がじぇっとりっぷではCOUMIやEarFunなど、新興のオーディオメーカー製品をたびたび取り上げています。
OneOdioも2015年に香港で設立された新興のオーディオメーカーで、珍しいことにイヤホンはほとんど取り扱わず、三千円~四千円台を中心としたヘッドホンに特化しています。
ある種のこだわりを持ったメーカーと言えますね。
OneOdioでは有線のハイレゾヘッドホンも取り扱っていますが、今回はノイズキャンセリング機能を持ったBluetoothヘッドホンである「SuperEQ S1」をレビューします。
「SuperEQ」はOneOdio社が若者向けに作ったサブブランドで、その記念すべき第1作が「SuperEQ S1」です。
機材を提供いただいたOneOdio様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
OneOdio SuperEQ S1
GoodPoint
✔ 強力なノイズキャンセリング
✔ 独立したANCボタンが便利
✔ 最大45時間再生
BadPoint
✖ 締め付けが強すぎる
✖ aptX非対応
✖ カップの可動域が狭い
✖ マルチポイント接続は割とくせもの
スペック
モデル | SuperEQ S1 |
---|---|
Bluetoothバージョン | v5.0 |
Bluetooth周波数 | 2,400MHz~2,483.5MHz |
対応プロファイル | A2DP、AVRCP、HFP、HSP |
対応コーデック | AAC、SBC |
通信距離 | 約10 m |
ドライバーユニット | φ40 mm |
定格入力電力 | 20 mW |
最大入力電力 | 40 mW |
インピーダンス | 32 Ω ± 10% |
感度 | 98 ± 3dB |
再生周波数帯域 | 20Hz – 20,000Hz (BT接続時) 16Hz – 40,000Hz (AUX接続時) |
ノイズキャンセリング方式 | ハイブリッド方式 |
ノイズキャンセリング効果 | 28~33dB |
音楽再生時間(本体) | 約 45 時間(ノーマルモード) 約 40 時間(ANCモード) 約 50 時間(有線+ANC) |
イヤホン充電時間 | 約 2.5 時間 |
バッテリー容量 | 380 mAh |
防水規格 | 非対応 |
重量 | 約 280 グラム |
パッケージ
・USBケーブル
・AUXケーブル
・航空機用アダプタ
・取扱説明書
・クイックガイド
・安全・規制に関する情報
インターフェース
・音量+ボタン(“・・”)
・マルチファンクションボタン(“○”)
・音量-ボタン(“・”)
・LEDインジケータ
・ANCボタン
・ANCボタン(上段と重複)
・有線ジャック
・microUSB
・マイク
インターフェース類はすべて右側のカップにあり、ボタンには”+や-”を使わず”○と・”にすることで、見えない状態でも迷うことなく操作できます。
気になったのが、充電端子がmicroUSBという点。
でも最近ではType-Cは12V出力の電源アダプタなどで使われることもあり、問題になりつつあります。
microUSBであれば基本的に5Vなのでそういった問題には遭遇しづらく、あえての選択なのかなぁと。
操作について
基本操作は音量ボタンとマルチファンクションボタンを使用します。
ノイズキャンセリング機能は独立したANCボタンで操作します。
動作 | 操作 | |
---|---|---|
電源ON | 再生ボタン2秒長押し | |
ペアリングモード | 電源OFFから再生ボタン5秒長押し | |
電源OFF | 再生ボタン3秒長押し | |
音楽 | 再生 | 再生ボタン |
一時停止 | 再生ボタン | |
前の曲 | 音量+ボタン2秒長押し | |
次の曲 | 音量-ボタン2秒長押し | |
通話 | 着信応答 | 再生ボタン |
通話終了 | 再生ボタン | |
着信拒否 | 再生ボタン2秒長押し | |
通話切替 | 再生ボタン2回押し | |
ANC | 機能ON | ANCボタン2秒長押し |
機能OFF | ANCボタン2秒長押し | |
環境音 取込モード | ANCボタン ANCモードと交互に切り替え |
使ってみた感想
かけ心地について
Amazonのレビューでは”快適”と”きつい”に二極化しているので個体差なのかもしれませんが、がじぇっとりっぷがレビューした個体はとにかく締め付けが強く、最初に使ったときは30分でギブアップしました。
使い込めば多少は慣れてきますが、それでも2時間を過ぎるときついです。耳の下、顎の付け根辺りを圧迫される感じで、だんだん顎が痛くなってきます。
