2019年7月23日、QNAPは8ポートの1GbEと3ポートの10GbEを備えたアンマネージドスイッチ「QSW-308-1C」と「QSW-308S」をリリースしました。
この2機種の違いは10GbEの部分で、「QSW-308-1C」は2ポートのSFP+と1ポートのSFP+/RJ45コンボポート、「QSW-308S」は3ポートすべてSFP+となっています。
今回はコンボポートな方の「QSW-308-1C」をお借りできたので、レビューしたいと思います。
2019年12月3日追記:「QNAP 製スイッチ 冬の無料プレゼントキャンペーン!!」について追記いたしました。
2019年12月9日追記:「QNAP×WD REDセット割引キャンペーン」について追記いたしました。
QSW-308-1C
GoodPoint
✔ 通信速度の低下なし!
✔ 低消費電力
✔ ファンレス無音
✔ 3万円の低価格
BadPoint
✖ 10GbEのRJ45が1ポートだけ
外観
パッケージは本体と電源アダプタ、セットアップガイドとシンプルです。
本体を正面から見たところです。
8ポートの1GbE RJ45(いわゆる一般的なLANポート)、2ポートのSFP+、1ポートのSFP+/RJ45(10GBase-T)コンボポートとなっています。
想像ですが、10GbEにはNAS、メインデスクトップ、ルーターの3台を接続する、あたりが想定されていそうです。
ちなみに高さは42.5mmなので、サーバーラックの1U(44.45mm)にすっぽりと入ります。
スリットから中を見るとコンボポートの右側は何もない空間になっているので、切り詰めればサーバーラックに横に2台並べられそうです。
まぁ、そうしなかったのにはなにか理由があるのでしょう(放熱空間の確保とか)。
「QSW-308-1C」はデザインがポップで、左の丸い部分が電源となっています。
ファンレスのため、あちこちにスリットが入っています。
これが電源です。
最大出力は3A@12Vとなっています。
電源アダプタが丸いので、挿しこんだ時に自由に向きを変えられます。
角が丸いので、壁に寄せるときはその隙間にケーブルを通せます。
底面だけ金属製です。
負荷をかけたときにほんのりあたたかくなっていたので、多少の放熱も兼ねているようです。
周辺機材
「QSW-308-1C」は10GbEに対応するRJ45端子が1ポートしかないので、10GbE接続をテストするにはSFP+対応機器を用意する必要があります。
これがSFP+カードです。カードはMellanoxチップを搭載したQNAP「LAN-10G2SF-MLX」を使用しています。
端子の奥行きが長いのが特徴です。
参考:ネットワーク拡張カード(Mellanox):QNAP
これをデスクトップ機のPCIeスロットに装着します。
外から見るとこんな感じになります。
当然ですが通信ケーブルも一般的なLANケーブルとは違います。
SFP+ケーブルは本来は先端のコネクタ(トランシーバ)部分とケーブル部分に分かれていて、伝送距離に応じて選択ができるのですが(光ファイバーケーブルだとkm単位の伝送も可能です)、短距離向けに安価な一体型ケーブル(銅ケーブル)も販売されています。
これがトランシーバ部です。
光ファイバーケーブル使用時にはこの中で光信号→電気信号の変換を行います。
トランシーバ部にはEEPROMが内蔵されていて、ベンダー(メーカー)名やシリアルナンバーが書き込まれています。
この内容を読み取ることで、純正品しか使用できないようにするベンダーロックイン(スマホのキャリア縛りのようなものです)を行っているメーカーも存在しますが、QNAPはベンダーロックフリーとなっています。
トランシーバはこんな感じに根っこの方まで挿さります。
また、今回のレビュー用に、ちょっと変わったものを用意してみました。
SFP+ to 10GBase-T変換トランシーバです。
トランシーバとしてはちょっとお高めですが、これを使うとSFP+ポートでもLANケーブルが使えるようになります。
ベンチマークのストレージ側には、「TVS-672XT」をお借りしました。
「TVS-672XT」にはSSDを4枚装着します。
500MB/s×4なので、RAID0にすれば理屈の上では10Gbps(=1250MB/s)を超える速度となるため、10GbEの限界まで測定できるはずです。
結果詳細は後述しますが、この目論見はうまく行き、10GbEの限界に近い数字を出しました。
接続
眺めていても仕方ないので、接続してみます。
