SK hynixは業界シェア2位となるNANDフラッシュ企業です(1位はサムスン)。
もともとはMicronと4位争いを繰り広げていたものの、2020年にIntelのNAND部門を買収したことでWD、KIOXIAを抜いて2位に浮上しました。
そんなSK hynixが2022年に投入したフラグシップモデルが「Platinum P41」です。
格安SSDとして市場をにぎわせたYMTC系SSDに比べると高額ですが、その実力はいかほどのものか、チェックしていきます。
SKHynix Platinum P41
■ SHPP41-2000GM-2 | |
容量 | 2TB |
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接続 | PCIe Gen 4.0 x4 NVMe 1.4 |
転送速度 | リード:7,000MB/s ライト:6,500MB/s |
NAND | SK hynix 176L NAND |
キャッシュメモリ | 2GB LPDDR4 |
耐久性 | 1200TBW |
保証 | 5年 |
本体外観
箱は縦型。
本体とマニュアルだけで、ネジも入っていませんでした。
本体裏表。
裏面はチップがない、片面実装となっています。
シールを剥がすとコントローラ・DRAMキャッシュ・NANDが実装されています。
※シールを剥がすと製品保証対象外となるので、安易にまねをしないでください。
・コントローラ:SK hynix Aries
・DRAM:SK hynix 2GB LPDDR4-3733
・NAND:SK hynix 176層 3D TLC NAND(512Gb×16枚)
搭載チップはオール自社製となっています。
モノとしてはSolidigm(元Intel)の「P44 Pro」と同じです(ソフトウェア面が多少違うとか)。
なお、最新の232層は記事執筆時点ではYMTCとMicronしか量産に至っていません。
サンプル品レベルであればSK hynixも321層NANDを2023年8月に展示しましたが、量産は2025年とされています。
参考 SK hynix Showcases Samples of World’s First 321-Layer NAND:SK hynix
チェック環境
検証はLenovo「IdeaCentre Mini Gen8」と、システムとしてLexar「NM790(4TB)」を使用。
測定中は蓋を開けたまま検証。冷却面では多少マシなものの、実際のノートなどでの使用状況を想定して、ヒートシンクは使いません。
CrystalDiskInfoの情報です。仕様通りのNVMe 1.4接続となっています。
ちなみにNVMeのバージョンは転送速度とはあまり関係がなく、そもそもが通信プロトコルの規格名です。なので、バージョンによって使えるコマンドセットや機能に差があります。
ざっくり調べた感じだと、NVMe 2.0ではZNS Command SetやKV Comman Setが追加され、HDDをサポートするように。
NVMってNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の頭文字(eはExpress)なのに、磁気ディスクをサポートとは…
ベンチマーク
そのためエアフローのしっかりしたデスクトップ機やヒートシンク装着などの整った環境より低いスコアとなります。
また、機材の限界として、7,000MB/s付近が上限となります
CrystalDiskMark
CrystalDiskMarkではサイズを1GiB・64GiBにして測定。
シーケンシャルでリード6,947MB/s、ライト6,674MB/sを記録。ほぼ仕様通りというか、ライトは仕様の6,500MB/sを上回っています。
64GiB時はシーケンシャルライトやや落ち込んでいますが、ランダム性能は変化なし。
DRAMキャッシュの効果と考えていいのか、この辺りはYMTC系SSDよりもしっかりしていますね。
4Kランダムのレイテンシ(1GiB時)は58.63μsとやや遅め。この辺りはCPU直結にするなど遅延要素を徹底的に排除しないと実力が見えないところなので、モバイル向けCPUとの組み合わせならこんなものと言えるかと。
参考までに、標準モードで計測した場合。
AS SSD Benchmark
AS SSD Benchmarkでは総合5887ポイントと高得点。
リードはYMTC系SSDと変わらないものの、ライトのアクセスタイムと64スレッド書き込みが高速です。DRAMキャッシュが効いていますね。
「Compression-Benchmark」はフラットなスコアとなっています。
