2021年3月23日、Lenovoはフラッグシップシリーズとなる「ThinkPad X1」のIntel第11世代Core CPU(コードネーム:Tiger Lake)搭載の新モデル「ThinkPad X1 Carbon Gen9」と「ThinkPad X1 Yoga Gen6」を発表いたしました。
また、Tiger Lake搭載モデルに限っても2020年12月9日に「ThinkPad X1 Nano」、2021年2月9日には「ThinkPad X1 Titanium」を発表しており、「ThinkPad X1」シリーズに限っても4機種が乱立する状況となっています。
何が違うのかピンとこなかったため、この記事ではこの4機種を整理・比較していきます。
共通項目
比較の前に、4機種に共通しているポイントを記載しておきます。
Evo Platform認証
Evo Platform認証とはIntelが定める基準です。過去の「Centrino」や「Ultrabook」と似たようなものですね。
その要件は「よりよいユーザー体験の保証」を基準としています。
1.優れた応答性
2.長時間バッテリ駆動(フルHD機で9時間以上)
3.高速レジューム(1秒以下でレジューム)
4.急速充電(フルHD機で、30分の充電で4時間駆動)
5.最高峰の無線/有線ネットワーク(Wi-Fi 6とThunderbolt 4に対応)
さらに細かい条件は以下の通り
・第11世代Core i7/i5搭載(Core i3は対象外)
・8GB以上のメモリ、256GB以上のPCIe SSDを搭載
・12~15型、フルHD以上、タッチ対応、狭額縁
・9時間以上の駆動時間
・筐体の厚さは15mm以下
・デュアルマイク/遠方界マイク
・スピーカーは音圧(50cmで78dB以上)、低音周波数(353Hz以下)
・カメラは720p/30fps以上
・OSはWindows 10ないしはChrome OS
今回紹介する4つの「ThinkPad X1」は、全機種この基準を満たしており、Evo Platform認証を取得しています。
802.11ax(Wi-fi 6)&WWAN対応
全機種ともWi-fiにはIntel AX201を搭載しています。AX201は802.11ax(Wi-fi 6)に対応したカードです。
最近では拡張版802.11ax(Wi-fi 6E)に対応したIntel AX210が登場しましたが、選択肢には出ていません。
まぁ、そもそもWi-fi 6Eに対応したWi-fiルーターも少ないですし、安定性をとるなら実績のあるAX201になるでしょう。
また、全機種に4G LTE/5G対応オプションが用意されている点も共通です。
通信モジュールとして4G LTEでは「Fibocom L850-GL LTE CAT9」、5Gでは「Qualcomm Snapdragon X55 5G Modem-RF System」が追加されます。
上面スピーカー&クアッドマイク
そもそもThinkPadはビジネス向けノートという位置づけなので、ビジネスに必要な要素というものはいち早く取り入れられます。
昨年からは新型コロナに対応すべくオンライン会議機能を強化していて、通話の受話・終話がワンタッチで実施可能なファンクションキーを設置、スピーカーの位置も聞き取りやすいキーボード上面に移動、マイクも360度集音マイクを4つ備えるようになりました。
ふちに点々と空いている4つの穴がマイクです。
IRカメラ&HPD
スピーカー&マイクと同様に、カメラもコロナ禍対応が進んでいます。その一つが各機種の上位モデルに搭載可能なHPD(Human Presence Detection)機能です。
人感センサーと顔認証の機能により、離席時に自動で画面をオフし、PC の前に戻ると自動でオンにする機能で、カフェなど公共の場でのうっかりを減らします。
また、背後からの覗き見を防止するThinkPad Privacy Guard機能も搭載しています。
MIL-SPEC準拠
これは今に始まった話ではありませんが、ThinkPadは頑丈性も売りの一つなので、落下や振動、ディスプレイ部の開閉耐久性など12項目の米軍調達基準に準拠しています。
ただ一口にMIL-SPECと言っても、例えば落下テストだけでも何段階か基準があったりします。そして残念ながらどの段階の基準に準拠しているのかまでは記載がありません。
まぁ最近では登場するノートPCの何割かはMIL-SPEC準拠を謳っているので、珍しい特徴ではなくなりつつありますね。
比較表
Carbon Gen9 | Yoga Gen6 | Titanium | Nano | |
---|---|---|---|---|
特徴 | スタンダードX1 | スタンダード2-in-1 | 3:2ディスプレイ | 軽量1kg切り |
