ここ最近、Amazonを中心にミニPCが活況です。
スペックは横並びに近く、2.5GbE対応だとかちょっとした差異があるくらいで、主に価格で攻めているため、エントリー機とミドルクラスがとんでもなく安くなっています。
そんなミニPC戦国時代に新たに進出してきたのが、台湾のミニPCメーカー GEEKOMです。
もともとはコンピューター製品の研究・開発(R&D)を手掛ける企業でしたが2021年に方針転換、ミニPCに注力し始めました。
今回レビューするのはそんなGEEKOMの現在の主力製品である「Mini IT11」です。
機材を提供いただいたGEEKOM様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
GEEKOM Mini IT11
CPU | Core i7-11390H |
---|---|
メモリ | 16GB DDR4-2400 |
ストレージ | 512GB M.2 SSD |
インターフェース | USB Type-C(USB4)×2 USB 3.2 Gen2×3 HDMI minDP SDXC 1GbE 有線LAN オーディオジャック |
wi-fi | Wi-fi 6+BT5.2 |
サイズ | 117×112×45.6mm |
重さ | 565g |
GoodPoint
✔ 前後にType-C端子
✔ 普段使いの範囲では超静音
✔ SDカードも高速
✔ ベアボーンモデルあり
BadPoint
✖ USB4がシングルレーン
✖ Type-Cでの給電に非対応
✖ 価格競争力が微妙
■公式ストア
クーポンコード:gadgetrip11390
クーポン期限:2023年11月30日
■Amazon
クーポンコード:LT59HPYH
クーポン期限:2023年11月30日
パッケージ
・電源アダプタ
・電源ケーブル
・HDMIケーブル
・VESAマウンタ
・ねじ
・ユーザーマニュアル
「Mini IT11」のインターフェース
・USB4(DP出力対応)
・USB 3.2 Gen2
・オーディオジャック
・電源ボタン
■側面
・SDカードリーダー
・電源ジャック
・miniDisplayPort
・USB 3.2 Gen2×2
・USB4(DP出力対応)
・HDMI
インターフェースは前後にUSB4が用意されています。ただし、シングルレーンなので最大20Gbpsとなります。
また、USB PD給電には非対応で、Type-C給電での動作はしません。
「Mini IT11」の内部
内部はミニPCとしてスタンダード的で、ユーザーがカスタマイズできるのはメモリ×2、M.2 SSD、2.5インチベイとなっています。
「Mini IT11」のパフォーマンス
「Mini IT11」の搭載CPUはCore i7-11390Hで4コア8スレッド、グラフィックはIrei Xe(96EU)です。
総合
PassMarkは旧バージョン(v9)と新バージョン(v11)の両方を掲載。比較グラフはデータの揃っているv9のみです。
おおよその性能はCore i7-1165G7以上、Core i5-1235U以下。
Core i7-1165G7とほぼ変わらないスコアとなっていますが、Core i7-1165G7のデータ元の「Yoga 750i」がCPU処理寄りにチューニングされているためです。
Core i7-1165G7のPassMark平均値は11,000弱なので、Core i7-1165G7の平均から見るとCore i7-11390Hは2割程度高いスコアを示すことになります。
CPU
上段:マルチスレッド、下段:シングルスレッド
CINEBENCHで見てもCore i7-1165G7以上、Core i5-1235U以下は変わらず。
GPU
グラフィック性能はCPU処理と傾向が変わって、Iris Xe(80EU)なCore i5-1235UのスコアはEU数が少ない分、かなり低くなります。
Core i7-1165G7(Yoga 750i)も計算処理重視のチューニングなので、グラフィックスコアは低くなっています。
変わって上位に来たのが同じIris Xe(96EU)で、TDPが35Wと高いCore i7-11370H。
同じTDP35Wの本機(Core i7-11390H)と比べてもスコアが高いのはチューニングの差でしょう。現にCPUスコアは低いですし。
こうしてみると、「Mini IT11」は計算処理にもグラフィック処理にも偏重しない、バランスの取れたチューニングと言えます。
ストレージ
「Mini IT11」のストレージはLexar NM620です。
Lexarの3D TLC NANDを採用したエントリークラスSSDで、仕様上はリード最大3,500MB/s、ライト最大2,400MB/sとされています。
ちなみに国内で人気なのはYMTC製NANDを搭載した激安SSDとなるNM790です。
CrystalDiskMarkでは、リード3,450MB/s、ライト2,650MB/sに。
流石にGen4 SSDほどの速度は出ませんが、これだけ出ていれば文句はないですね。
SDカード
「Mini IT11」はフルサイズのSDカードスロットを備えています。
SDカードを挿すと、半分はみ出します。
