2022年1月4日、AMDはCES 2022(期間:1月5日~7日)の基調講演でモバイル向け「Ryzen 6000シリーズ」(コードネーム:Rembrandt)を発表しました。
また、2022年4月19日にはビジネス向けの「Ryzen PRO 6000」シリーズの詳細を発表しました。
要点
・グラフィックアーキテクチャをVegaからRDNA2に変更
・CPUアーキテクチャはZen3+に
・製造プロセスはTSMC 6nm FinFETに
・メモリはLPDDR5-6400まで対応
・PCIe 4.0とUSB4に対応
・電力管理の最適化で駆動時間延長
・ハードウェアベースのオーディオノイズキャンセリングに対応
・CPU性能は横ばい
・グラフィック性能は約2倍
Zen3+について
Zen3+アーキテクチャは、Zen3の改良版で、性能向上よりも効率化に焦点を当てています。
CPU(APU)の電力管理をコア単位、(USBやワイヤレスなどの)コントローラ単位でできるようにし、デバイスドライバとファームウェア(UEFI)も改善。
「Power Management Framework」(PFM)を導入し、電源プランの自動切換えができるようにしました(機能をオフにもできる)。
さらにはディスプレイ表示における消費電力も抑制し、ハードウェア・ソフトウェア両面で最適化・省電力化を図っています。
結果、Ryzen 5000シリーズ比ではWindows(アイドル状態)で8%、ビデオ再生時は17%の駆動時間向上ができたとのこと。
ざっくり計算で、8時間だったものが9時間20分に延びたってとこですね。
見方を変えると、同じ駆動時間でいいのならバッテリーを小型化できるわけで、軽量モデルを作りやすくなったとも言えます。
性能そのものは横ばいですが、ブースト用にTDP 28W設定が可能になっています。
TDP 28W設定だと、スコアは15%~25%程度向上するようです。
TDPが高くなると冷却周りが大変になるのですが、Intel CPUでは第11世代Tiger LakeからTDP最大28Wを導入(第10世代Ice LakeでもあったがMacBook Pro専用)していて、メーカー側もTDP 28W向けのノウハウをすでに持っているので負担は少ないでしょう。
アーキテクチャはこんな感じです。
CPUコアとGPU、インターフェース周りや各モジュールをInfinity Fabricで接続するスタイルは継続しています。
RDNA2について
グラフィックアーキテクチャはRyzenシリーズで初めてVegaアーキテクチャを脱却し、RDNA2アーキテクチャに変更されました。
GPUのブランドとしては「Radeon 600Mシリーズ」となり、以下の2モデルが展開されています。
・Radeon 660M:6コア、Ryzen 5
・Radeon 680M:12コア、Ryzen 7/9
内蔵グラフィックとしては初めてハードウェアレイトレーシングに対応しました。
そのほかの特徴は以下。
・合計4画面出力まで対応
・HDMI 2.1対応
・DisplayPort 2.0対応
・DisplayPortは4K/60HzからFHD/240Hzまで
性能はVega比で約2倍。
Intelには第11世代Tiger Lakeで追い越されていましたが、再び追い抜きました。
内臓グラフィックで旧世代のdGPU(GeForce GTX 1050)に近いスコアを叩き出せるということで、ゲーミングUMPCへの採用が相次いでいます。
そのほかの特徴
プラットフォーム面でも様々に変更されています。
大きなところではDDR5、PCIe 4.0とUSB4への対応です。
PCIeレーンはトータルで20レーンあり、以下のように配分されています。
・GPU接続用:8レーン
・NVMe SSD:4レーン×2(うち4レーンはSerial ATAポートと排他)
・汎用(GPP):4レーン
セキュリティ面では新たに「Microsoft Plutonプロセッサ」を搭載。
Plutonプロセッサとはハードウェアレベルでのセキュリティ機能を提供する専用プロセッサで、実質的に既存のTPMを置き換えるものです。
TPMはCPUとは別にTPMチップを搭載することで機能していて、現在ではCPU-TPMチップ間の通信をハックする手法などが編み出されています。
これに対し、Plutonプロセッサは物理的にCPU内に搭載され、AMD、Intel、Qualcommなどが共同リリースという形で発表し、各社のCPUに内蔵されることになります。
TPM準拠のため、既存のOSやアプリケーションなどのセキュリティ機能もそのまま使えます。
各CPUのスペック
プロセッサー | Passmark | コア数(スレッド数) | 標準クロック | 最大クロック | 内蔵グラフィック | EU数 | GPU最大クロック | L2+L3 | TDP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 9 6980HX | 8 (16) | 3.3 GHz | 5.0 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 45W+ | |
Ryzen 9 6980HS | 8 (16) | 3.3 GHz | 5.0 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 35W | |
Ryzen 9 6900HX | 25049 (3409) | 8 (16) | 3.3 GHz | 4.9 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 45W+ |
