2023年1月4日、IntelはCES 2023にて第13世代Core CPU、コードネーム「Raptor Lake」を発表いたしました。
第12世代の時と同様、デスクトップ向けは2022年9月に一部(デスクトップ向け「K」モデル)が発表されていましたが、今回はデスクトップ向けの残りとノート向けが発表されました。
この記事ではノート向け(モバイル向け)に絞って話をします。
新要素まとめ
・「HX(55W)」「H(45W)」「P(28W)」「U(15W)」の4シリーズ+「N(6~15W)」
・アーキテクチャが「Raptor Cove」に
・製造プロセスはIntel 7 Ultra(Intel 6)
・最大24コア32スレッド
・Alder Lakeから動作クロックを引き上げ
・L2キャッシュとL3キャッシュ(Intel Smart Cache)の増量
・最大49%の性能向上
・PCIe Gen5をサポート
・(一部SKUで)LPDDR5-6400対応
・Wi-fi 6Eサポート
・グラフィックはTiger Lake/Alder Lakeから変わりなし
・外付NPU(VPU)対応
・「Intel Evo Platform」が一部改訂
ラインナップ
こちらでは見やすいように必要最低限の情報としました。
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | Pコア | Eコア | 最大(Pコア) | EU数 |
---|---|---|---|---|---|
Core i9-13980HX | 24 (32) | 8 | 16 | 5.6 GHz | 32 |
Core i9-13950HX | 24 (32) | 8 | 16 | 5.5 GHz | 32 |
Core i9-13900HX | 24 (32) | 8 | 16 | 5.4 GHz | 32 |
Core i7-13850HX | 20 (28) | 8 | 12 | 5.3 GHz | 32 |
Core i7-13700HX | 16 (24) | 8 | 8 | 5.0 GHz | 32 |
Core i7-13650HX | 14 (20) | 6 | 8 | 4.9 GHz | 16 |
Core i5-13600HX | 14 (20) | 6 | 8 | 4.8 GHz | 32 |
Core i5-13500HX | 14 (20) | 6 | 8 | 4.7 GHz | 32 |
Core i5-13400HX | 10 (16) | 6 | 4 | 4.6 GHz | 16 |
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | Pコア | Eコア | 最大(Pコア) | EU数 |
---|---|---|---|---|---|
Core i9-13900HK | 14 (20) | 6 | 8 | 5.4 GHz | 96 |
Core i9-13905H | 14 (20) | 6 | 8 | 5.4 GHz | 96 |
Core i9-13900H | 14 (20) | 6 | 8 | 5.4 GHz | 96 |
Core i7-13800H | 14 (20) | 6 | 8 | 5.2 GHz | 96 |
Core i7-13705H | 14 (20) | 6 | 8 | 5.0 GHz | 96 |
Core i7-13700H | 14 (20) | 6 | 8 | 5.0 GHz | 64 |
Core i7-13620H | 10 (16) | 6 | 4 | 4.9 GHz | 80 |
Core i5-13600H | 12 (16) | 4 | 8 | 4.8 GHz | 80 |
Core i5-13505H | 12 (16) | 4 | 8 | 4.7 GHz | 80 |
Core i5-13500H | 12 (16) | 4 | 8 | 4.7 GHz | 80 |
Core i5-13420H | 8 (12) | 4 | 4 | 4.6 GHz | 48 |
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | Pコア | Eコア | 最大(Pコア) | EU数 |
---|---|---|---|---|---|
Core i7-1370P | 14 (20) | 6 | 8 | 5.2 GHz | 96 |
Core i7-1360P | 12 (16) | 4 | 8 | 5.0 GHz | 96 |
Core i5-1350P | 12 (16) | 4 | 8 | 4.7 GHz | 80 |
Core i5-1340P | 12 (16) | 4 | 8 | 4.6 GHz | 80 |
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | Pコア | Eコア | 最大(Pコア) | EU数 |
---|---|---|---|---|---|
Core i7-1365U | 10 (12) | 2 | 8 | 5.2 GHz | 96 |
Core i7-1355U | 10 (12) | 2 | 8 | 5.0 GHz | 96 |
Core i5-1345U | 10 (12) | 2 | 8 | 4.7 GHz | 80 |
Core i5-1335U | 10 (12) | 2 | 8 | 4.6 GHz | 80 |
Core i5-1334U | 10 (12) | 2 | 8 | 4.6 GHz | 80 |
