NiPoGi「E3B」は、Ryzen 7 5700U、5825U、またはRyzen 5 7430Uを搭載した、3万円台のミニPCです。
古い世代のアーキテクチャですが、現在でも中程度の負荷の作業はこなせるだけの性能を持っています。
今回はRyzen 7 5700U・16GB+512GBモデルを提供していただいたので、実際にどの程度使えるのかをレビューしていきたいと思います。
当ブログの方針として、悪い点も包み隠さず書いていきます。
また、機材を提供いただいたNiPoGi様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
NiPoGi E3B

■ NiPoGi E3B | |
CPU | Ryzen 7 5700U Ryzen 7 5825U Ryzen 5 7430U |
---|---|
メモリ | 16GB DDR4-3200 |
ストレージ | 512GB SATA SSD |
インターフェース | USB Type-C(Gen2)×1 USB3.2 Gen2×2 USB3.2 Gen1×4 HDMI 2.0 DisplayPort 1.4b 1GbE 有線LAN オーディオジャック |
wi-fi | Wi-fi 6+BT5.2 |
サイズ | 126×126×44.2mm |
重さ | 520g |
GoodPoint
✔ 価格性能比が高い
✔ OEMライセンス
✔ USBが7ポートと多い
✔ M.2 2280 SSD×2スロット
BadPoint
✖ ファンがややうるさめ
✖ 規格が古め
パッケージ
・電源アダプタ
・電源ケーブル
・HDMIケーブル
・VESAマウンタ
・マニュアル
・ネジ類
「E3B」はオーソドックスな電源アダプタスタイルです。
「E3B」のインターフェース
・電源ボタン
・オーディオジャック
・USB3.2 Gen2×2
・USB3.2 Gen2 Type-C
・USB3.2 Gen1×4
・1GbE 有線LAN
・DisplayPort 1.4b
・HDMI 2.0
・電源端子
「E3B」の内部
内部はM.2 SSD(2280)が2スロット、Wi-fiカード、メモリが2スロット。
ストレージはGen3/SATA+SATAで、メモリはDDR4-3200までです。
Ryzen 7 5700Uが2020年11月発表のZen2アーキテクチャCPUとあって、規格的には世代がやや古めですね。
なお、ラインナップのRyzen 7 5825UおよびRyzen 5 7430Uは一つ新しいZen3アーキテクチャです。
ファンは75mm弱。
左右排気となっています。
「E3B」のパフォーマンス
「E3B」の搭載CPUはRyzen 7 5700U。Zen2アーキテクチャで8コア16スレッドです。
ベンチマークは標準の16GB×1と、デュアルチャネルな16GB×2で実施しています。
総合
PassMarkスコアは公式平均がシングル2568、マルチ15691なので、「E3B」のスコアはかなり高め。
格安ミニPCで定番のIntel N100と比べると、3倍弱の差があります。
最新のミニPCに比べればさすがに低いものの、「E3B」は安価な3万円台PCなので、価格に対するスコアは高いと言えます。
しかしアーキテクチャが古いので、シングルスレッドスコアはワンランク劣っています。
CPU


上段:マルチスレッド、下段:シングルスレッド
Ryzen 7 5700Uは以前にDELL「Inspiron 5515」でレビューしていますが、「Inspiron 5515」に比べるとスコアはやや控えめ。
GPU


しかしながらグラフィックスコアでは「Inspiron 5515」と逆転しているので、チューニングの差とみることができます。
ストレージ
「EQi12」のストレージはモデル名が表示すらされません。本当に大丈夫…?
