AIの時代を見据えて。UPboardのAI開発キット「UP AI Edge」がkickstarterに登場

クラウドファンディング

SBC(シングルボードコンピューター)メーカーの一つ、UPboardからAI開発キット「UP AI Edge」がクラウドファンディングサイトのkickstarterに登場しました。
もともとUPboardの公式ページ上でファンディングを予告されていたものですが、いざ始まってみればボードの種類が増えていて全く別物で、しばらく悩みました。

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スペック

modelUP Core PlusUP squared(AI)
メーカーUP board
発売日2018/05
価格$185(E3930+2GBmem+32GB)
$232(E3940+4GBmem+64GB)
$360(E3950+8GBmem+64GB)
$395(E3950+8GBmem+128GB)
$249
価格(日本円)
CPUIntel Atom x5-E3930(1.8GHz)
Intel Atom x5-E3940(1.8GHz)
Intel Atom x7-E3950(2.0GHz)
Intel Celeron N3350(2.6GHz)
Intel Pentium N4200(2.5GHz)
Intel Atom x7-E3950
GPUIntel HD 500 GraphicsIntel Gen9 HD
メモリー2〜8GB LPDDR4-24004GB LPDDR4
サポートOSWindows 10
Windows IoT Core
Linux(Ubuntu,ubilinux,Yocto)
Android 6.0
有線LAN×1GbE x 2
Wi-fi802.11ac 2×2×
Bluetooth4.2×
チップ
ストレージ32~128GB eMMC64GB eMMC
SATA3 x 1
USB2.0 x 2(pin)
3.0 x 1
3.0 x 1(micro)
2.0 x 2(pin)
3.0 x 3
3.0 x 1(micro)
GPIO100pin x 240pin x 1
60pin x 1
映像DP(4K/60Hz)
DSI / eDP
HDMI(1.4b 4K/30Hz)
DP(1.2 4K/60Hz)
カメラMIPI-CSI(2lane)
MIPI-CSI(4lane)
MIPI-CSI(2lane)
MIPI-CSI(4lane)
オーディオジャック××
その他インターフェースRTC batterymini-PCIe
M.2 2230
消費電力
電源DC 12V/6ADC 5V/6A
90.0mm90.0mm
奥行き56.5mm85.60mm

特徴

「UP AI Edge」の構成はちょっと複雑で、kickstarterのページを見てもすぐに頭には入ってきません。
キットは大きく分けて、ベースボード、拡張ボード、AIボードの3種類から成っています。

まず、キットのベースとなるベースボードには「UP Core Plus」と「UP Squared」の2種類があります。
拡張ボードは3種類(“AI Plus”、”Net Plus”、”Vision Plus”)、AIボードは3種類(“AI Core”、”AI Core M2(x1)”、”AI Core M2(x2)”)と、全部で8種類のボードが登場します。
このうち、”AI Core M2(x1)”、”AI Core M2(x2)”のふたつは単体販売のみです。

「UP Core Plus」はベースボードとなる「UP Core Plus」と拡張ボードのいずれか、AIボード(AI Core)の3つのパーツで構成されます。
3つのパーツの接続は以下のようになります。

「UP Core Plus」← 100pin x2 → 拡張ボード ← mini-PCIe → AIボード

さらに、「UP Core Plus」はCPU、メモリ、ストレージの組み合わせで4モデルあります。
なお、拡張ボードのVision PlusのみAIチップを搭載しているので、AIボードは不要となります。

対して「UP Squared」はスペック固定の1モデルのみで、ボード上にmini-PCIeスロットを備えているため、ベースボードとAIボードの2つで構成できます。

「UP Squared」← mini-PCIe → AIボード

以上のことを頭に入れておかないと、頭の中がこんがらがってしまいます。
なお、アクセサリとしてUSBカメラもありますが、記事内では割愛します。

ベースボード

「UP Core Plus」

「UP Core Plus」はクレジットカードサイズ(53.98mm x 85.60mm)に近い、56.5mm x 90.0mmの大きさのSBCです。

よくあるGPIOヘッダはなく、代わりに100pinのドッキングコネクタが裏面に2つついています。
また、microSDスロットがないため、ストレージを増やす場合はUSBメモリや外付けHDD/SSDを使う必要があります。

この手のSBCには珍しく、HDMIではなくDisplayPortが搭載されています。
裏面にはオンボードでwi-fiチップが搭載されていますが、おそらく技適はありません。

「UP Squared」

「UP Squared」は「UP Core Plus」より縦に大きい、85.6mm x 90.0mmのほぼ正方形のSBCとなります。

こちらはこちらで面白い構成をしており、LANポートは2つ、mini-PCIeにM.2 2230、SATAポートと、やたらと使い勝手が良さそうなインターフェースが揃っています。

