2022年6月24日、ASRock Incorporation(本社:台湾)は容量8Lのコンパクトベアボーンキット「DeskMeet」シリーズを発売しました。
「DeskMeet」シリーズはIntel第12世代CPU(LGA1700)に対応した「DeskMeet B660」と、AMD Ryzen 5000(Sockedt SM4)に対応した「DeskMeet X300」の2モデルとなります。
特徴
「DeskMeet B660/X300」はASRockの人気ベアボーン「DeskMini H470/X300」の後継機…ではなく全くの別シリーズです。
「DeskMini H470/X300」は容積約1.92Lで「DeskMeet X300/B660」は約8Lと、容量で見ると4倍の差があります。
なお「DeskMeet X300/B660」の初出は2022年1月6日のCES 2022です。
参考 ASRock Launches 8 Liter DeskMeet:ASRock
スペック
「B660」と「X300」は、外見は同じですが中身は対応CPU以外にも結構差があります。
DeskMeet B660 | DeskMeet X300 | |
CPUソケット | LGA1700 | Socket AM4 |
対応CPU | 第12世代CPU | Ryzen 2000~5000 |
チップセット | Intel B660 | AMD X300 |
メモリ | DDR4×4 (DDR4-3200、最大128GB) | DDR4×4 (DDR4-3200、最大128GB) ※Ryzen 2000/3000はDDR4-2933まで |
ストレージ | M.2 2280(PCIe 4.0x4/SATA)×1 M.2 2280(PCIe 4.0x4)×1 SATA×3 | M.2 2280(PCIe 3.0×4)×1 SATA×2 |
PCIeスロット | PCIe 4.0 x16 | PCIe 3.0 x16 |
前面端子 | Type-C(Gen1)×1 USB3.2 Gen1×2 USB2.0×2 オーディオジャック | |
背面端子 | DisplayPort HDMI D-Sub 15ピン USB3.2 Gen1×2 USB2.0×2 1GbE 有線LAN オーディオ端子×3 | DisplayPort HDMI D-Sub 15ピン USB3.2 Gen1×2 USB2.0×2 1GbE 有線LAN オーディオ端子×1 |
LANチップ | Intel 219V | Realtek RTL8111H |
電源ユニット | 500W (80PLUS BRONZE) | |
サイズ | 168×219.3×218.3mm |
CPU以外の大きな差はストレージとPCIeスロットでしょう。
「X300」は2020年のチップセットなので新規格への対応がなく、PCIe 3.0止まりとなっています。
というか、2020年に発売された「DeskMeet X300」と同じチップセットですしね…
グラフィックボードは現時点ではハイエンド以外はPCIe 3.0と4.0では大きな差が出ません(帯域的にGen3でも足りている)が、M.2 SSDのPCIe Gen4対応の有無は大きいですね。
対応CPUについて
「B660」の対応CPUは、Intel第12世代CPU(Alder Lake)のみです。
第11世代(RocketLake)以前はソケットがLGA1200のため、物理的に非対応です。
一方「X300」はAMDがSocket AM4を維持してきたため、Ryzen 2000シリーズから5000シリーズまで幅広く対応しています。
2022年6月4日の「AMD 2022 Product Premiere」というオンラインイベントで発表されたRyzen 7000シリーズはSocket AM5になることが宣言されているので、Ryzen 7000シリーズが発売されても載せることはできません。
メモリは4スロット
「DeskMeet」のマザーボードはMini-ITXを拡張したようなサイズで、メモリを4スロット搭載しています。
そのため、コンパクトながら最大128GBという大容量が可能となっています。
Intel CPUおよびRyzen 4000以降はDDR4-3200に対応していますが、Ryzen 2000/3000はDDR4-2933までの対応となります。
ストレージは「B660」はM.2 SSD×2、SATA×3です。M.2スロットのうち一つはボード裏面に位置しています。
「X300」はM.2 SSD×1、SATA×2で、ボード裏面のスロットはありません。
ケース内部はフロント側に2.5インチストレージが2台または3.5インチを一台固定できます。
排他となりますがグラフィックボードのスペースにも設置できます。
その他
キットに付属するのはケース・マザーボード・電源・SATAケーブルです。
ベアボーンなのでCPU・メモリ・ストレージは自前で用意する必要があります。
