2025年1月21日、HeadwolfはDimensity 7050を搭載した8.4インチタブレット「FPad7」を発売しました。

つい先日、HelioG99/2.5Kな「FPad6」をレビューしたばかりでの新機種投入ですが、「FPad6」は2.3万円弱、「FPad7」は2.7万円弱(いずれも記事執筆時点)と、価格帯を分けて併売されます。

機材を提供いただいたHEADWOLF様にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
HEADWOLF FPad7

■ FPad7 | |
CPU | Dimensity 7050 |
---|---|
メモリ | 8GB(+拡張8GB) |
ストレージ | 256GB UFS3.1 |
画面 | 8.4インチ IPS WQXGA |
インターフェース | USB Type-C(2.0)×1 microSD オーディオジャック |
カメラ | 前:800万画素 後:1600万画素 |
wi-fi | Wi-fi 6+BT5.2 |
4G/5G | 4G対応 FDD:B1/2/3/4/5/7/8/18/19/20/26/28AB TDD:38/39/40/41 |
バッテリー | 6,500mAh 18W充電 |
サイズ | 203.7×125.8×8.5mm |
重さ | 385g |
GoodPoint
✔ 2万円台でAnTuTu 50万点オーバー
✔ 高精細な2.5Kディスプレイ
✔ 付属の充電器が15W
✔ 思ったよりカメラがいい
BadPoint
✖ 385gとやや重め
✖ 分厚く感じる
✖ スピーカーの音質はいまいち
パッケージ
・電源アダプタ
・USB C to Cケーブル
・ユーザーマニュアル
・カードスロット取り出しピン
技適は、技適番号までしっかり記載されています。
参考 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(219-239286)
技適はF6(FPad6)と共通。
F8とF10があるので、少なくとも2製品先まではWi-fi 6+BT5.2となるようです。
インターフェース
インターフェースは電源ボタン・音量ボタンともに長辺にあり、電源ボタンが下になります。
Type-C端子は縦持ち時の下辺の中心。
そもそも「FPad7」は縦置き時ステレオ、つまり縦持ちが正位置なので、スマホと同じく端子が辺の中心にあります。
Dimensity 7050はUSB 3.0非対応なので、端子規格はUSB 2.0、なので映像出力も非対応です。
パフォーマンス
「FPad7」のSoCはDimensity 7050(MTK6877)。2023年4月に発表されたSoCですが、そもそもがDimensity 1080(2022年10月発表)のリネーム品です。
ARM Cortex-A78を2コア、Cortex-A55が6コアのbig.LITTLE構成で、GPUはMali-G68 MC4。製造プロセスはTSMC 6nm。
同ランクとなるSnapdragon 6 Gen 1はARM Cortex-A78を4コア、Cortex-A55が4コアのbig.LITTLE構成で、GPUはAdreno 710。製造プロセスは4nmなので、コア構成や製造プロセスではちょっと負けています。
AnTuTu(v10)のスコアは総合56.3万点、CPU17.3万点、GPU11.9万点。
Snapdragon 6 Gen 1は総合55.4万点、CPU19.6万点、GPU9.4万点だったので、予想通り計算性能は負けていますが、グラフィック性能は上回りました。
「FPad6」(Helio G99)は総合40.9万点、CPU13.2万点、GPU6.3万点だったので、前世代比だと総合で4割増の大幅な性能アップです。
しかし、あくまでこれは総合的な話。
3DMarkのストレステストでは2270点台でスコアは全く落ちず。
このストレステスト、Snapdragon 6 Gen 1は平均2390点だったので、AnTuTuでの結果と逆転しています。
これ実はちゃんとカラクリがあって、AnTuTuベンチマーク時、Snapdragon 6 Gen 1はAPIがVulkan、「FPad7」はOpenGLでの計測でした。
一方3DMark WildLifeはVulkan 1.1なので、APIが変わった結果スコアが逆転した、ということのようです。
GeekBench6ではシングル965点、マルチ2477点。
Snapdragon 6 Gen 1はシングル940点、マルチ2923点だったので、シングルスレッドでは勝ってマルチスレッドで負けています。ここは予想通りです。
メーカー | HEADWOLF | ALLDOCUBE | |||
---|---|---|---|---|---|
モデル名 | FPad7 | FPad6 | iPlay60 mini Turbo | iPlay60 | |
CPU | Dimensity 7050 | Helio G99 | Snapdragon 6 Gen1 | UNISOC T606 | |
メモリ | 8GB | 8GB | 8GB | 4GB | |
ストレージ | 256GB UFS3.0 | 128GB UFS2.1 | 128GB UFS2.2 | 128GB | |
OS | Android 14 | Android 14 | Android 14 | Android 13 | |
AnTuTu (v10) | 総合 | 563618 | 409019 | 554305 | 完走できず |
