先日レビューしたCrucial「P3 Plus」ですが、仕様上の動作温度が0度~70度なのに対し、ベンチマーク中の最高温度が75度だったことが気にかかっていまして。
また、日常使用の範囲ではベンチマーク結果のしょぼさとは裏腹に、ちょっと遅いけど結構普通に使えているんですよね。
そんなわけで、改めてヒートシンクを付けて検証してみました。
前のレビュー
使用ヒートシンク
使用したのはサンワサプライの「TK-HM5BK」
M.2 SSDヒートシンクの主流ともいえるサンドイッチ型ではなく、シリコン輪ゴムで固定するタイプです。
というのも、検証ノートのSSDスロットの下にはWi-fiカードがありまして。
やたらと分厚い熱伝導シートでSSDと接触していて、サンドイッチ型が使えないんですよね。厚さの違う熱伝導シートに替えればいいのでしょうが、そこまですることかなぁと。
…というか、Wi-fiカードの熱をSSDに逃がす構造ってどうなんだろう…?
それはともかくとして、このヒートシンクをSSDに装着します。
M.2スロットに挿入。
めっちゃ高さがあるので、カバーは閉まりません。
今回はあくまで冷却時の検証なので、このままカバーをせずに、おまけに卓上扇風機で風を当てて検証します。
ベンチマーク
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkは非冷却時に比べて伸びていて、仕様上のリード5,000MB/s、ライト4,200MB/sを上回っています。
また、テスト容量16GBまでは速度が落ちなかったため、非冷却時の速度低下はチップの発熱が要因だったようです。
……単にベンチマーク詐欺コントローラという可能性もありますが。
ちなみにベンチマーク中の状況をタスクマネージャで見るとこんな感じ。
リード・ライトともにチップ性能を使い切っています。
AS SSD Benchmark
AS SSD Benchmarkの結果は、シーケンシャルはあまり変わらないものの、4Kランダムライトの数値が倍増。
4Kランダムの計測はシーケンシャルリード・ライトの後に行われるので、非冷却時だとチップが熱を持った状態での計測となります。
そのため、数値が大きく向上したものと思われます。
h2testw
全領域書き込みのh2testwでは、非冷却時とあまり変わらない結果に。
挙動を細かく見ていくと、以下のようになっていました。
~250GB:高速(1.5GB/s)書き込みで50~60GB書き込むごとに20秒ほど低速化
~520GB:120~130GBごとに低速化、
520GB~:20秒の低速、5秒の高速(ばらつきあり)を繰り返す
これらの事象から、実は内部的には50GBくらいをSLCキャッシュ化していたのかなと。
※2023年5月31日追記:疑似SLCキャッシュは固定容量+変動容量で構成され、全体で容量の3割程度となります。「P3 Plus(2TB)」の場合、50GB程度の固定容量+500GB弱の変動容量という組み合わせだったものと推測されます。
「P3 Plus」はQLC NANDなので、キャッシュが切れた後の素の書き込み性能が低いことがよく分かります。
あと、ベンチマーク中の最高温度は41度でした。
HD Tune Pro
HD Tune Proでの計測はリードが2,000MB/s → 2,200MB/sに、ライトが2,000MB/s → 2,300MB/sにアップ。
また、非冷却時に比べてリード・ライトともに全域で安定しています。
ランダムリード・ランダムライトの計測では、リード最大5,139MB/s、ライト最大4,427MB/sに達しました。
現実的には、この辺りのスコアが実使用に及ぼす影響は少ないのですが、ショーもないSSDでもヒートシンクくらいは付けた方がいいということが分かりますね。
ファイル転送
※計測は手動で行っているので、多少の誤差があります。
100GB(1GB×100)のファイルの読み込み:2分6秒
不可や速度にややばらつきがあり、トータルでは平均1GB/s弱です。
これは、書き込み先のシステムディスク(ディスク1)がPCIe Gen3接続であることや、システムディスクのアクティブが100%に張り付いているのが原因で、「P3 Plus」にはまだ余裕があることから、環境によってはもっと速度が出るでしょう。
次は書き込みです。
空の状態で10GBの書き込み:最速で5秒61
空の状態で100GBの書き込み:7分50秒
何回かやりましたが、キャッシュの確保状況がまちまちなのか、10GB時でも4GBくらいで低速になったり、高速なまま最後まで書き込めたりとばらつきがありました。
間を置かずに計測すると低速になりやすかったので、SSD側がキャッシュ領域を作成する時間を取る必要があるようです。
ただ最速時でも平均2,000MB/s前後しか出ていないんですよね…
100GB時は転送量が16GBを過ぎたあたりでアクティブ100%に。
その後はh2testwと同じく、20秒の低速、5秒の高速書き込みを繰り返しました。
残容量100GBで、10GBの書き込み:最速で5秒22
残容量100GBで、100GBの書き込み:9分58秒
挙動としては空の時に近いですが、100GB時は転送量が8~10GBを過ぎたあたりでアクティブ100%になったので、キャッシュ領域が少なくなっているようです。
キャッシュ領域の確保と思われるアクティブ100%の時間も少し長くなり、トータルでは空っぽの時より2分強遅くなりました。
言い換えれば10GB程度までであれば残容量に関わらず高速に書き込める、ということです。
まとめ
「P3 Plus」はピーク性能に発熱が影響してはいるものの、実用面ではあまり変わらない挙動でした。
…実のところ、あまりにひどかったのでフォロー記事を書こうとしたのですが、フォローできなかったってのがこの記事のまとめです。冷やせばマシになると思ったんだけどなぁ…
前回記事のコメントで「PS5だと普通に使える」と頂いた通り、PS5はGen4 SSDオンリーかつ読み込み重視(連続書き込みとなるソフトダウンロードはストア側の回線が遅い)で、最低限のクーリングさえ行っておけばリードは落ちこまない「P3 Plus」の挙動とはマッチしているなと。
2回にわたってレビューした結論としては、「PS5用として買うならあり、PC用なら別のを買え」となりました。
コメント
https://www.tomshardware.com/reviews/crucial-p3-plus-ssd-review-capacity-on-the-cheap/2
2TBモデルは残容量100%で疑似SLCキャッシュが550GBだそうなので、
2分で500GB程度までwriteできているようです。
残容量が減ると疑似SLCキャッシュも4倍減るので、キャッシュ切れが早くなる。
切れたら100MB/秒くらい。
https://qiita.com/ken-yossy/items/b784f5d96e56fc516fb5
コメントありがとうございます。
一般的には疑似SLCキャッシュは全容量の3割程度と言われているので、550GBというのは妥当な数字です。
また多くの場合、小容量の容量固定SLCキャッシュと、大容量の容量変動SLCキャッシュを組み合わせることが多く(=速度が2段階に変化する)、
50GB程度の容量固定+500GB前後の容量変動と考えると、当ブログでの検証とも矛盾しないかなと。
当時は私も勉強中だったため、そこまで考えが至っていませんでした(固定+変動について追記しました)。