電力効率アップ! モバイル向けRyzen 5000シリーズまとめ

2021年1月12日、AMDはCES 2021(期間:1月11日~14日)内でモバイル向けRyzen 5000シリーズを発表いたしました。
また、この時は存在を公表するにとどめたRyzen Pro 5000について、3月15日に発表いたしました。

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要点

・全モデルSMT(Intelにおけるハイパースレッディング相当)有効
・製造プロセスはTSMC 7nm FinFET
・GPUは引き続き”Vega”アーキテクチャ
・Hシリーズは”HS”と”HX”も発表
・Hシリーズは前世代と比べてシングルスレッド性能で最大23%向上
・UシリーズはZen2(Lucienne)とZen3(Cezanne)が混在
・Uシリーズは前世代と比べてシングルスレッド性能で最大16%向上
・Uシリーズは消費電力を18~47%削減
・ダイサイズは180平方mm(Renoirの156平方mmより15%増)

Zen3の構成について

Zen3の構成は、Ryzen 4000(Renoir)と比べるとキャッシュ回りくらいしか違いがありません。
4コア+キャッシュがワンセットのCCD(Core Complex Die)連結構成をやめ、全コアでキャッシュを共有する形に戻りました。合わせて、キャッシュ容量も倍増しています(これがダイサイズ増の主な要因)。

CCD構成は並べることでコア数を増やすのには向いていますが、CCD間の通信がネックとなる弱点も抱えていました。
※あるコア上で動かしているプロセスを別のコアに移すときに、同一CCD内のコアであれば問題ないが、CCDをまたぐとキャッシュ上のデータも移す必要が生じ、猛烈に遅くなる

こちらがRyzen 4000(Renoir)の構成。CPUコア以外は間違い探しレベルです。

とはいえ、あくまで構成が同じなだけで、中はあちこちに改良が進められています。特に消費電力周りの改良が多いです。

従来では一括管理であったCPUコア電圧が、コアごとの管理に変更され、より省電力になりました。

また、CPPC2(Collaborative Processor Performance Controls)という技術が実装されました。
簡単に言うと、CPUの電圧と動作クロックの管理技術(OSが対応している必要あり)で、動作状況のモニタリングと電圧/クロック変更を、アイドル時は15ms、負荷時は1ms単位で管理することで余計な電力消費を抑えるというものです。以前はどの状況でも1ms単位での管理だったので、モニタリングに余計な電力消費がかかっていたものが削減されています。
デスクトップ向けではすでにZen2で導入されていたものですが、APUではZen3からの実装となったようです。

メモリ周りも最適化されて、20%の消費電力減となったようです。

結果、消費電力が大幅に引き下げられ、アイドル時には半分近くになっています。
消費電力が引き下げられた結果、ノートPCの稼働時間が数時間レベルで伸びたとのこと。

さらにこれらの恩恵を受けたのがGPUで、動作周波数が最大2100MHz(Ryzen 4000では最大1750MHz)まで引き上げられています。

Lucienne≠改良Renoir?

Ryzen 5000シリーズはすべてがZen3アーキテクチャというわけではなく、Uシリーズの一部がZen2アーキテクチャのままとなります。
Zen2版Ryzen 5000にはLucienne((ルノワールの隠し子のLucienne Bissonにちなむ)というコードネームが与えられています。

とはいえ、単にRyzen 4000(Renoir)のSMT(Simultaneous Multi-Threading、同時マルチスレッディング)を有効にしたというだけではなく、上で説明した電力周りの変更が盛り込まれているとのこと。

なのでRenoirの改良版というよりはZen2にZen3のいいところを取り込んだようなもののようです。

そもそもLucienneがなぜ存在するかについては専門家の間でも様々に意見が出されています。

・ダイサイズが大きくなる=コスト増=高価格という図式から、エントリー/ミドル向けの低価格APUとしてZen2(Lucienne)が用意された
・Zen2(Renoir)時点でも電力周りはアイデアとして盛り込まれていたが、設計が間に合わず機能がオフカットされていた
・生産が間に合わず、在庫のZen2も投入しないと需要に追い付かない

参考:CezzanneとLucienneが混在する理由は絶縁フィルムの供給不足:ASCII

Ryzen Pro 5000について

Ryzen Pro 5000はZen3コアアーキテクチャーを採用したビジネス向けモバイルプロセッサーです。

基本スペックはRyzen 5000(Cezanne)と同じで、企業向けのセキュリティー機能と管理機能「AMD PRO TECHNOLOGIES」が追加されています。
「AMD PRO TECHNOLOGIES」の内訳は以下のようになっています。

多層的なアプローチでデータを保護する「AMD PRO SECURITY」
CPUに依存しないオープンな管理機能「AMD PRO MANAGEABILITY」
18ヶ月間のソフトウェア安定性の保証や、24ヶ月の製品供給を保証する「AMD PRO BUSINESS READY」

この3本柱自体は従来の”PRO”シリーズと変わりませんが、「AMD PRO SECURITY」の多層防御はZen3で追加された部分もあります。

スペック

Cezanne-H (Zen3)

