2019年4月16日、SAPPHIREテクノロジーはAMD Ryzen Embedded V1000シリーズならびにR1000シリーズをオンボード搭載し、デュアル10GbE NICを備えたMini-ITXマザーボード「IPC-FP5V-10GE」「IPC-FP5R-10GE」を(組み込みメーカー向けに)発売しました。
型番は「IPC-FP5V-10GE」「IPC-FP5R-10GE」でいいと思うのですが、公式サイトには「AMD FS-FP5V 10GbE」という表記も見られます。
スペック
メーカー | Sapphire | |
型番 | IPC-FP5V-10GE | IPC-FP5R-10GE |
価格 | ||
発売日 | ||
サイズ規格 | Mini-ITX | |
CPU | Ryzen V1000 | Ryzen R1000 |
チップセット | ||
メモリインターフェイス | DDR4-3200 | DDR4-2400 |
メモリスロット | SO-DIMM x 2 | |
メモリ最大 | 32GB | |
ECC対応 | ○ | |
SATAポート数 | 2 | |
M.2 | M-Key(2280) x 1(PCIe x2/SATA3) E-Key(2230) x 1 | |
mSATA | × | |
USB2.0(内部) | 4 | |
USB2.0(外部) | 2 | |
USB3.0(内部) | × | |
USB3.0(外部) | 2(Gen2) | |
USB type-C | × | |
LAN | 10GbE x 2 (Marvell 88X3310) | |
Wi-fi | E-key | |
Bluetooth | E-key | |
D-Sub | × | |
DVI | × | |
HDMI | × | |
4K対応 | × | |
DisplayPort | 4(1.4) eDP x 1(DPx1と排他) | 3(1.4) eDP x 1(DPx1と排他) |
シリアルポート | 2(port) 2(pin) | |
S/PDIF | × | |
オーディオジャック | 3 | |
サウンドチップ | ALC662 | |
PCI-Eスロット | PCIe x 8 x 1 | |
eSATA | × | |
赤外線 | × | |
Optaneメモリ対応 | × | |
電源 | 12V | |
付属品 | ||
その他 | GPIO(10pin) |
特徴
2018年2月21日、AMDは組み込み向けCPUとしてAMD Ryzen Embedded V1000シリーズを発表、つい先日の2019年4月17日には後継となるAMD Ryzen Embedded R1000シリーズを発表しました。
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | 標準クロック | 最大クロック | L2キャッシュ | L3キャッシュ | 内蔵グラフィック | GPU Max Freq | GPU CU | TDP |
AMD Ryzen Embedded V1807B | 4 (8) | 3.35 GHz | 3.8 GHz | 2MB | 4MB | AMD Radeon Vega 11 Graphics | 1300 MHz | 11 | 35-54W |
AMD Ryzen Embedded V1756B | 3.25 GHz | 3.6 GHz | AMD Radeon Vega 8 Graphics | 1100 MHz | 8 | 35-54W | |||
AMD Ryzen Embedded V1605B | 2.06 GHz | 3.6 GHz | 12-25W | ||||||
AMD Ryzen Embedded V1202B | 2 (4) | 2 GHz | 3.6 GHz | 1MB | AMD Radeon Vega 3 Graphics | 3 | |||
AMD Ryzen Embedded R1606G | 2.6 GHz | 3.5 GHz | 1200 MHz | ||||||
AMD Ryzen Embedded R1505G | 2.4 GHz | 3.3 GHz | 1000 MHz |
上記の表を見れば分かりますが、後継となるR1000シリーズの方がいいのかというとそういうわけでもなく、現時点でR1000シリーズは下位にあたる2モデル(どちらも2コア/4スレッド)しか発表されていません。
