2024年12月17日、NVIDIAは小型AI開発キット「Jetson Orin Nano Super Developer Kit」を発表しました。
国内では菱洋エレクトロと株式会社マクニカが12月18日に発売しています。
スペック
■ Jetson Orin Nano Super | |
CPU | Cortex-A78AE×6コア |
---|---|
CPU | 1024 CUDAコア 32 Tensorコア |
メモリ | 8GB LPDDR5 128bit, 102GB/s |
ストレージ | M.2 NVMe SSD×2 |
インターフェース | USB Type-C(3.2)×1 USB 3.2 Gen2×4 DisplayPort 1.2 SDXC 1GbE 有線LAN |
wi-fi | M.2 Key-E |
サイズ | 103×90.5×34.77mm |
特徴
「Jetson Orin Nano Super Developer Kit」は2023年に登場した「Jetson Orin Nano Developer Kit」(JetSon Nanoの後継機)をベースにした製品で、SoM(System on Module)の「Jetson Orin Nano 8GB」と各種インターフェースを備えたキャリアボードで構成する点は同じです。
システム構成
「Orin Nano Super」のCPUとGPUは、構成面では「Orin Nano」と変わらず、6コアのCortex-A78AE、1024のCUDAコア、32のTensorコアです。
CPUの名称みたいなものはありません。
メモリについても8GB LPDDR5という点は同じ。
このように構成は同じですが、動作周波数や転送速度については差があり、まとめたのが以下の表。
Jetson Orin Nano | Jetson Orin Nano Super | |
---|---|---|
GPU | NVIDIA Ampere architecture 1,024 CUDA Cores 32 Tensor Cores | |
GPU動作周波数 | 635 MHz | 1,020 MHz |
AI性能 | 40 TOPS (Sparse) 20 TOPS (Dense) 10 TFLOPs (FP16) | 67 TOPS (Sparse) 33 TOPS (Dense) 17 TFLOPs (FP16) |
CPU | 6-core Arm Cortex-A78AE v8.2 64-bit CPU | |
CPU動作周波数 | 1.5 GHz | 1.7 GHz |
Memory | 8GB 128-bit LPDDR5 68 GB/s | 8GB 128-bit LPDDR5 102 GB/s |
POWER | 7W | 15W | 7W | 15W | 25W |
ここでポイントなのが、最後の行。
「Jetson Orin Nano」の消費電力は7W~15Wだったのに対し、「Orin Nano Super」ではSuperモードとして25W動作が追加されました。
このSuperモードと動作周波数の向上の結果、AI性能が40TOPSから67TOPSに、約1.7倍の向上を果たしました。
AI性能(LLM)で比較すると、1.3~1.6倍くらいに向上しています。
数値で言うと、Llama 3.1 8Bは14 token/sから19.14 token/sに向上。
既存のJetsonシリーズの性能はこんな感じ。一つ上の「Orin NX」に迫る性能となります。
とはいえ実はソフトウェアをJetPack 6.1に更新することで、「Orin NX」もSuperモードが使えるようになり、1.6~1.7倍の性能となります。
具体的には以下のようになります。
「Orin NX」も1.7倍になるので、逆に差が開くという。
またこの表を見る限り、「Jetson Orin Nano Super」は4GBモデルも出るみたいですね。
外観
「Jetson Orin Nano Super」の本体はSoM、つまりCPU/GPUとメモリだけが載ったモジュールです。
インターフェースを担うキャリアボードと分離することで、モジュールを入れ替えるだけで性能をアップできるのが特徴です。
…まぁ実際はキャリアボードとセット販売なことが多く、モジュールだけ入れ替えたよってのはあまり聞きませんが。
キャリアボードのインターフェース。
M.2 SSDはGen3 x4(2280サイズ)とGen3 x2(2230サイズ)の2スロット。片面実装のみで、さらに高さ制限(台座の高さ)が4.3mmのため、ヒートシンクの装着はできません。
ちなみにType-CはDataオンリーとだけ書かれていて、電源として使えないということ以外、規格も不明です。
まとめ
「Jetson Orin Nano Super Developer Kit」の価格は249ドル。RYOYO(菱洋エレクトロのオンラインストア)では税込み42,460円とされています。
「Jetson Orin Nano Developer Kit」の499ドル(96,800円)から、半額となりました。「Jetson Orin Nano Developer Kit」は2023年3月の登場だったので、1年9か月で半額です。
これでようやくエントリーキットらしい価格になりましたね。
かつてのエントリーキットであった「Jetson Nano」(2022年生産終了)は普及を優先して4GBモデルが99ドル、2GBモデルが59ドルという設定でした。
「Jetson Nano」はCUDAコアではなく、浮動小数点演算なので比較は難しいのですが、「Jetson Nano(4GB)」と「Orin Nano(8GB)」それぞれのGPUを使ったAIベンチマークでは、種類によって12~60倍の差があるそう。「Orin Nano Super」はさらに強化されているので、20~100倍差くらいですね。
参考 【Jetson Orin Nano レビュー(2)】Orin Nano対AGX Orin/AGX Xavierベンチマーク対決 実務でのAI演算能力でも実用性を測る!:ロボスタ
それを考えると価格差5倍は許容範囲というか、割安レベルと言ってもいいくらいです。
AI分野の裾野を広げたいというNVIDIAの本気度が伺えます。
関連リンク
Jetson Orin Nano Super Developer Kit:NVIDIA
Jetson Orin Nano:マクニカ
NVIDIA
Jetson Orin Nano Super 開発者キット:RYOYO(菱洋エレクトロ)
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