検証にはSFP+カードを取り付けた「Optiplex 5050」、「QNA-T310G1T」を接続した「ideapad 720S」、前述の「TVS-672XT」を使用しています。
接続するとこんな感じです。
Windows 10では何もしなくともSFP+カードを認識し、使える状態になっていました。
ベンチマーク的な速度測定は後述するとして、試しに「Optiplex 5050」に「ideapad 720S」をネットワークドライブ接続し、ざっくり速度を測ってみます。
「Crystal Disk Mark」ではシーケンシャルリードで1176MB/s出ました。前述の通り10Gbps=1250MB/sなので、ほぼ上限ですね。
シーケンシャルライトが遅いのは、「ideapad 720S」のディスク側の仕様です。
タスクマネージャーでは9.9Gbpsを叩き出しており、直結時と変わらず限界まで速度が出ていました。
通信速度ベンチマーク
「QSW-308-1C」はアンマネージドスイッチなので、特に設定画面などは持ちません。ある意味、転送速度が性能の全てです。
そこで、接続の仕方とMTUを変えながら転送速度を計測してみました。
CrystalDiskMarkは「TVS-672XT」を「Optiplex 5050」にネットワークドライブとしてマウントして計測、その下の表は「ideapad 720S」と「Optiplex 5050」間でiperf3を使って計測した数値となります。
CrystalDiskMarkは10GbE接続のみ計測しています。
結論から言うと、直結と変わらない速度が出ており、その差も計測誤差程度となりました。
直結
まずは標準の数字を出すために、「Optiplex 5050」と「ideapad 720S」を直結して計測しました。
コントローラーによる誤差をなくすため、「Optiplex 5050」にSFP+ to 10GBase-T変換トランシーバを取り付けて、LANケーブルで接続しています。
MTU | アップロード | ダウンロード |
---|---|---|
1500 | 9.30 Gbps | 9.30 Gbps |
1500(2並列) | 9.38 Gbps | 9.38 Gbps |
9000 | 9.76 Gbps | 9.76 Gbps |
9000(2並列) | 9.89 Gbps | 9.89 Gbps |
RJ45 → SFP+
「QSW-308-1C」で一番多いであろう接続パターンです。
比較的安定して9Gbps台が出ましたが、直結時よりわずかに速度が低下しています。
CrystalDiskMarkではリード・ライトともに1180MB/sを超えています。
MTU | アップロード | ダウンロード |
---|---|---|
1500 | 9.30 Gbps | 9.30 Gbps |
1500(2並列) | 9.43 Gbps | 9.43 Gbps |
9000 | 9.32 Gbps | 9.32 Gbps |
9000(2並列) | 9.79 Gbps | 9.78 Gbps |
SFP+ → SFP+
前述のSFP+ to 10GBase-T変換アダプタを用いて、SFP+ポート同士で接続してみました。
CrystalDiskMarkの数字もほぼ誤差です。
通信を続けていると変換アダプタが結構熱を持ち、7Gbps台まで速度が落ちたりと、少し不安定な面もありましたが、直結時と変わらない速度が出ています。
MTU | アップロード | ダウンロード |
---|---|---|
1500 | 9.31 Gbps | 9.31 Gbps |
1500(2並列) | 9.41 Gbps | 9.41 Gbps |
9000 | 9.77 Gbps | 9.76 Gbps |
9000(2並列) | 9.89 Gbps | 9.89 Gbps |
1GbE → SFP+
参考程度ですが、1GbEポートについても確認してみます。
MTU | アップロード | ダウンロード |
---|---|---|
1500 | 949 Mbps | 948 Mbps |
9000 | 992 Mbps | 991 Mbps |
1GbE → 1GbE
最後に、1GbEポート同士でも計測してみました。
MTU | アップロード | ダウンロード |
---|---|---|
1500 | 950 Mbps | 949 Mbps |
9000 | 952 Mbps | 949 Mbps |
消費電力
