2021年1月11日、IntelはNシリーズのPentium SilverおよびCeleron(コードネーム:Jasper Lake)を発表いたしました。
これはGemini Lake世代(Celeron N4000とかN4100)の後継に当たる(正確には間にGemini Lake Refreshが挟まっています)CPUです。
ラインナップ
シリーズ | 型番 | コア・ スレッド数 | ベース 周波数 | バースト 周波数 | GPU 実行ユニット | GPU ベースクロック | GPU バースト周波数 | TDP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Pentium Silver | N6005 | 4 (4) | 2GHz | 3.3GHz | 32 | 450MHz | 900MHz | 10W |
N6000 | 1.1GHz | 350MHz | 850MHz | 6W | ||||
Celeron | N5105 | 2GHz | 2.9GHz | 24 | 450MHz | 800MHz | 10W | |
N5100 | 1.1GHz | 2.8GHz | 350MHz | 6W | ||||
N5095 | 2GHz | 2.9GHz | 16 | 450MHz | 750MHz | 15W | ||
N4505 | 2 (2) | 2GHz | 2.9GHz | 10W | ||||
N4500 | 1.1GHz | 2.8GHz | 350MHz | 6W |
「Jasper Lake」のラインナップを簡単に説明すると、Pentium・4コアCeleron・2コアCeleronがTDP6Wと10Wでそれぞれあり、特殊な立ち位置のCeleron N5095が加わった7種類となっています。
全体的にはシンプルで分かりやすいですね。
特徴
「Jasper Lake」はGemini Lake世代の後継ですが、Intelでは「教育向け」と位置付けています。要はGIGAスクール構想のような、5万円以下の価格帯をターゲットとしているわけです。
…まぁどう考えても教育向け/一般向け入り乱れた5万円以下タブレットが乱立する未来しか見えませんが。
「Jasper Lake」が発表されたCES 2021では、Intelの発表の中心はデスクトップ向け第11世代(コードネーム:Rocket Lake-S)や、次世代のハイブリッドCPU(コードネーム:Alder Lake)で、「Jasper Lake」の扱いは小さく、あまり情報がありません。
あれこれ拾い集めた情報をまとめると、以下のような特徴を持っています。
・GPUはUHD Gen11(UHD Graphics for 10th Genと同等)
・10nmプロセス CPU/14nmプロセス PCH
・L2キャッシュはコア数にかかわらず1.5MB
・L3キャッシュはコア数にかかわらず4MB
・ハイパースレッディング非対応
・メモリは最大16GBに対応
・OpenGL 4.5に対応
・Wi-fi 6に対応
・PCIe 3.0に対応、レーン数は8に
・USB 3.2 Gen2対応、合計14ポートに
・総合アプリケーション性能は前世代から35%向上
・グラフィックスはUHD Gen11となり、性能が78%改善
アーキテクチャについて
アーキテクチャの面では以前に記事にした「Elkhart Lake」と同じく、2019年10月24日に発表されたAtom系第7世代”Tremont”アーキテクチャで設計されています。
「Elkhart Lake」との違いをざっくり書くとこんな感じです。
Jasper Lake | Elkhart Lake | |
---|---|---|
発表 | 2021/01 | 2020/09 |
用途 | 教育向け | 組み込み向け |
アーキテクチャ | Tremont | |
メモリ | 最大16GB 最大2枚 | 最大32GB 最大4枚 |
メモリ規格 | DDR4-2933 LPDDR4-2933 | DDR4-3200 LPDDR4-3200/3733 |
GPU | 最大32EU | |
PCIe | PCIe 3.0 8レーン | |
USB | 合計14ポート | 合計4ポート |
SATA | 最大2ポート | |
有線LAN | なし | 2.5GbE ×3 |
無線LAN | Wi-fi 6 | 不明 |
ソケット | FCBGA1338 35×24mm | FCBGA1493 35×24mm |
同じアーキテクチャでも方針が違うことがよく分かります。
iGPUについて
iGPUはIceLake世代と同じ、Intel UHD Gen11を搭載しています。
Core i3-1005G1が32EUのため、Pentium Silver N6005などは同等性能を発揮するでしょう。
これまでのグラフィック性能を考えると、大きな向上と言えます。
気になるポイント
特徴の中でがじぇっとりっぷが一番気になったのは、PCIe 3.0への対応です。
これまではPCIe2.0で、しかも合計で6レーンだったので、M.2 SSDは性能を発揮できていませんでしたし、2.5GbEを搭載しようものならあっという間にレーンが足りなくなっていました。
「Jasper Lake」は「Elkhart Lake」と違って内蔵LANがないので2.5GbEなどを搭載するとPCIeレーンを消費する点は変わりませんが、合計8レーンに増えたため余裕があります。
余ったレーンでSATAを増やすとか、デュアルM.2 SSDにするとか、PCIeスロットを生やすとか、いろいろと使い道があるでしょう。
とはいえ、NASなどでは2.5GbE×3を内蔵する「Elkhart Lake」が使われる気がします。
これまでの変遷
Cherry Trailあたりからの違いを並べると、以下のようになります。
Cherry Trail | Apollo Lake | Gemini Lake | Jasper Lake | |
---|---|---|---|---|
代表的なCPU | Arom x7-Z8750 Atom x5-Z8350 | Celeron N3450 Celeron N3350 | Celeron N4100 Celeron N4000 | Celeron N6000 Celeron N4500 |
発表 | 2015/03 | 2016/09 | 2017/12 | 2021/01 |
プロセス | 14nm | 14nm | 14nm | 10nm |
アーキテクチャ | Airmont | Goldmont | Goldmont Plus | Tremont |
メモリ | 最大8GB 最大2枚 | 最大8GB 最大2枚 | 最大8GB 最大2枚 | 最大16GB 最大2枚 |
メモリ規格 | LPDDR3-1600 | LPDDR4-2400 DDR3L-1866 LPDDR3-1866 | DDR4-2400 LPDDR4-2400 | DDR4-2933 LPDDR4-2933 |
GPU | HD Gen8 最大16EU OpenGL 4.2 OpenGL ES 3.0 | UHD 500 最大18EU OpenGL 4.3 OpenGL ES 3.2 | UHD 600 最大18EU OpenGL 4.4 OpenGL ES 3.2 | UHD Gen11 最大32EU OpenGL 4.5 OpenGL ES 3.2 |
PCIe | PCIe 2.0 合計2レーン | PCIe 2.0 合計6レーン | PCIe 2.0 合計6レーン | PCIe 3.0 合計8レーン |
USB | 合計3ポート | 合計8ポート | 合計8ポート | 合計14ポート |
SATA | 不明 | 最大2ポート | 最大2ポート | 最大2ポート |
有線LAN | なし | あり | なし | なし |
無線LAN | なし | なし | Wi-fi 5 | Wi-fi 6 |
ソケット | UTFCBGA1380 UTFCBGA592 17×17mm | FCBGA1296 24×31mm | FCBGA1090 25×24mm | FCBGA1338 35×24mm |
まとめ
「Jasper Lake」は教育向けとされていますが、実際にはこれまでGeminiLakeが担っていたエントリー向けノートやWindowsタブレットに採用されていきます。
Celeron N4500を搭載したCHUWI「Hi10 GO」など、すでに発売されているものもあります。
かなりの性能アップとなるうえ(特にグラフィック)、インターフェースが充実して応用が利きやすくなっているので、上にも書いたようにミニPCやタブレットが再び大量にリリースされる気がします。
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