また、CPUクーラーとWi-fiキットも自前で用意する必要があります。
CPUクーラーはIntelの純正クーラー「Laminar RM1」とAMDの純正クーラー「Wraith Stealth」のどちらも使えます。
よく使われているのは「DeskMini」シリーズでも人気の高かったNoctua「NH-L9i」などのようです。
Wi-fi導入時はアンテナもセットとなったキットを選びましょう。アンテナケーブルは短いとグラフィックボードを迂回できないので、長さはしっかり考えましょう。
制限について
「DeskMeet B660/X300」はコンパクトゆえに使えるパーツについていくつか制限があります。
・CPUはTDP65Wまで
・CPUクーラーは高さ54mmまで
・グラフィックボードは2スロット占有・200mmまで
・あたりまえだけど電源500Wに収まる範囲
グラフィックボードはGDP100Wの「Radeon RX 6600」のショート基板モデルを使ったレビューが多い(というか、そういうセットでサンプル提供を受けていたっぽい)ですが、同じ8ピン補助電源なGeForce RTX 3060(GDP 170W)も行けるんじゃないかなぁと思います。
GeForce RTX 3060の推奨電源は550Wですが、まぁ何とか入るかなと。
3割くらい高性能なGeForce RTX 3060 Ti(GDP200W)も8ピン×1ですが…さすがにこっちは厳しそう。「Radeon RX 6600 XT」はGDP145Wなので大丈夫と思われます。
外観
本体は縦にも横にも置くことができます。
正面から見る分には「B660/X300」ともに同じ見た目です。
縦置きの天面のメッシュがグラフィックボードの吸気口にあたります。
左が「B660」、右が「X300」です。
背面のインターフェース配置は少々異なっています。
「B660」のマザーボード
「X300」のマザーボード
この「X300-ITX」というボード、どうも2021年に発表された後、幻となった「DeskMini MAX」に搭載されていたボードと同じもののようです。
ボードは下の組み立て動画内で確認できます。
前述の通り、グラフィックボードは最大20cm。ショート基板モデルなら余裕で入りますね。
上でも書いたようにグラフィックボードの代わりに3.5インチHDDを設置することもできます。
ここにファンを置くことで水冷化もできるようです。
電源ファンは吸気に使って、CPUファンに向かって風を送ります。
この仕組みも前述の「DeskMini MAX」で導入されています。
この電源ユニットはファンが逆向きの特注品ということで、市販の電源ユニットに交換するとエアフローがおかしくなり、故障の原因となるのでやらないようにとのアナウンスも流れています。
とはいえ「ファンを逆にすればいいんだな?」と返して、「やるなよ?やるなよ?」状態になっているのがASRockerなわけですが。
まとめ
「DeskMeet B660/X300」の価格は「B660」が38,000円前後、「X330」が31,000円弱程度です。Amazonは手数料分高いので、他のショップがいいでしょう。
ベアボーンなのでこのほかにCPU・CPUクーラー・メモリ・ストレージ・グラフィックボードが加わりますが、構成次第では10万円以下で組むことも可能です。
それなりに制約はあるものの、グラボを載せたデスクトップがコンパクトかつ安価に1台組めるわけで、発売と同時に人気が出ているのもわかりますね。
ところで「DeskMeet B660/X300」を見て最初に思ったのは、「これ、逸般の誤家庭(誤字に非ず)な人たちが夢想したサーバーボードでは?」でした。
メモリ4スロットがMini-ITXに収まらないならちょっとだけ延ばしてしまえばいいのでは?というのはたぶん自宅鯖やっている人なら一度は考えたことがあるはず。
メモリ4スロットなMini-ITX自体は昔から産業向けにはありましたが、総じて高額でマザーボードだけで10万オーバーもしばしばです。それが電源もケースも付いて3万円台とか。
現在32GBメモリは1.2万円くらいまで値下がりしているので、「B660」に12コア20スレッドなCore i7-12700(約4.7万円)、32GBメモリ×4(計5万円)とCPUクーラー、適当なSSDを入れても15万円あればとんでもサーバーが組めますね。
個人じゃなくてもOpenStackでプライベートクラウド構築とか、Kubernetes/KubeVirtでコンテナクラウドにするとか、パブリッククラウドサービスを使えない開発系での需要があるんじゃないかと。
これ以上を目指したい?Xeonの世界へようこそ。
関連リンク
DeskMeet B660 Series:ASRock
DeskMeet X300 Series:ASRock
ニュースリリース:ASRock
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