SDカードのCrystalDiskMark結果。
リード95MB/s、ライト87MB/sと、内臓リーダーとしては相当に優秀な結果に。
これだけ出るのであれば、外付けのカードリーダーは不要ですね。
外観
パッケージ
外箱はやや派手というか、欧米圏を意識したデザインでしょうか。
箱は真ん中から開き、上半分に本体、下半分にケーブル等が収められています。
再掲となりますが、パッケージ全体。
付属品
電源アダプタはアース付きのミッキープラグ。
コネクタもめちゃくちゃごつく、中国系の「電気が通ればいいんだよ」的なちゃちさとは真逆です。
出力は64.98W。PSEマークも付いています(近接位置に事業者名がありませんが…)。
マニュアルは1枚スタイル。
日本語の説明はいわゆる中華フォントが使われています。
がじぇっとりっぷも最近まではそんなものと流していましたが、「放置すると世界的にこれが”正しい日本語の漢字”と思われるようになる」という意見を見てからは、指摘することにしています。
VESAマウンタは一般的な1枚板タイプ。
筐体
上でも書いたように、Type-Cは前後にあり、どちらもUSB4(シングルレーン)対応です。
できれば一般的なデュアルレーン(40Gbps)がよかったなぁ…
側面は広くメッシュとなっていて、吸気が不足するということはなさそうです。
以前のASUSは内部にエアフローを生むような吸気位置にした結果、割とうるさかった(「PN62」で改善されました)ので、こういうスタイルは大歓迎です。
底面には認証情報。技適番号も記載されています。
記載番号は04-B00777。しかし調べてみたら実際の認可は204-B00776で番号が間違っているんですよね…どうすんだこれ…?
参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(204-B00776):総務省
サイズ感としては、CDケースより一回り小さく、高さはCDケース5枚分。
重さは本体532.5g、電源アダプタ込みで890gでした。
内部構造
内部を見るには底面のゴム足内のねじを回すことでアクセスできます。
底面の蓋には2.5インチベイ。右側はM.2 SSDのヒートシンクを兼ねています。
ネジは蓋に固定されていて、なくす心配がありません。
メモリは2スロット。
メモリはLexar製でした。
ストレージの下にはオンボードのWi-fiチップ。アクリル板で絶縁処理 兼 端子保護されています。
また、筐体は内側にメタルフレームが仕込まれていて、剛性が確保されています。
システム
起動前
UEFIは旧BIOSタイプ。
確認できる項目はかなり多め。
恒例のバックアップです。
使用したのは「Macrium Refrect Free」で、バックアップサイズは34.51GBでした。
システム情報
デスクトップは完全にOSデフォルト。
システム情報。OSはWindows 11 Proで、製造元は「GEEK」となっています。
HWiNFOによるシステム情報(横長なので分割しています)。
PL1は35W、PL2は64Wでした。
ゲームベンチマーク
ゲームベンチマークは今回より軽量級のDQベンチマークを外しました。
現在では内臓グラフィックでも十分なスコアが得られること、スコアが15000を超えると本来の性能とスコアが一致しないことが理由です。
レビュー機のスペック
レビュー機のスペックは以下の通り。
CPU | Core i7-11390H |
---|---|
グラフィック | Intel Xe(96EU) |
メモリ | 8GB×2 DDR4-3200 |
ストレージ | 512GB M.2 Gen3 SSD |
[中量級] FF XIV 漆黒のヴィランズ
設定 | スコア | FPS | 評価 |
---|---|---|---|
1920×1080 最高品質 | 3181 | 21.44 fps | やや快適 |
1920×1080 高品質 | 4420 | 30.40 fps | 快適 |
1920×1080 標準 | 5660 | 39.63 fps | とても快適 |
1280×720 高品質 | 7535 | 53.95 fps | 非常に快適 |
1280×720 標準 | 8991 | 67.24 fps | 非常に快適 |
中量級タイトルではFHD解像度でも設定次第では40fps近くとプレイ可能な範囲です。
[重量級] FF XV Windowsエディション
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
1920×1080 高品質 | 1356 | 動作困難 |
1920×1080 標準品質 | 1842 | 動作困難 |
1920×1080 軽量品質 | 2303 | 重い |
1280×720 標準品質 | 2585 | やや重い |
1280×720 軽量品質 | 3145 | 普通 |
重量級のFF XVでも、プレイできなくはないかなぁといったところ。
第10世代以前は720pで「重い」評価が出ただけですごいってなっていたのに、贅沢な話ですね。
それにしても、Ryzen 7 6800U(RDNA2)の優秀さよ…
消費電力・稼働時間・騒音・温度
消費電力
アイドル時 | 8.0W |