CPU | Core i7-1185G7 Core i7-1165G7 Core i5-1145G7 Core i5-1135G7 | Core i7-1180G7 Core i7-1160G7(Titaniumのみ) Core i5-1140G7 Core i5-1130G7 | ||
メモリ | 最大32GB | 最大16GB | ||
ディスプレイ | 14.0インチ | 13.5インチ | 13.0インチ | |
解像度 | 3840×2400 (500nit 100%sDCP-P3) 1920×1200 (400/500nit 100%sRGB) | 2256×1504 (450nit 72%NTSC) | 2160×1350 (450nit 100%sRGB) | |
タッチ対応 | オプション対応 | 対応 | 非対応 | |
2-in-1 | × | ○ | × | |
インターフェース | Thunderbolt4×2 USB 3.1 Gen1×2 HDMI オーディオジャック | Thunderbolt4×2 オーディオジャック | ||
NFC | オプション対応 | 非対応 | ||
バッテリー | 57WHr (4セル) | 44.5WHr (4セル) | 48WHr (3セル) | |
サイズ | 314.5×221.6×14.9mm | 314.4x223x14.9mm | 297.5×232.7×11.5mm | 292.8×207.7×13.87mm |
重さ | 1.13kg~ | 1.399kg~ | 1.15kg~ | 0.907kg~ |
価格 | 172,788円~ | 211,112円~ | 239,250円~ | 189,420円~ |
ThinkPad X1 Carbon Gen9
「X1 Carbon Gen9」は、今回紹介する中では一番スタンダードな機種です。
画面アスペクト比が「X1 Carbon Gen8」までの16:9から16:10に変わり、設計が一新されています。
ヒンジの内側にあったスピーカーがキーボード左右に移動したり、ドッキングポートがなくなったりと、結構大胆に変更されていますし、ThinkPadの定番であった側面排気もなくなり、インターフェース周りだけ見るとThinkPadらしさが薄れています。
ディスプレイは解像度や機能の違う4種類から選択できるのも特徴です。
・WQUXGA(3840×2400)、500nit、100% DCI-P3、ブルーライト軽減パネル
・WUXGA(1920×1200)、500nit、100% sRGB、マルチタッチ対応(10点)、Privacy Guard
・WUXGA(1920×1200)、400nit、100% sRGB、マルチタッチ対応(10点)、ブルーライト軽減パネル
・WUXGA(1920×1200)、400nit、100% sRGB、ブルーライト軽減パネル
なお、「ThinkPad X1 Carbon Gen9」はアスペクト比の変更と設計の見直しによって筐体幅が前世代より8mm狭くなっています。
ディスプレイパネルの固定をスポンジから両面テープに変更する、液晶の基板を折り返すなどの工夫で4辺狭額縁を実現し、底面積でも前世代比2.8%増にとどめています。
天板はモデル名の通り、カーボンが使われていますが、前述の”パネル基板折り返し”のためにわずかなカーブを描いています。
参考:一新した「ThinkPad X1 Carbon/ Yoga」。4辺狭額縁、電力10%減、バッテリ12%増:PC Watch
2. Thunderbolt4
3. USB 3.2 Gen1
4. HDMI
6. Nano SIMスロット(オプション)
7. Powered USB 3.2 Gen1
8. セキュリティキーホール
インターフェースはスタンダードな構成です。可もなく不可もなくというか、これで困る場面はSDカードの読み込みくらいじゃないでしょうか。
ThinkPad X1 Yoga Gen6
「X1 Yoga Gen6」は「X1 Carbon Gen9」の2-in-1バージョンと言って差支えないでしょう。スペック面での差はほぼありません。
違いはディスプレイの選択肢(すべてタッチ対応)と、ペンを内蔵している点、そしてあまりThinkPadらしくない、IdeaPadに多いストームグレーなカラーくらいです。
ディスプレイはタッチ対応なのに非光沢なパネルが用意されているのがうれしいですね。
・WQUXGA(3840×2400)、500nit、100% DCI-P3、マルチタッチ対応(10点)、反射/汚れ防止、ブルーライト軽減パネル