Core i3-1315U | 6 (8) | 2 | 4 | 4.5 GHz | 64 |
Core i3-1305U | 5 (6) | 1 | 4 | 4.5 GHz | 64 |
U300 | 5 (6) | 1 | 4 | 4.4 GHz | 48 |
プロセッサーナンバー | コア数(スレッド数) | Pコア | Eコア | 最大(Pコア) | EU数 |
---|---|---|---|---|---|
Core i3-N305 | 8 (8) | 0 | 8 | 3.8 GHz | 32 |
Core i3-N300 | 8(8) | 0 | 8 | 3.8 GHz | 32 |
N200 | 4 (4) | 0 | 4 | 3.7 GHz | 32 |
N100 | 4 (4) | 0 | 4 | 3.4 GHz | 24 |
新要素
第10世代以降との比較
第13世代 | 第12世代 | 第11世代 | 第10世代 | |
---|---|---|---|---|
コードネーム | Raptor Lake | Alder Lake | Tiger Lake | Ice Lake |
製造プロセス | Intel 7 Ultra | Intel 7 | 10nm SuperFin | 10nm |
CPU | Rapter Cove Gracemont | Golden Cove Gracemont | Willow Cove | Sunny Cove |
L2キャッシュ | Pコア×2MB Eコア×1MB (クラスタ4MB) | Pコア×1.25MB Eコア×0.5MB (クラスタ2MB) | 1.25MB | 512KB |
L3キャッシュ | Pコア×3MB Eコア×0.75MB (クラスタ3MB) | Pコア×3MB Eコア×0.75MB (クラスタ3MB) | コア数×3MB | 8MB |
CFE | 対応 | ー | ||
GPU | Xe-LP | Iris Plus | ||
EU数(最大) | 96 | 64 | ||
最大解像度 | 7680×4320@60Hz | 5120×3200@60Hz | ||
ディスプレイ数 | 4 | 3 | ||
DirectX | 12.1 | 12 | ||
OpenGL | 4.6 | 4.5 | ||
メモリ | DDR5-5200 LPDDR5-5600/6400 DDR4-3200 LPDDR4-4267 | DDR5-4800 LPDDR5-5200 DDR4-3200 LPDDR4-4267 | DDR4-3200 LPDDR4-4267 | DDR4-3200 LPDDR4-3733 |
GNA | GNA 3.0 | GNA 2.0 | GNA 1.0 | |
Thunderbolt/USB | Thunderbolt 4.0 USB4 | Thunderbolt 3.0 USB 3.2 Gen2 | ||
PCI Express | Gen 5 (最大16レーン) | Gen 4 (最大16レーン) | Gen 4 | Gen 3 |
シリーズの整理
Alder Lakeでは「H(45W)」「P(28W)」「U(15W)」「U(9W)」に、あとから「HX(55W)」が加わって計5シリーズでした。
Raptor Lakeでは「U(9W)」を取りやめて、4シリーズに整理されています。
「U(9W)」はType4という小サイズのパッケージで、次世代のMeteor Lakeでは復活する見込みです。
また、従来のCeleron/Pentiumに相当するクラスをリブランドして、「Intel N」シリーズと名称を改めました。
PCH(Platform Controller Hub)についてはAlder Lakeと同様、HXシリーズのみ別チップで、Hシリーズ以下はパッケージに内蔵します。
※PCHとは昔で言うノース・ブリッジの一部とサウス・ブリッジの機能を足し合わせたもので、FDIとDMIという2つの方式でCPUと接続されます。
性能向上について
Alder Lakeでは最大で16コア24スレッド(P8E8)だった構成が、最大24コア32スレッド(P8E16)になりました。
増えたのはEコアなので劇的な性能向上とまではいきませんが、製造プロセスの改良や動作周波数向上によってシングルスレッドで7~10%程度、マルチスレッドではコア数増の影響もあって20~25%程度のスコアアップとなります。
実使用環境(GPUも含めた性能)となると、各種ゲームでのパフォーマンスは平均12%向上したとのこと。
参考 Geekbench 5 CPU Search Results (Core i9-13900HX):GeekBench 5
性能グラフ
いつもはPassMarkを使うのですが、ある程度データが揃っているのがGeekBenchだったので、今回はGeekBench 5のスコアで比較しています。
HXシリーズはデスクトップ向けをそのまま持ってきただけあって、性能が圧倒的過ぎて笑うしかないですね。
一方でHシリーズはコア数・スレッド数が変わらないため、スコアも大きな変化はなし。
Pシリーズは、Core i5は伸びているものの、Core i7の伸びはいまいちです。Uシリーズはデータがありませんでした。
もう一つ笑っちゃうのが、今回より登場したNシリーズ。
TDP15WのCore i3-N305は第11世代Tiger LakeのCore i7-1165G7や、Core i7-11370Hを上回っています。ちょっとあまりにもスコアが高すぎて、検索ミスった?って検索しなおしたくらいです。
Eコアのみとはいえ、8コアってのが大きいんですかね?
