2019年8月1日、Intelは第10世代Coreプロセッサ「Ice Lake」の仕様を発表しました。
発表されたのはTDP15W/28Wの「Ice Lake-U」が6モデル、TDP9Wの「Ice Lake-Y」が5モデルです。
なお、モバイル向けの話であるので、NUC以外のデスクトップにはほぼ関係ありません。
スペック(Ice Lake-U)
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | 標準クロック | 最大クロック(1コア) | 最大クロック(全コア) | L3キャッシュ | 内蔵グラフィック | EU数 | GPU最大クロック | TDP |
Core i7-1068G7 | 4 (8) | 2.3 GHz | 4.1 GHz | 3.6 GHz | 8MB | Iris Plus | 64 | 1100 MHz | 28W |
Core i7-1065G7 | 1.3 GHz | 3.9 GHz | 3.5 GHz | 15W | |||||
Core i5-1035G7 | 1.2 GHz | 3.7 GHz | 3.3 GHz | 6MB | 1050 MHz | ||||
Core i5-1035G4 | 1.1 GHz | 3.7 GHz | 48 | ||||||
Core i5-1035G1 | 1.0 GHz | 3.6 GHz | UHD | 32 | |||||
Core i3-1005G1 | 2 (4) | 1.2 GHz | 3.4 GHz | 3.4 GHz | 4MB | 900 MHz |
スペック(Ice Lake-Y)
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | 標準クロック | 最大クロック(1コア) | 最大クロック(全コア) | L3キャッシュ | 内蔵グラフィック | EU数 | GPU最大クロック | TDP |
Core i7-1060G7 | 4 (8) | 2.3 GHz | 3.8 GHz | 3.4 GHz | 8MB | Iris Plus | 64 | 1100 MHz | 9W |
Core i5-1030G7 | 1.3 GHz | 3.5 GHz | 3.2 GHz | 6MB | 1050 MHz | ||||
Core i5-1030G4 | 1.3 GHz | 48 | |||||||
Core i3-1000G4 | 1.3 GHz | 3.2 GHz | 4MB | 900 MHz | |||||
Core i3-1000G1 | 2 (4) | 1.3 GHz | UHD | 32 |
特徴
「Ice Lake」は以前に紹介したロードマップ内で、2019年2Q登場とされていた、10nmプロセスのプロセッサです。
以前より情報は小出しに出ていましたが、ようやく型番が正式に発表されました(リーク情報はありました)。
CPUのダイ画像です。グラフィック部とCPUコア部はRing(SoC Ring Interconnect)で接続されています。
新しいモデルナンバー
型番はこれまでと異なり、Core i3/5/7-10XXGXという形になっています。
型番の中にはこれまでと同じブランド番号(i3/5/7の部分)、世代(上2桁、これまでは上1桁)、区分番号(下2桁、これまでは下3桁)の他にGPUレベルが追加されました。
代わりに、シリーズを示す「U/Y」の文字が消えたのは、それはそれで不便に感じます。
グラフィック能力も含めてわかりやすくなった型番ですが、このグラフィックを含めるのはAMDの影響なんじゃないかなぁと思っています。
AMDのモバイルプロセッサは正式には「Ryzen 7 3700U with Radeon RX Vega 10」みたいに書くので、グラフィック能力が分かりやすいんですよね。
ただ、RyzenはEU数をそのまま使っていますが、IntelはEU数に基づいて段階分けしているだけで、同じ数字でも同じ性能というわけではありません。
例えば「Core i5-1030G4」と「Core i3-1000G4」は同じG4でも動作周波数は1050MHzと900MHzと異なっており、単純計算でも性能は15%くらいは違っています。
新しい命令セットとAI
「Ice Lake」では新しい命令セットとしてAVX512とVNNIに対応しました。VNNI(Vector Neural Network Instructions)はAVX512の拡張命令で、INT8とINT16の計算を行う命令となります。
このVNNI対応によって、「Ice Lake」は「Intel Deep Learning Boost(DLBoost)」という技術に対応しました。
これは機械学習の2つのプロセス(学習と推論)のうち、推論を高速化する技術で、Cascade Lake(2019年4月に発表されたXeonのコードネーム)から取り入れられています。