また、「UP Squared」については固定のキットしか用意されていません。もともとこのキットが公式ページ上に掲載されていたものとなります。

両者ともUSB端子はUSB2.0がピンヘッダのみ、USB3.0がType-Aとmicro(OTG)の2ポートとなっています。
また、intel CPUなので、Windows 10が動きます。AIボードとかなくても、単体で超小型のWindowsマシンとなるのは魅力的ですね。

拡張ボード

拡張ボードは「UP Core Plus」と2つの100pinコネクタで接続されるボードで、インターフェースの増設と固有機能の追加という2つの役割があります。

NetPlus

Net Plusは名前の通り、ネット機能の増設がメインです。
4つのLANポートとマイクロSIMスロットを備え、SATAポートとUSB3.0、mini-PCIeスロットを増設します。

有線LAN1GbE x 4
チップIntel l211-AT x 4
USB3.0 x 1
GPIO100pin x 2
インターフェースmini-PCIe x 1
uSIM x 1
SATA x 1
90.0mm
奥行き56.5mm

AI Plus

AI Plusは2015年にIntelが買収したFPGA(field-programmable gate array)大手のAlteraの手がける低コストFPGAを搭載しています。
多彩な映像入力(とデータ入力)を備えているため、ソフトウェアではなく、もっとハードウェアに近いところでの映像処理を想定しているものと思われます。

FPGAIntel® Cyclone™ 10GX F672
(105KLE, 150KLE, 220KLE)
MAX 10 V36 PWR Sequence
メモリー1GB DDR3-1866
ストレージ1x SPI-Flash 512 Mb
有線LAN1GbE x 1
チップRealtek 8111G
映像MIPI-CSI(4lane)
HDMI-IN
DP-IN
カメラLVDS-IN
USB3.0 x 1
3.1 x 1(Type-C)
インターフェースmini-PCIe x 1
電源DC 12V
90.0mm
奥行き56.5mm

Vision Plus

「Vision Plus」は実のところ、まだ製品写真が出ていません。
画像はCGモデルのみですが設計は固まっているようで、Intel® Movidius™ Myriad™ 2(詳細は後述)を3つ搭載しています。

VPUIntel® Movidius™ Myriad™ 2 x 3
メモリー512MB
有線LAN1GbE x 1
USB3.0 x 2
インターフェースmini-PCIe
90.0mm
奥行き56.5mm

AIボード

AIボードには「AI Core」と「AI Core M2」がありますが、違いはフォームファクターとVPUの数となります。
下記は「AI Core」のスペックとなります。

VPUIntel® Movidius™ Myriad™ 2 2450
メモリ512MB
対応フレームワークTensorFlow
Caffe
フォームファクターmini-PCIe
30mm
奥行き51mm
システム要件Ubuntu 16.04
1GB メモリ
4GB ストレージ
mini-PCIeスロットがあること

「AI Core M2」ではフォームファクターがM.2 B+M-Keyとなり、VPUの数が2つ(1つのモデルもあり)となります。
こちらは既存のPCに組み込んで使うもので、キットではなく単体販売となっています。

M.2スロットと言えば先日紹介した「NANOPC-T4」がRK3399機ながらM.2 2280スロットを持っているので、組み合わせて使えたら面白そうです。

まとめ

今回のキットの鍵となるのがVPU(ビジョン・プロセッシング・ユニット)の”Intel® Movidius™ Myriad™ 2″で、AI機能の核となります。

開発元のMovidius社はアイルランドの半導体メーカーで、2016年9月にIntelに買収されています。
“Myriad 2”は、物体認識やジェスチャー認識に空間認識などの画像解析に適したICチップです。

知られたところでは小型ドローンのDJI Sparkに搭載されており、このチップによって物体検知・回避、ジェスチャー認識を行っています。

映像からの認識・解析はこれからを支える技術の一つとなることは確実で、例えば簡単なところでは顔認識、ちょっと複雑になると表情分析といったことに加え、その先には自動運転技術などが控えています。

「UP AI Edge」はまさに今のニーズにあったチョイスと言えます。

自動運転レベルになると技術的には難しい話になりますが、”Myriad 2″はGoogle謹製のディープラーニングライブラリTensorFlowに対応しており、AI開発の第一歩としては(エンジニア視点では)そこまで敷居は高くありません。
TensorFlowの入門資料は日本語記事が結構ヒットするので、試しに使ってみる程度では資料に不自由することはないでしょうし、応用編に進む人は英語資料に当たるようになると思うので、こちらもそう問題はないでしょう。

「UP AI Edge」、これからのIT世界を生き抜く方法を考えている人にはいいかもしれません。

なお、プランが多いため個々の価格は省略しますが、ベースボードの「UP Core Plus」は159ユーロ(約2万円)〜339ユーロ(約4万3千円)、拡張ボードなどを含めたキットが319ユーロ(約4万円)〜679ユーロ(約8万7千円)です。
ファンディング終了は2018年7月1日となっています。

関連リンク


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UP AI Edge – Artificial Intelligence On The Edge – kickstarter ※英語
UP AI Edge – UPboard ※英語
UP Squared AI Vision kit – UPboard ※英語

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