がじぇっとりっぷでは以前に「EarFun Air」という、左右分離型の完全ワイヤレスイヤホンのレビューを行っています。
レビューしたのは11月ですが、実はそのちょっと前の2020年9月にはドライバー径が10mmとなった(「EarFun Air」は6mm)上位モデルの「EarFun Air Pro」が発売されており、そちらもレビューをする機会をいただけました。
機材を提供いただいたEarFun様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
EarFun Air Pro
GoodPoint
✔ 低音を中心に高い音質
✔ 高いノイズキャンセリング効果
✔ しっかりとした装着感
✔ 誤タップ防止
BadPoint
✖ 本体に音量操作がない
✖ 本体からの接続切断ができない
EarFunは2018年10月に設立した香港の企業です。
技適の登録もEarFunの名で行われています。
「EarFun Air」の時は自社設計・自社生産というお話でしたが、「EarFun Air Pro」はEDIFIERとの協業製品となったようで、EDIFIERからも「TWS NB2 Pro」という型番で同等製品が発表されています。
記載内容からすると、ノイズキャンセリング機能をEarFunが担当したようです。
現在EDIFIERから国内で販売されているものは下位の「TWS NB2」で、こちらは対応コーデックが少なかったりANC性能が低かったりと、機能の少ないモデルとなっています。
一応リンクは掲載しますが、値段を見ても分かるように、上位と同等の「EarFun Air Pro」を買った方がいいでしょう。
スペック
モデル | TW302 |
---|---|
Bluetoothバージョン | v5.0 |
Bluetooth周波数 | 2.402GHz~2.48GHz |
対応プロファイル | A2DP、AVRCP、HFP、HSP |
対応コーデック | AAC、SBC |
通信距離 | 約15m |
ドライバーユニット | φ10 mm |
再生周波数帯域 | 20Hz – 20,000Hz |
ノイズキャンセリング方式 | ハイブリッド方式 フィードバック/フィードフォワード |
音楽再生時間(本体) | 約 9 時間(ノーマルモード) 約 7 時間(ANCモード) |
音楽再生時間(ケース込み) | 約 32 時間(ノーマルモード) 約 25 時間(ANCモード) |
イヤホン充電時間 | 約 1.5 時間 10分の充電で90分動作 |
ケース充電時間 | 約 2 時間 |
バッテリー容量 | ケース:500 mAh イヤホン:60 mAh |
防水規格 | IPX5 |
重量(ケース込み) | 約 53 グラム |
ケースサイズ | 約 67 x 55 x 31 mm |
外観
▲外箱の表と裏です。
「EarFun Air」よりほんの少し箱が小さくなっています。
「EarFun Air」では二つあった技適番号が一つになっているのは、どういうことなんでしょう?
▲ビニール上部に穴が開いている点は変わりません。
▲パッケージ全体です。
同梱物は以下となっています。
・イヤホン本体
・充電ケース
・充電ケーブル(TypeA to Type-C、0.5m)
・イヤーチップ(S・M・L)
・マニュアル(英日蘭仏西中の7ヵ国語)
・保証書?