モデル コア/スレッド数 ベースクロック Boostクロック GPUコア数 GPUクロック L1キャッシュ L2キャッシュ L3キャッシュ TDP cTDP
Ryzen 9 5980HX 8 (16) 3.3 GHz 4.8 GHz 8 2100 MHz 512KB 4MB 16MB 45+W 35-54W
Ryzen 9 5980HS 8 (16) 3.0 GHz 4.8 GHz 8 2100 MHz 512KB 4MB 16MB 35W
Ryzen 9 5900HX 8 (16) 3.3 GHz 4.6 GHz 8 2100 MHz 512KB 4MB 16MB 45+W 35-54W
Ryzen 9 5900HS 8 (16) 3.0 GHz 4.6 GHz 8 2100 MHz 512KB 4MB 16MB 35W
Ryzen 7 5800H 8 (16) 3.2 GHz 4.4 GHz 8 2000 MHz 512KB 4MB 16MB 45W 35-54W
Ryzen 7 5800HS 8 (16) 2.8 GHz 4.4 GHz 8 2000 MHz 512KB 4MB 16MB 35W
Ryzen 5 5600H 6 (12) 3.3 GHz 4.2 GHz 7 1800 MHz 384KB 3MB 16MB 45W 35-54W
Ryzen 5 5600HS 6 (12) 3.0 GHz 4.2 GHz 7 1800 MHz 384KB 3MB 16MB 35W

Cezanne (Zen3)

モデル コア/スレッド数 ベースクロック Boostクロック GPUコア数 GPUクロック L1キャッシュ L2キャッシュ L3キャッシュ TDP cTDP
Ryzen 7 5800U 8 (16) 1.9 GHz 4.4 GHz 8 2000 MHz 512KB 4MB 16MB 15W 10-25W
Ryzen 5 5600U 6 (12) 2.3 GHz 4.2 GHz 7 1800 MHz 384KB 3MB 16MB 15W 10-25W
Ryzen 3 5400U 4 (8) 2.6 GHz 4.0 GHz 6 1600 MHz 256KB 2MB 8MB 15W 10-25W

Lucienne (Zen2)

モデル コア/スレッド数 ベースクロック Boostクロック GPUコア数 GPUクロック L1キャッシュ L2キャッシュ L3キャッシュ TDP cTDP
Ryzen 7 5700U 8 (16) 1.8 GHz 4.3 GHz 8 1900 MHz 512KB 4MB 8MB 15W 10-25W
Ryzen 5 5500U 6 (12) 2.1 GHz 4.0 GHz 7 1800 MHz 384KB 3MB 8MB 15W 10-25W
Ryzen 3 5300U 4 (8) 2.6 GHz 3.8 GHz 6 1500 MHz 256KB 2MB 4MB 15W 10-25W

Ryzen 5000 PRO (Zen3)

モデル コア/スレッド数 ベースクロック Boostクロック GPUコア数 GPUクロック L1キャッシュ L2キャッシュ L3キャッシュ TDP cTDP
Ryzen 7 PRO 5850U 8 (16) 1.9 GHz 4.4 GHz 8 2000 MHz 512KB 4MB 16MB 15W
Ryzen 5 PRO 5650U 6 (12) 2.3 GHz 4.2 GHz 7 1800 MHz 384KB 3MB 16MB 15W
Ryzen 3 PRO 5450U 4 (8) 2.6 GHz 4.0 GHz 6 1600 MHz 256KB 2MB 8MB 15W

性能について

こちらはAMDがかなりの数のスライドを発表しましたが、量が多いのでRyzen 7 5800U vs Ryzen 7 4800U vs Core i7-1165G7のスライドだけ抜粋して紹介。

CPUパフォーマンスではTigerLakeに追いつかれていたものを改めて引き離しています。

GPU性能はTigerLakeがRyzen 4000シリーズを追い抜いてかなり引き離していたところに追いつきましたが、追い越すには至っていません。

とはいえ、Ryzen 5000シリーズのGPUアーキテクチャはVegaのままで、前世代どころか2018年に登場したRyzen 2000シリーズの頃から変わっていません(製造プロセスは変更されています)。細かな改良と動作周波数の向上で追いついたことになります。

今のところの噂ではRyzen 6000(Zen4)で、Radeon RX 5000ファミリに投入されたRDNA(Navi)アーキテクチャに移行すると言われており、GPU性能が飛躍的に伸びるのは来年以降となりそうです。

その他、Ryzen 9 5900HX/Ryzen 5 5600U/Ryzen 3 5400UやWEB/アプリごとのベンチマーク、”PRO”のベンチマークなどが以下のサイトで確認できます。

Ryzen 5000G (Ryzen 5000 Mobile) Update – CezanneとLucienneの構成と性能:マイナビ
AMD Ryzen Pro 5000シリーズを発表 – Cezanneコアのセキュリティ強化版:マイナビ

ちなみにこういう比較をするたびにIntelが「実際の利用シーンに合わない」と文句を付けるので、Ryzen 5000 PRO発表時に、Officeやブラウザ操作も含めたRWT(Real World Test)というものを策定しました(なおIntelも独自にRWTを設定しています)。

関連リンク

CES 2021 キーノート:AMD
Ryzen 5000 PROリリースノート:AMD