CPU | 173186 | 132413 | 196030 | 完走できず | |
GPU | 111925 | 63004 | 94389 | 完走できず | |
MEM | 137419 | 108432 | 135353 | 完走できず | |
UX | 141088 | 105170 | 128533 | 完走できず | |
GeekBench 5 | シングル | 745 | 532 | 724 | 313 |
マルチ | 2255 | 1664 | 2924 | 1262 | |
Compute | 2673 | 1465 | 1501 | 517 | |
GeekBench 6 | シングル | 966 | 710 | 940 | 379 |
マルチ | 2477 | 1822 | 2923 | 1362 | |
Compute | 2394 | 1275 | 1311 | 452 | |
3DMark | Wild Life | 2274 | 1104 | 2354 | 420 |
Wild Life Unlimited | 2295 | 1206 | 2395 | 422 | |
Wild Life EX | 626 | 337 | 604 | 91 | |
Wild Life EX Unlimited | 609 | 331 | 597 | 101 | |
Sling Shot | 5103 | 3113 | 5458 | 2268 | |
Sling Shot Unlimited | 5664 | 3486 | 5672 | 2452 | |
Sling Shot EX | 3846 | 2410 | 4026 | 2274 | |
Sling Shot EX Unlimited | 4257 | 2525 | 4485 | 2498 | |
Steel Nomad L | 225 | 126 | 199 | メモリ不足 | |
Steel Nomad L Unlimited | 242 | 127 | 199 | メモリ不足 | |
IceStorm | Maxed out | Maxed out | Maxed out | Maxed out | |
IceStorm EX | Maxed out | Maxed out | Maxed out | Maxed out | |
IceStorm Unlimited | 40401 | 30048 | 60283 | 16939 | |
PassMark | System | 11426 | 9294 | 13751 | 5302 |
CPU | 31581 | 25531 | 37533 | 2412 | |
Memory | 19136 | 14493 | 25561 | 12047 | |
Disk | 92057 | 125420 | 123052 | 99553 | |
2D | 22080 | 19537 | 31708 | 13244 | |
3D | 33664 | 25221 | 25437 | 13724 | |
ブラウザ | jetstream2 | 80.542 | 78.941 | 91.848 | 54.4 |
BaseMark | 357 | 336.62 | 391.56 | 229.75 | |
WebXPRT4 | 77 | 81 | 101 | 57 | |
MotionMark | 43.4 | 633.26 | 990.62 | 372.81 | |
Octane | 36154 | 24533 | 32912 | 13537 | |
Speedometer 2.0 | 98.5 | 75.5 | 96.8 | 45.5 | |
Speedometer 3.0 | 7.57 | 4.93 | 5.94 | 3.38 | |
PCMark | Work 3.0 | 9924 | 9128 | 9465 | 完走できず |
Battery (100%) | 6h00m | 6h05m | 6h15m | 完走できず | |
Battery (50%) | 9h03m | 8h41m | 15h13m | 完走できず | |
Burnout | 22.5 | 11.1 | 18.2 | 7.6 | |
AI-Benchmark | 398 | 191 | 731 | 37.3 | |
GeekBench ML | CPU Single | 571 | 457 | 277 | |
CPU Half | 570 | 456 | 279 | ||
CPU Quantized | 1190 | 916 | 600 | ||
GPU Single | 240 | 140 | 157 | ||
GPU Half | 324 | 186 | 214 | ||
GPU Quantized | 324 | 178 | 216 | ||
NPU Single | 完走できず | 完走できず | 54 | ||
NPU Half | 完走できず | 完走できず | 54 | ||
NPU Quantized | 完走できず | 完走できず | 139 | ||
AiTuTu v3 | 総合 | 75564 | 41945 | 288861 | |
Super Resorusion | 1096 | 800 | 29024 | ||
Style Transfer | 7399 | 4187 | 149879 | ||
画像分類 | 39880 | 21204 | 43581 | ||