いわゆる日本的な保証書は入っていないのですが、真ん中の黄色いカードには、「気に入らなければ理由問わず30日返金保証」「18か月間の交換保証」と記載されています。
あと、充電アダプタは付属していないので、自前で用意する必要があります。
▲箱の内側にクイックスタートガイドが記載されています。
見づらいですが、「充電端子の保護シールをはがしてね!」と書かれています。ここ、重要です。
▲左が「EarFun Air」、右が「EarFun Air Pro」のケースです。
縦型から横型に変更されています。
▲「EarFun Air Pro」の充電端子は背面にあります。
「EarFun Air」が底面にあって、充電中は扱いずらかったのに対し、「EarFun Air Pro」はケーブルを接続したままでもイヤホンの取り出しがしやすくなっています。
▲充電ランプはこの位置
LEDは赤一色となり、ケーブル接続時に点灯・点滅します。
3回点滅:60%以上
2回点滅:30%以上
1回点滅:5%以上
すばやく1回点滅:5%以下
1%、10%、30%区切りだった「EarFun Air」より受け入れやすい区切りになっていますが、赤一色なので直感的には一瞬「あれっ?」となってしまいます。緑もあった方が分かりやすいですね。
なお、「EarFun Air」にはあったワイヤレス充電(Qi)機能は、「EarFun Air Pro」には搭載されていません。
▲ケースの蓋を開けたところ
「EarFun Air」では奥側にあったケースボタンが手前に来ていて、操作感がかなり改善されました。
3秒長押しで接続リセット、ダブルクリックでリセットらしいですが、リセットはできませんでした(後述)。
▲技適番号などは蓋の内側に記載
▲本体です
AirPod風のデザインを脱却し、格好良くなっています。
▲別の角度から
赤枠が自動装着検知機能の検出部です。
また、割と自然で気付きにくいですが、充電端子部にシールが貼られています。アップだから分かりますが、実物だともっと自然な感じです。
実体験ということで書いちゃいますが、箱に書いてあるにも関わらず、しばらくシールであることに気付かず、「なぜか充電されない。初期不良かな?」と半日くらい考えました。
「EarFun Air」はシールがなかっただけに、余計に気付きにくかったというのもあります。思い込みって怖いですね。
こういうことも起きるので、不透明シールにするなど対策があった方が、UX的にはいいかもしれません。
▲「EarFun Air Pro」にはマイク(赤枠)が左右3つずつ、合計6個搭載されています。
勘違いされているレビューもありますが、青枠の部分はマイクではないみたいです。
▲「EarFun Air」との比較
スティック部だけでなく、ハウジング部も形が変わっているのが分かります。
そういえば「EarFun Air Pro」は本体からLEDがなくなっていますね。
▲イヤーチップはS/M/Lの3種類
「EarFun Air」は4種類(XS/S/M/L)だったので、減っています。
▲重量は本体が左右合わせて13g、ケース込みで54gでした。
「EarFun Air」の11gよりは増えていますが、体感的には全く分かりません。
操作について
「EarFun Air Pro」は背面の平面部の上半分くらいが操作部となっていて、タッチの回数で操作します。
軽く触れたくらいでは反応せず、少し押し込む必要があります
なお、よくあるタッチセンサーではなく加速度センサーなので、手袋をしたままでも操作できるのは、冬にはとてもありがたいですね。
左 | 右 | |
---|---|---|
音楽操作 | ||
2回タップ | 音声アシスト起動/終了 | 再生 / 一時停止 |
3回タップ | ANC切替 | 次の曲へスキップ |
通話 | ||
2回タップ | 通話/電話を切る | |
3回タップ | 通話拒否 |
「EarFun Air」と同じく1回タップでできる操作がなく、タッチ反応と合わせて意図しないタイミングでの誤操作をすることがまずありません。
リダイアル操作がない点もありがたいです。本当、間違ってリダイアルがかかった後の気まずさと言ったら…
ただ、触れたままで音量変更という操作がなくなっています。加速度センサーなので難しいのでしょうが、この点はちょっとマイナスですね。
一方で、ANC(アクティブノイズキャンセリング)のモードを変更しようとしてWindowsの音声アシスト機能であるCortanaが起動したということが何回かありました。
どうも”0.5秒以内に3回タップ“というところで引っかかるようです。
がじぇっとりっぷは音声アシスト機能は全く使わない人なので、個人的には2回タップでANCモード、3回タップで音声アシストの方が良かったなぁと。
