2022年6月1日、携帯型ゲームマシンメーカーのAYNは、6インチディスプレイのWindowsゲームマシン「Loki」シリーズを発表しました。
発表当時は「Loki Mini」、「Loki Mini Pro」、「Loki」、「Loki Max」の4種類でしたが、7月1日、最廉価となる「Loki Zero」がラインナップに追加されました。
いずれも第4四半期の出荷予定で、現時点では予約のみとなります。
2023年5月5日追記:一部モデルのキャンセルについて
2023年5月5日、AYNからの進捗メール内で、一部モデルについては最低注文数に届かなかったとして生産の中止が伝えられました。
スペック
各モデルのスペックを表にすると以下のようになります。
Loki Zero | Loki Mini | Loki Mini Pro | Loki | Loki Max | |
---|---|---|---|---|---|
CPU | Athron 3050e | Celeron 7305 Mendocino Zen2 | Pentium 8505 Mendocino Zen2 | Ryzen 5 6600U | Ryzen 7 6800U |
GPU | Radeon | Intel:12th UHD AMD:RDNA2 | Radeon 660M | Radeon 680M | |
メモリー | 4GB DDR4-2400 SO-DIMM×1 | 8GB Intel:LPDDR4x-4266 AMD:LPDDR5-6400 | 8/16GB LPDDR5-6400 | 16GB LPDDR5-6400 | |
ストレージ | 64GB eMMC M.2 2230Slot | 128GB (M.2 2230 NVMe) | 128~512GB (M.2 2230 NVMe) | 512GB (M.2 2230 NVMe) | |
画面 | 6インチ HD (1280×720) | 6インチ FHD (1920×1080) | |||
I/O | USB3.2 3.5mm | Intel:USB4 AMD:USB3.2 3.5mm | USB4 3.5mm | ||
通信 | Wi-fi 5、BT4.2 | Wi-fi 6、BT5.2 | Wi-fi 6E、BT5.2 | ||
バッテリー | 40.5WHr | 26.5WHr | 40.5WHr | 46.2WHr | |
本体サイズ | 厚さ20mm | 厚さ15mm | 厚さ20mm | 未公開 | |
重さ | 未公開 | 362g | 未公開 | ||
カラー | ブラック | Intel:ホワイト AMD:クリアブラック | Intel:ブラック AMD:ホワイト | ホワイト、ブラック | |
価格 | 199ドル | Intel:239ドル AMD:260ドル | Intel:279ドル AMD:299ドル | 489~649ドル | 775ドル |
オプション | メモリ増設 13ドルで8GBに ストレージ増設 22ドルで+128GB | CPU変更 70ドルでCore i3-1215U メモリ増設 40ドルで16GBに |
補足:Mendocinoについて
Mendocinoは1998年発売の128KBキャッシュ付きCeleron…ではなく、2022年5月23日に発表されたばかりのAPU(グラフィック内蔵CPU)です。Celeron 300A、覚えている人いるかな?
Ryzen 6000シリーズにおける廉価版なのですがこれがまたややこしいものとなっていて、以下の特徴を持ちます。
・アーキテクチャはZen2(Ryzen 4000シリーズ相当)
・グラフィックはRDNA2(Ryzen 6000シリーズと同じ)
・最大で4コア8スレッド
・グラフィックは2CU(Compute Unit)
・製造プロセスは6nm(Ryzen 6000シリーズと同じ)
・USBは3.2 Gen2まで(USB4非対応)
こんなキメラみたいな構成で、イメージとしては今のAthronシリーズ(3050U/3150U)の後継と考えていいんじゃないかと。
なお、Steam Deckも同じZen2+RDNA2ですが、こちらは8CUということでグラフィック性能はそのまま4倍の差とみていいでしょう。
特徴
特徴をざっくりまとめると、以下のようになります。
・Loki Zero:最廉価モデル、メモリ・ストレージ増設可能
・Loki Mini:最薄・最軽量モデル、Intel版 / AMD版あり
・Loki Mini Pro:CPU・バッテリー向上、Intel版 /AMD版あり
・Loki:Ryzen 5 6600U搭載機、メモリー・ストレージ選択可
・Loki Max:Ryzen 7 6800U搭載機の最上位モデル
Loki Zero
新しく追加された最廉価モデルで、199ドル(約27,000円)と安価で、以下の特徴を持ちます。
・Athron 3050eはTDP6WでPassMarkスコアが2950と意外と高い
・「Loki」シリーズの中で唯一HD(1280×720)解像度
・メモリは標準4GB DDR4-2400で、13ドルで+4GBの増設が可能
・ストレージは64GB eMMCだが、M.2 NVMe(2230)の増設が可能(128GBが22ドル)
グラフィックはRadeon RX Vega 3ですが0.6GHzと周波数が抑えられていて、理論値では230GFlopsです。Ryzen 3 3200Uが460GFlopsなので半分ですね。
値段が値段なので多くは求められませんが、200ドルを切るモデルと考えれば割といいんじゃないかと。
安価に増設ができる点も良ポイントです。
Loki Mini
「Loki Mini」はIntel版とAMD版があり、Intel版が239ドル(約32,400円)、AMD版が260ドル(約35,200円)となっています。
Intel版のCeleron 7305はAlder Lake世代ではあるものの、PassMarkスコアは2665と低めです(サンプル数が1なので信頼性は低い)。ただしグラフィックは理論値で844GFlopsとかなり高めです。
AMD版は発表されたばかりのMendocinoでデータがありません。
・「Loki Zero」と違って解像度はFHD(1920×1080)
・メモリはオンボード8GBのみ
・ストレージは最初からNVMe SSD
・薄型な代わりにバッテリー容量は少なめ
・Intel版はUSB4搭載
正直なところ、「Loki Zero」が追加されて最廉価モデルの看板がなくなったことで、評価しにくくなりました。
いや、計算処理は微妙だけどグラフィックは何とか、それでいてFHD解像度にUSB4搭載(Intel版の場合)で3万円台前半は安いと思いますよ?USB4が十全に性能を発揮できるかはわかりませんが。
でも、後に控える「Loki Mini Pro」が計算処理も備えたモデルとなっていて、格安機として完成されているんですよね…
Loki Mini Pro
「Loki Mini Pro」も「Loki Mini」同様Intel版とAMD版があり、Intel版が279ドル(約37,800円)、AMD版が299ドル(約40,500円)となっています。
・Pentium 8505は性能が跳ね上がってPassMarkスコアが6770
・ただしグラフィックはCeleron 7305と同じ
・+70ドルでCore i3-1215Uにアップグレード
・+40ドルでメモリ16GBにアップグレード
・Intel版はUSB4搭載
・バッテリーは40.5WHr
なんというか、「Loki Mini」との価格差と性能差が釣り合ってないですね。正直、格安機としては完成度が高いなぁと。
さらにアップグレードが用意されているのも大きいです。389ドル(約52,600円)でCore i3のメモリ16GBって、普通のノートでもなかなかないのでは?