内部を確認したところ、SHARETONIC SS2280MAP51200となっています。謎の中華メーカー製、容量512GBのSATA SSDです。
実際の計測では、リードは551MB/s。ライトは459MB/s。
SATA SSDとしてはライトがちょっと遅いかなーくらいで他に気になるのはランダムリードの遅さくらいでしょうか。
外観
パッケージ
外箱はシンプルな茶箱。
底面にはスペックラベルが張られています。
スペックはチェックマークではなく塗りつぶされています。
また、技適番号も記載されています。
参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(219-248250)
が、記事執筆時点では技適番号で検索してもヒットしません。
メーカーに確認したところ、申請は正しく行われ、反映が遅れているとのことでした。
パッケージ内容。
付属品
HDMIケーブルは汎用品。
電源アダプタはミッキープラグ。
出力は19V/3.42A(=64.98W)でした。
VESAマウンタと、マウント用のネジ。
マニュアルは日本語ページあり。
一部中華フォントが残っているのと、文言の一部が機械翻訳のような雰囲気となっています。
「放置すると世界的にこれが”正しい日本語の漢字”と思われるようになる」という意見を見てからは、がじぇっとりっぷでは中華フォントについては指摘することにしています。
筐体
インターフェースはUSBがたっぷり。
前面はType-C含めて3ポートともUSB3.2 Gen2(10Gbps)、背面は4ポートともUSB3.2 Gen1(5Gbps)です。
映像出力はHDMI、DisplayPort、Type-Cによるトリプルディスプレイに対応しています。
LANポートには「セットアップ時にLAN接続していると、更新がかかってセットアップ時間が延びるから、先にセットアップをしてね」といったことが書かれたシールが貼られています。
左右は排気口。
前後の画像でも映っていますが、上部が吹き抜けの吸気口となっています。
天板にも「LANにつなぐ前にセットアップしてね」の注意書き。
これだけ念入りに注意してるってことは、これでクレームが来るんだろうなぁ…
底面には吸気口らしき穴。
底面シールにも技適番号。
重さは本体が約546gでした。
内部構造
ねじはゴム足の下に隠されています。
面白いのが、皿ネジではなく鍋ネジが使われているところ。
蓋を開けると全体を覆うプレート。
…えっ、これ、吸気口の意味ある…?
プレートも外すと、ようやく内部にアクセスできました。
ちなみにこのプレート、SSDとメモリの形にへこんでいるのでヒートシンクのように見えますが、SSDやメモリに接触していないので、ただただエアフローの邪魔をしているだけという。
おそらくですが、筐体が樹脂製で天板が吹き抜けで歪みに弱い構造なので、このプレートで剛性を確保しているのだと思われます。
ストレージ。
奥にもSSDスロット(SATAのみ)があり、デュアルストレージに対応しています。
メモリはKINSOTIN(金士泰)の16GB DDR4-3200。
メーカー名で検索しても、ヤフオクとフリマしかヒットしない、謎メーカーです。
Crucialのメモリ(奥)と比べると、チップコンデンサがケチられていて、かなりお粗末なつくりであることが分かります。
NANDのプリント位置がちぐはぐなので、リマークチップを使っている可能性もありますね。
ボードを取り出したところ。
ファンは左右方向の排気となっています。
つまり、背面の通気口は吸気用ってことですね。
筐体天面部。
上部の細いスリットからファンに空気を取り込む構造になっています。
背面と合わせて十分な量の吸気が行えるようになっていますが、狭くて比較的距離のあるスペースを空気が通るため、騒音を生む原因にもなっています。
あとついでに、Wi-fiとBluetoothアンテナはフロントの空きスペースに張られています。
確かにこの位置だとふさがれにくいので、一番安定して通信できますね。
システム
起動前
UEFIはBIOSスタイル。
恒例のバックアップ。
使用したのは「Macrium Refrect Free」で、バックアップサイズは41.63GBでした。
セットアップは最初からローカルアカウントでのセットアップが可能でした。
システム情報
デスクトップはいたって普通。プリインストールアプリもありません。
OSはWindows 11 Pro 24H2。
ライセンスは”OEM_DM“、正規のOEMライセンスでした。
HWiNFOでみるシステム情報。
CPU詳細。TDPは15W、PL1は28W、PL2は35Wに設定されています。
ゲームベンチマーク
レビュー機のスペック
レビュー機のスペックは以下の通り。
CPU | Ryzen 7 5700U |
---|---|
グラフィック | Vega 8 |
メモリ | 16GB×1/2 |
ストレージ | 512GB SATA SSD |
[中量級] Street Fighter VI
2023年6月に発売し、全世界で400万本(2024年9月時点)を売り上げたストリートファイター6は、ベンチマークの起動どころか、シェーダーコンパイルまでもたどり着けず。
[中量級] FF XIV 暁月の終焉
設定 | メモリ | スコア | FPS | 評価 |
---|---|---|---|---|
1920×1080 最高品質 | 16GB×2 | 3227 | 22.15fps | 設定変更 |
16GB×1 | 1897 | 12.63fps | 設定変更 | |
1920×1080 高品質 | 16GB×2 | 4190 | 29.11fps | 普通 |
16GB×1 | 2491 | 16.91fps | 設定変更 | |
1920×1080 標準 | 16GB×2 | 5289 | 37.27fps | 普通 |
