SUUNT(スント)は1936年に設立されたフィンランドのアドベンチャースポーツブランドです。
最初の製品は1936年の液体封入式コンパスで、フィールドコンパス、ダイビングコンパス、スポーツウォッチときて、現在ではスポーツウォッチ・スマートスポーツウォッチ、ダイブコンピュータを主力としています。
そんなSUUNTがアウトドアスポーツ向けに設計した骨伝導ヘッドフォンが「SUUNT WING」です。
がじぇっとりっぷでは多数のイヤホンをレビューしている縁から、この製品をレビューする機会をいただいたので、どんなものか見ていきます。
SUUNT WING
GoodPoint
✔ aptX Adaptive対応
✔ 専用モバイルバッテリーが便利
✔ IP67防水防塵
BadPoint
✖ (宿命として)低音が弱い
✖ ワイヤーが邪魔
✖ アプリが弱い
スペック
モデル | SUUNT WING |
---|---|
チップ | QCC3044 |
Bluetoothバージョン | v5.2 |
対応プロファイル | A2DP, AVRCP, HFP, HSP |
対応コーデック | SBC、AAC、aptX Adaptive |
ドライバー径 | 22.1×13.15mm |
周波数 | 20Hz-20kHz |
感度 | 117dB@1kHz -10dBFS |
マイク感度 | -38dB(1kHz) |
S/N比 | 62.5dB |
バッテリー容量 | 本体:340mAh モバイルバッテリー:500mAh |
バッテリー駆動時間 | 約10時間 約4時間(ライト点灯時) |
バッテリー駆動時間 (モバイルバッテリー込) | 約30時間 |
充電時間 | 約1時間(本体) 約1.5時間(モバイルバッテリー) |
充電端子 | 独自規格(本体) USB Type-C(モバイルバッテリー) |
防水&防塵規格 | IP67(本体) IP55(モバイルバッテリー) |
重量 | 本体:33g モバイルバッテリー:40g |
パッケージ
・専用モバイルバッテリー
・固定カバー
・充電ケーブル
・保管バッグ
・耳栓
・ユーザークイックガイド
・国際保証リーフレット
・安全のためのリーフレット
操作について
設定 | ||
---|---|---|
電源オン・オフ | [+]3秒長押し | |
ペアリング | [+][-]同時3秒長押し 電源オフから[+]5秒長押し | |
デュアルデバイス | ペアリングモードでボタンと[+]同時3秒長押し | |
頭部移動制御 | ボタンと[-]同時3秒長押し | |
LEDライト | [-]3秒長押し | |
音楽 | ||
再生 | ボタン1回押し | |
停止 | ボタン1回押し | |
次の曲 | ボタン2回押し | |
前の曲 | ボタン3回押し | |
サウンドモード切替 | ボタンと[+]同時3秒長押し | |
通話 | ||
電話に出る | ボタン1回押し | |
電話を切る | ボタン1回押し |
「SUUNT WING」の操作は音量ボタンとマルチファンクションボタンを使います。
操作的にはShokzの骨伝導イヤホンに似ていますが、音声案内ではなく効果音(ポンポンとかポコッとか)。なんとなく伝わりますが、音声案内のほうが安心感はあります。
タッチ操作ではなく、物理ボタンというところもポイント。
基本操作がマルチファンクションボタンを1~3回押すだけなので、誤操作も少なく、反応が悪いとか反応しなかったなんてこともなく、イライラさせられることが全くありません。
ヘッドジェスチャーコントロール
「SUUNT WING」独自の操作方法として、頭を振って操作する「ヘッドジェスチャーコントロール」に対応しています。
操作できる内容は多くはありませんが、そもそも両手がふさがっているとかの状況で使用する機能でしょうし、むしろ両手がふさがっていても通話の応答・拒否ができるのはいい機能ですね。
使ってみた
接続について
「SUUNT WING」の対応コーデックは仕様上に記載がありません。実際に接続したところ、高音質コーデックのaptX Adaptiveに対応していました。
同じ高音質規格であるLDACとの違いはざっくり下の通り。
LDAC:ソニー主導、最高96kHz/24bit、遅延は非公表、330/660/990kbpsの3段階
