こりゃだめだ。 世界的半導体不足の波はSBCの世界にも波及中【納期一覧】

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IntelやAMDのCPUが慢性的に不足していることはご存じの方は多いと思いますが、実はここ最近は他の半導体製品も不足の波に襲われています。

CPU以外にもメモリ、電源管理IC、MOSFET、無線通信チップなど、様々な分野で半導体は使われ、一つでも部品の納入が遅れれば生産ラインはストップせざるを得ません。

そんな半導体不足の現在の状況について、CNX SOFTWAREが2021年3月時点での状況をまとめています。

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納入状況

※リードタイム:注文から納品するまでにかかる期間のこと

サプライヤー直近リードタイムQ1ごと増加値
CPU
Intel12-16 週間8 週間
メモリ
Micron14-15 週間6-8 週間
Alliance Memory14-15 週間6-8 週間
ADATA14-15 週間6-8 週間
Greenliant10-24 週間2-12 週間
Wang Hong Electronics20-28 週間8-10 週間
Transcend14-15 週間6-8 週間
MCU & 電源管理IC
NXP26-52 週間8-12 週間
Renesas26-52 週間8-12 週間
STMicroelectronics26-52 週間8-12 週間
Microchip16-40 週間4-10 週間
Qualcomm26-52 週間8-12 週間
Nuvoton26-52 週間8-12 週間
アナログIC
Texas instruments20-24 週間8-12 週間
NXP / Freescale20-24 週間8-12 週間
Renesas20-24 週間8-12 週間
東芝20-24 週間8-12 週間
ON Semiconductor16-52 週間4-10 週間
Infineon22-40 週間4-10 週間
STMicroelectronics16-30 週間2-4 週間
MOSFET, Discrete devices
ON Semiconductor22-50 週間8-12 週間
Infineon22-44 週間8-12 週間
STMicroelectronics22-40 週間4-12 週間
Anshi semiconductor (Wingtech)12-30 週間6-14 週間
Rohm20-40 週間8-20 週間
DIODES18-30 週間8-12 週間
Littlefuse16-30 週間4-8 週間
Passive components
Vishay24-52 週間8-12 週間
村田製作所20-26 週間6-10 週間
ニチコン16-24 週間6 週間
Matsushita16-30 週間4-12 週間
太陽誘電18-20 週間2 週間
TDK22-44 週間6-12 週間
Yageo20-24 週間2-4 週間
無線通信チップ
Broadcom24-52 週間8-12 週間
MediaTek20-30 週間8-10 週間
Realtek20-30 週間8-10 週間
Microchip24-26 週間6-8 週間
Infineon/Cypress26-30 週間16-18 週間
u-blox26-30 週間16-18 週間
NXP30-32 週間6 週間

SBCへの影響

SBC(シングルボードコンピューター)も多くの半導体を使用している以上、この影響を大きく受けます。

例えばメモリチップの単価が高騰した結果、「ODROID-N2+(4GB)」の価格は79ドルから83ドルに値上げされました。

また、出荷時期についてもフォーラム内で次のように言及しています。

The H2+ is out of stock temporarily.
But, it is very hard to estimate when we can produce the H2+ next batch due to very serious component shortage problem these days.
Some key components (PMIC, 2.5GbE NIC and audio codec chips) need over 35 weeks lead time even we placed order last October though.
I think we have to wait 4~5 more months at least to sell the H2+ again.

要約:「ODROID H2+」は2.5GbE NICやオーディオチップなど、昨年10月に注文した分が納品まで35週間かかってるよ。次のロットを届けるまでに4~5ヶ月かかりそうだ。

ここで注目したいのは、SoCについては言及されていない点です。後でも説明していますが、製造プロセス(7nmとか28nmとかですね)が関係しています。

「Rock64」や「RockPro64」、「PineTab」などを手掛けるPine64もTwitterで同様のことをつぶやいています。

その他の業界への影響

地味に影響が大きいのが、自動車産業だったりします。
自動車はパワステ、ブレーキシステムなど、様々なところに半導体製品が使われているためです。

自動車産業への影響は割と深刻で、例えば日産自動車九州はゴールデンウイークにプラスして8営業日を休みとし、2021年5月の稼働日はわずか8日となる予定です。

訂正-日産、半導体不足で5月に減産 九州は8日間停止=関係筋
日産自動車が、半導体不足などの影響で5月に国内工場の一部で生産調整することが分かった。複数の関係者が15日、明らかにした。日産自動車九州(福岡県苅田町)の工場では、昼勤・夜勤とも10─19日までの土日を除く8日間、稼働を停止する。生産調整分は、部品供給の状況が改善し次第、取り戻すことを目指す。

