【レビュー】 MonsterStorage MS950(2TB):(検証段階の)時間耐久性以外は及第点な、YMTC系中華SSD

レビュー

MonsterStorageは2023年初めに登場した、HIKSEMIに代表される「蝉族」と呼ばれる中華SSDブランドの一つです。
株式会社Taurus(2022年11月設立)が展開する自社ブランドで、株式会社TaurusはHIKSEMIの日本国内独占販売も行っています。

HIKSEMIのメーカーであるHikvision社を含め、自社製造をしていないファブレスメーカーに当たりますが、中国YMTC社の232層TLC NANDメモリを搭載した、高性能SSDを安価に販売しています。

この裏にはYMTCが米国のエンティティリストに加えられ、大手メーカー(Appleと言われている)に出荷予定だった大量のNANDが在庫化、在庫処分のために中華メーカーに安くばらまいたと言われています。
そのため、Appleの品質基準を満たしたNANDが安く出回ることとなり、これまでの激安中華SSD(NANDの出所が怪しかったり、一部では黒片と呼ばれる選別落ちNANDが使われていたなんて噂も…)に比べて品質面でもある程度信頼が置けるのではないかと言われています。
あくまで確からしい噂の域ではありますが、少なくとも、大量の初期不良が~みたいな話は出ていません。

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MonsterStorage MS950

■ MS950G75PCIe4-02TB
容量2TB
接続PCIe Gen 4.0 x4
NVMe 1.4
転送速度リード:7,400MB/s
ライト:6,600MB/s
NANDYMTC 232L NAND
キャッシュメモリなし
耐久性2000TBW
保証5年

※セールで在庫切れとなり、マーケットプレイス品の価格が表示される場合があります。

本体外観

箱は縦型。

留めねじとドライバーが同梱されています。
マニュアルは入っていませんでした。

本体裏表。

裏面はチップがない、片面実装となっています。

シールを剥がすとチップが実装されているのは半分だけ。
DRAMメモリを搭載せず、キャッシュにはメインメモリの一部を利用するHMB(ホストメモリバッファ)方式のDRAMレスSSDです。

ちょっと見にくいですが、コントローラーはMaxio。

NANDはYMTC製っぽい型番

実際fidで見ると、中身はYMTCの232層 3D TLC NANDでした。
MAP1602+YMTC 232Lは、格安中華M.2 SSDに多いパターンです。

がじぇっとりっぷでもLexar「NM790」(4TBモデル)でMAP1602+YMTC 232Lを検証しています。

【レビュー】Lexar NM790(4TB):高性能で低価格、最強クラスのDRAMレスSSD

ぶっちゃけ、この時点で大体の性能が予測できますね。

チェック環境

検証はLenovo「IdeaCentre Mini Gen8」と、システムとしてLexar「NM790(4TB)」を使用。

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こんな感じで蓋を開けたまま検証。冷却面では多少マシなものの、実際のノートなどでの使用状況を想定して、ヒートシンクは使いません。

「NM790」にないポイントとして、「MS950」にはアクセスLEDが基板上に実装されていました。ちっこいくせに結構まぶしいです。

CrystalDiskInfoの情報です。
「NM790」はNVMe2.0接続でしたが、こちらは仕様通りのNVMe 1.4接続となっています。
「NM790」の方がファームウェアが新しかったので、その辺りの違いからくるものでしょうか。

ちなみにNVMeのバージョンは転送速度とはあまり関係がなく、そもそもが通信プロトコルの規格名です。なので、バージョンによって使えるコマンドセットや機能に差があります。

ざっくり調べた感じだと、NVMe 2.0ではZNS Command SetやKV Comman Setが追加され、HDDをサポートするように。
NVMってNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の頭文字(eはExpress)なのに、磁気ディスクをサポートとは…

ベンチマーク

ベンチマークはヒートシンクのない状態で計測しています。
そのためエアフローのしっかりしたデスクトップ機やヒートシンク装着などの整った環境より低いスコアとなります。
また、機材の限界として、7,000MB/s付近が上限となります

CrystalDiskMark

CrystalDiskMarkではサイズを1GiB・64GiBにして測定。

シーケンシャルでリード6,953MB/s、ライト6,603MB/sを記録。上記の通り、リードは機材側の限界で、ライトは仕様通りに出ています。

64GiB時はシーケンシャルライトおよびランダムライトがやや落ち込み。特にランダム性能が半分程度まで落ち込んでいます。
この症状自体はDRAMレスSSDはよく見られるため、何か異常があるというわけではありません。

4Kランダムのレイテンシ(1GiB時)は56.05μsとやや遅め。この辺りはCPU直結にするなど遅延要素を徹底的に排除しないと実力が見えないところなので、モバイル向けCPUとの組み合わせならこんなものと言えるかと。

AS SSD Benchmark

AS SSD Benchmarkでは総合5083ポイントと高得点。

「Compression-Benchmark」はフラットなスコアとなっています。

h2testw

h2testwは、2.1GB/sでスタート。
検証環境が異なりますが、SAMSUNG「980 PRO」が約1.4GB/sスタートだったことを考えると、好スタートと言えます。

【レビュー】SAMSUNG 980 PRO:さすがの大御所、速度の落ちないGen4対応SSD

300GB(15%)を過ぎたあたりでややペースダウン。

6割の1.2TB付近でちょっと不審な動きが発生。

1.5TBを超えたあたりで負荷(使用率)が高くなり、速度が落ち始めました。
おそらくはTLCへの直接書き込み+SLCキャッシュからTLCへのデータ移動が行われているものと思われます。それでも600MB/s台は保てています。

