2021年5月、USB-IF(USB Implementers Forum)はUSB Power Delivery Revision 3.1(PD3.1)の仕様を公開し、電力給電を最大240W(48V/5A)に拡張しました。
さすがにいきなり240W対応製品が出てくるわけではなく、2022年の夏ころから140W出力に対応したPD充電器がちょくちょく登場するようになります。
今回レビューするKOVOL「KV-PC019」もそうした中の一台です。
KOVOL KV-PC019
GoodPoint
✔ 100Wの壁を超える
✔ 同時利用時も安定した高出力
BadPoint
✖ 2ポートしかない
✖ サイズがやや大きめ
✖ 結構爆熱
PD3.1とは
簡単に言えば、規格が100W(20V/5A)までしかなかったPD3.0の拡張版です。
新たに28V(100W以上)、36V(140W以上)、48V(180W以上)の3つの電圧が追加され、最大240W(48V/5A)まで対応できるようになります。
おそらく世界で最初にPD3.1に対応したのは2021年10月発売のApple MacBook Pro(16インチ)付属の140Wアダプタ。
記事執筆時点では240W対応製品はなく、140W製品(つまり28V対応品)が登場し始めた、という段階です。
ただし、100Wを超える電源供給を行う場合は充電器・デバイス・ケーブルがすべて「Extended Power Range(EPR)」に対応している必要があります。
つまりは100W対応の手持ちのケーブルを使っても、140Wの給電はできません。
前述のMacBook ProでもUSB-Cでの給電は140W非対応(おそらく当時、PD3.1に対応したUSBチップが存在しなかった)で、140Wで充電するにはMagSafe 3ポートを使用する必要がありました。
ハードウェア
外箱は小さく、持つとずっしり。
「あ、これ充電器以外何も入っていないな」ってのを、持った時点で察することができます。
パッケージ内容。
案の定、本体とマニュアル、サンキューカードのみでした。
マニュアルは日本語説明も掲載されています。
ポートは2ポート。
Type-Cは140W対応な一方、Type-Aは18Wまでです。
ロゴ部は透明で、明りに透かさないと見えません。
ここまで主張を控えるロゴも珍しく、卓上のカラー統一などにこだわる人の邪魔をしない点では好感が持てます。
プラグは折りたたみ式。
スペックは底面に記載されています。
重量は300gをちょっとだけ超えた、301.5gでした。
サイズ比較
手持ちのPD充電器と比較してみました。
手前からスティック型(65W)、4ポート(65W)、4ポート(100W)、本機です。
本機の高さは87mmで、100W充電器(高さ68mm)より2cm近くノッポです。
上から見たところ。
奥行きは100W充電器と同程度ですが、65W充電器よりはちょっと長いです。
充電してみた
USB-C
記事執筆時点でPD3.1に対応したデバイスを持っていないため、PD3.0、つまり100Wまでの給電を確認します。
まずは仕様を確認。
※このテスターはPD3.1登場前のものなので、PD3.0までしか判定できません。
USBテスターでは87W弱出ています。
ワットチェッカーでは94.7Wでした。
両者から単純に計算すると、変換効率は約92%となります。
USB-A
Type-Aは最大18Wに対応しています。
USBテスターでは15.1W、ワットチェッカーでは18.3Wということで、だいたい仕様通りに出ている模様。
同時使用
Type-AとType-Cを同時に使用した結果。(右下に見えているケーブルがType-Aポートに刺さっています)
Type-Cの出力は単ポート使用時と変わらず87Wをキープ。
合計の出力は116Wとなり、100Wの壁を越えて安定して電力が供給されています。
温度について
高出力の充電を継続していると、充電器が結構な熱を持ちました。
まぁ、仮に変換効率が95%としても、100Wを流し続ければ5Wが熱になるわけで。
光ってる豆電球3個分の熱を発し続けた結果と思えば、このくらいの発熱は仕方ないのかなと。
まとめ
「KV-PC019」の価格は9,999円。
いわゆる最初期の、アーリーアダプター向けとなる製品なので、ちょっと高いですね。
現時点では対応デバイスもほとんどありませんし、別途ケーブルも購入する必要がありますし、さすがに「今すぐ買った方がいい」とお勧めはできません。
合計120W(単ポート最大100W)な「KV-PC001」の方が、現時点のデバイスに見合った充電器と言えるでしょう。
ひとまずは100W超えの製品がすでに出ているということを頭の隅に置いておき、小型化・低価格化を待つくらいでいいと思います。
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