ASUS「PN50」はモバイル向けRyzen 4000シリーズを搭載したNUCサイズのミニPCです。がじぇっとりっぷでもリリース時に記事にしています。
このたび、ASUS様よりレビュー機(Ryzen 5 4500Uモデル)をお借りすることができたので、実物を手に、見ていきたいと思います。
機材を提供いただいたASUS様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
ASUS PN50
CPU | Ryzen 5 4500U |
---|---|
メモリ | DDR4-3200×2スロット |
ストレージ | M.2 SSD+2.5インチ |
USB | Type-C(Gen2)×2 3.0×3 |
映像出力 | HDMI×1、DP×1 |
wi-fi | 802.11ax+BT5.0 |
サイズ | 115×115×49mm |
重さ | 0.7kg |
GoodPoint
✔ コンパクトサイズ
✔ ハイパフォーマンス
✔ デュアルストレージ可能
BadPoint
✖ ファン音が結構うるさくなる
✖ メモリの相性がありそう
✖ Type-C給電はできない
ハードウェア
パッケージ
▲パッケージの内容物は多め
多いとは言っても余計なものはありません。
付属品
▲紙類は5種類
「PN50」はベアボーンなので、ドライバCDも付属しています。
▲電源アダプタは四角型
本体が115mm角なので、65mm角の電源アダプタ(これでもLenovoのものより二回りくらい小さいです)が相対的に大きく見えます。
▲反対側には仕様や認証マークが記載されています。
分かりにくいですが右上のひし形のマークが日本のPSEマークです。
▲VESAマウンタは簡易ロック付きに。
ロックはいいのですが、スライダーが横に長すぎる気が…まぁ、ディスプレイ背面に設置すれば見えない部分なので、問題ないのでしょう。
▲本体に載せるとこんな感じです。
プレートサイズが本体とほぼ同じですね。
インターフェース
▲正面です。
Type-C端子はUSB 3.2 Gen2対応で、DisplayPort出力にも対応しています。
▲背面です。
Configurable portはDisplayPortでした。
ASUSに確認したところ、DisplayPortはType-C(フロント・リア共に)含めてデイジーチェーンが可能で、クアッドディスプレイに対応しているとのこと。
ただしデイジーチェーンを行うと一画面当たりの出力がFHD@60Hzとなるため、クアッド4KにするにはHDMI、Type-C(フロント、リア)、DP(Configurable port)をフル活用した場合に限られます。
なお、前面・背面ともにUSB PDには対応していないので、電源アダプタが必須となります。
▲サイドです。
両サイドともに吸気口があり、右サイドにはセキュリティスロットがついています。
▲底面には本体の認証情報がシールで貼られています。
また、吸気口が大きくあけられています。
分解・内部構造
▲4隅のネジを外すことで、本体を開けることができます。
…このネジがまた、長いんですよね。
▲内部を開くとこんな感じです。
ふた側には2.5インチ用のスロットがあります。
▲SATAコネクタとM.2スロット(奥側)
▲メモリスロット
▲インターフェースは2階建てになっています。
画像の真ん中付近、青色の部分(USB3.0の端子)の上に、小さなWi-fiアンテナがのっかっています。
もう一つのアンテナは基板の裏側(天板側)に回り込んでいます。
▲サイドの吸気口の位置は底面側に開いています。
底面側を巡ってメモリやストレージを冷やしたのち、基板と本体の隙間から天板側に回り込んでファンで排気される、という流れなのですが…
隙間がすごく狭いんですよね…
しかも前後は外部端子があるからもっと密着しています。
エアフローを考えた作りではあるのですが、ファンのパワーがないとうまく回らない構造でもあるとも言えます。
▲メモリとストレージを搭載したところ。
以下のものを使用しています。
※16GB×2がAmazon取り扱いがなかったので、8GB×2を表示しています。
システム
起動前
▲BIOS(UEFI)画面は旧BIOSスタイル
「PN50」はCSM(Compatibility Supported Module、旧BIOSとの互換性サポート・モジュール)に非対応のため、見た目は旧BIOSですが、UEFIで動作しています。
旧BIOSとUEFI、CSMについてはパソコン工房の解説記事が分かりやすいです。
▲温度やファンの回転数を見ることもできます。
ただなぜか、これらの情報の一部はソフトウェア上から取得できなかったんですよね…
単にソフトウェア側の問題かもしれませんが、「ThinkPad E14 Gen2」のレビューでも取得できなかったので取得APIが変わったのかもしれません
▲Windowsインストール中
「PN50」にはOSは付いてこないので、各自で用意する必要があります。
がじぇっとりっぷはメディアクリエーションツールで作成したUSBインストールメディアを使用しました。
システム情報
▲システム情報
Ryzen 5 4500Uに、メモリも32GBを認識しています。
▲HWiNFOでのCPUとグラフィックの情報
▲同マザーボード情報
マザーボード名も「PN50」ですね。
▲再起動直後のメモリ使用量
ここでちょっと気になることが。
使用しているメモリはDDR4-3200なのですが、DDR4-2666として認識されています。
▲手持ちの別のDDR4-3200駆動メモリ(8GB)は正しく認識されました。
初期のRyzenはメモリ相性問題がありましたが、まだ何か残っているんですかね?
