2020年1月20日、Raspberry Pi財団はマイコンボードの「Raspberry Pi Pico」を発表しました。価格は4ドルです。
国内ではスイッチサイエンスが販売準備中、価格は500円(税込550円)の予定です。
スペック
モデル名 | Raspberry Pi Pico |
---|---|
メーカー | Raspberry |
発売日 | 2021/01 |
価格 | 4ドル |
価格(日本円) | 550円 |
CPU | RP2040 (133MHz M0+ x 2) |
GPU | – |
NPU | – |
メモリー | 264KB SRAM |
サポートOS | – |
有線LAN | – |
Wi-fi | – |
Bluetooth | – |
チップ | – |
ストレージ | 2MB NOR Flash |
USB | 1.1 x 1 |
GPIO | 40pin |
映像 | – |
カメラ | – |
オーディオジャック | – |
その他インターフェース | – |
消費電力 | 90mW |
電源 | microUSB |
幅 | 51mm |
奥行き | 21mm |
高さ | |
その他 | マイコン |
特徴
「Raspberry Pi Pico」はこれまでの「Raspberry Pi」シリーズとは違い、SBC(シングルボードコンピューター)ではなくマイコン(マイクロコントローラー)に分類されます。
マイコンの定義としてよく言われるのが「演算・制御装置(CPU)、メモリ装置(RAM・ROM・フラッシュメモリー)、タイマー回路、入出力回路(I/O)を1つの集積回路に組み込んだもの」です。
「Raspberry Pi Pico」はコントローラーのRP2040に2コアのCortex-M0+(演算装置)、264kBのSRAM(メモリ装置)、30のGPIO(入出力回路)、それにタイマー回路を持っており、マイコンの定義を満たしています。
▲ブロックダイアグラム図を見るとこんな感じになっています。
上の方にClock Generation(クロック生成回路)があり、真ん中あたりに”Timer”が記載されています。
また、「Raspberry Pi Pico」ではブロックダイアグラム図左下のQSPIの先に外部ストレージとして2MBのNORフラッシュ(型番:W25Q16JVUXIQ)がつながっています。
▲なお、マイコンの型番の命名規則はこのようになっているそうです。
▲本体の表裏です。
チップも少なくシンプルですね。
真ん中のRP2040の右上にある黒いチップがフラッシュメモリです。隣の”BOOTSEL”は押すと書き込み内容を消去するもののようです。
▲ピン配置図です。
29本のGPIOと7つのGND、そして電源から成っています。
▲電源はUSBのpin1またはGPIOのpin40から取得します。
赤く塗った部分が電源ですが、USBのPin1とGPIOのPin40は回路がつながっていることが分かります。
動作電圧は1.8~5.5Vなので、乾電池二本でも動かせます。
▲公式での消費電力ベンチマーク(省電力OFF時)では最大でも100mA(@5V)を切っています。
ベンチマークは”Popcorn”というメディアプレイヤーデモ(映像+I2S音声+SDカードアクセス)で行われています。
この数値が高いか低いかといわれると微妙で、CPU部だけの消費電力ではないので比較はしづらいです。
参考までに同じマイコンのESP32は80mA程度(無線LAN非使用時)、STM32はメインストリームのSTM32F1(最大72MHz)で36mA程度とされています。
なお、無線LAN使用時のESP32は瞬間的に500mAを超えるので、無線LANの消費電力がいかに大きいかも分かります。
参考:ESP32 無線 LAN 通信の消費電力分析:Rabbit Note
ちょっと面白いのが、「Raspberry Pi Pico」をUSB接続すると、ストレージデバイスとして認識される点です。
そのままドラッグアンドドロップでプログラムを書き込むことができます。
これまでマイコンといえばシリアル接続してコンソールからとか、開発ツールから書き込みとか、ひと手間ふた手間が必要でした。
同じようにストレージデバイスとして認識する仕組みはmbedなど多数存在しますが、ワンコインマイコンで実現してきたのは素晴らしいと思います。
他のマイコンと比較
RP Pico | ESP32 | STM32 | Arduino | |
---|---|---|---|---|
開発元 | Rapberry財団 | Espressif Systems | STMicroelectronics | Arduino |
CPU | RP2040 | Tensilica Xtensa LX6 | Cortex-M0~M7 | ATmega Cortex-M0+ |
動作周波数 | 133MHz | 160 / 240MHz | 32~550MHz | 16~48MHz |
RAM | 264KB | 最大520KB | 最大1MB | 最大32KB |
ROM | 2MB | 最大16MB | 最大2MB | 最大256KB |
Wi-fi | × | 802.11 b/g/n/e/i | × | 一部対応 |
Bluetooth | × | 4.2 | × | 一部対応 |
LoRa | × | 一部対応 | シールドで対応 | |
OS | FreeRTOS Zephyr NuttX MongooseOS | FreeRTOS μITRON embOS ThreadX | なし FreeRTOS | |
言語 | C/C++ MicroPython | Arduino C/C++/C# Python(MicroPython) JavaScript Lua mRuby Lisp | C Python | Arduino C/C++ |
まとめ
「Raspberry Pi Pico」はマイコンの分野に新しい選択肢をもたらすものです。
ただ現状では他のマイコンに対して大きな優位性を持つわけでもなく、公式ドキュメントがやたらと揃っていること(事例もあるのがいいですね)、チップが1種類しかないので、チップごとの違いを考慮する必要がない辺りがメリットでしょうか。
命名規則が用意されていることからも、Raspberry Pi財団は今後ラインナップを増やしていくことが予想されます。
ひとまずは新製品が出たことを喜び、今後に期待を掛けましょう。
関連リンク
Getting Started with Raspberry Pi PicoRaspberry Pi
Raspberry Pi Pico:スイッチサイエンス
コメント
mbedプラットフォームな製、例えば代表的なLPC1768とかUSBストレージに見えてそこからプログラム書き込みというオペレーションんで、結果的にmbed対応製品にも同様なものが多いわけで、別に革新的ではないようにも思いますが…
コメントありがとうございます。
既にあったのですね。不勉強で申し訳ありません。
調べたら他にもあったので、表現を変更いたしました。