h2testw
h2testwは、2.2GB/sでスタート。
YMTC系のMonsterStorage「MS950(2TB)」と同程度のスタートです。
300GB(15%)を過ぎたあたりでややペースダウン。
コントローラの使用率が上がっているので、SLCキャッシュを使い切って書き込みが始まったことが分かります。
その後は速度を落とすことなく1.6GB/sを保ったまま終了。
「MS950(2TB)」が途中600MB/s台まで落ち込んだのとは違い、実力を見せつけてきました。
トータルでは、書き込み平均1.56GB/s、読み込み平均1.91GB/sでした。
「MS950(2TB)」が書き込み平均1.18GB/s、読み込み平均1.65GB/sだったことを考えると、負荷にも余裕があって最後まで走り切った「P41」は優秀ですね。
ATTO Disk Benchmark
ATTO Disk Benchmarkはファイルサイズが小さなファイルにおけるスループットを計測するベンチマークです。
グラフを見た感じ、リード・ライトともに2MBがピークですが、64MBまで大きな落ち込みがありません。
ファイルサイズが小さく、DRAMキャッシュで賄えるからというのが要因でしょう。
HD Tune Pro
HD Tune Proではリードは常時2,000MB/s以上をキープ、平均も2,079MB/sです。
アクセスタイムもほぼ一直線に0.016msを保っています。
ライトは途中まで2,200MB/s、キャッシュが切れたと思われるあたりからは1,600MB/s程度となっています。
その他の計測結果。
ファイルベンチマークでは200GBを超えたあたりで書き込み速度が落ち込んでおり、SLCキャッシュが200GB程度であることが分かります。
3DMark Storage Benchmark
3DMarkでの結果。
全体的に「MS950(2TB)」をちょっとずつ上回っています。
ファイル転送(書き込み)
ファイル転送は「DiskBench」を使って計測。
10GB(1GB×10)のファイル:3.548秒 (2886.133 MB/s)
100GB(1GB×100)のファイル:37.959秒 (2967.647 MB/s)
1TB(1GB×1000)のファイル:555.043秒 (1844.902 MB/s)
ファイル転送では、「MS950(2TB)」とあまり変わらず。DRAMキャッシュに収まりきれない範囲ではYMTC系SSDと同程度の性能を示しています
1TB転送時のタスクマネージャの様子。
終盤はデータ転送と並行してSLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動を行っているため100%に張り付いていますが、それでも1.7GB/sを保っています。
温度について
温度はHWMonitorと、HWiNFOの2種類で調査。
HWiNFOは合計3種類の温度センサーが見えていますが、HWMonitorではひとつしか見えていません。
HWiNFOのセンサー上で最大74度でした。
サーモグラフィーで見ると、コントローラ部は最大78.5度に達していました。
エアフローの悪い環境だと80度超えは確実ですね。場合によってはサーマルスロットリングが発生するような温度(90度)まで達することもありそうなので、なるべくヒートシンクを装着した運用にしたいところです。
まとめ
「P41」は他メディアでのレビューでも評価が高く、実際に検証しても良好な成績を出しています。
後は気になる書き込み耐性ですが、PC WatchにてHIKSEMI「HS-SSD-FUTIRE 1024G」 vs WD「WDS100T2X0E」の検証が行われていて、YMTC系の「HS-SSD-FUTIRE 1024G」でも仕様の8割程度の書き込みまで耐え、WDに至っては仕様の10倍の書き込みに耐えたとの結果が出ています。
あいにくとSK hynixは入っておらず、がじぇっとりっぷも検証していませんが、「P41」はオール自社製のフラグシップモデル。当然耐久性だって検証しているでしょう。
2TBモデルは1,200TBWと他社と横並びですが、1TBモデルは750TBW(他社は600TBWが多い)、512GBモデルは500TBW(同300~350TBW)と高めに設定されているのも、自信の表れだと思います。
冷却さえしっかりしておけば、システムのメインストレージを任せるに足る1台と言えそうです。
というか、これがダメならWDかSAMSUNG、KIOXIA(旧東芝メモリ)くらいしかないし…
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