海外だとGM(ゼネラルモーターズ)が4月時点で8つの組み立て工場を、フォードは6か所の工場を停止しています。

TechCrunch
TechCrunch | Reporting on the business of technology, startups, venture capital funding, and Silicon Valley

不足の要因について

半導体不足の背景には複数の要因が存在しています。

新型コロナによる物流の停滞や人手不足、PC需要の増加

これについては前半は語る必要はないでしょう。
後半、PC需要は家庭だけの話ではなく、テレワーク需要によるサーバー増強、通信設備の増強が含まれます。

高性能絶縁体のABF(Ajinomoto Build-up Film)の不足

これは一時期話題になりましたね。まさかの味の素がキーだったとは。
味の素のABFはCPU分野でのシェアがほぼ100%だそうで、ABFの供給不足がCPU生産のボトルネックになっているんだとか。

2020年11月に登場した「PlayStation 5」と「Xbox Series X」

これもなかなかに大きな影響を与えているようです。

「PS5」および「Xbox X」に使われているAMDチップ(CPU/GPU)は、TSMCが生産をしています。
現在も「PS5」がまともに変えない状況から分かるように、TSMCの生産が追い付いていません。
そしてゲーム向けチップの生産に圧迫される形で、Ryzen 5000(Zen3)の投入が遅れるのではという噂も出ているようです。

Just a moment...

ちなみに「Raspberry Pi」はSoCにBroadcomのチップを使っており、BroadcomはTSMCに生産を委託していますが、28nmプロセスのために製造ラインが違い(TSMC会長も28nm製造ラインには余力があると発言しています)、いまのところ不足には陥っていないようです。ただ、SoCは大丈夫でも電源ICなどの不足による遅延は依然可能性として残っています。

台湾の水不足

台湾では過去57年で最もひどい干ばつに襲われています。どれくらいひどいかというと、台湾の農地の1/5で灌漑が停止されているほどです。

半導体生産ではその過程で大量の水を必要としており(TSMCが台湾各地の製造拠点で2019年に使用した水の合計は6900万トンに及ぶ)、台湾では世界の半導体チップの65%が生産されていると言われています。

TSMCも主力工場は台湾にあり、トラックで水を運んでいる状況となっています。

https://cafe-dc.com/semiconductor/tsmc-orders-water-truckload-keep-chip-production-going-during-growing-drought/

米国のHuawei制裁

何気に無視できないのが、Huaweiへの制裁です。
これによって中国企業が自社が制裁対象に加えられた時に備えて余剰在庫を確保しておこうと大量に発注を行っており、圧迫の一因となっています。

半導体工場の相次ぐ停止

ここ数年、半導体工場停止のニュースが増えています。

たとえば昨年10月の旭化成エレクトロニクス(AKM)の工場火災では定評のあったAKM製DAC/ADCチップの供給が完全停止、復旧も断念しました。現在はオーディオ各社が代替品で生産再開を始めています。

2021年2月にはテキサス州を襲った大寒波で大規模な停電が発生、サムスン、NXP、インフィニオンなどが工場を停止し、2月のシリコンウェハの生産量が数%ダウンしたといわれています。

2021年3月にはひたちなか市にあるルネサスエレクトロニクスの工場(主に自動車向けチップを生産)で火災が発生、復旧には3~4ヶ月かかると見込まれています。

まとめ

現在の半導体不足の状況は需要が供給を30%上回っているとされており(重複注文で上回っているように見えるだけという話も)、解消までには少なくとも2021年いっぱいはかかるようです。

半導体各社では今後単価の値上げや大口顧客への割引を減らしたりする予定で、製品価格にも反映されるでしょう。

SBC向けSoCの多くは28nmプロセスでの製造(Rockchip RK3399も28nmです)なので生産については割と安心ですが、次期最上位と位置付けられるRK3588は8nmプロセスとされていて、もろに影響を受けることになります。
それに製品価格の低いSBCにとってはチップの値上げはかなり深刻ですし、SoC以外の新しいチップも半導体不足の影響は免れません(古いチップは28nmや40nmプロセスなので影響は少ない)。

2021年はSBC界隈にとってもあまり明るくない年になるようです。

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