Embest Technology
A new generation SBC – MaaXBoard is Available to order – ニュースリリース
MaaXBoard, a single board computer based on NXP i.MX 8M solution for iot application-from embest – SlideShare
ドキュメント – dropbox
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