メモリは安い買い物ではないので、選ぶときはRyzen対応が保証されたものにした方がよさそうです。
▲CDからドライバをインストールしていきます。
ところでグラフィックドライバが見当たらないようですが果たして…?
▲案の定、Radeonドライバが見当たりません。
どうもドライバがうまく当たらなかったようで、通常はグラフィックドライバもインストールされます。
レアな状況ですが、そのままログとして残しています。
▲試しにこの状態でベンチマークをしてみたら悲惨なことに
▲PassMarkは途中でエラー
▲標準ドライバはOpenCLに対応していないので、GeekBenchはベンチマーク一部がグレーアウトしています。
この状態ではどうしようもないので、面倒ですが、AMDからダウンロードしてきます。
▲グラフィックドライバインストール中
▲無事、インストールできました。
▲ここまでで全部インストールしたはずですが、まだ残っています。
実際はドライバ自体はインストールされているため、”ドライバの更新”をするとエラーが消えます。
もっとも、上で書いたように簡単に解決できる問題ですので、深刻にとらえる必要はないでしょう。
ストレージ
ストレージは手持ちのゲーミング向けSSDを使用しています。
PCIe3.0時代のものなので、PCIe4.0対応製品が登場した今となっては最速からほど遠いですが、高速SSDとしては十分通用します。
▲CrystalDiskInfo
▲CrystalDiskMark
リード:3200MB/s、ライト:2000MB/sなので、ノートPCなどに標準で搭載されるものよりは高速ですね。
ベンチマーク
対象アプリ一覧
PassMark 9.0
CPU-Z
Geekbench 4.4.2
Geekbench 5.0.1
CrystalMark 2004R7 v0.9.200.452
CINEBENCH R15.0
CINEBENCH R20
PCMark 10
3D Mark v2.0.6762
DQ X ベンチマーク v1.51
FF XIV 紅蓮の解放者
FF XIV 漆黒の反逆者
FF XV v1.2
MonsterHunter Frontier 大討伐
jetstream 2
BaseMark
WebXPRT
MotionMark
SpeedMeter2.0
octane
※ベンチマーク条件
■ ゲーム
DQ Xは1280×720・標準、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XIV(紅蓮/漆黒)は1280×720・高品質(ノート)、および1920×1080・最高品質の2種類
FF XVは1280×720・標準のみ
■ 騒音
対象機材の端、またはヒンジから30cmの位置
結果総覧
モバイルRyzenはメモリの影響を大きく受けることで知られています。いや、Intel CPUも受けるとは思いますが、Ryzenの場合は極端にスコアが違いすぎるので。
そのため主要ベンチマークについては以下のパターンでテストを実施してみました。中途半端なのは手持ちのパーツの都合です。
①16GB×2 DDR4-2666(デュアルチャネル)
②16GB×1 DDR4-2666(シングルチャネル)
③8GB×1 DDR4-3200(シングルチャネル)
④8GB×1 DDR4-2400(シングルチャネル)
結果はざっくり① > ③ > ② > ④となりました。
これはつまり、性能に対する影響の大きさはデュアルチャネル > 動作周波数 > 容量の順であることを示しています。
この点については実際のスコアを見ながら後述します。
冷却面については心配でしたが、十分に冷えているのか先日レビューした同じCPUを搭載するLenovo「ThinkPad E14 Gen2」(8GB×2 DDR4-3200、グラフ上では「TP E14」と記載)と比較しても、CPUのスコアは良好でした。
CPU
CPUの処理性能は、平均よりもだいぶ高かった「ThinkPad E14 Gen2」のスコアをさらに上回りました。
①はDDR4-2666のデュアルチャネル、④はDDR4-2400のシングルチャネル、「ThinkPad E14 Gen2」はDDR4-3200のデュアルチャネルなので、CPUの処理性能に関してはメモリの影響は小さいと言えるでしょう。
GPU
3DMark Fire Strike
見て分かるように、メモリによってスコアにかなりばらつきが出ます。