aptX Adaptive:Qualcomm主導、最高96kHz/24bit、低遅延(50~80ms)、接続の安定性高い、280~420kbpsの可変
アプリについて
「SUUNT WING」はSUUNTアプリで管理できます。
といってもSUUNTアプリは元はスマートスポーツウォッチ(SUUNT Watch)と連携したフィットネスアプリなので、「SUUNT WING」の管理機能はすっごい片隅にあったり。
内容的にも機能は薄く、どれも本体で操作できるものばかりです。
今回は検証できませんでしたが、アプリ経由でSUUNT Watchと連携してエクササイズ中の音声フィードバックを聞く、という機能があり、アプリを使うのはこの機能のためがメインとなりそうです。
かけ心地
「SUUNT WING」はShokzの骨伝導イヤホンと同じく、ワイヤーフレームで左右が接続されています。
耳に深く掛けられかつ落としにくい形状はアウトドア用としては最適と言えますが、ハイバックチェアにもたれかかれないなど、インドアではワイヤーが邪魔になることが多々あります。
他にも襟の高い服や、フード付きパーカーなどとの相性も良くありませんが、左右分離型のワイヤレスイヤホンに比べて落としても見失いにくいなどのメリットもあるので、この辺りは何を優先するかという問題ですね。
装着時の圧迫感はあまりなく、ふんわり押さえつける程度。それでいて緩いということもなく、良く研究されていると思います。
防水について
「SUUNT WING」はIP6X/IPX7の防塵・防水設計となっています。
さらに言うと動作温度は-20℃~+60℃と広く(同じ防水骨伝導イヤホンのShokz「Aeropex」は0~45℃)、過酷な環境でも音楽を楽しめます。
がじぇっとりっぷはインドア派なのであまり外で使う機会はありませんが、IPX7防水+60℃までの動作=風呂でも問題ないということで、主にお風呂のお供となっています。
逆に言うと規格上の保証は30分までなので、水泳やダイビングで使えることまでは保証されません。
音質について
「SUUNT WING」は22.1×13.15mmの楕円型ドライバーを内蔵しています。
かなり大型のドライバーですが、骨伝導イヤホンの特性上、低音はかなり抑えられています。
とはいえ完全にいなくなったわけではなく、接触面が震えない程度には主張しています。耳にちょうどいい音量だと、目立たないけど一応いるなぁってぐらい。
重低音はさすがに厳しく、バスドラムで接触部が少し震えるくらいにしないと聞こえません。
とはいえ、多少音を大きくしても震える頻度も振動の強さも抑えられているので、音量マックスとかにしない限りは、振動はほとんど気になりません。
この辺りは「あくまでも運動のおともであって、イヤホンに気を取られることがあってはならない」というメーカーの姿勢が伺えます。
低音とは逆に中音は良く聞こえるうえ、めっちゃクリア。びっくりするくらいクリア。
ボーカルにノイズがなく、ストレートに頭の中に響きます。
高音もかすれ気味ですが伸びやかな音です。ピアノがやたらと情緒にあふれた音になります。
かすれ気味といってもハイレゾ(~40KHz)イヤホンに比べてであって、普通に聞く分には高音も伸びるなぁって感じ。
実際の曲では、和太鼓演奏など一部を除いてはおおむね違和感なく聞けます。
あとYouTubeのCMがめちゃくちゃはきはき聞き取りやすくなってて笑っちゃいました。
と、ここまでがインドアでの話。
アウトドアとなるとまた少し状況が変わってきます。
ランニングやトレイル…はさすがにしないので、車通りの多い道沿いなどを散歩してチェック。
外で使うと低音は環境音にかき消されるので、弱くてもそれほど気になりません。
低音が弱いのにはもう一つ、歩くペースが曲のリズムに引きずられないというメリットもありました。
それでいて中音・高音はしっかりしているので、ながら聞きには十分でした。
ブルーノ・マーズやテイラー・スイフトなどの軽快でテンポがよく、(英語歌詞なので)聞き流すのに向いた曲は相性がいいです。
あくまでもレビュー者の個人的感想である点にご注意ください。
外観
外箱です。
シンプルなパッケージに暖かさを感じる手書き文字が入ったデザインは、中華系とも欧米系とも違う雰囲気があります。
