2023年12月29日、SBCメーカーのFriendlyELECはRockchip RK3588を搭載したSBC「NanoPC-T6」の置き換えモデルとなる「NanoPC-T6 LTS」を発売しました。
なお、ストアにおける追加日が不明なので、wikiでLTSに関する文言が加えられた日を追加日としています。
スペック
■ NanoPC-T6 LTS | |
CPU | Rockchip RK3588 |
---|---|
メモリ | 4~16GB LPDDR4X-2133 |
ストレージ | 32~256GB eMMC M.2 Key-M(2280) |
インターフェース | USB Type-C(3.0)×1 USB 3.0×1 HDMI×2 HDMI-IN×1 2.5GbE有線LAN×2 microSDXC オーディオジャック |
wi-fi | M.2 Key-E |
サイズ | 110×80mm |
電源 | 12V(5.5*2.1mm) |
特徴
「NanoPC-T6 LTS」は、 「NanoPC-T6」の置き換えモデルというか、アップデートモデルのような扱いとなっています。
バージョンでいえば 「NanoPC-T6」が2301、 「NanoPC-T6 LTS」が2310です。
中身としてはSoCや全体のデザインは大きく変わらず、4G/LTEカード用のminiPCIe・SIMスロットがなくなってUSB2.0に置き換えられたほか、デバッグ用のType-Cポートが追加されたりと、長期サポート(LTS:Long Time Support)というよりは、より組み込み向けになったという感じです。
なお、LTS版となったものの、サポート保証年数についての記載はありません。
SoC
「NanoPC-T6 LTS」のSoCは「NanoPC-T6」から変わらず、Rockchip RK3588。最近増えてきたRK3588Sではなく、無印の方のRK3588です。
RK3588はRockchip初の8nmプロセスで製造されるSoCで、4コアのCortex-A76と4コアのCortex-A55のbig.Litte構成を取っています。
グラフィックは2021年5月に発表されたMali G-x10シリーズからミドルハイクラスとなるMali-G610の4コア(MP4)モデルを採用。
さらに6.0TOPSのNPUも内蔵し、かなり強力なSoCに仕上がっています。
ブロックダイアグラムはこんな感じ。
地味にHDMI-IN (HDMI RX)をサポートしています。
GeekBenchスコアはこんな感じ。
SBC界隈で主流のRK3399のざっと3倍、PC向けと比較するとシングルコア性能はCeleron N5100と同等、8コアな分マルチスレッド性能はN5100の1.5倍くらいでしょうか。
なお、弟分のRK3588Sと比較すると、違いは以下のようになっています。
RK3588S | RK3588 | |
---|---|---|
CPU | Cortex A76 ×4 Cortex A55 ×4 | |
GPU | Mali-G610 MP4 | |
NPU | 6TOPS | |
メモリ | LPDDR4x/LPDDR4/LPDDR5 最大32GB | |
映像出力 | HDMI 2.1/eDP ×1 DisplayPort ×1 MIPI DSI ×2 | HDMI 2.1/eDP ×2 DisplayPort ×2 MIPI DSI ×2 |
映像入力 | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP | 48MP ISP MIPI CSI 4×2lane DVP HDMI-IN (4K/60Hz) |
ネットワーク | 1GbE ×1 | 1GbE ×2 |
USB | USB3.1 Gen1(OTG) ×1 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (HOST) ×2 | USB3.1 Gen1(OTG) ×2 USB3.1 Gen1(HOST) ×1 USB2.0 (OTG) ×2 |
PCIe | – | PCIe 3.0 x4 |
Combo PIPE | 2ポート | 3ポート |
低速I/O | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC CAN bus ×3 | SPI ×5 I2C ×9 UART/GPIO ×10 12bit ADC |
サイズ | 17×17mm | 21.45×21.45mm |
RK3588Sは、CPU/GPU/NPU構成はRK3588と同じで、インターフェース周りが簡素化された分、パッケージサイズが小型化しています。
そのため、もともと搭載できるインターフェースの限られる、クレカサイズSBCに採用されやすいという側面があります。
参考 RK3588 データシート:CNX Software ※PDF
参考 RK3588S データシート:CNS Software ※PDF
メモリとストレージ
メモリは4GBから16GBのLPDDR4X-2133。
ここは他のRK3588/RK3588S搭載SBCと同じです。今のところ32GBは用意されないようです。
ストレージは32GBから256GB eMMC。メモリとストレージの組み合わせは固定となっています。
背面には2280サイズ限定のM.2 SSDスロットがあり、PCIe Gen3 x4接続に対応しています。でもなぜか最高2,500MB/sになっています。SoC側の処理能力の限界でしょうか。
その他
無線LANは直接は搭載されず、M.2 Key-Eスロットでの提供。技適問題がある日本としては、技適なしのオンボードよりこちらの方がありがたいです。
オプションでWi-fiカード(チップは8822CE)も用意されています。
有線LANはデュアル2.5GbE。使用しているのはPCIe2.1 to 2.5GbEチップのRTL8125BG×2です。
RK3588はSATA/PCIe2.1/USB3.0に使えるCombo PIPEというのが3レーンあるので、これが無線LANと有線LANに使われているようです。
電源は5.5×2.1mmのバレルジャックで、12Vオンリー。
また、工業用の3.5mmピッチ2ピンコネクタも用意されています。
OSはDevian11、Ubuntu22.04、Android12のほか、Ubuntu20.04ベースのFriendryCoreやOpenWrtベースのFriendryWrtなどに対応しています。
インストール手順などはwiki上で丁寧に解説されています。
外観
インターフェースです。
M.2 Key-MやMIPIなどはそのままで、USB2.0やデバッグ用のType-Cが追加されています。
斜めから見るとこう。
旧設計との比較。
miniPCIeスロット周りに目が行きますが、電源周りがかなり変更されています。
また、オーディオジャックが端っこに移動した関係で、ホールの位置も変更されています。
端子配置が換わったので、実はケースも新しくなっています。
まとめ
「NanoPC-T6」の価格は以下の通り。
・4GB/32GB:119ドル
・8GB/64GB:129ドル
・16GB/256GB:169ドル
・ケース:20ドル
・Wi-fi:18ドル
・電源アダプタ:9.89ドル
このうち、16GB/256GBは4G/LTE対応な旧設計品となります。おそらく在庫がなくなったら新設計の16GB/64GBに置き換えられると思うので、4G/LTEが必要な方は今のうちに購入しておくことをお勧めします。
価格については、旧設計では4GB/32GBが100ドルきっかりでした。
部材費の高騰かサポート費の上乗せかは分かりませんが、20ドルの値上げは大きいなぁと。
とはいえ、HDMI-INもあってデュアル2.5GbEで、USBマシマシになってと汎用性はさらに高くなったので、これも売れるんじゃないかなぁと。
まぁそもそも売れてなかったらLTS版も作られていないでしょうしね。
関連リンク
NanoPC-T6/LTS:FriendlyELEC
NanoPC-T6/LTS:FriendlyELEC wiki
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