2018年10月12日、LibreComputerはスペックを抑えた低価格SBC(シングルボードコンピューター)「La Frite」について、クラウドファンディングサイトの「Kickstarter」でファンディングを開始しました。
スペック
※比較として「Raspberry Pi 3 Bモデル」を併記しています。
model | Le Frite | Pi3 Model B |
メーカー | Libre Computer Project | Raspberry |
発売日 | 2018/10 | 2016/03 |
価格 | 10ドル(512MB) 15ドル(1GB) | $35 |
価格(日本円) | 4815円 | |
CPU | Amlogic S805X(4コア) (1.2GHz A53 x 4) | Bloadcom BCM2837(4コア) (1.2GHz A53 x 4) |
GPU | Mali-450 650MHz | VideoCore IV 400MHz |
メモリー | 512MB/1GB DDR4-2400 | 1GB LPDDR2-900 |
サポートOS | Ubuntu 18.04 Debian LibreELEC Lakka RetroPie Android 8 | Linux(Debian、Fedora、Arch) RISC OS Windows 10 IoT Core |
有線LAN | 100MbE x 1 | 100MbE x 1 |
Wi-fi | × | 802.11b/g/n(2.4GHz) |
Bluetooth | × | 4.1 |
チップ | SMSC LAN9514 BCM43438 | |
ストレージ | 128MB SPI NOR eMMC5.0 | microSD |
USB | 2.0 x 2 | 2.0 x 4 |
GPIO | 40pin x 1 | 40pin x 1 |
映像 | HDMI(1.4 1080p/60Hz) | HDMI(1.4 1080p/60Hz) コンポジットRCA MIPI-DSI |
カメラ | × | MIPI-CSI |
オーディオジャック | × | ○ |
その他インターフェース | IR sensor | |
消費電力 | 7W | |
電源 | microUSB 5V/2.5A | microUSB 5V/2.5A |
幅 | 64mm(推定) | 85.6mm |
奥行き | 54.4mm(推定) | 56.5mm |
高さ | 17mm | |
その他 |
特徴
「La Frite」は、CPUは「Raspberry Pi 3 Bモデル(※B+モデルではありません、以下RPi3)」とほぼ同等で、インターフェースを減らしたものという説明がわかりやすいかと思います。
CPU(SoC)はAmlogic社のS805Xで、1.2GHzのCortex-A53が4コアとなっています。この構成は「RPi3 Bモデル」に搭載されるBroadcom BCM2837と同じです(B+モデルは1.4GHzのBCM2837B0)。
GPUは「La Frite」は650MHzのMali-450、「RPi3 Bモデル」は400MHzのVideoCore IVと、「La Frite」のほうが少し処理能力が高いようです。でも多分、ハイエンド系から見るとどんぐりの背比べレベルの差だと思います。
一番違っているのがメモリで、「La Frite」はDDR4、「RPi3 Bモデル」はLPDDR2です。
DDR2-900が最大で7.2GB/sに対し、「La Frite」に搭載されるDDR4-2400は19.2GB/sと、実に2.6倍以上の帯域となります。
CPUの処理能力が同じでも、CPUとメモリ間の転送能力がこれだけ違えば、総合的な性能には結構影響してくるんじゃないかと。
次にインターフェースですが、「La Frite」はとにかくインターフェースが少ないです。
粗悪なSDカードを使ってデータ消失という事例が多発していることを理由にmicroSDは廃止。代わりにeMMCかPXEネットワークブート、USBストレージを使ってね、とのことです。
見ての通り、MIPI-CSI(カメラ用)やMIPI-DSI(映像用)はおろか、オーディオジャックすらありません。
LANポートは100BASE-Tとなっています。これはS805Xの内蔵インターフェースが100MbEなためです。もちろんWi-fi/Bluetoothもありません。
「La Frite」はとにかくコストを抑えたSBCなので、1GbEやWi-fiのために追加チップを載せるというわけにもいかなかったのでしょう。
内蔵しないまでもせめてWi-fiカード用のスロットだけでも欲しかったところです。
上記の画像を見て分かるように、LANポートは基盤に埋め込まれています。
これは追加ボードを載せた時に、LANポートが邪魔にならないようにとの配慮だそうです。
映像はHDMIオンリーです。4Kは非対応で、1080p/60Hzまでとなります。
これが上位SoCのS905であれば4Kに対応していたのですが、そもそもエントリークラスにそんな性能を求めるほうが間違っていますね。
ちなみにLANポート横のmicroUSBが電源です。
あと、これだけインターフェースが少ないというのにGPIO以外のpinについての説明はありません。
裏面にはeMMCソケット(右下の縦に細長いソケット)くらいしかありません。
eMMCはスマホなどでも採用されているようにデータ的な耐久性はそれなりに高いのですが、物理的な耐久性は低めです。
特にソケット部は弱いようで、取り付けにミスるとか静電気で一発でダメになることもあるそうですし、USBメモリのように抜き差しを繰り返すとあっという間に故障するそうで、取り扱いには注意が必要です。
大きさはラズパイサイズ(≒クレジットカードサイズ)の幅を狭めたくらいの大きさで、推定で64mm×54.4mmとなっています。
この大きさはGPIOピンからの推定となります。
また、基盤からはみ出している端子の分は含めておらず、端子まで含めると推定71mmくらいとなります。
まとめ
とにかく低コストでインターフェースも少ない「La Frite」ですが、価格もとにかく安いです。
現在はコースが4つあり、本体のみがメモリ512MBで10ドル、メモリ1GBで15ドルと激安になっています。
100台(512MB)/400台(1GB)限定で5ドル/10ドルというコースもありましたが、あっという間に完売しています。
本体に加え、8GB eMMC、2.5A電源アダプタ、HDMIケーブルをセットにしたコースはメモリ512MBが30ドル、メモリ1GBが35ドルとなっています。
本体より周りの方が高いという…
「La Frite」を発表したLibreComputerは、これまでにKickstarterで「Le potato」「Tritium」を、INDIEGOGOで「Renegade」「Renegade Elite」をファンディングしています。「Renegade」と「Renegade Elite」は以前に記事にしていますね。
このうち、目標を5万ドルと大きく張った「Renegade Elite」のみが失敗となっていますが、他(目標1万〜2.5万ドル)はファンディングに成功しています。
「La Frite」も目標は1万ドルに設定されており、1台あたりの価格が低い中、記事執筆時点で約1万7千ドルを集め、ファンディング自体はすでに成功となっています。
「La Frite」の使い方はかなり限定されてしまいますが、USBまたはGPIOをメインに使用するような用途ではラズパイの代わりは十分に務まると思います。
どうでもいいことですが「Le Potato」は男性名詞で「La Frite」は女性名詞なのでややこしいですね。
そもそもpotatoは英語で、フランス語だとpomme de terreなわけですが。
関連リンク
La Frite: Open Source Fries – Kickstarter
AML-S805X-AC (La Frite) – Libre Computer
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