思ったより脳筋的発想。「Ryzen AI 300」シリーズは最大12コアとなったAI対応CPU

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2024年6月2日、COMPUTEX 2024(2024年6月4日~7日)の前日基調講演でAMDは「Ryzen AI 300」シリーズ(コードネーム:Strix Point)を発表しました。
また、同時にデスクトップ向けのRyzen 9000シリーズについても発表しています。

アーキテクチャは据え置き。モバイル向けRyzen 8000シリーズはAI強化に舵切り。2年半ぶりのAPUも登場
2023年12月7日、AMDは同日に開催した「AMD Advancing AI」内の基調講演にて、Ryzen 8000シリーズ(コードネーム:Hawk Point)を発表しました。また、2024年1月9日にはデスクトップ向けAPU、Ryze
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2021年1月12日、AMDはCES 2021(期間:1月11日~14日)内でモバイル向けRyzen 5000シリーズを発表いたしました。また、この時は存在を公表するにとどめたRyzen Pro 5000について、3月15日に発表いたしまし
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ラインナップ

モデル コア/スレッド数 構成 Zen5 ベース Zen5 Boost Zen5c ベース Zen5c Boost GPU GPUコア数 GPUクロック NPU 合計TOPS L2キャッシュ L3キャッシュ TDP cTDP
Ryzen AI 9 HX 375 12 (24) Zen5×4+Zen5c×8 2.0 Ghz 5.1GHz 2.0 Ghz 3.3GHz AMD 890M 16 2.9 GHz 55 TOPS 85 TOPS 12MB 24MB 28W 15-54W
Ryzen AI 9 HX 370 12 (24) Zen5×4+Zen5c×8 2.0 Ghz 5.1GHz 2.0 Ghz 3.3GHz AMD 890M 16 2.9 GHz 50 TOPS 80 TOPS 12MB 24MB 28W 15-54W
Ryzen AI 9 365 10 (20) Zen5×4+Zen5c×6 2.0 Ghz 5.0GHz AMD 880M 12 2.9 GHz 50 TOPS 73 TOPS 10MB 24MB 28W 15-54W
モデル コア/スレッド数 構成 Zen5 ベース Zen5 Boost Zen5c ベース Zen5c Boost GPU GPUコア数 GPUクロック NPU 合計TOPS L2キャッシュ L3キャッシュ TDP cTDP
Ryzen AI 9 HX PRO 375 12 (24) Zen5×4+Zen5c×8 2.0 Ghz 5.1GHz 2.0 Ghz 3.3GHz AMD 890M 16 2.9 GHz 55 TOPS 85 TOPS 12MB 24MB 28W 15-54W
Ryzen AI 9 HX PRO 370 12 (24) Zen5×4+Zen5c×8 2.0 Ghz 5.1GHz 2.0 Ghz 3.3GHz AMD 890M 16 2.9 GHz 50 TOPS 80 TOPS 12MB 24MB 28W 15-54W
Ryzen AI 9 PRO 360 8 (16) Zen5×3+Zen5c×5 2.0 Ghz 5.0GHz 2.0 Ghz 3.3GHz AMD 880M 12 2.9 GHz 50 TOPS 72 TOPS 8MB 16MB 28W 15-54W