そのため、下位モデルであればR1000シリーズだけど、4コア/8スレッドの上位モデルはV1000シリーズという、変則的な選択肢となっています。
(「IPC-FP5V-10GE」「IPC-FP5R-10GE」の両方を紹介するのもそれが理由です)
「IPC-FP5V-10GE」の画像です。
反射してプリントが見づらいですが、LANポートの後ろにMarvell社の「88X3310」LANチップが2つ並んでいます。
LR-LINKの1万円切りLANカードなどにも採用されているチップで、Aquantiaと並ぶ、格安10GbEチップと言えます。
PCIeスロットはx8ですが、切り欠きが入っているのでx16カードを挿すことができます。
V1000シリーズはPCIeレーンがGen3 x16なので、あれっ?と思ったのですが、よくよく調べてみると、GFX(グラフィック用?)x8+GPP(内部向け?)x8となっており、PCIeスロットとしてはx8が最大となっていました。
また、組み込み向けらしく、シリアルポートが2ポート+2ヘッダ用意されています。
「IPC-FP5R-10GE」の画像が見当たらず、「IPC-FP5R-1GE」の画像となります。
「IPC-FP5R-10GE」との違いはLANチップ部分くらいだと思います。
「IPC-FP5V-10GE」との一番の違いは、DisplayPortが3ポートになっている点です。
R1000シリーズは最初からPCIeがGen3 x8となっており、PCIeスロットもx8スロットです。
「IPC-FP5R-1GE」は背面画像もあります。
M.2 E-KeyとeDPコネクタがありますが、内容的に「IPC-FP5V-10GE」「IPC-FP5R-10GE」も共通しているものと思われます。
両方を通じてがじぇっとりっぷ的に評価が高かったのが、Wi-fiカードが後付けとなっている点です。
Wi-fiは2019年の後半にもWi-fi 6(802.11 ax)が本格的に普及を始めるので、Wi-fiカードの入れ替えだけで対応できる点、技適を取得したカードを使える点で好感が持てます。
なお、共通仕様としてSATAポートは片方がM.2 M-keyと排他利用となっているため、デュアルストレージまでとなります。
また、電源は12Vで、最大150Wまでとなります。
あと、変わっているのがCPUの脇にある10pinのGPIOヘッダです。SBC(シングルボードコンピューター)ではおなじみですが、マザーボードに搭載されているのは珍しいです。
特に掘り下げての記述がないのですが、Ryzen Embeddedの仕様に「2x UART, 4x I2C, 2x SMBus, SPI/eSPI, I2S/HDA/SW, GPIO」とあるので、この辺りが実装されているものと思われます。
なんかいかにも組み込み向けって感じですね。
まとめ
「IPC-FP5V-10GE」「IPC-FP5R-10GE」はドイツで開催されたEmbedded World 2019(会期:2019年02月26日~02月28日)内で公開されています(初出かどうかまでは分かりませんでした)。
組み込み向け製品となるため、価格については公表されていません。
同メーカー製品では以前紹介したMini-STXサイズのFS-FP5Vが325ドル〜となっています
そこから推測するに、10GbEチップ×2の分を上乗せして、500ドル後半くらいになるんじゃないかなぁと思います。
現在のオンボードCPUマザーボードはCeleronかPentiumを搭載した製品ばかりであり、AMD系はRyzenの前の世代となる「AMD FX」シリーズ搭載のものがありますが、Ryzen世代のものはありません。価格も1万円前後となります。
もちろん10GbEなんてものも搭載していません。
Ryzen Embeddedを搭載したオンボードCPUマザボはこれらの1段上の価格帯を狙える製品だと思いますし、ASRock「DeskMini A300」の大ヒットに見られるように、Ryzen搭載のミニPCというジャンルには強い需要が存在します。
デュアル10GbEという他にない強みを持つ「IPC-FP5V-10GE」「IPC-FP5R-10GE」にも結構な需要があると思うので、メーカーの中の人にはコンシューマー向けの販売を検討して欲しいです。
関連リンク
AMD IPC-FP5V 10GE Mini-ITX – SAPPHIRE
AMD IPC-FP5R 10GE Mini-ITX – SAPPHIRE
コメント