ライバルとなりそうなのはINDIEGOGOで499ドルからファンディング中の「AYANEO AIR」でしょうか。
参考 AYANEO AIR: First Ultra thin OLED Windows Handheld:INDIEGOGO
Core i3-1215UのPassMarkスコアは12000オーバー。グラフィックEU数も48から64に増えて、3DMark FireStrike(Graphics)で3400弱、TimeSpy(Graphics)が1100弱です。
これならモバイルゲーム機としてではなく、ミニキーボードと合わせたモバイル環境としても使えそうですし、Core i3-1215UならUSB4もフルに性能を発揮できるんじゃないかと。
ちなみに「AYANEO AIR」の安価なモデルに搭載されるRyzen 5 5560UはPassMarkスコアが17000、グラフィックはデータがないのでRyzen 5 5500Uで代用すると、FireStrike(Graphics)の平均が3257、TimeSpy(Graphics)の平均が1193です。
CPU処理はともかく、グラフィックについてはCore i3-1215Uとそれほど差がないんですね。
Loki
「Loki」は無印であることからこれが基準と考えていいでしょう。価格はストレージによって違い、489ドル(8GB/128GB、約66,200円)、579ドル(16GB/256GB、約78,300円)、649ドル(16GB/512GB、約87,900円)です。
・APUはZen3+なRyzen 5 6600U
・グラフィックはRDNA2 Radeon 660M(6CU)
・USB4搭載
Ryzen 6000シリーズはグラフィックアーキテクチャがRDNA2に更新されました。
とはいえ、Ryzen 5 6600Uは6CUなのでまだおとなしいほうです。
購入するとしたらメモリ16GBモデルにしたほうがいいでしょう。メモリの余裕は心の余裕です。
それに、Ryzen 6000シリーズから対応したとはいえ、ノートでもなかなか搭載されないUSB4が使えるのはおおきな利点です。
Loki Max
「Loki Max」は「Loki」シリーズの現状最上位、価格も775ドル(約105,000円)と、日本円で10万円超えとなります。
・APUはZen3+なRyzen 7 6800U
・グラフィックはRDNA2 Radeon 680M(12CU)
・メモリは16GB LPDDR5
最上位だけあって、性能は抜群です。 Radeon 680MはRyzen 5 6600Uの2倍のCUを内蔵し、Tiger Lakeを置き去りにしてGeForce GTX 1050の8割を超えるスコアを叩き出しています。
他機種での検証ですが、Ryzen 7 6800Uは画質設定次第ではエルデンリングが普通にプレイできるようです。内蔵グラフィックの進化が著しいですね。
まぁ、10万円を超えるのは納得です。むしろ、6インチ筐体によく押し込めたなぁとそっちのほうが感心します。
まとめ
上から下までそろった「Loki」シリーズですが、現時点ではレンダリング画像のみで、試作機の写真すら公開されていません。
一応AYNは「Odin」を販売したという実績があるので大丈夫だとは思いますが、開発状況や部材調達の状況によっては2022年4Qの予定が来年に延期されてもおかしくはありません。
GPD XPやONEXPLAYER、AYANEO、ちょっと経路は違うもののSteamDeckなどポータブルゲーム機は群雄割拠の時代です。
他社より先に開発を宣言・予約を開始してユーザーを囲い込むというのは戦略としては間違っていませんが、グラフィックの強いRyzen 6000シリーズは他社も採用するでしょうし、これで発売が他社より遅れた場合は著しく評価を下げる諸刃の剣となるでしょう。
これはむしろ、他社がラインナップに入れなさそうな「Loki Mini Pro」くらいが実は狙い目かもしれませんね。
あとはDockがどうなるのかがまだ公表されていないので、そこも気になる点です。
関連リンク
Loki Zero:AYN
Loki Mini:AYN
Loki Mini Pro:AYN
Loki:AYN
Loki Max:AYN
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