TDP7WのCore i3-N300でも、さらっとCore i3-1115G4を上回っています。
この2つは、ミニPCとか現行のCeleronノートとかの置き換えに使われそうですね。
TDP6WのIntel N200やIntel N100は、同じTDP6WのCeleron N5100と変わらない程度だけど、シングルスレッド性能が1.5倍になっています。これもファンレス機に使われそうです。
PCIe
「Raptor Lake」では「Alder Lake」で見送られたPCIe Gen5をサポートしました。
Thunderbolt4ではDisplayPort2.1をサポートし、デュアル4K/60HzまたはFHD/240Hzの出力に対応、さらにUSB3.2 Gen2x2をサポートしました。
というか、USB3.2 Gen2x2ってサポートされてなかったのか…
PCIeとThunderbolt4のレーン数・ポート数の組み合わせは以下の通りです。
HX:TB4×2、CPU:Gen5 x16(GPU)+Gen4 x4(SSD)、PCH:Gen4 x16+Gen3 x12
H/P/U:TB4×4、CPU:Gen5 x8(GPU)+Gen4 x4×2(SSD)、PCH:Gen3 x12
N:PCH:nonTB4、Gen3 x9
外付けNPU
Intel CPUは第10世代Ice LakeでGNA(Gaussian mixture model and Neural network Accelerator)という、一種のディープラーニングやAI向けのプロセッサを搭載しました。
使われ方としては人物検知(ロック・ロック解除の自動化)、ノイズキャンセリング、ビデオ映像へのリアルタイム字幕付加(音声解析からの文字起こし)などです。
このAIプロセッサ、次世代のMeteor LakeではMovidius由来のVPUを内蔵されることになっています。
Raptor Lakeとしてはその前準備として、外付けNPU(Neural Processing Unit)をサポートしました。
この機能を使うことで、カメラの効果(HDR、自動フレーム化、アイコンタクト、背景ぼかし)などを外付けNPUで処理することができるようになり、CPU・GPUの負荷を下げられるとのこと。
いやまぁ、現行の性能だとそこまでする必要あるの?ってなりますけどね。やった方が省電力にはなるってことがメリットのようです。
なお、すでに搭載されているはずのGNAについては特に言及がなく、Alder Lakeと同じGNA3.0のままかGNA3.1が搭載されていると思われます。
まとめ
第13世代Raptor Lakeは、グラフィックが強力になった第11世代Tiger Lake、ハイブリッド構成になった第12世代Alder Lakeに比べると、非常に地味な更新内容です。
まぁ、前世代のAlder Lakeでやれることはやり切った感があるので、仕方ないと言えば仕方ないのですが。
キャッシュの増量やPCIe Gen5の対応など、高速化につながる要素はあるものの、グラフィックアーキテクチャは3代続けて変わっていませんし、見られる内容としてはコア数が増えたHXシリーズくらいかなと。
ライバルとなるRyzen 7000シリーズは最大で16コア32スレッドになり、一気に性能を伸ばして来たので去年(Alder Lake vs Ryzen 6000)のような差はなくなり、優位性もかなり薄れています。
次世代Meteor Lakeではチップレット構成(CPU・GPU・SoC・IOの4つのタイルを一つのダイに乗せる)とIntel 4(4nm製造プロセス相当)を採用するとの話なので大きく変化しそうですが、少なくとも今年は苦しい戦いになりそうです。
コメント
Alder lake-Nですが、N300は7Wでファンレス向け、他にN305が15Wで普通のノート水準です。
N305はGeekbenchでは4500点前後ですね。シングル性能を加味すると4700Uや5500Uと同程度でしょうか。
Alder lakeは大まかに電力2倍でクロック1.5倍(クロック2/3で電力半分)という関係にあり、
N300(8コア)はN200に対してクロック2/3のコア数が倍で性能1.5倍
N305はN300の倍の消費電力でクロック1.5倍という概算になります。
コメントありがとうございます。
N305と、ついでにN100も追加しました。
電力とクロック・性能は確かにそんな感じの関係ですね!
マルチ性能はPコア×1≒Eコア×2程度の関係なので、N305が1165G7並みなのは想定通りで、ゆえにCore i3ブランドにしないともったいないという感じになったのだと思います。
ただマルチ性能が5000点もあると、もっさりの原因の多くがシングル性能になるので、体感的な速度は1135G7より若干遅い程度に落ち着くとは思います。