シングルチャネルとデュアルチャネル(①と②)では1.5倍ほどの差が、動作周波数(③と④)では15%ほどの差が出ています。
結果総覧でも書いていますが、②と③が逆転しているのも注目ポイントですね。
DQベンチマーク
軽量級だというのに、メモリごとの差が思った以上に出てびっくりしました。
状況によってはRyzen 5 3500Uにも負ける事態になっています。
FF XIV 紅蓮の解放者
中量級のFF XIVではだいたい3DMarkと同程度の差になっています。
結果を見るに、FHD解像度で遊ぶならば、DDR4-3200×2は必須ですね。
FF XV Windowsエディション
①以外は”動作困難”という結果に。「ThinkPad E14 Gen2」より2段階も悪い評価です。
FF XVベンチマーク中における②(8GB DDR4-3200)と③(16GB DDR4-2666)のメモリ面での比較についてですが。
▲②では全体では7.4GB中7.1GBまで使用し(600MBはGPU専用として確保されている)、GPU側は共有領域含めて2.4GB使用しています。
まぁ、メモリを使い切っていると言ってもよい状態です。
▲対して③では全体で8.0GBを使用し、GPUは3.0GBと8GB(3200)より25%も多くGPUに割いています。
②では明らかにメモリが足りていないにもかかわらず、スコアでは③を上回っているわけで。
メモリが多少足りない程度では動作周波数の差の方が大きいということが分かります(さすがに4GBだとダメでしょうが)。
この結果は予想していなかったので、面白い考察になりました。
消費電力・稼働時間・騒音・温度
消費電力
アイドル時 | 8.4W |
---|---|
画面オフ時 | 8.3W |
スリープ時 | 1.06W |
CINEBENCH(S) | 20.4W |
CINEBENCH(M) | 48.3W(41.3W) |
最大 | 51.2W(44.0W) |
消費電力は「ThinkPad E14 Gen2」と比べてもちょっと高くなっています。
Ryzenは電力効率が上がっているため、瞬間的には消費電力は高くなるものの、数秒で括弧内の数字に落ち着きます。
ノートと違って”充電しながらフルロード”ということはないので、65Wの電源アダプタでも余裕をもって賄える範囲ですね。
騒音
騒音(電源オフ) | 35.1dB |
---|---|
騒音(アイドル) | 35.1dB |
騒音(最大) | 43.7dB |
騒音(背面) | 46.9dB |
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | 自室内の聞き騒音 | |
---|---|---|---|
うるさい | 70 | 掃除機 騒々しい街頭 | 非常にうるさい |
60 | 普通の会話・チャイム 時速40キロの自動車の内部 | 非常に大きく聞こえうるさい 声を大きくすれば会話ができる | |
普通 | 50 | エアコンの室外機 静かな事務所 | 大きく聞こえる 通常の会話は可能 |
40 | 深夜の市内 図書館 | 多少大きく聞こえる 通常の会話は十分に可能 | |
静か | 30 | ささやき声 深夜の郊外 | 非常に小さく聞こえる |
20 | ささやき 木の葉のふれあう音 | ほとんど聞こえない |
筐体を見たときにも書きましたが、「PN50」は内部というか隙間が狭く、十全な冷却性能を発揮するには吸い込み力の強いファンが必要です。
実際の騒音は予想通りというか、最大で43.7dB(正面)となりました。
多少うるさい程度の環境でもファン音はしっかり聞こえ、静かな環境だとややうるさく聞こえます。
まとめ
リリース時の記事にも書きましたが、Intel NUCは当たり前ながらIntel CPUしか搭載しないので、Ryzen APUを搭載する「PN50」は数少ない、Ryzen搭載NUCサイズPCとなります。
いずれ第11世代Tiger Lakeを搭載したNUCが発売されるでしょうが、現状のロードマップを見る限りではIntel純正のNUC規格PCは第10世代で通すようです(突然登場する可能性は大いにありますが)。
現行世代比較であればRyzen 4000シリーズはCPUはIntelと同等、GPUは圧倒的な性能を誇り、メモリさえしっかりしていればRyzen 5 4500Uで中量級ゲームもプレイ可能です。
コンパクトなのでセカンドアカウント用にも向いていますね。
用途を選ばず事務用にもデザイン用にも使えますし、拡張予定がないのであれば大型のデスクトップでなくこれで十分でしょう。
