2020年9月25日、NASメーカーのSynologyはRyzen Embeddedを搭載したビジネス向けの6ベイNAS「DS1621+」を発売いたしました。
スペック
■DiskStation DS1621+ | |
CPU | Ryzen Embedded V1500B |
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メモリ | 4GB ECC DDR4 |
ストレージ | 6ベイ(最大16ベイ) |
インターフェース | USB 3.0×3 eSATA×2 PCIe3.0 x8 |
ネットワーク | 1GbE×4 |
サイズ | 282×166×243mm |
重さ | 5.1kg |
特徴
「DS1621+」は以前に紹介した「DS1520+」と同じ、Plusシリーズに属するSMB(Small&Middle Business、中小企業)向けの多機能NASです。
Synologyの命名規則は(DiskStationの頭文字)+(最大ベイ数)+(年式)+(シリーズ)となっているのですが、その規則に従うと「DS1621+」は最大16ベイ(6ベイ+拡張5ベイ×2)の2021年モデルということになってしまいます。
過去のリリース情報を見ても毎年9月から年式を改めているので、命名規則には沿っているようです。
「DS1621+」はCPUに組み込み向けのRyzen Embedded V1500B(以下Ryzen V1500B)を搭載しています。
Ryzen V1500Bは4コア8スレッドで動作周波数は2.2GHzのブーストなし、そしてRyzenの代名詞ともいえる強力なGPUは搭載していません。
性能面ではPassMarkに登録がないのですが、GeekBench4ではシングルで2700、マルチで9200程度となっています。
最大3.6GHzなRyzen V1605Bとのスコア比から推測するに、PassMarkだとシングルで1300~1400、マルチで4500前後になりそうです。
このスコアは2コアと4コアという違いがありますが、Ryzen 3 3200UやCore i3-10110Uを上回る程度の数値なので、PCとしても普通に使えるくらいの性能です。
NASのプロセッサとしては十分すぎるレベルで、仮想マシンを動かしたり、アプリをいくつも動作させたりしてようやく使い切る、くらいでしょう。
メモリは4GB DDR4ですが、元が組み込み/産業向けなのでECC(データ破損の検出・修正)に対応しています。標準で搭載されるメモリもECC対応メモリです。
1Mbitあたり10億時間ごとに 25,000〜70,000回(だいたい8GBのRAMで1時間に5ビット)のエラーが発生していたというGoogleの論文(2009年)もあります。
通常のPCであればブラウザのキャッシュデータや映像出力のための一時データなど、データ保持が短時間でかつ致命的な結果を生むものではないのでnon-ECC、つまりデータ破損検出機能のない安価なメモリを使っています。
一方でサーバー系となるとデータベースをまるまるメモリ上に展開して高速化を計る、などということが当たり前に行われていますし、エラーの許されない金融系などでもECCメモリが使われます。
まぁ、NASで必要かと言われると微妙なところですが、どのような業種で使われるかわからない以上、より堅固な方を取るというのは間違いのない手段でしょう。
もちろん、non-ECCなメモリも使えるので、安価に増設(最大32GB)するという選択肢をとることもできます。
▲フロントです。
Synologyでは6ベイ以上は電源ボタンを上部に持ってくるようです。
右の足の部分にUSBポートがあるのも他のモデルと共通ですが、微妙に使いにくそうな…
だからと言ってフロントからUSBをなくすと使いにくくなるのも事実なので、フロント側にあるだけマシなのでしょう。
「DS1621+」はHDDベイは6ベイですが、これとは別にSSDキャッシュ用に内部にM.2スロットを持っています。
SSDキャッシュを使うことで、HDDでも高速なデータのやり取りが可能となります。
▲背面です。
「DS1520+」では外部アダプタだった電源が内蔵になっています。
LANポートは1GbE×4でリンクアグリケーション(ボンディング)可能、Synologyの性能試験ではリード・ライトともに450MB/sを超えています。
右側にはPCIeスロットがあり、拡張ボードの増設が可能です。
内部スロットはPCIe x8ですが、接続はPCIe3.0 x4とのこと。
奥行きが長いので、x8スロット仕様な10GbE×2カードを搭載することもできます。
…これ、1スロットタイプのVGAカードを挿したらどうなるんだろう…?
PCIeスロットとLANポートの間には二つのeSATAポートがあり、拡張ユニットの「DX517」を接続することができます。
ちなみにPower eSATAではないので「DX517」も個別に電源が必要となる点に注意が必要です。
▲側面にはロゴがでかでかと
ソフトウェア面では、ライブデモで試すのが一番手っ取り早いでしょう。
個人的な印象ですが、Synologyのアプリはビジネス系はQNAPより進んでいて、以下のアプリを使えば外部サービスに頼ることなくリモートワークが可能です。
Synology Office :スプレッドシートやドキュメント
Synology Drive Server :Googleドライブ的な共有可能なファイルサーバ
Synology Chat Server :チャットアプリ
Synology Calendar :カレンダー
「DS1621+」は処理性能に余裕があるので、中小規模のリモートワーク母艦として使うのに向いているでしょう。
まとめ
「DS1621+」の価格は109,500円とやや高価な部類となります。その分性能はしっかりしていますし、PCIeスロットを使っての拡張もできます。
マルチメディア系はQNAPに劣る(特にHDMIがない辺り)ものの、ビジネス系は強く、単体で企業内の情報基盤を集約できるだけのアプリが揃っています。
特に「Synology Office」はオープンソースでも実用レベルのものがほとんどなく(特に共有機能)、外部に出したくないデータを扱うのであればSynologyを選ぶ大きな動機となるでしょう。
さすがに勤怠管理などはありませんが、そこまでいくとNASの領域を超えてしまいますしね…
拡張まではしないけどアプリは使いたいという場合は安価に「DS220+」(2コアのCeleron J4025)や「DS920+」(4コアのCeleron J4125)という選択肢もありだと思います。
関連リンク
DiskStation DS1621+:Synology
ニュースリリース:Synology
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