「QSW-308-1C」をレビューして、一番驚いたのは消費電力かもしれません。
最大消費電力が3A@12V(=36W)ということでそれなりに消費するものと思っていたら、全然違っていました。
接続パターン | 消費電力 |
---|---|
無接続 | 3.14W |
1GbE 1ポートのみ接続 | 3.42W |
SFP+ 1ポートのみ接続 | 3.30W |
RJ45 1ポートのみ接続 | 5.80W |
変換アダプタのみ | 4.30W |
SFP+&RJ45に接続(非通信) | 5.88W |
SFP+&変換アダプタに接続(非通信) | 5.96W |
SFP+&1GbEに接続(非通信) | 3.48W |
10G通信時(SFP+&RJ45) | 5.96W |
10G通信時(SFP+&変換アダプタ) | 6.00W |
1G通信時 | 3.56W |
最大でも6W程度です。ワットチェッカーを見ながら計測していたのですが、瞬間最大値でも6.2Wまででした。
これ、全ポートフル稼働させても、15Wいくかどうかくらいかもしれません。
まとめ
実のところ「QSW-308-1C」を使う前は、エンタープライズ向けでもないのにSFP+はどうなんだろうと思っていました。
あまり一般には馴染みのない規格なので、導入のハードルが高いんじゃないかなぁと考えていたのですが、実際に使ってみれば何もしなくてもWindowsでカードは認識されるし、通信をしてみれば低消費電力かつRJ45よりも転送速度が高いという結果となり、これはこれでありなんじゃないかと思うようになりました。
24時間稼働させることを考えると、SFP+の消費電力の低さはかなり魅力的です。
これまでQNAPのNASでSFP+を採用している製品が多いことに疑問を感じていたのですが、今回のレビューで納得しました。NASも基本的に24時間稼働ですしね。
10GbEスイッチの最近の相場は1ポートあたり1万円、8ポート以上だと7〜8,000円といったところですが、「QSW-308-1C」は3ポートで約3万円と、ほぼ相場通りです。
転送速度の劣化もなく、低消費電力、さらにファンレス無音、必要があればRJ45への変換も可能と、使い勝手のいいスイッチと言えるでしょう。
「QNAP 製スイッチ 冬の無料プレゼントキャンペーン!!」
QNAPでは2019年12月1日〜12月31日の間、「QNAP 製スイッチ 冬の無料プレゼントキャンペーン!!」を行っています。
2019年9月に発売されたばかりの「TVS-872N-i3-8G」または「TVS-672N-i3-4G」を購入した全ての方に、今回レビューした「QSW-308-1C」またはコンボポートでない「QSW-308S」を無料プレゼントするというキャンペーンです。
キャンペーンサイト:QNAP
「QNAP×WD REDセット割引キャンペーン」
「QSW-308-1C」とは直接関係ありませんが、QNAPの代理店を務めるテックウインド株式会社が、2019年11月30日~2020年1月13日の期間で「NAS×HDDセット割引キャンペーン」を開催しています。
■対象店舗
全国のパソコン工房、BUYMORE店、グッドウィル店舗
■対象製品
「QNAP TS-228A」と WD RED(PRO) HDD 2本の同時購入
「QNAP TS-231P」と WD RED(PRO) HDDかWD RED SSD 2本の同時購入
■割引額
1TB HDD ×2本セット:税別2,500円引き
2TB HDD ×2本セット:税別3,000円引き
3TB HDD ×2本セット:税別4,000円引き
4TB HDD ×2本セット:税別5,000円引き
6TB HDD ×2本セット:税別8,000円引き
500GB SSD ×2本セット:税別4,000円引き※
1TB SSD ×2本セット:税別5,000円引き※
2TB以上 SSD ×2本セット:税別8,000円引き※
※SSDのセット割はTS-231Pが対象となります
■セット例
QNAP TS-228A + WD Red WD20EFAX-RT×2セット:35,615円(3000円引き)
QNAP TS-231P + WD Red WD10EFRX×2セット:29,393円(2500円引き)
関連リンク
QSW-308-1C:QNAP
コメント
10Gはやっぱりsfp+がいいですね
RJ45は発熱と消費電力が大きくて扱いづらい
あと格安10Gスイッチならmikrotikがおすすめです
最近40G対応のスイッチが出たし中々頑張ってますよ