他は悪くないのに、この1点だけはどうしようもなかったです。
あとこれはヘッドホンの宿命と言えますが、たとえ内部をメッシュにしていても、30℃を超えるような環境だと普通に蒸れます。
接続について
接続は特に悩むことなく、すんなりと接続できます。
ヘッドホンなので完全ワイヤレスイヤホンのように、片方だけつながった状態ということもありません。
「SuperEQ S1」はマルチポイントに対応しているのですが、これがちょっと曲者でした。
大体の場合PCとスマホの両方に接続させるみたいな使い方だと思いますが、接続の優先度が違うのか、PC側では何も再生していないのにスマホ側で音楽をかけても音が出ないということが度々発生しました。
PC側を切断すればいいのですが、原因に気付くまでは”なぜか音が出ない現象”扱いで、しばらく再接続したり電源を入れなおしたりと大変でした。気づけばなんてことない話なんですけどね。
明示的に接続を切り替えられる操作があったらいいのですが、残念ながら見当たらないんですよね…
AUXケーブルを接続すると、Bluetoothは強制的に解除されます。
AUXケーブルを外すと接続が復活します。この時マルチポイント接続をしていると上記の現象が発生することがあるので注意が必要です。
音質について
音質を語る前に、「SuperEQ S1」は音量をガンガンに上げて聞くタイプのヘッドホンです。
中途半端に音量を下げると悲しくなるくらい貧相な音になってしまいます。
これを前提として、音量90%、ANC OFFで評価を行いました(100%は耳がきつかった)。
あくまでもレビュー者の個人的感想である点にご注意ください。
Bluetooth接続
「SuperEQ S1」はaptX非対応のため、手持ちのAndroidスマホだとSBC接続となります。
低音はかなり低いところまで出ていますが、重低音は力強さというか重さというか深みというか、そういうものが足りていません。
ドラムはバスまで含めていい感じだけれど、和太鼓の大太鼓は厳しい感じといえば伝わるでしょうか。
中音は低音寄りの辺りが強く、男性ボーカルや、やや低めの女性ボーカルは聞きやすく、力強いです。
人の声は輪郭がはっきりしていて、いい意味で一段浮き彫りになっています。
Web会議などで使うにはとても向いています。
高音は伸びがいまいち。抜けるようなクリアさはなく、ピアノは余韻に欠けます。余韻がなくてもいい畳みかけるような速弾きなら全然ありです。
ソプラノなどのハイトーンボイスは楽器としての人声というより肉音感が強くなるので、好みが分かれそうです。
シャカシャカした音やキンキンした音にはならないので耳に優しいのはいい点です。
何かを叩く時の固い音が意外と得意で、ドラムのタムを叩く音などはくっきりはっきりしています。
あれこれ聞き比べた中ではカホンとの相性が一番良く、叩いている手の動きが頭の中に思い浮かぶくらいでした。
総評としては低音から中音にかけてを重視した音作りで、ロックやボーカルサウンド向けというところでしょう。
AUX接続
AUX接続時は、後述する音域テストの結果がそのまま音に表れています。
低音から中音にかけてが得意という基本的な傾向はBluetooth接続時と変わりませんが、低音が強くなり、高音の伸びがよくなっています。
低音が強くなったことで全体が締まり、バランスも良くなり、4,000円から5,000円くらいの有線ヘッドホン(無線機能がない分音作りにコストをかけている)と同程度に聞けるようになりました。
Bluetooth接続だとaptX非対応なことからポテンシャルが発揮できていなかったのでしょう。
これは非常にもったいないなぁと。
付属のAUXケーブルの品質がいまいちで、高品質なものに変えるともっと音がよくなるという話もありますが、残念ながら手元に高品質ケーブルがなく検証できていません。
ノイズキャンセリング
「SuperEQ S1」は専用ボタンがあることから分かるように、ノイズキャンセリングに力を入れています。
専用ボタンは長押しでON/OFF、短押しでノイズキャンセリングと環境音取り込みモードの切り替えになっています。
この専用ボタンが便利で、短押しで環境音取り込みモードに切り替えられるので、話しかけられたときに手間取ることなくスムーズに会話に入れます。
欲を言うならアナウンスを短くして、切り替えにかかる時間を短縮して欲しいところではあります。
ノイズキャンセリングはかなり強力で、ONにするとびっくりするくらい周辺の音が消えます。
具体的には横で回っていた扇風機の音が消えてビビりました。
無音とまでは言いませんが低周波ノイズの大部分が消え、普段の日常がどれだけ雑音にあふれているのか実感できます。