オブジェクト検出 | 27189 | 15754 | 66307 |
他の製品との比較。
ストレージ
「FPad7」のストレージは256GB UFS3.1。
カードスロットはmicroSD+nanoSIM。
ストレージ速度の計測結果。#2が内部ストレージ、#1がmicroSD(Sandisk Extreme Pro 128GB)です。
内部ストレージはリード1.29GB/s、ライト556MB/s。
「FPad6」(UFS2.2)がリード486MB/s、ライト384MB/sだったので、大幅な速度アップです。
microSDもリード81.7MB/s、ライト50.8MB/sで実用レベルの速度。
実用レベルと言っても内蔵ストレージの速度進化が大きすぎて、相当遅いストレージになっちゃったんですけどね。
ここまで速度差が出ちゃうと、microSDを無くしてしまう(データのやり取りはネットワーク経由でできるアプリを用意する)デバイスが増えるのもわかる気がします。
使ってみた
ディスプレイ
「FPad7」のディスプレイは8.4インチWQXGA(2560×1600)。
数年前に流行した解像度で、近年だとユアユー「P30」、直近では「FPad6/APad2」で復活しました。
ALLDOCUBE「iPlay50 Mini」からの8インチクラス再ブームは、8.4インチWUXGA(1920×1200)が中心で、2.5Kは希少です。
明るさごとの比較。
「FPad7」のパネルは最大400nitsとされているので、100%だとちょっと明るめ。70%くらいが使いやすい明るさです。
0%でもそこまで暗くならず、室内なら(暗いけど)普通に操作できる程度です。
「FPad6」は500nitsだったので、実は最大輝度は少し下がっています。
サウンド
「FPad7」は縦持ち時にステレオとなるデュアルスピーカーを内蔵。
横持ち時ステレオじゃないのか…と嘆きたくなるところですが、「縦で使え。横向きで動画を見たいなら10インチ以上のタブレットを使え(Headwolfのタブレットは10インチ以上は横向きが正位置になっている)」とメッセージを示されている以上、文句は言えません。
あくまでも8インチクラスはスマホの延長として、「スマホより大きい画面でネットサーフィンやSNS、電子書籍を見る」デバイスと位置づけているのでしょう。
話をスピーカーに戻すと、音量は十分。100%にするとわずかにビビリ音が発生するくらいです。
音質については、やや低め。
低音が弱いのは仕方ないところですが、中音・高音はフラット気味。
チープというわけではないのですが、ボーカルの感情表現が薄く感じられます。
一方でドラマや映画のクリップでは効果音がはっきりしていて、臨場感の向上に一役買っています。
あくまでもレビュー者の個人的感想である点にご注意ください。
動画
「FPad7」のWidevineはL1で、VOD(動画配信)サービスのHD画質視聴に対応。
NetflixのHD再生にも対応していますが、契約していないので未確認です。
Amazon PrimeではFHD(1080p)再生表示を確認。といっても8.4インチは動画視聴にはいささか小さいので、あくまでマイナス要素ではないというだけですね。
ゲーム
PUBG
PUBGは選択できるのは”HDRのウルトラ”まで。Helio G99が”HDの高”までなので、ワンランク違います。
Snapdragon 6 Gen 1では“ウルトラHDRのHDR”まで選べたので、やはりグラフィックはSnapdragon 6 Gen 1より低いか、あるいは解像度の影響が大きいようです。
原神
原神は、最低画質で”スムーズ”、低画質で”非常に高い”。
2.5Kという高解像度なので、内部的なレンダリング解像度は低くても、負荷が高くなるようです。
しかし実際のプレイでは高画質/60FPSでも特に処理落ちすることなく動作します。
計測してみると高画質でもスメールシティを適当に走り回って平均30FPS程度は出ていました。
大量のモンスターと相対するとかでもなければ、特に重く感じることはなさそうです。
カメラ
カメラはリアが1600万画素(4640×3480)、フロントが800万画素(3624×2448)です。
タブレットのザ・標準といった感じの解像度です。
カメラアプリは設定項目が「FPad6」とは異なるものの、同じ系列とわかるアプリがプリインストールされています。
これ、推測ですがMediatekのカメラアプリなのかなぁと。
下の画像は幅800に縮小した以外の加工はしていません。
リアカメラでの撮影。赤みが強いのは「FPad6」と似ていますが、映り具合が全然違います。
花びらのディティールもしっかりしています。
等倍での切り抜き。文字もくっきりはっきり。
一方でフロントカメラは色味が変に強調されています。
等倍表示。
フォーカスが甘いものの、「FPad6」に比べればざらつきが少なくなっています。
バッテリー
バッテリーは「FPad6」と同じ6,500mAh、ディスプレイ輝度100%で6時間00分、輝度50%で9時間3分でした。
SoCの性能が上がった(=消費電力が増えた)分、ディスプレイの最大輝度を下げる(=消費電力を下げる)ことで6時間を確保した、といったところでしょうか。
なので明るさ50の時は逆に「FPad6」(8時間41分)より延びていたりします。
消費電力
「FPad7」は18W急速充電に対応(20Wと書いてあるサイトもありますが、メーカーに確認したところ18Wとのことでした)。
しかし実際の計測では19.5Wを確認。これやっぱり実は20Wなのでは…?