16GB×1 | 3093 | 21.11fps | 設定変更 | |
1280×720 高品質 | 16GB×2 | 7295 | 46.54fps | やや快適 |
16GB×1 | 4544 | 31.86fps | 普通 | |
1280×720 標準 | 16GB×2 | 7524 | 54.45fps | やや快適 |
16GB×1 | 5364 | 37.99fps | 普通 |
中量級タイトルではデュアルチャネルにすれば、設定次第ではFHD(1080p)でも30FPS以上でプレイできますが、ゲーム体験はいまいちになるでしょう。
[重量級] FF XV Windowsエディション
設定 | メモリ | スコア | 評価 |
---|---|---|---|
1920×1080 高品質 | 16GB×2 | 1384 | 動作困難 |
16GB×1 | 780 | 動作困難 | |
1920×1080 標準品質 | 16GB×2 | 1927 | 動作困難 |
16GB×1 | 11171 | 動作困難 | |
1920×1080 軽量品質 | 16GB×2 | 2448 | 重い |
16GB×1 | 1467 | 動作困難 | |
1280×720 標準品質 | 16GB×2 | 3120 | 普通 |
16GB×1 | 1954 | 動作困難 | |
1280×720 軽量品質 | 16GB×2 | 3893 | 普通 |
16GB×1 | 2369 | 重い |
重量級タイトルはさすがに無理ですね。
消費電力・稼働時間・騒音・温度
消費電力
アイドル時 | 5.5W |
---|---|
画面オフ時 | 5.0W |
スリープ時 | 0.7W |
CINEBENCH(S) | 22.3W |
CINEBENCH(M) | 46.9W/38.4W |
最大 | 49.4W/39.9W |
「EQi12」の消費電力は最大で49.4Wと、50Wを切っています。
前述したようにPL1は28W、PL2は35W(5秒)と設定されているため、高負荷をかけると5秒間だけ高消費電力で、その後は40W未満で推移します。
ワットパフォーマンスもそこそこ高く、例えばGEEKOM「A7」(Ryzen 9 7940HS)はCINEBENCH(マルチスレッド)で消費電力1.8倍、スコア1.8倍なので、ワットパフォーマンスは同等といえます。
騒音
状況 | 音量 | 聞こえ方 |
---|---|---|
電源オフ | 35.1dB | |
アイドル | 36.2dB | 耳を近づけるとかすかに音がする |
最大 | 40.7dB | |
最大(側面) | 41.2dB | 遠くのドライヤー |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | |
---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | |
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | |
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
音はややうるさめ。
ファン音もですが、前述の通り吸気スロットが狭く、そこも音の発生源となっています。
高周波成分が少なく、耳障りな音ではないのが救いですね。
温度
CPU温度は最大で85℃弱。
高負荷のベンチマークを連続で回してようやく一瞬だけこの温度で、すぐに80度前後まで落ちたので、温度面を心配する必要はなさそうです。
まとめ
「E3B」の記事執筆時点での価格は42,800円に20%オフクーポンで34,304円。さすがに3万円台前半は安いです。
格安ミニPCの定番であるIntel N100も軽作業なら使えるCPUですが、上で書いたようにCPUのマルチ性能は3倍弱、グラフィックも3~4倍の性能差があって、価格は2倍程度なので、「E3B」のコスパの良さが分かるかと。
普段はスマホメインで、PCはそこまで使わないかなぁという人や、サブデスクトップが欲しいという人には良さそうです。
消費電力が高くないので、常時動作の簡易サーバーとして使うのもありですね。
関連リンク
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | NiPoGi | ||
---|---|---|---|
モデル名 | E3B | ||
CPU | Ryzen 7 5700U | ||
GPU | Vega 8 | ||
メモリ | 16GB×1 | 16GB×2 | |
ストレージ | SATA 512GB | ||
PassMark 9 | Total | 4005.1 | 4625.9 |
CPU Single | 2959 | 2977 | |
CPU Multi | 15792.7 | 18417.3 | |
2D | 731.8 | 741.3 | |
3D | 1618.3 | 2904.4 | |
Memory | 2193.9 | 2494.1 | |
Disk | 2873.9 | 3866.9 | |
PassMark 11 | Total | 2193 | 2756 |
CPU Single | 2707 | 2687 | |
CPU Multi | 16247.8 | 17757.1 | |
2D | 509.7 | 587.6 | |
3D | 1741.6 | 2773.6 | |
Memory | 2495.3 | 2769.1 | |
Disk | 3876.8 | 3859.1 | |
3DMark | TimeSpy | 940 | 1491 |
Graphics | 820 | 1312 | |
CPU | 5653 | 6596 | |
FireStrike | 2236 | 3720 | |
Graphics | 2517 | 4155 | |