・WUXGA(1920×1200)、500nit、100% sRGB、マルチタッチ対応(10点)、光沢なし、Privacy Guard
・WUXGA(1920×1200)、400nit、100% sRGB、マルチタッチ対応(10点)、光沢なし、ブルーライト軽減パネル
・WUXGA(1920×1200)、400nit、100% sRGB、マルチタッチ対応(10点)、ブルーライト軽減パネル
2. Thunderbolt 4
3. USB 3.2 Gen 1
4. HDMI
6. オーディオジャック
7. Powered USB 3.2 Gen 1
8. セキュリティキーホール
インターフェース構成は「X1 Carbon Gen9」とほぼ同じ。内蔵ペンが増えてSIMカードスロットがなくなっているものの、WWANには対応しているので、SIMカードスロットは内部にあるのかも。
ThinkPad X1 Titanium
アスペクト比3:2のディスプレイを持つのが「X1 Titanium」です。
天板にチタン素材を用いることで、キーボード一体型ThinkPadでは最も薄い11.5mmという薄さを実現しています(天板以外はカーボンやマグネシウム)。
カラーもチタニウムシルバーということで独特の光沢をもっています。
天板のThinkPadロゴは浮き彫りになっています。
CPUはUシリーズ相当なUP3ではなく、Yシリーズに相当(※)するUP4が使われ、絶対性能の面ではやや低くなっています。
※TigerLakeではcTDP(可変TDP)を導入し、UP3は12~28W、UP4は7~15Wの範囲で熱設計を行えます。以前の固定TDPとは考え方が異なるので、あくまで”相当”ということになります。
重量面では1.15kgで「X1 Carbon Gen9」と同じくらい。1kgを切る「X1 Nano」よりは重いけれど、同じ2-in-1な「X1 Yoga Gen6」の1.4kg弱よりは軽くなります。
ディスプレイの選択肢はありませんが、13.5インチ2K(2256×1504)、450nit、反射/汚れ防止、72%NTSC、マルチタッチパネル(10点)となっており、特に不便はなさそうというか、使いやすそうな画面です。
- Thunderbolt 4
- 電源ボタン
- マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック
- セキュリティキーホール
薄さを実現するために、インターフェースは極限まで削られています。かつてMacbookに抱いたようなデザイン美がありますね。
ThinkPad X1 Nano
4機種の中でもっともコンパクトなのが「X1 Nano」です。ThinkPadでは初めて1kgを切った機種でもあります。
13.0インチと一回り小さなディスプレイながら、解像度は2160×1350(アスペクト比16:10)とWUXGAよりひとまわり広くなっています。
ベゼルが細すぎて多くの線を通せないため、一般的にはディスプレイ上部にあるWi-fiアンテナが基板の脇に設置されています。
4G LTE/5Gにも対応しているため、アンテナ位置には苦心したのだとか。
薄くて軽い「ThinkPad X1 Nano」、大和研の開発者は性能にも大きな自信:PC Watch
- マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック
- USB Type-C 3.1 Gen 2(Thunderbolt4 対応)
- USB Type-C 3.1 Gen 2(Thunderbolt4 対応)
- 電源ボタン
薄さ、というより軽さを追求するために極限まで削られたインターフェース。アンテナを分散配置し、合間にクアッドスピーカーを入れ込んだ結果、側面しか排気口スペースが確保できなかった模様。
まとめ
TigerLake世代の「ThinkPad X1」4機種を比較しましたが、それぞれに方向性が違うのがなんとなくわかったんじゃないでしょうか。
「ThinkPad X1」シリーズは最安でも17万円台、ものによっては30万円を超える、非常に高価なノートPCです。
安い買い物ではないからこそ、用途にあった機種を選べるように。そんなメッセージがあるのかもしれません。
ただこうして「ThinkPad X1」縛りの記事を書いたものの、近いうちに「X1 Extreme」が出てくる気がするんですよね…
関連リンク
ThinkPad X1 Carbon Gen9
ThinkPad X1 Yoga Gen6
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ThinkPad X1 Nano
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