---|---|
画面オフ時 | 7.6W |
スリープ時 | 0.6W |
CINEBENCH(S) | 35.3W |
CINEBENCH(M) | 48.6W |
最大 | 48.6W |
消費電力はCINEBENCHをマルチスレッドで回したときの48.6Wが最大値でした。
グラフィック処理も合わせて負荷をかけると、40~42Wと逆に消費電力が下がる結果に。
ちなみにFF XVベンチマーク中は30~35Wでした。
騒音
状況 | 音量 | 聞こえ方 |
---|---|---|
電源オフ | 34.9dB | |
アイドル | 35.1dB | |
最大 | 42.1dB 36.1dB(GPU) | シャーという音 |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | |
---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | |
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | |
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
「Mini IT11」は相当に静音で、最大音量の42.1dBはCPUベンチを4~5分回した頃の数値です。
というか、最大負荷をかけ続けない限りはうっすら音がするなぁ程度ですね。
現にFF XVベンチマーク中は36.1dBと、耳を近付けないとファンが回っているかわからないくらいでした。
この辺りはチューニングの方向性によるとしか言えませんが、
音としては小さな滝とか流れの早いせせらぎとかのシャー、あるいはサーっという音で、不快感は感じませんでした。
温度
CPU温度は最大で94度とかなりギリギリまで攻めています。
といっても、実際は計算処理の最大負荷時だけで、例えばFF XVベンチマーク中は80度以下をキープ。
まとめ
「Mini IT11」は、十分な性能と静音性を備えたミニPCです。
背面にもType-Cを備えることで、Type-Cからの映像出力時もフロント側がうるさくならないのがいい感じです。
反面、せっかくのUSB4なのにシングルレーンだったり、Type-Cからの給電に非対応だったりと、物足りない面があることも事実です。
そんな「Mini IT11」の価格は、記事執筆時点でベアボーンが47,682円(10%オフクーポン適用)、レビュー機と同じ構成の16GB/512GBが58,482円(同)です。
さらに下に掲載しているクーポンコードを併用すると51,984円(記事執筆時点ではさらに1,040ポイント)となります。
これ、昨年までであれば「この性能でこの価格は安い!」と言えたんですけどね…
冒頭にも書いたように、2023年に入ってからミニPC界隈は価格面での戦国時代に入っています。
Ryzen 7 5800U/16GB/512GBで4万円ちょっととか、同じCore i7-11390H/16G/512GBの構成で4万円台前半とかの製品がごろごろしているわけで、価格差を覆すような特長がないと、勝負することは難しいです。
筐体の品質とか静音性は特長ではあるのですが、ちょっと地味なんですよね。せめてUSB4がデュアルレーンであれば、インパクトがあったのですが…
■公式ストア
クーポンコード:gadgetrip11390
クーポン期限:2023年11月30日
■Amazon
クーポンコード:LT59HPYH
クーポン期限:2023年11月30日
関連リンク
公式製品ページ:GEEKOM
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | GEEKOM | |
---|---|---|
モデル名 | Mini IT11 | |
CPU | Core i7-11390H | |
GPU | Iris Xe | |
メモリ | 8GB×2 | |
ストレージ | 512GB | |
PassMark 9 | Total | 5736.7 |
CPU Single | 2914 | |
CPU Multi | 13495.6 | |
2D | 917.3 | |
3D | 2857.4 | |
Memory | 3203 | |
Disk | 23491.2 | |
PassMark 11 | Total | 3842.9 |
CPU | 12117.9 | |
CPU Single | 3376 | |
2D | 387.6 | |
3D | 2849.3 | |
Memory | 2930.6 | |
Disk | 22560 | |
3DMark | TimeSpy | 1505 |
Graphics | 1346 | |
CPU | 4601 | |
FireStrike | 3881 | |
Graphics | 4216 | |
Phisics | 12728 | |
Combined | 1472 | |
NightRaid | – | |
Grapihics | – | |
CPU | – | |
SkyDiver | 12111 | |
Graphic | 12297 | |
Phisics | 10928 | |