外観
外箱は白箱に箔押しのロゴでちょっと高級感。
底面の表記もあっさりしていますが、技適番号も入れてほしかったですね(本体に記載されているので違反ではありませんが)。
パッケージ全体。
SIM取り出しピンはついにホールがなくなりました。
同梱物
電源アダプタは5V/3A、9V/2.22A、12V/2.67A(=20W)の出力。
格安タブレットの呪縛(同梱アダプタが10W)をついに破りました。10Wアダプタって予備にするにしても出力が低くて扱いに困るから、20Wになったのは素晴らしいですね。
マニュアルは図解入りの冊子。
マニュアルの日本語は文章はかなり日本語になっていますが、まだ機械翻訳感が残っています。
また、一部に中華フォントが残っています。
がじぇっとりっぷも最近まではそんなものと流していましたが、「放置すると世界的にこれが”正しい日本語の漢字”と思われるようになる」という意見を見てからは、指摘することにしています。
本体
本体。
本体サイズは実は「iPlay60 mini Turbo」とほぼ同じ。
しかし「iPlay60 mini Turbo」はベゼルが太く見えたのに、なぜか「FPad7」はそれほど太く感じません。
何が違うのかなぁと考えたところ、ディスプレイの角が直角でシャープな印象があること、ちょっと分かりにくいですがフィルムが数mm小さいことでベゼルの上にラインが入り、縦ボーダーだと痩せて見える原理に近いものが起きているんじゃないかと。
ちょっとした差ですが、よくできています。
インターフェース。
電源ボタンとボリュームボタンの間にあるのがリセットホール。もう一つの穴がマイクホールと思われます。
「FPad7」は厚さ8.5mmと「iPlay60 mini Turbo」(厚さ7.9mm)や「Legion Y700 2023」(同7.6mm)より厚め。
1mm以下の差ですが、かなり分厚く感じます。
背面デザインはHeadwolf共通。
というか、筐体そのものは「FPad6」と同じかも。
カメラ(再掲)。
前述の通り、マイクは側面です。
保護フィルムは標準で張られていますが、ちょっと爪でこすっただけでも跡が残り、いいフィルムとは言えません。
真面目に使うのであればフィルムは張り替えた方がいいでしょう。
システム
「FPad7」のOSは、Android 14。OSの独自カスタムはなく、壁紙と独自アプリくらい。
アプリ一覧。
独自要素は「Headwolf」アプリくらいです。
その「Headwolf」アプリは実質的に関連リンク集。
また、見てわかるようにいまだにPrimeDayバナーであったりと、メンテもあまりされていません。
“設定”画面は素のAndroidそのままです。
Androidバージョンは14。
セキュリティ・システムはともに2024年10月です。
なお、ビルドは2025年1月10日付となっていました。
まとめ
「FPad7」の価格は記事執筆時点でクーポン込み26,999円。
「iPlay60 mini Turbo」(同24,999円)よりは価格が高くなっていますが、ディスプレイが2.5Kであることと、ストレージが256GB(「iPlay60 mini Turbo」は128GB)であるという違いがあります。
過去のタブレットの例でも128GBモデルと256GBモデルでは3,000円差とかなので、これはむしろ「FPad7」の方が割安と言えるくらいですね。
ただし検証した通りDimensity 7050はゲーム系についてはSnapdragon 6 Gen 1に後れを取っています。
一方で縦持ちで使うネットサーフィンや読書においては2.5Kの強みを存分に生かせるので、メイン用途は何かを考えて選択するのが良さそうです。
なお、2025年の小型タブレットは脱Helio G99が進み、ミドルクラスやローハイエンドが増える気配があるので、一通り出揃うまで様子見するのも一つの手です。
まぁゲームメインでもない限り「FPad7」でもオーバースペック気味なんですけどね。
おまけ
「FPad7」は素の状態だと1カラムのスマホUIです。
が、開発者向けオプションの”最小幅”を720dp以上に設定することで、2カラムのタブレットUIにすることができます。
他のタブレットでもできますが、”最小幅”の設定は解像度によって変わります。
最小幅の数字が減っていますが、これは右カラムの幅ですね。
元に戻すときは最小幅を400dp以下に設定、1カラムに戻った後に600dpに再設定します。
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