Ryzen 9 6900HS | 23959 (3325) | 8 (16) | 3.3 GHz | 4.9 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 35W |
Ryzen 7 6800H | 23790 (3270) | 8 (16) | 3.2 GHz | 4.7 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 45W |
Ryzen 7 6800HS | 22905 (3156) | 8 (16) | 3.2 GHz | 4.7 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.2 GHz | 20MB | 35W |
Ryzen 7 6800U | 20502 (3176) | 8 (16) | 2.7 GHz | 4.7 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.2 GHz | 20MB | 15-28W |
Ryzen 5 6600H | 18825 (3173) | 6 (12) | 3.3 GHz | 4.5 GHz | Radeon 660M | 6 | 1.9 GHz | 19MB | 45W |
Ryzen 5 6600HS | 19050 (3163) | 6 (12) | 3.3 GHz | 4.5 GHz | Radeon 660M | 6 | 1.9 GHz | 19MB | 35W |
Ryzen 5 6600U | 17804 (3253) | 6 (12) | 2.9 GHz | 4.5 GHz | Radeon 660M | 6 | 1.9 GHz | 19MB | 15-28W |
性能について
CPU性能は横ばいと言いながら、一応1割程度は向上しています。
あと、Zen2とZen3が入り乱れたRyzen 5000シリーズとは違って、Zen3+だけなので分かりやすいですね。
グラフィックは圧巻です。特にRyzen 7。
掲載ベンチマーク(TimeSpy)ではGTX 1650 Max-Qの90%強のスコアですが、「FidelityFX Super Resolution」や「Radeon Super Resolution」といった超解像技術を併用することで、実ゲームではGTX 1650 Max-Qを超えるフレームレートを出せるのだとか。
Ryzen PRO 6000シリーズについて
Ryzen PRO 6000シリーズは、Ryzen 6000シリーズにビジネス向けの管理機能とセキュリティー機能を追加したものです。
メモリー・ガード(メモリー上のデータの暗号化)やAMD Shadow Stack(制御フロー攻撃に対する保護機能)はRyzen PRO 5000シリーズから引き続き搭載。
Ryzen 6000と同様に、新たに「Microsoft Plutonプロセッサ」を搭載しました。
Ryzen PRO 6000シリーズのスペック
プロセッサー | コア数(スレッド数) | 標準クロック | 最大クロック | 内蔵グラフィック | EU数 | GPU最大クロック | L2+L3 | TDP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 9 PRO 6950H | 8 (16) | 3.3 GHz | 4.9 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 45W |
Ryzen 9 PRO 6950HS | 8 (16) | 3.3 GHz | 4.9 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 35W |
Ryzen 7 PRO 6860Z | 8 (16) | 2.7 GHz | 4.75 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.2 GHz | 20MB | 28W |
Ryzen 7 PRO 6850H | 8 (16) | 3.2 GHz | 4.7 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.4 GHz | 20MB | 45W |
Ryzen 7 PRO 6850HS | 8 (16) | 3.2 GHz | 4.7 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.2 GHz | 20MB | 35W |
Ryzen 7 PRO 6850U | 8 (16) | 2.7 GHz | 4.7 GHz | Radeon 680M | 12 | 2.2 GHz | 20MB | 15-30W |
Ryzen 5 PRO 6650H | 6 (12) | 3.3 GHz | 4.5 GHz | Radeon 660M | 6 | 1.9 GHz | 19MB | 45W |
Ryzen 5 PRO 6650HS | 6 (12) | 3.3 GHz | 4.5 GHz | Radeon 660M | 6 | 1.9 GHz | 19MB | 35W |
Ryzen 5 PRO 6650U | 6 (12) | 2.9 GHz | 4.5 GHz | Radeon 660M | 6 | 1.9 GHz | 19MB | 15-30W |
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