Combined | 12743 | |
CloudGate | 16704 | |
Graphics | 22529 | |
Phisics | 8769 | |
IceStorm | 69988 | |
Graphics | 74603 | |
Phisics | 57532 | |
IceStormEX | 58001 | |
Graphics | 58191 | |
Phisics | 57347 | |
IceStormUnlimited | 127527 | |
Graphics | 173662 | |
Phisics | 66088 | |
3DMark | TimeSpy | 1492 |
Graphics | 1334 | |
CPU | 4575 | |
FireStrike | 3843 | |
Graphics | 4167 | |
Phisics | 12688 | |
Combined | 1463 | |
NightRaid | 13944 | |
Grapihics | 15979 | |
CPU | 8101 | |
WildLife | 10882 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 89.87fps |
CPU(M) | 948cd | |
CPU(S) | 232cd | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 2273pts |
CPU(S) | 601pts | |
CINEBENCH R23 | CPU(M) | 5856pts |
CPU(S) | 1516pts | |
CPU-Z | Single | 602.9 |
Multi | 2600.8 | |
CrystalMark | Mark | 544511 |
ALU | 158271 | |
FPU | 91225 | |
MEM | 163078 | |
HDD | 83941 | |
GDI | 25409 | |
D2D | 4902 | |
OGL | 17685 | |
GeekBench4 | Single | 6981 |
Multi | 20126 | |
OpenCL | 41100 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench5 | Single | 1582 |
Multi | 4988 | |
OpenCL | 13117 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench6 | Single | 2070 |
Multi | 5921 | |
OpenCL | 11231 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
PCMark | ALL | 4931 |
Essensial | 9908 | |
Productivity | 6769 | |
DigitalContent | 4853 | |
VR Mark | 1784 | |
DQ(DX9) | 1920・最高 | – |
1280・標準 | – | |
FF XIV(DX11) 紅蓮 | 1920・最高 | 3130 やや快適 |
1920・高 | 4542 快適 | |
1920・標準 | 5961 とても快適 | |
1280・高 | 7805 非常に快適 | |
1280・標準 | 9448 非常に快適 | |
FF XIV(DX11) 漆黒の反逆者 | 1920・最高 | 3181 やや快適 |
1920・高 | 4420 快適 | |
1920・標準 | 5660 とても快適 | |
1280・高 | 7535 非常に快適 | |
1280・標準 | 8991 非常に快適 | |
FF XIV(DX11) 暁月の終焉 | 1920・最高 | 3118 設定変更 |
1920・高 | 4327 普通 | |
1920・標準 | 5641 普通 | |
1280・高 | 7295 やや快適 | |
1280・標準 | 8945 快適 | |
FF XV(DX11) | 1920・高 | 1356 動作困難 |
1920・標準 | 1842 動作困難 | |
1920・軽量 | 2303 重い | |
1280・標準 | 2585 やや重い | |
1280・軽量 | 3145 普通 | |
MHF(DX10) 大討伐 | 1920 | 7451 |
1280 | 11399 | |
Fortnite Tiled Towers | 最大FPS | 23 |
1%低FPS | 12 | |
ブラウザ | jetstream2 | 211.727 |
BaseMark | 996.88 | |
WebXPRT3 | 347 | |
WebXPRT4 | 227 | |
MotionMark | 945.56 | |
SpeedMeter2.0 | 227 | |
octane | 69645 |
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