ざっくり性能表

CPU Geekbench 6(Multi)
Core i9-14900HX(24C/32T) 18313
Ryzen 9 7945HX(16C/32T) 16214
Core i7-14700HX(20C/28T) 16213
Ryzen 9 7940HX(16C/32T) 15862
Core i9-13900HX(14C/20T) 15722
Core i7-14650HX(16C/24T) 15487
Ryzen AI 9 HX 375(12C/24T) 15050
Ryzen AI 9 HX 370(12C/24T) 15004
M4(10C/10T) 14621
Core Ultra 9 185H(16C/22T) 13818
Core i9-13900H(14C/20T) 13629
Ryzen 7 7745HX(8C/16T) 13452
Core i7-13700H(14C/20T) 13360
Ryzen AI 9 365(10C/20T) 13065
Core Ultra 7 155H(16C/22T) 12749
Core i5-14500HX(10C/16T) 12302
Ryzen 7 8845HS(8C/16T) 12135
Ryzen 7 7840HS(8C/16T) 12135
Core i9-12900H(14C/20T) 11894
M3(8C/8T) 11863
Core i7-12700H(14C/20T) 11424
Core Ultra 9 288V(8C/8T) 11050
Core i5-13500H(12C/16T) 11050
Ryzen 7 7840U(8C/16T) 10726
Core i5-1340P(12C/16T) 10611
Core Ultra 7 258V(8C/8T) 10506
Core Ultra 5 125H(14C/18T) 10239
Core i7-1360P(12C/16T) 10206
M2(8C/8T) 10062
Core Ultra 5 228V(8C/8T) 10052
Core i5-12500H(12C/16T) 9961
Core i9-11980HK(8C/16T) 9830
Ryzen 7 7735HS(8C/16T) 9776
Core Ultra 7 155U(12C/14T) 9716
Ryzen 7 6800H(8C/16T) 9537
Ryzen 5 7640U(6C/12T) 9197
Ryzen 7 6800U(8C/16T) 8824
Core i5-12450H(8C/12T) 8823
Ryzen 9 5900HX(8C/16T) 8737
M1(8C/8T) 8615
Core Ultra 5 125U(12C/14T) 8384
Core i7-1355U(10C/12T) 8190
Ryzen 7 7730U(8C/16T) 8009
Core i5-1335U(10C/12T) 8003
Ryzen 7 5800H(8C/16T) 7578
Ryzen 5 7530U(6C/12T) 7493
Core i7-1255U(10C/12T) 7277
Core i5-1235U(10C/12T) 6990
Ryzen 7 5800U(8C/16T) 6721
Core i3-1315U(6C/8T) 6482
Ryzen 7 5700U(8C/16T) 6306
Core i3-1215U(6C/8T) 5986
Core i7-1165G7(4C/8T) 5986
Core i7-11370H(4C/8T) 5931
Ryzen 7 5825U(8C/16T) 5741
Core i5-1135G7(4C/8T) 5303
CPU Geekbench 6(Single)
M4(10C/10T) 3767
M3(8C/8T) 3125
Core i9-14900HX(24C/32T) 2922
Ryzen AI 9 HX 375(12C/24T) 2858
Core i7-14700HX(20C/28T) 2853
Ryzen AI 9 HX 370(12C/24T) 2845
Core Ultra 9 288V(8C/8T) 2810
Ryzen 9 7945HX(16C/32T) 2774
Ryzen 9 7940HX(16C/32T) 2769
Ryzen AI 9 365(10C/20T) 2720
Core i9-13900HX(14C/20T) 2712
Core i7-14650HX(16C/24T) 2669
Ryzen 7 7745HX(8C/16T) 2674
Core Ultra 7 258V(8C/8T) 2658
Core i9-13900H(14C/20T) 2617
Core Ultra 5 228V(8C/8T) 2617
M2(8C/8T) 2596
Core i5-14500HX(10C/16T) 2545
Core i7-13700H(14C/20T) 2531
Core Ultra 9 185H(16C/22T) 2522
Core i7-1355U(10C/12T) 2472
Ryzen 7 7840HS(8C/16T) 2456
Ryzen 7 8845HS(8C/16T) 2456
Ryzen 7 7840U(8C/16T) 2446
Core i9-12900H(14C/20T) 2426
Core i7-1360P(12C/16T) 2419
Core i5-1340P(12C/16T) 2374
M1(8C/8T) 2371
Core i5-1335U(10C/12T) 2360
Core Ultra 7 155U(12C/14T) 2354
Core i5-13500H(12C/16T) 2351
Ryzen 5 7640U(6C/12T) 2340
Core Ultra 7 155H(16C/22T) 2294
Core i7-12700H(14C/20T) 2280
Core Ultra 5 125H(14C/18T) 2256
Core i5-12500H(12C/16T) 2241
Core i3-1215U(6C/8T) 2230
Core i5-1235U(10C/12T) 2201
Core i9-11980HK(8C/16T) 2178
Core i3-1315U(6C/8T) 2177
Core i5-12450H(8C/12T) 2167
Core Ultra 5 125U(12C/14T) 2147
Core i7-1255U(10C/12T) 2103
Core i7-11370H(4C/8T) 2071
Ryzen 7 7735HS(8C/16T) 2015
Ryzen 7 6800U(8C/16T) 1968
Ryzen 7 5825U(8C/16T) 1929
Ryzen 5 7530U(6C/12T) 1928
Ryzen 9 5900HX(8C/16T) 1918
Ryzen 7 7730U(8C/16T) 1913
Ryzen 7 5800U(8C/16T) 1874
Core i7-1165G7(4C/8T) 1866
Ryzen 7 6800H(8C/16T) 1783
Core i5-1135G7(4C/8T) 1759
Ryzen 7 5800H(8C/16T) 1726
Ryzen 7 5700U(8C/16T) 1603

Geekbenchの集計値に基づいています

新要素

命名規則の変更

「Ryzen AI 300」シリーズからは命名規則が変更されています。
前回変更は2022年9月にRyzen 7000シリーズの時。当時は「今後5年間は利用する」との話でしたが、2年弱での変更となりました。

とはいえChatGPTの登場が2022年11月なので、それ以前に生成AIの急速な普及し、CPUに求められる要素が激変することを予測することは難しかったでしょう。

「Ryzen AI 300」シリーズは名称の通り、AIに重点を置いています。
300番台なのは、「Ryzen 7040シリーズ(XDNA)」を第1世代、「Ryzen 8040シリーズ(性能向上版XDNA)」を第2世代とした第3世代と位置付けているため。

Zen5とZen5cアーキテクチャ

「Ryzen AI 300」シリーズはZen5+Zen5cのハイブリッドアーキテクチャを採用しました。
AMDはこれまで単一アーキテクチャで通していたので、異種混合は初めてです。

とはいっても種を明かしてしまうと、Zen5cは設計はZen5と全く同一で、L3キャッシュが4コアあたり16MBから、8コア当たり8MBへと削減されたことだけが違うという、実質同じアーキテクチャで異種混合ともいえないシロモノだったりします。
それでもL3キャッシュの削減によって1コア当たりの面積は30%減だそう。キャッシュがどれだけ面積をとっているかがよく分かります。

