2020年9月23日、Intelは製造業向けの開発者イベント「Intel Industrial Summit 2020」にて「Elkhart Lake」のコードネームで呼ばれる、組み込み向けの「Atom x6000E」シリーズおよび「Pentium/Celeron N/J」シリーズ、そして組み込み向けの「Tiger Lake」シリーズを発表いたしました。
ラインナップ
用語について
TCC:Intel Time Coordinated Computing、デバイスのネットワークを1マイクロ秒未満で同期する
FuSa:Functional Safety、機能安全規格
FSEDP:Functional Safety Essential Design Package、機能安全規格の認証取得を容易にするパッケージ
Elkhart Lake
プロセッサーナンバー | コア数 | L2キャッシュ (MB) | 標準クロック | 最大クロック | GPUクロック | GPU最大クロック | EU数 | Max TDP | In-Band ECC | Intel TCC | FuSa |
Pentium J6425 | 4 | 1.5 | 1.8GHz | 3.0GHz | 400MHz | 850MHz | 32 | 10W | No | No | No |
Pentium N6415 | 4 | 1.5 | 1.2GHz | 3.0GHz | 350MHz | 800MHz | 16 | 6.5W | No | No | No |
Celeron J6413 | 4 | 1.5 | 1.8GHz | 3.0GHz | 400MHz | 800MHz | 16 | 10W | No | No | No |
Celeron N6211 | 2 | 1.5 | 1.2GHz | 3.0GHz | 250MHz | 750MHz | 16 | 6.5W | No | No | No |
プロセッサーナンバー | コア数 | L2キャッシュ (MB) | 標準クロック | 最大クロック | GPUクロック | GPU最大クロック | EU数 | Max TDP | In-Band ECC | Intel TCC | FuSa |
Atom x6425E | 4 | 1.5 | 1.8GHz | 3.0GHz | 500MHz | 750MHz | 32 | 12W | Yes | No | No |
Atom x6413E | 4 | 1.5 | 1.5GHz | 3.0GHz | 500MHz | 750MHz | 16 | 9W | Yes | No | No |
Atom x6211E | 2 | 1.5 | 1.2GHz | 3.0GHz | 350MHz | 750MHz | 16 | 6W | Yes | No | No |
Atom x6425RE | 4 | 1.5 | 1.9GHz | N/A | 400MHz | N/A | 32 | 12W | Yes | Yes | No |
Atom x6414RE | 4 | 1.5 | 1.5GHz | N/A | 400MHz | N/A | 16 | 9W | Yes | Yes | No |
Atom x6212RE | 2 | 1.5 | 1.2GHz | N/A | 350MHz | N/A | 16 | 6W | Yes | Yes | No |
Atom x6427FE | 4 | 1.5 | 1.9GHz | N/A | 400MHz | N/A | 32 | 12W | Yes | Yes | Yes |
Atom x6200FE | 2 | 1 | 1.0GHz | N/A | N/A | N/A | 0 | 4.5W | Yes | Yes | Yes |
Tiger Lake
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | 標準クロック(cTDP別) | 最大クロック | L3キャッシュ | グラフィック | EU数 | InBand ECC | TDP / cTDP |
Core i7-1185G7E | 4 (8) | 28W:2.8 GHz 15W:1.8 GHz 12W:1.2 GHz | 4.4 GHZ | 12 MB | Iris Xe | 96 | No | 28W / 15W / 12W |
Core i5-1145G7E | 4 (8) | 28W:2.6 GHz 15W:1.5 GHz 12W:1.1 GHz | 4.1 GHZ | 8 MB | Iris Xe | 80 | No | 28W / 15W / 12W |
Core i3-1115G4E | 2 (4) | 28W:3.0 GHz 15W:2.2 GHz 12W:1.7 GHz | 3.9 GHZ | 6 MB | HD | 48 | No | 28W / 15W / 12W |
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | 標準クロック(cTDP別) | 最大クロック | L3キャッシュ | グラフィック | EU数 | InBand ECC | Intel FSEDP | TDP / cTDP |
Core i7-1185G7RE | 4 (8) | 28W:2.8 GHz 15W:1.8 GHz 12W:1.2 GHz | 4.4 GHZ | 12 MB | Iris Xe | 96 | Yes | Yes | 28W / 15W / 12W |
Core i5-1145G7RE | 4 (8) | 28W:2.6 GHz 15W:1.5 GHz 12W:1.1 GHz | 4.1 GHZ | 8 MB | Iris Xe | 80 | Yes | Yes | 28W / 15W / 12W |
Core i3-1115G4RE | 2 (4) | 28W:3.0 GHz 15W:2.2 GHz 12W:1.7 GHz | 3.9 GHZ | 6 MB | HD | 48 | Yes | No | 28W / 15W / 12W |