この技術により、前世代の「Whisky Lake」に比べて、最大2.5倍のパフォーマンスとなります。
機械学習なんていうと一般には縁が薄いようにも感じますが、たとえば画像編集時にフィルターを高速化するとか写真の自動分類、音声認識などで使われたりします。
向上したグラフィック能力
「Ice Lake」ではグラフィック能力が大幅に向上しています。
画像は1080Pでのゲーム別平均FPSです。青いバーが第10世代のIris Plus、灰色のバーが第8世代のUHD620となっています。
ゲームタイトルは左からCS:GO(カウンターストライク:グローバルオフェンス)、Rainbow Six Siege、Rocket League、Dirt Rally 2.0、World of Tanksです。
かなり向上しているのが分かりますが、「Coffee Lake」世代の「Iris Plus 655」などとの比較が欲しいところです。
AMD Ryzenとの比較は発売までのお楽しみですね。
外部出力はHDMI2.0bとDisplayPort1.4bに対応します。
第8世代の「Whisky Lake」ではHDMI1.4(4K/24Hz)、DPはバージョン不明ながら4K/60Hz対応でした。
HDMI2.0bに対応したことで4K/60Hz(10bit)に対応し、DisplayPortは4K/120Hzまたは5K/60Hzに対応するようになりました。
また、メディアエンコードでは8K/30Hzにも対応しています。
※HDMIは2.0(無印)で4K/60Hz対応、2.0aでHDR対応、2.0bで4K以下でのHDR対応、超横長アスペクト対応、動的映像同期対応となっています。
次世代インターフェース
「Ice Lake」ではThunderbolt3コントローラーがCPU内に内蔵されました。
前述のCPUダイ画像ではこのコントローラーが結構な面積を占めています。
これによって「Ice Lake」搭載ノートは外部コントローラーを追加することなくインターフェースにThunderbolt3を加えることができるようになりました。
これまではCPUとコントローラーの接続にPCIeを使っていたので、dGPUとの排他みたいな感じになっていたので、これからは両方搭載するゲーミングノートが増えるんじゃないでしょうか。
「Ice Lake」はまたWi-fi 6(802.11ax)にも対応しました。
OSI参照モデルでいう第2層(データリンク層、MAC)が内蔵され、第1層(物理層、PHY)の実装だけで済むようになりました。
簡単に言うと、これまでは画像の真ん中の左のカードが必要だったのが、右のカードでよくなり、必要な面積が70%ダウンになります。
薄型化しつつもバッテリー容量を確保するために、マザーボードの小型化が進むノートPCにおいて、必要な面積が減るというのは大きな価値があります。
最大通信速度は2402Mbpsで、これまでのWi-fi 5(802.11ac)の867Mbpsの2.8倍となります。
実際にこの速度で通信することはないのですが、それでも高速化することは間違いないです。
まとめ
ようやく10nmプロセスが出たなぁと思って「Ice Lake」を調べてみたら、思ったより新要素が多くてびっくりでした。
がじぇっとりっぷ的にはThunderbolt3コントローラーを内蔵したことが大きいですね。
Intel CPUを搭載したSBCもあるので、SBCでThunderbolt3が使えるとなると、いろいろと幅が広がります。
Wi-fi 6はルーターのほうがまだラインナップが揃っていません。
総務省資料によると現在は標準化策定の最終段階で、標準化完了は2020年6月予定となっています。技術的な仕様は固まっているので2019年末の年末商戦から対応ルーターが一気に登場するんじゃないかと予想しています。
上記のロードマップがリークした時点では「Ice Lake」の生産量は多くない(limited)となっていましたが、発表時点で35モデルが登場予定となるなど、予想よりは数が出そうな雰囲気です。
メーカー側ではすでにDELLが「XPS 13 2-in-1(7390)」を8月中旬に発売するとアナウンスしています。
気になるのは「Ice Lake-Y」のTDPが9Wと、「Amber Lake-Y」の5Wから大幅に上がった点でしょうか。
高TDP CPUを採用しづらいUMPC界隈では、もうしばらく「Amber Lake-Y」の時代が続きそうです。
関連リンク
Intel Launches First 10th Gen Intel Core Processors: Redefining the Next Era of Laptop Experiences ※英語
第10世代関係リンク一覧 – Intel
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