製造プロセスはTSMC N4X(4nm)。Ryzen 8040シリーズがTSMC N4で、N4とN4Xの差は6%の性能改善、6%のトランジスタ密度向上とされています。

参考 TSMCが初のHPC向けプロセス、その名は「N4X」:日経クロステック

内部的には、命令実行の並列化を強化して後段の実行ユニットを暇にさせない、実行ユニットの強化、スケジューラーの改善、実行後のリオーダーバッファ(AMDでは「Instruction Retire Queue」と呼ぶ)の増加(320命令分→448命令分)、浮動小数点演算はネイティブ512bit化、L1データキャッシュの拡大(8way32KB→12way48KB)など、ほぼ全面的に、特にボトルネックとなりがちだった部分は重点的に手が入っています。

相当の改良を重ねた結果、同コア数&同クロック設定でZen4比平均16%のIPC(クロックあたりの命令実行数)向上を果たしたとのこと。

ちなみにIntelは「Lunar Lake」においてハイパースレッディングを廃止し、シングルスレッド性能を向上させましたが、AMDはSMT(Simultaneous Multi-Threading、要はハイパースレッディングと同等の技術)は継続させる方針です。
「SMT有効化で得られる性能向上は少なく見積もっても20%、最大で50%なので、面積、消費電力両方のコスト対効果から見ても,排除する理由は見当たらない」とのことで、ゲームなどのシングルスレッド性能重視アプリケーションの性能伸び悩みについては「将来的にはスレッドとCPUコア割り当てのスケジューリング精度の向上で対策できるであろう」としています。

RDNA3.5

グラフィックはRDNA3からRDNA3.5へと変更。
基本的なアーキテクチャはRDNA3と変わらず、電力効率が改善されたリフレッシュ版RDNA3とでも呼べるものになるようです。

変更が少ない代わりにAMDが取った手段が、コア数の増加。Ryzen 8040シリーズでは最大12だったCU数を、最大16にしました。単純計算で1.33倍の性能向上です。脳筋的発想ですね。

とはいえ現実には2割増し程度が精いっぱいのようで、ノート側のTDP設定によってはRyzen 7 8840HS(AMD 780M)と同等程度にしかならない場合もあるようです。

XDNA2

NPUについては、XDNAからXDNA2に世代交代。演算能力では最大5倍,電力性能比は2倍に向上しました。

XDNAはAMDが2022年に買収したXilinxのVersal ACAPというAIエンジンがベースとなっています。

参考 Zen 5に搭載するAIエンジンのベースとなったXilinxの「Everest」 AIプロセッサーの昨今:ASCII

内部的にはAIEタイルと呼ばれるコンピュートタイルとメモリタイルから構成されていて、内部メモリ(メモリタイル)にデータを展開することで、メインメモリのアクセスを減らしています。

XDNAの10TOPSから、XDNA2は50TOPSと大幅にアップしているわけですが、XDNA2ではAIEタイルとメモリタイルがそれぞれ1.6倍、AIEタイル1つあたりの演算器が2倍となっていて、この時点で単純計算で3.2倍。ここに動作クロック引き上げが入って5倍の性能向上となっているそう。割と力業でした。

AMDはXDNA 2に対応した新しいAIソフトウェア開発キット「Ryzen AI Software 1.2」を提供。現時点では1.4(2025年第1四半期提供予定)まで計画されています。

まとめ

「Ryzen AI 300」シリーズは初のモバイル向け12コア、初のグラフィック12CU、「CoPilot+ PC」に対応したNPUと、全面的に刷新されていますが、その実態をみるとGPUとNPUはほぼ力業です。
PCIeも4.0までのままで、5.0には対応していなかったりと、インターフェース周りの遅れも気になるところ。

また今回「Ryzen AI 300」シリーズはTDP28Wの上位モデルのみという狭いラインナップで、ミドル~ローエンド、あるいはTDP55Wクラスのハイエンドについては提供されません。
Intelの「Lunar Lake」がTDP15Wのみで、うまくかぶらないようになっているとも言えますが、これはあくまで結果論でしょう。

リークというか噂レベルの話では、以下のように言われています。

・下位モデルとなる”Krackan Point”(最大8コア8CU)が2025年初めに登場。
・TDP55Wクラスには最大16コア40CUなRyzen AI Max+およびRyzen AI Max(コードネーム:Strix Halo)が2025年上半期に登場。
・また、デスクトップ向けCPUをモバイル向けにパッケージングしたRyzen 7045シリーズの後継として、”Fire Range”という製品が2025年上半期登場

モバイル向けのZen5世代が本格的に動き出すのは2025年からということですね。
というか、IntelにしろAMDにしろ「Copilot+ PC」に対応したCPUをとりあえず用意した上で新要素を試している感が強いわけで。

これがCPU開発の本流上にあるのか、実は支流だったのか、それが分かるのは2025年以降になりそうです。

関連リンク

AMD Ryzen AI:AMD

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