仕様や認証などの細かい情報は目立たない底面に集中。
技適番号もしっかり入っています。
参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索 (214-230139):総務省
中を開けたところ。
ワイヤーが暴れないように固定するテープに書かれた文言が個人的にヒット。
この一言だけでなぜかワクワクしてしまうという。
再掲ですがパッケージ全体。
同梱品
紙類は簡易マニュアルと保証について、安全と規制に関する情報の3種類。
流石の老舗、日本語フォントも説明文も完璧で問題なし。
耳栓。
収納バッグ。
充電ケーブルは独自形状。
こんな感じで充電します。
充電端子部分はHaylou「PurFree」と同じなので、イヤホン界ではこの形状が標準的なのかも。
個人的推しポイントの専用モバイルバッテリー(製品ページ上ではポータブル電源バンクと呼んでいます)。
見た目はスタンドですが充電ケースと同じようにバッテリーを内蔵し、ポンと置くだけで本体の充電ができるので、バッテリー切れ知らずになります。10分の充電で3時間再生の急速充電に対応しています。
満充電だと本体10時間、モバイルバッテリーと合わせて30時間という長時間再生が可能になります。
モバイルバッテリーはType-C接続なので、スマホなどとケーブルの共有が可能。
おかげで上に掲載した充電ケーブルの出番がありません。
内蔵バッテリーの容量は3.8V/500mAh(=1.9WHr)。
流石に急速充電には対応しておらず、充電速度は最大5W(5V/1A)なのが惜しいところ。
でもスマホ使用中とかケーブルが空いている時に充電しておけるので、試用中は特に問題ありませんでした。
本体とモバイルバッテリーはカバーで固定可能。
持ち歩き時に鞄の中で外れて充電できていない、なんてことが起こりにくくなっています。
本体
本体は左耳側にマルチファンクションボタン、右耳側にマイク。
マイクは通話用と、通話時ノイズキャンセリング(cVc)に使う環境音測定用の2つを内蔵。
側面にはLEDライト。
夜間ランニングなどに重宝しそうです。が、白ジャケットや反射テープなど、他の目立つための工夫も忘れないようにしましょう。
コントローラは音量+/電源ボタンと、音量-ボタンがちょっと離れた位置に。
誤操作はほぼありません。
間違えやすいのがここ。
ただの突起なので誤動作はないのですが、試用中に何度もここを押し間違えました。なんか位置的にやたらと押しやすいんですよね…
比較
同じ防水骨伝導イヤホンのShokz「Aeropex」と比較。
スピーカー部は「SUUNT WING」の方が一回り大きく。
コントローラ部も「SUUNT WING」の方が少し大きいです。
その代わりバッテリー容量も大きく、「Aeropex」の8時間に対して「SUUNT WING」は10時間となっています。
マイク部は「SUUNT WING」の方がかなりしっかりしています。
ワイヤーは「SUUNT WING」の方がかなり太め。とはいっても装着中に違いを感じることはありません。
長さはほぼ同じです。
まとめ
「SUUNT WING」の価格は定価33,800円。
Shokzのフラグシップモデルである「OpenRun Pro」でも2万円台前半(セール時は2万円を切ることも)であることを考えると、かなり強気の価格設定です。
といっても専用モバイルバッテリーが付属しますし、そもそもが過酷なアドベンチャー環境で使うことを前提としていて、サイクリングやランニングなどの日常的なスポーツを想定範囲としているものより高耐久な設計であり、そのぶん高くなるのは道理なわけで。
個人的にはこのくらいの価格になってもおかしくないなとは思います。でもまぁ、一般的には高いとみられるんだろうなぁ…
モバイルバッテリーと合わせれば30時間という再生時間は、無補給でも一泊二日ないし二泊三日は使えるということですし、充電ケーブルもType-Cケーブルだけで済むのはアウトドアにおけるメリットでしょう。
インドア派にはいまいち刺さらないかもしれませんが、泊りがけのアウトドアを楽しむ層には良さそうです。
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