Phisics | 17223 | 18072 | |
Combined | 712 | 1250 | |
NightRaid | 9522 | 14908 | |
Grapihics | 9445 | 16079 | |
CPU | 9989 | 10555 | |
WildLife | 4661 | 7864 | |
Graphics | 27.91 fps | 47.10 fps | |
SteelNomad | 135 | 236 | |
Graphics | 1.36 fps | 2.37 fps | |
SteelNomadLight | 795 | 1213 | |
Graphics | 5.89 fps | 8.99 fps | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 67.38 fps | 85.45 fps |
CPU(M) | 1373 cb | 1381 cb | |
CPU(S) | 177 cb | 185 cb | |
CINEBENCH R23 | CPU(M) | 8233 pts | 8252 pts |
CPU(S) | 1247 pts | 1241 pts | |
CINEBENCH 2024 | CPU(M) | 501 | 519 |
CPU(S) | 73 | 73 | |
CrystalMark | Mark | 544029 | 572110 |
ALU | 232554 | 230156 | |
FPU | 155412 | 149447 | |
MEM | 87503 | 117936 | |
HDD | 44552 | 45363 | |
GDI | 15732 | 17338 | |
D2D | 5940 | 6837 | |
OGL | 2336 | 5033 | |
CrystalMark Retro | All | 3403 | 3443 |
CPU-Single | 7680 | 7580 | |
CPU-Multi | 65620 | 64787 | |
2D-text | 7052 | 7174 | |
2D-square | 12643 | 12509 | |
2D-circle | 10854 | 11071 | |
2D-image | 11263 | 11426 | |
3D-scene1 | 100 | 100 | |
3D-scene2 | 100 | 100 | |
3D-scene1-CPU | 69 | 70 | |
3D-scene2-CPU | 51 | 55 | |
GeekBench5 | Single | 1172 | 1190 |
Multi | 5359 | 6829 | |
OpenCL | 11766 | 14570 | |
OpenCL(dGPU) | – | – | |
GeekBench6 | Single | 1576 | 1627 |
Multi | 5383 | 6976 | |
OpenCL | 12584 | 15299 | |
OpenCL(dGPU) | – | – | |
PCMark | ALL | 4659 | 4984 |
Essensial | 8166 | 8248 | |
Productivity | 7405 | 7562 | |
DigitalContent | 4540 | 5387 | |
VR Mark | 1113 | 1990 | |
DQ(DX9) | 1920・最高 | 5719 快適 | 9063 とても快適 |
1280・標準 | 9397 とても快適 | 12317 すごく快適 | |
FF XIV(DX11) 暁月の終焉 | 1920・最高 | 1897 設定変更 12.63 fps | 3227 設定変更 22.15 fps |
1920・高 | 2491 設定変更 16.91 fps | 4190 普通 29.11 fps | |
1920・標準 | 3093 設定変更 21.11 fps | 5289 普通 37.27 fps | |
1280・高 | 4544 普通 31.86 fps | 7295 やや快適 46.54 fps | |
1280・標準 | 5364 普通 37.99 fps | 7524 やや快適 54.45 fps | |
FF XIV(DX11) 黄金の遺産 | 1920・最高 | 1096 設定変更 | 1977 設定変更 |
1920・高 | 2158 設定変更 | 3874 設定変更 | |
1920・標準 | 2360 設定変更 | 4087 普通 | |
1280・高 | 3750 設定変更 | 5238 普通 | |
1280・標準 | 4225 普通 | 5711 普通 | |
FF XV(DX11) | 1920・高 | 780 動作困難 | 1384 動作困難 |
1920・標準 | 1171 動作困難 | 1927 動作困難 | |
1920・軽量 | 1467 動作困難 | 2448 重い | |
1280・標準 | 1954 動作困難 | 3120 普通 | |
1280・軽量 | 2369 重い | 3893 普通 | |
ブラウザ | jetstream2 | 201.482 | 237.585 |
BaseMark | 1212 | 1340 | |
WebXPRT4 | 220 | 239 | |
MotionMark | 1492.6 | 2037.79 | |
SpeedMeter2.0 | 227 | 312 | |
SpeedMeter3.0 | 13.7 | 19.3 | |
Octane | 59408 | 65615 | |
Octane Multi | 526316 | 676918 |
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