関連リンク
付録
ベンチマーク結果一覧
メーカー | ASUS | |
---|---|---|
モデル名 | PN50 | |
CPU | Ryzen 5 4500U | |
GPU | Vega 6 | |
メモリ | 32GB | |
ストレージ | 512GB M.2 | |
PassMark | Total | 4459.9 |
CPU Single | 2811 | |
CPU Multi | 13637.2 | |
2D | 636.8 | |
3D | 2254.8 | |
Memory | 2463.4 | |
Disk | 16865.2 | |
CPU-Z | Single | 489.3 |
Multi | 2865.8 | |
GeekBench4 | Single | 4794 |
Multi | 20033 | |
OpenCL | 37103 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
GeekBench5 | Single | 1123 |
Multi | 5053 | |
OpenCL | 10213 | |
OpenCL(dGPU) | – | |
CrystalMark | Mark | 464952 |
ALU | 147776 | |
FPU | 76918 | |
MEM | 92754 | |
HDD | 76853 | |
GDI | 14348 | |
D2D | 5295 | |
OGL | 51008 | |
CINEBENCH R15 | OpenGL | 54.13fps |
CPU(M) | 895cd | |
CPU(S) | 176cd | |
CINEBENCH R20 | CPU(M) | 2210pts |
CPU(S) | 456pts | |
PCMark | ALL | 4790 |
Essensial | 9199 | |
Productivity | 7033 | |
DigitalContent | 4612 | |
3DMark | TimeSpy | 1017 |
Graphics | 905 | |
CPU | 3431 | |
FireStrike | 2674 | |
Graphics | 2973 | |
Phisics | 9847 | |
Combined | 940 | |
NightRaid | 10636 | |
Grapihics | 11682 | |
CPU | 7056 | |
SkyDiver | 9169 | |
Graphic | 9346 | |
Phisics | 8367 | |
Combined | 9190 | |
CloudGate | 14290 | |
Graphics | 19370 | |
Phisics | 7451 | |
IceStorm | 93099 | |
Graphics | 113509 | |
Phisics | 57140 | |
IceStormEX | 74026 | |
Graphics | 79891 | |
Phisics | 58894 | |
IceStormUnlimited | 127886 | |
Graphics | 173351 | |
Phisics | 66679 | |
VRMARK | ||
DQ(DX9) | 1280・標準 | 13412 すごく快適 |
1920・最高 | 8171 とても快適 | |
FF XIV(DX11) 紅蓮 | 1280・標準 | 5224 とても快適 |
1920・最高 | 2261 普通 | |
FF XIV(DX11) 漆黒の反逆者 | 1280・標準 | 5192 とても快適 |
1920・最高 | 2278 普通 | |
FF XV(DX11) | 1280・標準 | 2335 重い |
1920・最高 | – | |
MHF(DX10) 大討伐 | 1280 | 8153 |
1920 | 4454 | |
ブラウザ | jetstream2 | 127.856 |
BaseMark | 889.16 | |
WebXPRT | 196 | |
MotionMark | 317.9 | |
SpeedMeter2.0 | 96.6 | |
octane | 47159 |
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