2019年2月13日、SBC(シングルボードコンピューター)の開発を手掛ける韓国Hardkernel社が、公式フォーラム内でAmlogic社のS922Xを搭載する「ODROID-N2」を発表しました。
スペック
model | Odroid-N2 |
メーカー | Hardkernel |
発売日 | 2019/02 |
価格 | 63ドル(2GB) 79ドル(4GB) |
価格(日本円) | |
CPU | Amlogic S922X (1.8GHz A73 x 4 + 1.9GHz A53 x 2) |
GPU | Mali-G52 |
メモリー | 2GB/4GB DDR4(-2133?) |
サポートOS | Ubuntu 18.04 Android 9 |
有線LAN | 1GbE x 1 |
Wi-fi | × |
Bluetooth | × |
チップ | NXP PCF8563 GL3523 RTL8211F |
ストレージ | 8MB SPI Flash eMMCソケット microSD |
USB | 3.0 x 4 |
GPIO | 40pin x 1 |
映像 | HDMI(2.0a 4K/75Hz) |
カメラ | × |
オーディオジャック | ○(AV out) |
その他インターフェース | IR Receiver UART |
消費電力 | 5.3W |
電源 | DC |
幅 | 90mm |
奥行き | 90mm |
高さ | |
その他 |
特徴
「ODROID-N2」は2018年6月に「ODROID-N1」の開発が中止された際に、開発が発表されたものとなります。
当時の発表ではメモリ供給元のSamsungとHynixが1GB DDR3メモリチップの生産を終了したため、メモリ4GB版の「ODROID-N1」の製造ができなくなったこと、LPDDR4版の再設計が必要だったが、近々DDR4に対応した新SoCが登場するという話を聞き、新SoCを搭載する「ODROID-N2」に開発を移行することが書かれていました。お、当時の時点ではNDA(秘密保持契約)により詳細は伏せられていました。
そんな「ODROID-N2」が搭載するAmlogic社のS922Xは、2018年9月にIBC 2018でお目見えした、最新のSoC(System on Chip)となります。
構成は4コアのCortex-A73と2コアのCortec-A53からなる6コアです。
同じ6コアとなるRockchip社のRK3399(2コアのCortex-A72と4コアのCortex-A53)に近い構成ですが、同じbig.LITTLEでもコンセプトが異なっているように見えます。
通常、big.LITTLE構成ではbig側(高性能側)がLITTLE側(低消費電力側)より少ないか、同じコア数となります。
ところがS922Xではbig側のコアのほうが多くなっています。
ここから見えるのは、普段はCortec-A73で省電力時にCortex-A53にするS922X、普段はCortex-A53で性能が必要なときにCortex-A72を動かすRK3399というところでしょうか。
(※どこかで明言されているわけではないので、がじぇっとりっぷの想像です)
Cortex-A73はCortex-A72の電力効率改善版で、Cortex-A72比で性能と電力効率が3割向上したとされています。
これにはプロセスルールの変更(16nm→10〜16nm、S922Xは12nm)もありますが、Cortex-A72がサーバー用途まで想定しているのに対し、Cortex-A73がモバイル向けに最適化されたことも影響しています。
モバイル向けに特化したことで消費電力が大きく下がったため、”普段はCortex-A73”ができるようになったんじゃないかなぁと予想しています。
それを示すように「ODROID-N2」の消費電力はアイドル時1.6〜1.8W、CPUストレステスト時で5.2〜5.3Wという低さとなっています。
ちなみにCortex-A73がサーバー用途ではなくなったために、サーバー向けにはCortex-A76が登場しています。
そんな経緯(半分想像ですが)のある「S922X」ですが、ブロックダイアグラムはこんな感じになっています。
RK3399と一番違うのは、PCIeインターフェースがないことですね。
Amlogic公式の発表がないため、SoCとしてサポートしていないのかまでは不明ですが、少なくとも「ODROID-N2」には搭載されていません。
また、USB3.0は1ポートなのをハブチップを介して4ポートにしていることも分かります。
インターフェースです。
大型ヒートシンクを装着するため、S922X(とメモリの一部)だけが背面にきています。
eMMCはスロットのみで、128GBまでの対応となっています。
Wi-fiは搭載せず、USBアダプタでの対応となります(と公式にも書かれています)。
DCジャックは内径2.1/外径5.5mmで7.5V〜20Vまで対応、推奨は12V/2Aとなっています。
ベンチマークでは「ODROID-N1(RK3399機)」を上回るスコアをマークしています。
「Raspberry Pi3」なんか完全に置いてけぼりですね。
メモリはDDR4を採用したことにより、DDR3を採用するボードに比べて高いスコアを示しています。
上記ベンチマークにもこの性能の高さが影響しているものと思われます。
GPUはRK3399の「Mali-T860 MP4」に対し、2018年3月に発表された「Mali-G52」となっています。
2つのShader Processorsを持ち、各Shader Processorsは3つのExecution Enginesを持っています。
プロセスルールも「Mali-T860」の28nmから16nmへと変更されており、性能向上と省電力化を両立しています。
GPIOピンについては特に記述することはないですね。
特殊なピンもなさそうですし、ラズパイ互換と見ていいと思います。
ケースも用意されています。
クリアとブラックの2色で、2つに分かれます。
まとめ
新SoCを採用し、RK3399より高い性能を示した「ODROID-N2」ですが、価格はRK3399機よりも安くなっています。
メモリ2GB版が63ドル(約6,960円)、4GB版が79ドル(約8,730円)です。なお、ケースは4ドルとこちらも安価です。
USB3.0が4ポートあることからNASなどにも向いているとは思いますが、その本領はクラスター化にあるんじゃないかと思います。
ヒートシンク(TOP画像参照)の形状もスタッキング(積み重ね)を前提とした形になっていますし、他のODROIDシリーズにはクラスター化した状態で販売されているものもあります(下記ODROID-MC1など)。
Wi-fiがないのもクラスター化した時には必要としない機能だからでしょう。
とはいえ、コストパフォーマンスが高いことには変わりありませんし、Wi-fiはUSBで追加できます。
個人用途で使えないわけでもないので、注目の製品と言えるでしょう。
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