特徴
Elkhart Lake
「Elkhart Lake」は2019年10月24日に発表されたAtom系第7世代”Tremont”アーキテクチャで設計されています。
Atom系はCore系とアーキテクチャが異なっており、アーキテクチャの世代も違うので、結構話がややこしくなっています。いつかまとめたいところですが…
ちなみにApollo Lakeが第5世代の”Goldmont”アーキテクチャ、Gemini Lakeが第6世代の”Goldmont Plus”アーキテクチャです。
“Tremont”アーキテクチャの話に戻ると、AtomブランドはApollo Lake以降、サーバー向けに舵を切ったこともあり、低消費電力のIoTやデータセンター向けに開発されています。
2020年6月に発表されたBig.LITTLE構成をとる「Lakefield」のLITTLEコアにも”Tremont”が使われています(Bigの方はSunny Coveコア)。
“Tremont”アーキテクチャの特徴はざっくり以下の画像にまとまっています。
また、画像には入っていませんが、製造プロセスが10nmとなっています。
詳細についてはASCIIの記事が詳しいです。
端的な特徴を見るのであればWikipedia(英語版)の方が分かりやすいかもしれません。
この”Tremont”アーキテクチャな「Elkhart Lake」は4つに細分化されます。
・Pentium/Celeron J/N
・Atom x6000E
・Atom x6000RE – RTOSサポート
・Atom x6000FE – Intel Safety Islandサポート
その特徴は以下のようになっています。
・プロセス: 10nm
・TDP:4.5~12W
・最大周波数: 3.0GHz
・最大メモリ: 32GB(メモリの種類による)
・メモリ枚数: 最大4枚(メモリの種類による)
・メモリ規格: LPDDR4X-4267 / DDR4-3200
・GPU: 第11世代、最大32EU
・映像: 4K/60p、DP1.3、HDMI2.0b、最大3画面
・SATA: 2ポート
・LAN: 2.5GbE×3
・PCIe: 3.0 x8レーン
メモリの最大数が2枚から4枚に増えたのは素晴らしいですね。
グラフィックは第11世代 UHDで、要はComet Lakeのグラフィックと同じものになります。
そしてあまり取り上げられていませんが、最後の二つが実は結構驚異的かなと。
Gemini Lakeだと内蔵LANなし(Realtekなどの外部チップをUSBやPCIeで接続)、PCIe2.0 x6レーンでした。
これが意外とかつかつで、例えばGemini Lakeを搭載するQNAPの「TS-x53D」シリーズでは2.5GbE×2にPCIeを2レーン使っており、6レーンを以下のように割り振っています。
2ベイ:2.5GbE(2レーン)+PCIeスロット(4レーン)
4/6ベイ:2.5GbE(2レーン)+SATA(2レーン)+PCIeスロット(2レーン)
Gemini LakeはSATAが2ポートしかないので、こうなるんですね。
そしてPCIe2.0 x2だと、10GbEカードを刺してもフルスピードは出ず、600MB/s台止まりとなります。
ところが「Elkhart Lake」はそもそも2.5GbEを3ポートも内蔵しています。そのため、上の例だとPCIe3.0 x8がまるまる浮くので、全部をPCIeスロットに割り当てるなんてことができます。4/6ベイでも4レーンは割り当てられるので、10GbEのフルスピードが出せますね。
もしくは4レーンをM.2 SSDに割り当てることで、キャッシュ用のSSDスロットを内蔵するという選択肢もとることができるようになりました。
「Elkhart Lake」がそのままNASに搭載されるわけではありませんが、「Elkhart Lake」から産業向け機能を外したコンシューマ向けの「Jasper Lake」でもこの辺りは変わらないと思うので、期待ができます。
NASに限定してもこのように恩恵があるので、そのほかの産業機器でも十分なメリットがあるでしょう。
「Elkhart Lake」のブロックダイアグラム図は以下のようになっています。
性能面ではCore i7-1185G7Eと従来品のCore i7-8665 UE1の比較でシングルスレッド性能が最大1.7倍、マルチスレッド性能が最大1.5倍、グラフィック性能が最大2倍に向上しています。
なお、産業向け機能の詳細については以下の記事が詳しいです。
Tiger Lake
組み込み向け「Tiger Lake」は、組み込み向けと産業向けの2シリーズがラインナップされています。どちらもUP3(Uシリーズに相当)に分類されます。
Tiger Lakeの詳細は下記の記事を参照してください。
Core i7-1185G7、Core i7-1185G7E、Core i7-1185G7REを比較したのが以下。
正直あまり違いはなく、大きな違いは動作温度とECCメモリの対応ですね。
・Core i7-1185G7 : 最大100℃
・Core i7-1185G7E :0℃~100℃
・Core i7-1185G7RE :-40℃~100℃、ECC対応
ちょっと面白いのがTDP(cTDP)別の定格動作周波数が定義されていることでしょうか(ラインナップ表参照) 。
まとめ
“Tremont”アーキテクチャはAtom系CPUの仕様をがらりと入れ替える大きな転換点であり、そのアーキテクチャに基づいた「Elkhart Lake」もまた、これまでのAtom系CPUとは全く別物な仕上がりとなりました。
今回発表されたのは組み込み/産業向けでしたが、今後コンシューマー向けの「Jasper Lake」が登場するはずで、エントリー向けPCの世界が一気に変わることでしょう。
関連リンク
リリースノート:Intel
Elkhart Lake:Intel ※PDF
IoT向け第11世代Core:Intel ※PDF
Elkhart Lakeシリーズ一覧:Intel ark
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