トータルでは、書き込みは平均1.18GB/s、読み込みは平均1.65GB/sでした。

ATTO Disk Benchmark

ATTO Disk Benchmarkはファイルサイズが小さなファイルにおけるスループットを計測するベンチマークです。
グラフを見た感じ、リード・ライトともに2MBがピークですね。

当たり前と言えば当たり前ですが、「NM790」と似た傾向を示しています。

HD Tune Pro

HD Tune Proではリードはオシロのグラフみたいな不思議な動きで、平均1,924MB/s。

ライトもやや乱れていますが似たような変な動きで、平均2,188MB/sでした。
変な動きのくせに速度はちゃんと出ているという…

その他の計測結果。

3DMark Storage Benchmark

有償版の3DMarkを持っていることを思い出したので、3DMarkでの結果も。
初めてなのでこれがいいのか悪いのかはよく分からず。今後のデータ蓄積で判断することになります。

ファイル転送(書き込み)

ファイル転送は「DiskBench」を使って計測。

10GB(1GB×10)のファイル:2.842秒 (3603.096 MB/s)
100GB(1GB×100)のファイル:38.067秒 (2689.994 MB/s)
1TB(1GB×1000)のファイル:565.465秒 (1810.899 MB/s)

ファイル転送では10GB・100GBは「NM790」よりも高速、1,000GBでは後半失速して平均1.8GB/sに。

1TB転送時のタスクマネージャの様子。
当初はチップの稼働率も70%を切っていて、3.1GB/sと高速に転送していますが…

終盤はデータ転送と並行してSLCキャッシュからTLC NANDへのデータ移動を行っているため100%に張り付き、転送速度自体も770MB/sまでダウンしています。
とはいえ動画の生データとかを移動するとかでもない限り、ここまで落ち込むこともないでしょう。基本的には1GB/s以上を保てると考えてよさそうです。

温度について

温度はHWMonitorと、HWiNFOの2種類で調査。
HWiNFOは合計3種類の温度センサーが見えていますが、HWMonitorではひとつしか見えていません。
HWiNFOのセンサー上はコントローラと思しきものが最大58度でした。

サーモグラフィーで見るとセンサーの数値よりは高いものの、コントローラ部でも最大63.8度と結構低め。
エアフローの悪い環境でも70~75度程度に納まりそうですし、よほどのことがない限りサーマルスロットリングは発生しなさそう。

Gen4 SSDは全般的に発熱するので、可能な限りヒートシンクを装着しての運用が望ましいのですが、これなら裸でもいけるかも(ただし相応に寿命が短くなることは覚悟した方がいいでしょう)。

まとめ

「MS950」は評判のいい「蝉族」なだけあってスペック通りの性能を示し、連続書き込みでも平均1GB/s以上と良好な結果を出しています。

書き込み耐性についてはPC Watchにて同じ蝉族のHIKSEMI「HS-SSD-FUTIRE 1024G」の検証が行われていて、仕様の8割程度の書き込みで異常ステータスになったとのこと。
少なくとも仕様の5~6割程度の書き込み量なら問題なく使えそうです。

【特集】 米中SSDの耐久対決、3カ月書き続けてついに決着。勝ったのは……
 9月半ば頃に開始した、中国製NAND搭載SSDと大手ブランドSSDのNAND耐久性検証。それから約3カ月経過したが、ようやく結論を出せる状況になったので、検証結果を紹介したいと思う。

記事執筆時点では使用時間が最長でも6,000~7,000時間程度のため、時間耐久性の面では有志による検証段階です。

中華系ながらサポートは割とやってくれる(といっても基本は交換対応ですが)ようですし、少なくとも今のところアウトな要素はありません。
個人的には同じYTMC系なら米国のラボで検証試験を実施しているLexarを推しますが、価格を優先してMonsterStorageを選んでも問題はないかと。

ただし、LexarにしろMonsterStorageにしろ、3年くらいを目途に入れ替えるくらいのつもりで使うのがいいでしょう。

関連リンク

おまけ

fid情報のテキスト版。スクリーンショットじゃなくてテキストでシェアして!って書かれていたので。

Maxio NVME SSD fid v0.34a by Ochkin Vadim
OS: 10.0 build 22621
 0: (MS950G75PCIe4 2048G
 1: (Lexar SSD NM790 4TB
Please select drive number:0
Drive   : 0(NVME)
Scsi    : 1
Driver  : W10
Model   : MS950G75PCIe4 2048G
Fw      : SN11273
HMB     : 32768 - 32768 KB (Enabled, 0 M)
Size    : 1953514 MB [2048.4 GB]
LBA Size: 512
Firmware id string[0C0] : MKSSD_100000000112733100,Apr  6 2023,23:03:07,MAP1602,1SSYAA4C
Project id string[080]  : r:/1602-YMTC-X3-9070-BASE-SVN11010-CS-Release-SVN11273
Controller              : MAP1602
NAND string             : CYAxxTE1B1xC3B
List may not be complete
Ch0CE0: 0x9b,0xc5,0x58,0x71,0x30,0x0,0x0 - YMTC 3dv4-232L(x3-9070) TLC 16k 1024Gb/CE 1024Gb/die
Ch1CE0: 0x9b,0xc5,0x58,0x71,0x30,0x0,0x0 - YMTC 3dv4-232L(x3-9070) TLC 16k 1024Gb/CE 1024Gb/die
Ch2CE0: 0x9b,0xc5,0x58,0x71,0x30,0x0,0x0 - YMTC 3dv4-232L(x3-9070) TLC 16k 1024Gb/CE 1024Gb/die
Ch3CE0: 0x9b,0xc5,0x58,0x71,0x30,0x0,0x0 - YMTC 3dv4-232L(x3-9070) TLC 16k 1024Gb/CE 1024Gb/die

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