また、音声アシスト起動時の音量は調整が効かないので、ミスるとうるさいです。
使ってみた感想
かけ心地について
「EarFun Air Pro」は「EarFun Air」と同じく、耳に入れて軽くネジるようにすることで安定します。
形の差か、密着感は「EarFun Air」の方が高いです。具体的に言うと「EarFun Air」は耳たぶのあたりまでスティックが密着するのに対し、「EarFun Air Pro」は耳たぶには触れません。
そのため、体感的には「EarFun Air」の方が安定感があるように感じられるのですが、実際のところは変わらず、「EarFun Air Pro」もそう簡単には落ちません。
耳に対する負担はどちらも変わらない程度で、数時間の装着でも問題ありませんでした。
自動装着検出機能について
「EarFun Air Pro」には「EarFun Air」同様、自動装着検出機能が搭載されています。
機能的にも変わらず、便利ではあるのですが、やっぱりオン/オフできたらうれしいなあと。
音質について
同じメーカーの「EarFun Air」と比較すると、再生ボタンを押した直後から「あ、音が違う」とはっきり分かるくらいに音がいいです。
ドライバー径が6mmから10mmになったことで低音域の表現力が格段に増しています。
「EarFun Air Pro」で聞いてから「EarFun Air」を聞くと、こんなに音が出ていなかったのかと驚くくらいに違います。
「EarFun Air」も低音には力を入れていましたが「EarFun Air Pro」はさらに進化していて、低音どころか重低音も感じられるようになりました。
「EarFun Air」のレビューで”低音が弱いと全体がスカスカに聞こえる”と書きましたが、「EarFun Air Pro」は低音がしっかり詰まっていて、音の密度が高いです。
さすがに腹に響くとまではいきませんが、胃に響くくらいでしょうか。
和太鼓の残響音などもしっかりと出ていて「EarFun Air」には欠けていた臨場感があります。
中音・高音も良くなっていますが低音ほどではなく、音のバランスがだいぶ低音寄りにはなりましたが、音楽鑑賞にも十分に耐えられます。
表現としては、薄布を1枚取り払ったようなというよりは、ノングレアパネルからグレアパネルに変わったような感じというのが分かりやすいでしょうか。
音がクリアに、鮮やかになった代わりに、「EarFun Air」では再現しきれていなかった部分までも入っています。
具体的に言うとスタジオなどの録音環境でない場合は、解像度が高すぎて周辺音までクリアに拾って再生してしまうので、声が環境音に埋まるようになりました。
また、息遣いなどは自然なのですが、鮮やかになった弊害というか、キンキン声や破裂音が対面で話す以上に頭に刺さって聞き取りづらくなっています。ディスプレイであれば「ギラつきが気になる」とでも表現されるところでしょう。
Web会議においては低音の落ち着いた声で話し合う間は問題ないでしょうが、ヒートアップしてくるときつくなるかもしれません。
ただしこの点も歌であれば表現の一部と認識されるのかそれほど気にはなりません。
総合としては「EarFun Air」よりワンランク半くらい上といったところでしょう。
あくまでもレビュー者の個人的感想である点にご注意ください。
ANC(アクティブノイズキャンセリング)モード
EarFun Air ProのANCアクティブノイズキャンセリング)方式は、2つの方式を組み合わせたハイブリッド型です。
フィードフォワード方式:ノイズと逆位相の音を再生して打ち消す
フィードバック方式:イヤフォンの内側に搭載したマイクでノイズを拾って、ノイズと音楽を足したものの逆位相を作る
「EarFun Air」ではノイズキャンセリングは通話音声時のみでしたが、「EarFun Air Pro」では音楽再生時にも効果を発揮します。
また、ノイズキャンセリングとは逆に、マイクを通した環境音取り込みモードも用意されています。
左のタップ3回でノーマル→ANC→アンビエント(環境音)と簡単に切り替えられるのですが、それぞれの違いが面白くて、しばらく延々と切り替えて遊んでしまいました。
これ、多分買ったらみんな遊んでしまうと思います。
ノイズキャンセリング
わずかにホワイトノイズが聞こえるようになる程度です。
ノーマルモードと比べた効果としては窓を開けたときと閉めたときの差くらいでしょうか。
全く聞こえなくなるほどではありませんが、かなり抑えられます。
特に車の走行音とか洗濯機の音とか、低音寄りの音に効果が高く、逆に工事現場のドリルや金づちの音には効果が弱く感じられました。公式にも低音に効果を発揮すると書かれているので、こういうものなのでしょう。