効果は非常に高いのですが仕組み上高音、例えば学校のチャイムの音などは消えません。飛行機やヘリは低音部分だけが消えてすごく変な感じになります。
音に関しては距離感がフラットになるというか、狭い部屋で楽器を弾いた時のような感じになり、音の解放感がなくなります。ピアノなどの高音系楽器は詰まったように感じます。
その代わり低音がずっしりしてBluetooth接続時の評価である低音の重みのなさが打ち消されるので、ハードロックなどはいい感じになりました。
環境音取り込みモードについては割としっかりと外の音が聞こえます。
サーッというホワイトノイズが入るのは他の対応ヘッドホン/イヤホンと変わりません。
音域について
「SuperEQ S1」の音域は、AUXケーブル接続時に16Hz-40KHz、Bluetooth接続時に20Hz-20KHzとされています。
これを実際に「WaveGene」という信号発生アプリを使用して聞き比べてみました。
AUXケーブル接続では18kHzを超えたくらいまでは聞き取れましたが、Bluetooth接続は15kHzくらいが限界でした。
おそらくはSBC接続(圧縮時に高音域を削る)が原因と思われます。
逆に下はAUXケーブル接続は40Hz以下がおかしい(低音ではなくカタカタ音になる)ものの、40Hz以上はBluetooth接続時より強めに出ます。
Bluetooth接続は30Hzくらいから出ているものの、しっかりとするのは50Hzくらいからでした。
動作時間について
ANC OFF、音量90%でおよそ30分ごとに測定。あまりにバッテリーが持つので、50%で断念しています。
連続での計測ではないのであくまで目安程度ですが、公称の45時間を超えて稼働しそうです。
残量 | 時間 |
---|---|
90% | 2時間30分 |
80% | 7時間 |
70% | 12時間 |
60% | 18時間 |
50% | 23時間30分 |
外観
箱はかなり派手というか、若者向け、ストリート向けだなぁという印象。
底面には簡易スペック。
コンセプトは”BE YOUNG, BE FREE”。
紙類は3種類。
取扱説明書はイラストを多用しており、分かりやすいです。
左からオーディオケーブル、microUSBケーブル、飛行機のデュアルプラグを3.5mmミニプラグに変換する航空機用アダプタ。
航空機用アダプタが入っているのは珍しいかも。
本体全景。
インターフェースは右カップに集中しています。
アームは折りたためますがひねりには対応していません。
カップの可動範囲はかなり狭いです。
左右を示すRLはカップの内側に印刷されています。
大きくて分かりやすく、かつ外からは見えないのでデザインに影響しない。これを最初に始めた人は頭がいいですよね。
イヤークッションはソフトですがやや硬め。
ふんわりとまではいきません。
ANC(ノイズキャンセリング)用のマイクはアームの付け根に開いています。
また、イヤホン内部に内向きのマイクがあり、カップ内の雑音を拾うようになっています。
アームは片方当たり約33mm伸ばせます。
アームの内側にはモデル名と認証マーク。
技適は書かれていませんが…
公式の製品ページにでっかく掲載されています。
でも、製品と紐づいた状態(箱、本体、説明書、電子表示)で表示されていないと規約違反で無効なんですよね…
技適そのものは相互承認設計認証(国内承認機関ではなく海外の相互承認機関での検査で技適を取得すること)での取得でした。
参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(210-150890):総務省
まとめ
「SuperEQ S1」はとにかくノイズキャンセリング性能が強力で、ANC対応イヤホンよりもがっつりと音を遮ってくれるので、音楽をかけずとも集中モードに入るとき、あるいは長時間フライトで寝るときにも使えるでしょう。
音についてはせっかくHi-fi対応を謳っているのに、aptX非対応なせいでポテンシャルを発揮できていないのが残念なところ。
それでも音は悪いとまでは言えず、人の声も聞きやすく、テレワークまでこの一台でこなせます。
一方で難点は快適性でしょう。カップの可動域が狭く締め付けが強いので、慣れないうちは長時間の装着は厳しいです。
今回レビューしたのはブラック×レッドでしたが、ホワイト×レッドもあり、老若男女問わずデザインがマッチします。
強力なノイズキャンセリングヘッドホンを探しているのであれば、候補の一つに入れてもいいんじゃないでしょうか。
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