環境音取り込みモード
なんというか、山奥の川の浅瀬にいるような、サーとザーの中間くらいの音が気になります。安いマイクで録音した外の音を再生して聞いているような感じですが、外の音は割としっかり取り込めていて、音楽を一時停止すればイヤホンをしたまま話すくらいのことはできます。
音楽再生中の曲は、薄布越しになったくらいの差があります。
低音の多い曲を聴く分にはそれほど気になりませんが、静かな環境でピアノソロなど低音のない曲を聞くともわもわとした音になります。
さすがに音楽を掛けながら後ろからの車の接近に気付くとまではいきませんが、自転車のベルくらいなら聞こえるようになります。
事故を避けるためにも外で使うのであればこのモードにした方がいいですが、風切り音が入ってくるのが悩ましくもあります。
音量について
「EarFun Air」は音量がちょっと低くて、最大音量でもうるさいまではいかない程度でしたが、「EarFun Air Pro」は最大にすると耳が壊れるかもというくらいの音量になります。
装着状態でも1メートル先まで音漏れしますし、机の上に置けば3メートル離れていても聞こえます。
ノートPCの左右に置くと、超小型スピーカーになるんじゃないの?ってくらいには鳴っています。
音域について
音域テストには「WaveGene」というアプリを使用しています。
どうもYoutubeは16000Hz以上をカットしているようで(がじぇっとりっぷの耳の問題ではなかったようです)、音域テスト用としてはあまりふさわしくありませんでした。
「EarFun Air」では4000Hz~8000Hzの辺りがノイジーでしたがだいぶ改善されています。
とはいっても7000Hz~8000Hz辺りにはまだノイジーさが残っています。
下限は10Hzでもなんとか音にはなっていました。
上限は、がじぇっとりっぷの耳では聞き取れたのは20500Hzまででした。
「EarFun Air Pro」の特性は20~20kHzとなっているので、きちんと出ているようです。
ちょっと面白いのが、個人的に聞こえない周波数があるようで、15950Hz~16650Hz辺りが聞き取れないんですよね。
そこから上も聞こえる周波数と聞こえない周波数が波のようにあって面白いので、皆さんも自宅のスピーカー・イヤホンで試してみるといいですよ。
困ったこと
本体のみでペアリングモードに移行できない
がじぇっとりっぷはレビューの都合上、複数のデバイスとペアリングさせているのですが、ケースから取り出した時点でいずれかのデバイスと接続されてしまいます。
これはケースのボタンの3秒長押しでペアリングモードにしても変わらず、ケースから取り出した時にはまた別のデバイスと接続された状態になっています。
そのため、目的のデバイスと接続するには先にどのデバイスに接続されたのかを探し出して、デバイス側から切断をする必要があります。
一台のデバイスとだけ接続して使うのであれば何の問題もありませんが、複数のデバイスにペアリングさせておくような使い方は十分ありえるので、ペアリングモード(切断)を本体からできるようになっていると嬉しかったですね。
ペアリングアナウンスがない
これは困ったことというよりちょっと不便な点ですね。
「EarFun Air Pro」をリセット(ケースボタン2回押し)したときはアナウンスが流れるのですが、ペアリングモード(ケースボタン3秒長押し)にしたときはアナウンスが流れません。
ケースのLEDが点滅するので判別はできますが、アナウンスがないとちょっと不安になりますね。
特殊な動作
「EarFun Air Pro」を接続すると、他のデバイスに一瞬「EDIFIER BLE」の名前が表示されます(しかもペアリングできない)。
Windowsだと10秒程度で消えますが、Ubuntuだと残ったままになります。
この点についてメーカーに確認したところ、EDIFIERとの協業製品であるため、仕様であるとの回答をいただきました。
まとめ
「EarFun Air Pro」の価格は7,999円と、「EarFun Air」の5,499円から2,500円高くなっています。
値段が高くなっただけの音質向上はあり、音楽鑑賞メインであれば絶対に「EarFun Air Pro」を選んだ方が幸せになれます。
「EarFun Air」にはあったワイヤレス充電機能がなくなりましたが、その分がノイズキャンセリング機能になったと思えば、付加価値としても納得です。
さすがに2万円や3万円のハイエンドクラスには勝てるとは言えませんが、8,000円で購入できる製品としては最上級と言えるでしょう。
関連リンク
公式サイト:myearfun
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